〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
最終ミーティングを終えたDollsは、浄化ライブの舞台である港区へ来ていた。
シオリ「本番15分前…みなさん、再度衣装とヘアメイクの確認をお願いします。」
今回の衣装はプリンセスのようなドレスをモチーフにした物で、頭部には小さい王冠がある。
ヒヨ「はーいっ!ヒヨは準備バンタンだよー♪」
レイナ「…ヒヨ、後ろのリボンが絡まっているわ。」
ヒヨ「ひよっ!?あ、あぶなかったー!!」
ナナミ「ふむ…私も念の為、もう一度メガネを洗浄機にかけてきますかね。」
メンバー達はそれぞれ最終確認を行っていた。
アヤ「ヤマダ!このポケットは飾りなんだから!スマホつっこむのやめなさいってば!!」
ヤマダ「うぐ…バレタカ。いいじゃないすかちょっとぐらい…」
翔「ちょっとやそっとの問題じゃねぇだろうが…」汗
ヤマダ「うへぇ、厳し〜……」
ヤマダの言葉にツッコミを入れる翔。
ユキ「……。」Zzz〜…
サクラ「り、リラックスしてますね…さすがユキさん…私はまだ緊張しちゃいます…」
翔「おいユキ、そろそろ起きろ。出番はもうすぐだぜ?」
ユキ「はい…」パチッ…
ミサキ「翔さんが言えば鶴の一声ね。」汗
本番が迫る中、限られた時間の中で細かく確認を怠らないDolls。
シオリ「……。」
翔「よぉ、随分落ち着いてるじゃねぇか、シオリ。」
シオリに声を掛ける翔。
シオリ「そんなことないですよ。すごくドキドキワクワクしていますし、何よりも……嬉しくて……そして恐ろしくて……」
翔「…そうか。」
シオリ「そう、恐ろしい…この幸せを投げ出そうとしてしまっていた。この胸の高鳴りを否定しようとしてしまっていた。私だけが消えてしまうのは怖くなかったのに…」
翔「……。」
その時、Dolls達にとって聞き覚えのある声が聞こえて来る。
ルリ「シオリーン!!」
そう、ルリだ。近くにはカナもいる。
シオリ「ルリちゃん!カナさんも…!」
ルリ「……シオリンすっごく嬉しそう!」
シオリ「え?そう見えますか?」
翔「あぁ、この日を待ち望んでいたんだからなぁ?子どもの目は誤魔化せねぇと思えよな?サプライズライブだろ、楽しくねぇ筈あるか?」
そう言って口角を上げる翔。
シオリ「…翔君♪」
滅多に見られない翔の笑顔を見て、安心するシオリ。
ルリ「ルリも聞いてすごくびっくりしたんだよ!みんな揃って出てくるんでしょ?今日はトクベツカンランブース?ってところで見ていいんだって!」
翔「特別観覧…?」
ルリ「えへへへ〜、たくさん検査をがんばった、ご褒美なんだよ♪」
翔「そうか、良かったじゃねぇか。ルリちゃん。」
ルリ「うん!!」
嬉しそうに笑うルリ。
ルリ「あっ、お兄ちゃん。足の怪我治ったの?」
翔「あぁ、今は普通に歩けるぜ?」
ルリ「そうなんだ!良かったね、お兄ちゃん♪」
翔「フッ、そうだな。」
ルリの言葉を聞き、思わず笑みを見せる翔。
カナ「前回のライブでは…警戒していたにもかかわらず、接触がありましたので……」
翔「デウスの野郎だろ?」
カナ「意図は不明ですが、ドールハウスはルリちゃんの警備態勢を強化する方針です。斑目さんからはしばらくの間、外出を控えるようにと言われましたが…今日は、特別ですから!」
翔「そうか…せめてだ、せめて……子どもの未来だけは守れるようにしろよな?」
カナ「はい!」
普段は冷酷な翔なのだが、子どもには優しい。彼にとって子どもとは、未来の宝物なのだから。
ルリ「ルリもみんなといっしょにわーって盛り上がりたかったけど……」
少し名残り惜しそうな顔をするルリに、シオリは優しく声を掛ける。
シオリ「大丈夫、ルリちゃん。どこからでも、ルリちゃんの声援は届くし……ルリちゃんがどこにいたって、Dollsの想いは必ず届けますから。」
ルリ「……!!」
レイナとアヤも言う。
レイナ「約束するわ。最高のPERFORMANCEを見せるって。」
アヤ「今日は思いっきり、楽しんでね!」
ルリ「うんっ……!Dollsのみんなも、がんばってね!!」
翔はカナに問い掛ける。
翔「そういや、ラッピング車両の乗客はどうした?」
カナ「ラッピング電車には乗車していたファンの皆さんも、無事に会場に到着したようです。」
翔「そうか。」
カナ「翔君、そろそろ時間ですね…」
翔「そうだな。」
ライブ開始直前、シオリが翔に声を掛ける。
シオリ「…翔君。」
翔「…何だ?」
シオリ「見ていてくださいね。翔君が守ってくださった、私たちの『今』を♪」
翔「あぁ、しっかり見ている。行って来い。」
やがて、ライブ会場でDollsのライブが始まった。
ヒヨ『ふぉおおおおおっ!!みんな元気〜〜〜!?』
観客「うおおおお!!」「ヒヨちゃ〜〜〜〜ん!!」「元気だよ〜〜〜〜!!」
アヤ『みんな、おどろけーっ!!ホンモノのDollsが来ちゃったよー!!』
既に大歓声に包まれるライブ会場。「うおおおー!!」、「待ってたよーー!!」等々、ファンの喜ぶ声が聞こえて来る。
サクラ「あれれ…?ゲリラライブのはずなのに、みなさん全然驚いていない様子ですね…」
ヤマダ「フヒヒヒヒ…トーゼンっす。数日前からネットで情報ダダ漏れっしたから。」
ナナミ「…さて、その情報を漏らしたのはどこのどなたでしょうねぇ?」
ヤマダ「…ふぃ〜ふぃふぃ〜〜〜♪」
ナナミがヤマダの方を見ながら言うが、ヤマダは口笛を吹いて誤魔化している(しかも吹けてない)。
レイナ「ふふ…予定調和といったところかしら?」
ミサキ「ま、何でもいいわ。私たちはアイドルなんだから。ゲリラだろうがなんだろうが、集まってくれたファンを楽しませるだけ。」
ユキはマイクを手に持つと、メッセージを伝える。
ユキ『今日は、新曲があります。一生懸命、うたいます…!』
シオリもユキに続く。
シオリ『進化し続けるこの街、東京。そこで暮らす私たちの今…今から続く未来に、願いを込めて…!』
そして、Dollsの曲が始まった。
一海「うおおぉぉっ!!Dollsサイコー!!」
紫「おぉ、今までで1番凄いかもしれないな…!」
友香「わぁ…みなさん、まるでお姫様みたいです♪」
諒芽「おぉ!!すっげぇ〜〜!!」
会場の一般席には一海達も来ていた。
翔「……。」
翔は特別席で彼女達のライブを見守る。
翔(アイツら、明るくて…良い表情してんじゃねぇか。この曲の、明るい曲調のせいだけじゃねぇ。心のモヤが晴れ、晴れ晴れとしたような…シオリも、アイツらも、過去を…辛く苦しい状況を何度も乗り越えた。だから今、こうして輝くことができる。これから先もきっと、ずっと…もっと……Dollsは、輝き続ける。俺はそう信じている…)
皆明るい表情をしており、安心する翔。彼はこれからも、彼女達を信じ続ける。化け物である自分を受け入れてくれた、この世界の未来も…彼はずっと、信じている。
翔「……!?」ドクンッ…
しかしその時…翔の身体に、異変が起き始める。
翔(…マジかよ、こんな時に……!!)ドクンッ、ドクンッ……
彼の中に眠るアマゾン細胞が、覚醒を始めたのだ。アマゾンズレジスターを見てみると、まだ青い光を放っている。抑制薬はまだ充分ある。
翔(やめろ、俺は…今度こそアイツらのライブを……くっ、駄目だ……今ここにいる人間が…美味そうだと……!!)ドクンッドクンッドクンッドクンッ…
危機を感じた翔は、こっそり席を立ち…会場を後にしていく。
蜜璃「あっ、翔君…!?」
深雪「蜜璃さん?」
蜜璃「ちょっと翔君を見てくる…!」
異変が起き始めた翔を追って、蜜璃は席を立った。
その頃、とある場所にて……小鳥遊大臣が自衛隊員と施設でやり取りをしていた。
自衛隊員「施設周辺の清掃作業が先程終了し、施設内の装置類も全て復帰しています。」
小鳥遊「…ふむ、侵蝕の影響は表面のみ。中までは届かなかったようだな。」
自衛隊員「は…?」
小鳥遊「…フフ、天は我に味方せり、と言ったのだよ。今回、恐ろしい仮面ライダーが現れ、ダイダロスを完全に破壊した。ここの侵蝕は免れた。」
仮面ライダー滅亡迅雷は、害特にも伝わっていた。たった1人でダイダロスを壊滅させ、自衛隊員も思わず震え上がった程だ。
小鳥遊「最悪の事態は回避できたが、油断はならん。以後、厳戒態勢で警備に当たるように。」
自衛隊員「はっ…!!」
この施設には、オートギア達の姿がある。現在、メンテナンス中のオートギアが……
小鳥遊「強化を施したオートギアの再稼働は近い。しかし、彼女らはそれを超える力を手に入れた。フフ…」
シレーヌの一件があって以降、オートギアには外部からハッキングされないよう強化されていた。人類を守るための兵器が、人類を傷付けるための殺戮兵器と化さぬように……
小鳥遊「あの年頃は数日の間に信じられない成長を見せる。目を離した瞬間に、あんなにも…そう思わないかね?
???「お気づきでしたか…」
小鳥遊「叔父上から君が来ると聞いていたのでね…」
そこに、とある人物がやって来る。それは…
カナ「……総理もこちらに?」
ドールハウス所属の特殊公務員、南田 カナだった。
小鳥遊「いや…今日の予定は遊説。ここには来ていない。」
カナ「そうですか…それにしても、六本木の地下にこのような場所があったなんて、さすがに予想の範囲外です。」
この施設は、何と…六本木の地下施設だったのだ。
小鳥遊「フフ…秘密基地というのは少年ありがとう夢なのさ。まだ都内にもいくつかある。」
このような施設は六本木のみならず、都内に何個か存在しているようだ。
カナ「…はぁ。」汗
小鳥遊大臣の言葉に困惑するカナ。
カナ「……ダイダロスは…この施設のエネルギーを目指して移動していた……?」
小鳥遊「その可能性はあるかもしれんが、あくまでここは予備の施設だ。エネルギーの貯蔵目的でもない倉庫のひとつ…新宿から移動するほどてもないはずだ。」
ダイダロスが何故移動していたのか…明確な理由は未だに解っていない。
小鳥遊「その理由は気になる所だが……本題に移ろう。君の報告を聞かせてくれるかね?『彼女』……EsGについて……」
カナ「……わかりました。」
カナは小鳥遊大臣に、EsGについての見解を報告する。
カナ「私の予想も多分に含まれますが…」
一方、とある施設では……
デウス「…やあ、待ちに待った対面だ。」
デウスがカプセルの中で眠るエクスの元に来ていた。
デウス「ずいぶん探したよ。まさかこんなところに隠されていたなんてね。あの王サマ気取りの道化師が、キミを独り占めにしようとしたのかな?」
王サマ気取りの道化師…恐らく、小鳥遊大臣の事であろう。
デウス「だけど心配はいらない。ボクがすぐにキミを目覚めさせて……」
デウス「……ない。」
デウスはエクスを目覚めさせようとしたが、失敗したようだ。
デウス「ない、ない、ない……ないじゃないか、メモリアが…!!」
どうやらエクスのメモリアがどこにも見当たらず、目覚めさせる事ができなかったようだ。
デウス「マキナか……?いや…もしそうならエクスはすでに……だとしたら…………」
すると、デウスは怪しく笑い始める。
デウス「そうか…それであの道化師は…ふふ、なるほどね……見えたよ、全て。居場所さえ分かれば、どうとでもなる。今日のところは、しばしの別れだ。」
デウス「……眠って、待て。」
マキナ「素敵な光景だったわ。美しくて、感動的で…『奇跡』……ふふふ、何度見てもいいものね。」
マキナ「……駒はまたひとつ進んだ。もう手を伸ばせば届くほどに。」
マキナ「ふふ…楽しみだわ……」