〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
その頃、観測室では…斑目がDollsの冗談を面白そうに聞いていた。
斑目「ドールハウスを制圧か……フフ……我々には勝ち目がなさそうだ。そこに翔が加われば、尚更だ。」
カナ「……笑い事じゃありませんよ?」汗
しかし、カナはそれどころではない。
カナ「実際、乗客との接触なしに事態を解決するのは難しいでしょうし…この状況、どうしたら…」
斑目「コアの状況は?」
急に平常運転に戻る斑目。
カナ「何度かミノタウロス・ソーマを撃破。しかし…沈黙に至りません。」
どうやらミノタウロス・ソーマを倒しても、コアにダメージは通っていないようだ。
カナ「コアに致命傷が届いていないか、予測が違っていたのか…少しずつ反応の強度は減少しているのですが、ドールの消耗の方がーー」
その時、通信機が激しく鳴り始める。
愛『カナちゃん!迷宮の様子が的何が起こっているかわかる!?』
愛の言葉を聞き、すぐに調べるカナ。
カナ「コア反応急上昇!それと…ピグマリオンの反応消失!」
斑目「ピグマリオンが…消えただと?ダイダロスは奴らを集めていたのではーー」
カナ「サクリファイスの反応も消失!いえ、これは消失というより……EsGとも見解一致!ソーマよりも高密度の融合です!」
ダイダロスのコアはピグマリオンとサクリファイスと融合を開始したのだ。どうやらDolls達と、全力で戦うつもりのようだ。
カナ「それと…ドールハウスから高エネルギー体が出現!ダイダロス最深部に向かっています!!」
愛『高エネルギーが、ドールハウスから…!?』
ダイダロス最深部に、異形が姿を現した。3つの首を持つ番犬のような異形に……
ユキ「命が…混ざり合っています…!」
ヒヨ「おっきい…犬さん?全然形が変わっちゃった…!」
ミサキ「なんて圧力…!迷宮中の肉を全部吸収したというの!?」
ヤマダ「まだ変身を残していたとはやりおる…ラスボス感の演出ってヤツぅ…?」
この異形が誕生した事で、ラッピング電車は解放される。
ナナミ「逆に…視界が開けちゃいましたね。いよいよ乗客の皆さんには見えやすくなって…」
アヤ「もう…覚悟は決まってんのよ!!」
レイナ「せめて、華麗なラストステージに……!」
こうしているうちに、化け物は段々完全体へと近付いていく。
シオリ「まるで…地獄の番犬ね…私たちをもう戻れない世界へ誘う…」
サクラ「まだ、諦めません!どこにたどり着いたとしても…私たちは…!」
その時、シオリの脳内に翔の声が聞こえて来る。この場に居ないはずの、翔の声が……
『シオリ、お前のイメージを教えろ。』
シオリ「ッ!?翔君…!」
ナナミ「えっ?翔さん…どこにいるんですか?」
ナナミが翔を呼んでも、彼の返事は返ってこない。
シオリ(翔君、何を…?)
『良いか?今からお前達のテアトルを閉じる。この言葉、口に出せよ?』
シオリ「テアトルを、閉じる…?」
アヤ「えっ?閉じるって言われても……あたしたちのテアトルはーー」
『んで、もう一度開く。その時、世界は変わる。』
シオリ「世界が、変わる…?」
レイナ「世界が……」
『テアトルってのはな、ずっと広がったままなんだよ。サクリファイスの感情で溢れかえって…閉じるにはそれを受け止めなければならねぇんだ。アイツらの苦しみの感情を全部。』
シオリ「あの子達の…感情を……受け止める……」
翔の言葉をシオリが代弁したため、メンバー達にはしっかり伝わる。
ミサキ「……望むところよ!」
サクラ「シオリさんの苦しみ、あの子達の痛み…私たちにも背負わせてください!」
ミサキとサクラも構えを取り、気合を込める。
シオリ「ミサキさん…サクラさん…」
すると、Dollsの目の前に1本の鍵が出現する。
『テアトルを取り戻す…行くぞ!!』
今、Dollsのテアトルが取り戻せたのだ。これにより、彼女らの裏の顔が世間に知られる事は無くなった。
カナ「て…テアトルを検知!急に…どうして!?」
突然の展開に、困惑するカナ。
カナ「反応…1、2、3……9つ確認!六本木駅をほぼ完全に包んでいます!」
更に、展開はまだまだ続く。
カナ「!?テアトルの検知が時間を逆行しています!まるで最初からあったみたいに……!!」
斑目「またか…またアレが起きるのか…!ふふ……ふはははは!!」
カナ「ま、斑目さん!?」
突如笑い出す斑目。
斑目(翔…君はいつも、美味い所を持っていく……だが、それで良い…)
「「「うっ……ああ…!」」」
ダイダロスでは、サクリファイス達の負の感情や痛みを、Dollsが全員で受け止めていた。
『シオリ、お前のイメージをさっさと教えろ。薄まっちまった皆の世界…お前のイメージが導く!!』
シオリ「私の…イメージが…?」
『そうだ!Dollsという世界観…お前から失われなかった強いイメージ…自分の思い描く理想的な皆の姿…戦うこと、歌うこと、全てを日常にする姿を…!』
シオリ「理想の…姿……」
シオリは頭の中でイメージを始める。昔のDolls…メンバーが増えていくDolls…数々のライブ…普段の日常…辛かった思い出…楽しかった思い出…レッスンの日々……そして、今のDolls……サクラがやって来て、彼女と共に翔がやってきて…
シオリ「でも……都合が良すぎるわ……」
『それで良い…これ以上ねぇぐれぇに都合の良い事を願え。乗客は全員救助できる。迷宮は攻略できる。テアトルは元に戻る。これからも日常が続く。サクリファイスも皆救い、前に進んでいける。自分自身のことも許して進んでいける。戦うことも、歌うことも、諦める必要はねぇ。全員都合よく解決する。それが今から起きる、お前の為の奇跡だ。』
シオリ「奇跡…」
『あぁ。今まで積み重ねた感情が、強く描かれた理想の世界が、その奇跡を呼び寄せる…お前は思い描くだけでいい…俺がそれを…代行しよう。』
やがて、真っ白な光が世界を包んでいく。
カナ「エリア一帯のフィール、急速に上昇中!!観測上限を超えて…まだ上昇中です!!これは…池袋の時と同等…いえ、それ以上の……!」
斑目「ふふふ……ははっ…はははははは!!素晴らしいぞ…!!なんだこれは!?この高ぶりは!!」
カナ「……。」
カナ「斑目さん……貴女は……あっ!!フィールがドールたちのギアに収束…!これはーー」
ドールたちのギアが眩い光を放ち、新たな衣装を身に纏わせる。
シオリ「テアトルが…翔君、これは……」
『お前が思い描くDollsの力…Dollsであるための…Dollsを守る力…お前の感情が…Dollsを思う力が、奇跡を引き入れる扉になった…』
シオリ「奇跡の扉…」
ミサキ「そこに感情が流れ込んだ…そうですよね、翔さん。」
サクラ「感じます…みんなのフィールを、私たちと…それにこれは……」
レイナ「サクリファイスたちの感情…いえ…記憶といってもいいのかしら。」
ヒヨ「さみしかったよね…つらかったよね…ずっと、忘れない!」
ナナミ「そうですね、確かに彼女らはいました…今もここに…」
アヤ「シオリ…あたしたちも、一緒のものを背負えたかな?」
ヤマダ「ふひひ…背負うとか、重い言い方しなくても…気負い過ぎはよくないっすなぁ…」
ユキ「ずっとわたしたち、一緒です…テアトルの中でも、外でも、ずっと…」
漸く、いつものDollsが再度結成された。
シオリ「みなさん……翔君……」
イクサ「ちょっとちょっと、アタシも仲間に入れてよ♪」
イクサもいつの間にかライジングイクサへと変わっていた。すると、足元に花畑が広がって行く。
ミサキ「無粋なピグマリオンね…」
サクラ「大丈夫…きっと負けません…!」
ナナミ「ええ…なんといっても今の私たちには、無限の加護がついています。」
ヒヨ「世界中が味方って感じ!今ならなんだってできるよ…!」
意志が1つになった彼女達…今の彼女達なら、何者にも負けない。
ヤマダ「シモベを寄せ集めて強くなるピグマリオン、ね…ま、発想は悪くなかったっすけどーー」
ユキ「わたしたちの心にも……たくさんの心…」
アヤ「わかるよ…心が…感情が積み重なってるのが…!」
レイナ「ええ、そしてその感情が力に変わるなら…私たちに敗北はありえない!」
Dollsの前に立ちはだかるのは、ケルベロス…ピグマリオン達が集まって1つの化け物になった姿だ。
シオリ「…神話に聞く冥界の門番。喰われても
今、迷宮最深部を舞台に…最後の戦いが、始まる。