〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第三百四十七話 煉獄の炎

イクサ「いた……シオリちゃん!!」

 

イクサはイクサカリバーから弾丸を放ち、苦戦するシオリを助ける。ふと、ラッピング電車を見てみると……光に包まれており、パチパチと火が燃える音が聞こえて来る。

 

イクサ(何、この光…いったいなにが…?)

 

シオリ「あの子達が焼かれているんです…」

 

イクサ「……電車を被っているのは…フィール?」

 

シオリ「フィールに惹かれて、フィールを求めて、でもギアがなくて、もがいている…」

 

サクリファイス達はフィールを求めて、ラッピング電車に近付いていたようだ。だが、電車に触れる前にフィールという名の炎に焼かれてしまう。

 

シオリ「近付くと焼かれてしまう…体はピグマリオンに侵されてしまったから……」

 

イクサ「そんな…ううん、そうじゃない…今は…そうだ、ミノタウロス・ソーマは!?こっちに来たはずじゃ……」

 

肝心のミノタウロス・ソーマの姿はどこにも見当たらない。

 

シオリ「交戦しました。が…壁と同化して見失いました。一度取り込んだあの子達を投げ捨てて…」

 

ミノタウロス・ソーマは融合したサクリファイス達を切り離し、壁へと撤退したようだ。そこに、他のメンバー達がやって来る。

 

レイナ「これは……フィールの輝きなの…?」

 

アヤ「すごい!ファンのみんなの、Dollsへの想いが…電車を守ってくれているなんて……!!」

 

このフィールは、ファン達のDollsへの想いが結界として具現化した物である。ピグマリオンが近付いても、煉獄の炎のように焼き払って行く。

 

シオリ「レイナさん…それに、みんな……なんで、こちらへ?」

 

アヤ「なんで…って……ファンのみんなを助けないと!!」

 

レイナ「まだ戦いは終わっていない…乗客に見られる前にコアを……」

 

シオリ「では、お二人は戻ってください。私が引き受けます。」

 

シオリの言葉に、アヤが声を荒げる。

 

アヤ「はぁ?何言ってるのよ!1人じゃ流石に無茶でしょ!?」

 

シオリ「私には…奥の手がありますから……」

 

アヤ「……Eモードのこと言ってんの?奥の手になんかならないでしょ?」

 

シオリ「……。」

 

アヤの言葉を聞き、とうとう黙り込むシオリ。

 

レイナ「肉体的限界は変わっていない……持続時間も限られる…解決の見通しがなさすぎる…そんな作戦、賛成できないわ…!」

 

シオリ「Eモードだけじゃないですよ…シレーヌの時のミサキさんのように……」

 

ミサキ「それは無理よ。」

 

シオリの言葉を否定するミサキ。

 

ミサキ「シミュレーションしてたんでしょう?感情を燃やす時の、あの力を…」

 

続いてサクラが口を開く。

 

サクラ「今の…感情が漏れ出してしまう私たちでは…先にフィールが燃え尽きてしまう…そうですよね?」

 

彼女の言う通り…テアトルが展開出来ない今、フィールは彼女達から漏れ出してしまう。それを閉じ込める事も出来ない…その状態で感情を燃やせば……

 

シオリ「サクラさん、ミサキさんまで…」

 

サクラ「私たちもサクリファイスと戦うためにいろいろ考えたんです…シオリさん…力を合わせましょう…!そうすればーー」

 

 

そんな必要ありません!!

 

 

シオリはサクラの言葉を突き放した。彼女が声を荒げ、驚いて固まるサクラとミサキ。

 

シオリ「ミノタウロスが再びあの子達を取り込むなら、まずは電車から引き剥がさないと。それは、私がやります。みなさんは万が一にも見られないように声も聞かれないように、下がって。」

 

そう言うと、ラッピング電車の方へ走って行った。

 

サクラ「シオリさん!」

 

ミサキ「話を聞いて!シオリは!どうするつもりなの!?」

 

サクラとミサキはシオリの後を追い掛けて行った。

 

 

 

斑目「カナ、エネルギー体は!?」

 

カナ「ダイダロス内部に入りました…っ!?」

 

斑目「あ、あれは……」

 

カナと斑目はカメラ映像を見て、言葉を失う。映像に映っていたのは、上半身は滅亡迅雷.netのシンボルマークを模し、紫色の多角形複眼、頭部の2本角が特徴の仮面ライダーだった。

 

カナ「…か、仮面ライダー…!?」

 

斑目「何なんだ、あのライダーは…?」

 

すると、映っていたライダーの姿が4色の光になり…ダイダロスの奥へと進んで行った。

 

カナ「エネルギー体、移動を開始!!ダイダロス最深部に向かっている模様!!」

 

斑目「……。」

斑目(翔…もしあれが君であれば、Dollsを…乗客を救って欲しい……)

 

 

 

シオリ「どうして……放っておいてくれれば良いのに……これから私は、忘れ去られるのだから…」

 

追ってきたサクラとミサキに背を向けながら言うシオリ。

 

ミサキ「はぁ!?忘れられるって、Eモードのこと?あれは自分が忘れられるわけじゃなきでしょう!?」

 

イクサ「…シオリちゃん。それはダメだよ。」

 

続いてシオリを追ってきたイクサも、シオリに語りかける。

 

サクラ「……愛さん?」

 

イクサ「翔君から聞いちゃったんだけど…自分のギアを抜くか……それともピグマリオンに喰われるか……乗客を助けた後にみんなの記憶から消えるだなんて…そんなの、流石のアタシも認められるわけない!!」

 

そこに、他のメンバー達もやって来る。彼女達も戻ることはせず、シオリを追ってきたのだ。

 

アヤ「ち、ちょっと!!」

 

レイナ「そんなこと…!」

 

ミサキ「なっ…なによそれ…!!」

 

イクサの言葉を聞き、メンバー達も言葉を失う。

 

 

翔『俺の予想に過ぎねぇが…アイツは、自分を犠牲にすることでサクリファイスらと共に死ぬつもりだろう……だが、俺はそんなの認めねぇ…あまりにも馬鹿げている…』

 

 

実は、翔がこっそり愛に教えていたのだ。シオリは恐らく、サクリファイスと共に死に…皆の記憶から消えようとしていると。

 

サクラ「ど、どうしてそんな…!」

 

シオリ「……はぁ。」

 

真実をメンバー達に知られ、逃げ場が無いと感じたシオリはため息を着く。

 

シオリ「翔君は想像力が豊かですね……そんなことーー」

 

イクサ「……。」

 

シオリ「……。」

 

少しの沈黙の後に、シオリは静かに語り始める。

 

シオリ「『約束』……最初は斑目さんとの約束…他のドールに同じ思いをさせないためのもの…あの子達や、ドールの誰か…一般人…ファンのみんなを手にかける時…必ず、私1人でやる。他のメンバーには手を出させない。そこまでが約束。……そして…そこから先は私のわがまま。」

 

 

私が、私の犯した罪とともに

 

みんなの記憶から消える……

 

 

シオリ「少なくとも1回だけは…何事もない日々に戻ることができる…今が……そのときなのよ!!

 

シオリは悲しそうに叫ぶと、再び静かに語る。

 

シオリ「今なら、あの子達も連れて行くことができる……私たちは世界から消える…Dollsという希望を残して……生まれることすらできなかった私たちの…最後の希望が貴女たちなの!!」

 

叫ぶシオリに近づくサクラ。

 

シオリ「だから!!

 

そして……

 

 

パァンッ!!

 

 

迷宮内に、音が響き渡る。

 

ミサキ「さ、サクラ!?」

 

サクラがシオリの頬を引っ叩いたのだ。

 

サクラ「6月22日…Dolls1周年ライブ。Dollsと名前を変えてから初の大規模ライブでした。」

 

アヤ「サクラ…?」

 

突然語り始めるサクラに困惑するメンバー達。

 

サクラ「その前はヒヨさんナナミさんのお披露目。チームBの結成ライブがありました。」

 

レイナ「貴女……」

 

サクラの目からは1筋の涙が流れ落ちる。シオリの肩を掴んだまま、サクラは語る。

 

サクラ「その前はチームCの結成ライブ…その前がヤマダさんのお披露目ライブ…なんでBより先にCが結成?みたいな、いろんな噂もあったりして……その前がユキさん、ミサキさん、チヒロさん…3人だったFEELIN' DOLLに新しいアイドルが加わっていく…」

 

FEELIN' DOLLとは…Dollsの前のアイドルグループ名だったのだ。その時は、シオリとレイナとアヤを中心に活動していた。そこからどんどん新しいメンバーが加わり、今のDollsがある。

 

サクラ「そして……その思い出の全てにシオリさんがいる…」

 

ミサキ「……。」

 

サクラの言葉を聞き、ミサキも目に涙を浮かべる。

 

サクラ「シオリさんが記憶から消えてしまったら…みんな、心の一部を失ってしまうんです!!Dollsから貰った感動も!!Dollsに支えられた人生も!!Dollsとファンのことをずっと見てきたシオリさんが…みんなが悲しむことを……するはずがない……!」

 

シオリ「……。」

 

ナナミ「追いつけたようですね。何やら修羅場のようですが……」

 

ナナミ達も、シオリに漸く追い付いた。今のところ、彼女らの近くに敵は居ない。 

 

ヒヨ「シオリちゃん!!ヒヨたちイチレンタクショーなんでしょ!?ずっと一緒だよ…アイドルじゃなくなっても…戦うだけのショクギョーになったって……!!」

 

ナナミ「僭越ながらシオリさんの作戦にはサポートとして参加させていただきます。」

 

シオリ「ナナミちゃん……!」

 

思わず顔を上げるシオリ。

 

ナナミ「私たちはチームとして任務を果たすのです。そういうものです。異論は認めません。」

 

ヤマダ「ジブンらからはサクリファイスの印象。それに瘴気とやらに苦しんだ記憶を。そこのコアファンからはDollsの裏の顔。ピグマリオンをぶっ殺す姿の記憶を消すと?…そんなピンポイントで消えるんすかね?分の悪い賭けに命まで張る必要ないっショ。」

 

ユキ「……シオリさんより先に、サクリファイスを殲滅します。」

 

シオリ「ユキさん……!」

 

シオリの側には、共に苦難を乗り越えて来た仲間がいる。

 

ユキ「わたしたちの方が早く達成できます。」

 

シオリ「……。」

 

シオリは言う。それは、斑目も国家も恐れる事とも言えるだろう。

 

 

シオリ「……世間に知られてしまったら…きっとDollsはDollsでなくなってしまう…ただの兵器になってしまう…最悪、破棄されてしまうかもしれないのよ?」

 

 

シオリはただ、サクリファイスと共に死のうとした訳では無い。Dollsを守るために、苦渋の決断をしたのだった。しかし…

 

サクラ「それでも!Dollsは変わりません!シオリさんと、みんながいる限り!!」

 

ヤマダ「ふひひ……破棄、ねぇ?そんなこと、簡単にはできねぇっすよ?そんなことしようモンなら、翔さんが黙っちゃいねぇっす♪」

 

ナナミ「そうですね…私たち以外に、ピグマリオンを倒せる存在は…翔さんが居ますけど、でも…翔さんを孤独にさせたくありません。」

 

レイナ「オートギアもそうかしら。でも、まだ修理中なのでしょう?」

 

アヤ「じゃあ実質、翔とあたしたちだけよね?誰も翔とあたしたちを止められないわ!」

 

世間から知られようが、今の彼女達にはそんなこと関係ない。シオリと共に歩んで行きたい…それが、彼女達の意志だ。

 

ユキ「……検査は、どうしましょう?体のことは、わたしたちには…」

 

ミサキ「そうね……ドールハウスを制圧して研究員を拉致すれば…」

 

ヒヨ「ほえええ……!そ、そんなワルいことまでしちゃう?翔さんに怒られちゃうよ?」汗

 

いきなり犯罪臭漂う話を始めるメンバー達。そして……

 

シオリ「……ふふ。」

 

シオリが漸く、笑ってくれた。

 

シオリ「みんな……本当に…………もうアイドル活動ができなくなってもいいんですか?」

 

アヤ「全力尽くしてそうなるなら、仕方ないんじゃない?」

 

シオリ「……まだ乗客を見捨てる作戦は実施可能ですが…」

 

レイナ「確かにそうね。でも、私たちは美しくないことはしない。」

 

シオリ「……全員がDollsの裏の顔を晒す必要だってないのに…」

 

ミサキ「全員全力だからこそ、最大のパフォーマンスが出せる。」

 

サクラ「それがDolls……ですよね!」

 

シオリは少しだけ黙った後……

 

 

シオリ「……そうね。……本当に、そう。それが、Dolls…それが……」

 

 

静かに涙を流す。

 

シオリ「みなさんに……お願いがあります……私のお友達を…一緒に見送ってくれるかしら?」

 

彼女の頼みに、メンバー達は躊躇う事は無かった。

 

「「「了解!!」」」

 

 

 

昇(ちっ…あのまま化け物達に喰われてしまえば良かったものの……現実はそんなに甘くないか…)

 

バツが悪そうに表情を歪める昇。

 

昇(しかし、チャンスはすぐそこまで来ている…僕の願いは、届く…!!)

 

Dollsが戦いで疲れるのを待つ昇。彼の後ろには偽Dolls達が待ち構えているのだ。

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