〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
あの事件があって数日が経った今…結局、翔がドールハウスに戻って来る事はなかった。
ヒヨ「翔さん…戻って来ないね……」
ナナミ「……そう、ですね…」
レイナ「…えぇ。」
サクラ「彩羽さんも……」
ミサキ「…そうね。」
シオリ「…翔君…彩羽さん……」
ヤマダ「…連絡は、ついたんすか……?」
アヤ「ダメ…翔も彩羽さんも、全く連絡がつかない……」
ユキ「…っ……翔、さん……」
ライブを終えたばかりのDollsも、翔が心配でたまらなかった。港区は無事浄化され、ピグマリオンの驚異に怯える必要は無くなった。だが、彼女達は全く嬉しくなかった……共に戦い、日常を過ごし、絆を育んできた翔が、居なくなってしまったのだから。結局翔を見つけ出す事ができず、彼女達も脱力していた。
斑目「……。」
カナ「……。」
事務所も、重苦しい空気に包まれていた。
蜜璃「…翔君、戻ってないんですか?」
この日、蜜璃は漸く目を覚ました。だが、翔が居ない事に気付き…また、彼を心配していた。
愛「…うん、まだ戻ってない……」
深雪「それに、彩羽さんもまだ戻ってないです……」
蜜璃「えっ、彩羽ちゃんまで…?」
翔だけでなく、彩羽までも戻って来ていない。翔が居なくなったドールハウスは、すっかり活気が無くなっていた。Dolls達も、しばらく休業となっている。
その時、愛のスマホが鳴った。
愛「…!?」
愛はすぐに電話に出る。
愛「もしもし、翔君!?」
凰蓮『あら、愛ちゃん?ワテクシよ、凰蓮・ピエール・アルフォンソ。』
相手は知り合いのカリスマパティシエ、凰蓮だった。
愛「…あっ、すみません凰蓮さん。」
凰蓮『気にしないで?それより、大丈夫…じゃあ、無さそうね……』
愛「……。」
凰蓮『そうそう、有力な情報があるのだけれど…』
愛「…もしかして、翔君の事ですか?」
凰蓮『えぇ、そうよ。』
愛が席を立ち上がると、斑目らも期待を向けるような顔をして立ち上がる。
愛「翔君は、どこに…?」
凰蓮『最近見たのは、東京都の……』
その頃、荒川流域の河川敷では…
翔「……。」モグッ…
彩羽「……。」モグッ…
翔と彩羽が肉まんを食べながら歩いていた。
彩羽「…美味しい?」
翔「…あぁ、美味いよ。」
ドールハウスに帰らず、ただ東京中を歩いていた。所謂、家出状態となっている。
彩羽「それで、わがままって何のこと…?」
翔「…東京都にな、ビルを買ったんだ……俺はしばらく、そこで過ごす…ちょっとだけ、考える時間が…欲しいんだ……」
彩羽「…そっか。」
翔「姉貴、着いて来いとは言わねぇ…来たくなけりゃ来なくて良い、今よりも遥かに生活水準が下がるからな……来るなら、それを覚悟した上で来い…」
予め売られていたビルそのものを購入し、そこでしばらく過ごす事にした翔。1度ドールハウスを離れ、考える時間が欲しいと言うが…本当は……
翔(過ちを犯した以上、あそこには居られねぇ…戻れば、また…あそこの誰かを喰っちまうかもしんねぇからな……)
過ちを犯した自分を許せず、また戻ればドールハウスの誰かを食べてしまう…再び自分の手で、ドールハウスの者を…大切な人達を傷付けてしまう事を恐れたからだった。
彩羽「うん、分かった。アタシも着いてく、むしろ連れてって?」
翔「…本当に良いのか?今ならまだ間に合うぞ?」
彩羽「良いの、生活水準が良くても…そこに翔君が居ないと、意味ないからさ……」
翔「……そうか。」
家出をする翔と共に、彩羽もドールハウスを出ていく事にした。その後2人は、夜中にドールハウスへ戻り…最低限の荷物とそれぞれのライダーシステムを持って、ドールハウスを出て行った。