〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第三百五十三話 翔の過ち

ライブが終わり、客足が遠のいた頃…

 

レイナ「あら、翔君の姿が見えないわ。」

 

メンバー達は翔が居ない事に気付く。

 

深雪「そういえば、蜜璃さんも…遅いですね。」

 

彼の様子を見に行った蜜璃も、まだ戻って来ていない。

 

サクラ「でしたら、探しに行きましょう?」

 

ミサキ「そうね。」

 

メンバー達は翔と蜜璃を見つけるため、ライブ会場を探し回った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翔「…はぁ……はぁ……」ドクンッドクンッドクンッドクンッ

 

その頃、翔は誰も居ない通路を歩いていた。彼は荒い呼吸をしながら大量の汗を流しており、目も充血したように赤くなっている。

 

蜜璃「あっ、いたいた♪」

 

そこに、蜜璃がやって来る。

 

翔「…!!…さ、七草、さン……」ドクンッドクンッドクンッドクンッ

 

蜜璃「どうしたの、翔君?」

 

蜜璃は翔の元に歩み寄ってくる。

 

翔(だ、駄目だ…来るな、来るな七草さん…!!)

 

翔は必死に首を横に振るが、蜜璃には翔の想いが伝わっていない。

 

蜜璃「もしかして、具合悪いの?」

 

翔(違う…このままじゃ、食人衝動を……抑えられなく…!!)ドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッ

 

離れろ…来るな……今すぐ逃げろ…………そう言いたいが、翔は上手く喋れなかった。こうしている内に、彼の中の鼓動が段々速くなる。

 

翔「…さ、七草サン……」ドクンッドクンッドクンッドクンッ

 

蜜璃「なぁに?」

 

翔「さえグサ、サン……!!」ドクンッドクンッドクンッドクンッ

 

蜜璃「大丈夫、翔君?」

 

次の瞬間……

 

 

ドクシャアアアアッ!!

 

 

蜜璃「翔く…きゃああああぁぁっ!!

 

 

蜜璃の悲鳴がこだまし、当たり一面に真っ赤な鮮血が広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きゃああああぁぁっ!!

 

 

ナナミ「ッ!?ひ、悲鳴…!?」

 

深雪「蜜璃さんの声です!!」

 

ヤマダ「んおっ?まさかの敵ですか?」

 

アヤ「とにかくすぐ行くわよ!!」

 

メンバー達は悲鳴が聞こえた方へ走って行く。そこで、彼女らが見た光景は……

 

 

 

「「「!!??」」」

 

 

 

蜜璃「あう…ぐっ……うぅっ!!」

 

アマゾン素体δ「ガウッ!!」ズチュッ…バキッ…

 

切断された蜜璃の左腕…それを貪るアマゾン素体…いや、翔……

 

アマゾン素体δ「サエグササン…スコシダケ……スコシダケダカラナ……」ブチュッ…グシュッ……

 

食人衝動が抑えられなくなった翔は、蜜璃の左腕を切り落とすと…それにかぶりついたのだ。

 

ナナミ「しょ、翔さ…ヴッ!?」

 

深雪「蜜璃さん!!」

 

蜜璃「うっ…み、深雪…ちゃん……しょ、翔くん……!!」

 

アヤ「翔…やめて、翔!!」

 

シオリ「翔君…!!」

 

深雪は蜜璃に駆け寄り、Dollsは翔の元へ駆け寄る。

 

翔「…ッ!!」

 

レイナ「翔君!!翔君!!」

 

翔「!?」

 

翔は蜜璃の腕にかぶりつくのを止め、ゆっくりとDollsの方へ顔を向ける。

 

翔「……。」

 

そして、蜜璃の腕をボトリと落とす。その後、痛みに悶える蜜璃と慌てて止血をする深雪の方を見る。

 

翔「……さえ、グサ……さん……

 

そして、アマゾン素体から翔の姿に戻った。

 

蜜璃「ッ!!〜〜!!」

 

翔「……。」

 

Dolls「「「……。」」」

 

翔「……!俺……」

 

段々状況を理解し始めた翔は……

 

 

ウアアアアアッ!!ッアアアアアアァァッ!!

 

 

取り乱したように発狂し、どこかへ走り去って行く。

 

シオリ「あっ、翔君!!」

 

彩羽「アタシが行きます!!皆は蜜璃先生を!!」

 

彩羽は1人、翔の後を追って走り出した。

 

 

 

カナ「えっ、蜜璃さんが!?それで、翔君はどこへ…?…はい、はい……分かりました、すぐに向かいます!!」

 

小鳥遊「…?」

 

カナ「すみません、急ぎの事態が発生しましたので…」

 

カナはそう言うと、施設から走り去って行った。

 

小鳥遊「…そう言えば、青空君の様子はどうだろうか。」

 

 

 

ライブ会場では、急ぎ駆け付けたカナと斑目が…現状を知ることに……

 

斑目「さ、七草!!」

 

カナ「蜜璃さん…どうして……?」

 

クリム「すぐに縫合を!!」

 

愛「うん、深雪ちゃん!!」

 

深雪「はい…!!」

 

現場では蜜璃の左腕を縫合するため、蜜璃をドールハウスへ搬送すべく、今その場でできる処置がされていた。

 

斑目「翔はどこにいる!?」

 

レイナ「彩羽さんが探しに行ったわ!」

 

カナ「翔君……彩羽さん、翔君を……お願いします…」

 

翔がどこへ行ったのかは、誰にも分からない…ただ、彼の無事を祈るばかりだった。

 

 

 

彩羽「翔くーん!!どこにいるのー!?」

 

彩羽は翔を見つけるため、夜の街中を走り回っていた。

 

彩羽(翔君…アタシ、もう嫌……翔君と離れ離れになるのは、もう嫌…!!)

 

暗くなればなる程、彼の発見は難しくなる。それでも彼女は、姉として最愛の弟を探し続けた。

 

アヤ「彩羽さん!!」

 

そこに、応援に駆け付けたDollsがやって来る。

 

アヤ「いた!?」

 

彩羽「ううん、いない…そっちは?」

 

ヒヨ「いない…」

 

ユキ「翔さん…どこ……?」

 

彼女らも総動員で翔を探すが、未だに彼を発見できずにいる。連絡を受けた元ストライカー達やモシュネ達も東京中を探し回るが、中々翔の姿を捉えられずにいた。

 

ミサキ「何手かに別れて探しましょう!その方が効率的よ!!」

 

彩羽「それじゃあ皆はチームごとに探して!アタシは1人で大丈夫だから!!」

 

夜の東京を女性1人で歩き回るのは、かなり危険だ…だが、冷静さを失った彼女達は、それどころではなかった。ただ、最愛の彼を…見つけ出さなければ……その意志を胸に、動いていた。

 

 

 

その頃、ドールハウスでは…蜜璃が医務室に運ばれていた。切断された腕はすぐに縫合され、くっついている。

 

蜜璃「はぁ、はぁ……み、深雪ちゃん……翔君は……?」

 

大怪我をして、痛い思いをしていても…蜜璃は翔を心配していた。

 

深雪「今、Dollsや元ストライカー達、モシュネさん達と彩羽さんが探しています。」

 

蜜璃「……無事…だと、良いな……」

 

深雪「気持ちは分かります。しかし、今は休んでいてください。」

 

深雪は蜜璃にそう言うが、蜜璃は翔が心配で休んでいられなかった。

 

蜜璃「もし、1人になってるなら……今頃…きっと……泣いてる……」

 

愛「…蜜璃ちゃん。」

 

蜜璃「私……全然、大丈夫……だから…翔君には……戻って来て…欲しい、な……」

 

愛「うん、そうだね…」

 

蜜璃は翔を責めていなかった。そもそも、この場に翔を責めようとする者は誰一人居ない。

 

斑目(翔…ここにお前を責める者は居ない…だから、戻って来い……!)

 

カナ(翔君…お願い、無事でいて…!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、とある路地裏では……

 

翔「……。」

 

翔がその場で蹲り、落ち込んでいた。彼の目からは、涙が流れ落ちている。

 

翔(やっちまった……俺は…許されねぇ過ちを……とうとう……!!)

 

大切な人を自分の手で傷付けてしまった事を、彼は激しく後悔していた。ドールハウスに戻る気力も無く、脱力したかのように俯いている。

 

彩羽「……!!」

 

そこに、彩羽が姿を現す。

 

彩羽「翔君…!!」

 

翔「……!?…姉貴……」

 

彩羽「良かった…怪我は」

 

翔「良くねぇよ!!俺は…七草さんを……く、喰っちまったんだ………やっちまった…やっちまったんだよォ…ッ!!」

 

翔は泣き出す。蜜璃を喰ってしまった事を悔み……

 

彩羽「そっか……美味しかった?」

 

翔「うっ…うぅ……あ、あぁ…美味かった……俺は、もう…あそこには、ドールハウスには……戻れねぇ……」

 

彩羽「…そっか。」

 

翔「……過ちを犯した今、俺は……あそこにいる資格なんて……」

 

彩羽は姉として、弟に寄り添う。

 

彩羽「翔君、前に言ってたよね…『生きる』って言うのは、他の誰かを食べる事だって……翔君はさ、生きていくのに当たり前の事をしただけなんだよ。」

 

翔「……。」

 

彩羽「それは人間もアマゾンも同じ…食べたって良いんだよ……アマゾンだから人間を食べちゃいけないって、誰が決めたの?アマゾンだから人間を食べちゃいけない理由なんて、アタシには分からない。でも、生きていくには食べないと……」

 

翔に声を掛ける彩羽の目からは、一筋の涙が流れていた。

 

彩羽「お願い翔君、生きて…?アタシはどんな時でも、翔君の味方!!だって、翔君は…アタシの自慢の弟、可愛い弟……たった1人の、“家族”だもん!!だから…生きて……!!」

 

翔「…姉貴……」

 

ギュッと翔を抱き締める彩羽。翔には生きていて欲しい…それが、彩羽の願いだった。

 

翔「……ならば、1つだけ…俺のわがまま、聞いてくれるか……?」

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