〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

460 / 551
第三百七十二話 沈む街並

濃霧によって視界が遮られている中、一同はピグマリオンと妖魔の殲滅に成功した。

 

PPP−−

 

カナ『−−ピグマリオン及び妖魔の消滅を確認。周囲100m、敵性反応はありません。』

 

カナの情報によると、これ以上敵は出てこないようだ。しかし、それと同時に…

 

ヒヨ「それって、おっきなモノリスも消えちゃったってこと…?」

 

巨大なモノリス反応も消えてしまったようだ。

 

レイナ「…不可解ね。私たちの存在に気付いたから、とでも…?」

 

ヤマダ「ROM専ってコトすか?ヘイヘイ、モノリスたん草ァ。」

 

ミサキ「油断しないで!敵の罠かも−−…」

 

その時、唐突に斑目から司令が出る。

 

斑目『−−愛、このまま帰投を。探索を続けるには、不明瞭な部分が多すぎる。』

 

それは、帰還命令だった。まだ何もわかっていない状態で…これ以上の探索は、リスクが大きいと判断したようだ。

 

斑目『その霧をサンプルとして採取してくれ。解析班に回す。』

 

愛「……了解しました。」

 

愛は持っていた試験管に霧を入れ、蓋をする。

 

斑目『…翔、ドールハウスに戻って来ないか?』

 

翔「そいつァできねぇ相談だ。」

 

さり気なく翔に戻って来ないかと誘っても、彼はきっぱり断ってしまう。そんな彼を見て、口角を下げるDolls一同と愛。ふと、翔も愛を真似てか…小さな瓶に霧を入れ、蓋を閉めた。その後、バッジ型通信機でSTARSメンバー達に連絡をする。

 

翔「俺だ、今から戻る。」

 

あから『了解、気を付けて戻って来てくれ。』

 

翔「あぁ。そっちはどうだ、何か異常はねぇか?」

 

モニカ『うん、特に何も無かったよ。』

 

翔「そうか。」

 

モルガナ『荒川区域を巡回していたモシュネさん達も、無事に本部へ帰還しています。』

 

翔「わかった。」

 

通信を終えると、Dolls一同に背を向けて歩き出す翔。

 

ヒヨ「あ、翔さん……」

 

翔「……。」ザッ…ザッ…ザッ…

 

脚の怪我もすっかり完治し、普通に歩けるようになった翔。彼の身体は、どんどん見えなくなっていく。

 

アヤ「…ま、待って!!」

 

翔「……。」ザッ……

 

アヤに呼び止められ、歩みを止める翔。そんな彼に、アヤは言う。

 

アヤ「翔、本当に…本当に、辛くなったら帰って来て、ね?」

 

次に、シオリが言う。

 

シオリ「翔君、寂しくなったら…帰って来てください。それが嫌なら、連絡をしてください。」

 

最後に、レイナが言う。

 

レイナ「私たちDollsは、いいえ…ドールハウスの人達は、どんな翔君も大好きよ。だから、安心して戻って来て頂戴?」

 

レイナの言葉に、Dollsメンバー達は笑顔を見せる。

 

愛「翔君、アタシ達はいつでも翔君の味方だから…困った事があったら、いつでも頼ってね?」

 

愛も翔に優しく言う。

 

翔「……。」

 

しかし、翔は何も言わず…霧の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カナ「みなさん、お疲れ様です!」

 

ドールハウスに帰還したメンバー達に労いの言葉を掛けるカナ。

 

ヒヨ「ふひ〜〜、やっとお家ついた……」

 

レイナ「霧のせいで交通機関が麻痺していたとはいえ、まさか戻るまで半日かかるなんてね…」

 

どうやら濃霧のせいで交通機関が使えず、ましてや視界も悪かった為…ドールハウスに帰るまで半日も掛かってしまったのだ。

 

ナナミ「あ、生放送で今そのことを……音量あげますよ。」

 

そのことは、ニュースにて報道されている。一同はテレビを見る。

 

 

リポーター『−−只今、濃霧が発生している現場に来ております。こちらは5時間程前から発生した異常濃霧により、まったく視界がききません!濃霧は足立区、葛飾区、江戸川区など、非常に広い範囲で観測され…』

 

 

荒川流域で発生した濃霧は、他の区域にまで確認されていた。

 

アヤ「え、そんなに…霧の範囲ヤバくない?」

 

カナ「はい。概算の結果、約100平方km…23区全体の15%程が霧に覆われています。一方で千葉方面には広がっていないようでした。気象条件に不自然とまでは言えませんが……」

 

サクラ「東京都内だけに…広がっている……?」

 

ヤマダ「『【陰謀】政府の軍事実験?【濃霧】』、『【関東】不発弾が爆発?【濃霧】』…」

 

濃霧は東京都内のみに広がり、ネットでは様々な仮説が出ている。

 

サクラ「ヤマダさん、それってネットの?」

 

ヤマダ「その通り……ふひひ……案の定、不安を煽るスレが乱立しねるっすな〜。」

 

それは、何の根拠もないデタラメなデマであった。

 

ミサキ「面白がって、好き勝手なことを……」

 

今回の報道をネタにし、人々の不安を煽る心無い者が居ることに腹を立てるミサキ。

 

斑目『−−巨大モノリスの反応も、霧に溶けるように消えてしまった。詳しい調査結果は明日以降になるだろう。今日はこれで解散とする。各自しっかり休息をとり、次の作戦に備えてくれ。』

 

回収したサンプルは解析班に提出されたが、現在調査中で結果はまだ出ていない。

 

愛「…はい。」

 

ミサキ「はっきりしないわね……後手に回っている気がするわ……」

 

レイナ「そうね…演奏が始まったのに、踊る相手が見つからないような不安な心地…」

 

ユキ「−−翔さん。」

 

ドールハウスには、もう翔はいない。いざという時に頼れる彼は、既に居なくなってしまっている。それも、メンバー達の不安を広げている。

 

ユキ「…あの、愛さん。」

 

愛「…ん?どうしたの、ユキちゃん。」

 

ユキ「…お弁当……」

 

愛「へっ、お弁当……あっ!?」

 

ユキの言葉を聞き、メンバー達は忘れていた事を思い出す。

 

アヤ「あっ!?お弁当、まだ食べれてない!!」

 

レイナ「あら、本当…!すっかり忘れていたわ。」

 

それは、作っていた弁当をまだ食べていなかったことだった。

 

ヒヨ「移動ちゅう、あんなにお腹ぐーぐーだったのにね…?」

 

シオリ「緊急事態でしたし……緊張し過ぎていたかもしれませんね。」

 

本当は荒川流域巡回中に食べる予定だったが、急な事態に遭遇した為に…それどころではなかったのだ。

 

アヤ「あ〜……思い出したらおなかすいてきた……今から寮に戻ってみんなで食べない?気分転換にさ。」

 

ヒヨ「うんうんっ、みんなでピクニックの続きしよー!」

 

ヤマダ「あ〜〜、ヤマダは動画の配信作業ガー……」

 

ヒヨ「え〜〜〜?みんなで食べよーよ!!」

 

ヤマダ「ふぐッ!!ちょっと、ぐぁっ!のっかんの……ヤメテ……!」汗

 

ヒヨに乗っかられ、苦しそうに顔を歪めるヤマダ。

 

シオリ「それじゃあサクラさん、準備を始めましょうか。」

 

サクラ「はいっ!ミネストローネも温めなおしますね!」

 

ナナミ「あっ、じゃあスコーンも一緒に……」

 

愛「……。」

愛(良かった…みんなに笑顔が戻った……ユキちゃん、ファインプレーだったね〜♪)

 

メンバー達に笑顔が戻り、安心する愛。

 

愛「ありがとう、ユキちゃん♪」

 

ユキ「なにが、ですか?」

 

愛にお礼を言われ、困惑するユキ。

 

愛「皆の笑顔、取り戻してくれたの…ユキちゃんだからさ。」

 

ユキ「…みんなで食べると、きっと、もっとおいしいです。」

 

愛「うんうん、そうだよね!」

 

ユキ「翔さんも、おいしそうに食べていました。」

 

愛「うん、そうだね。翔君、きっと喜んでたと思うよ♪」

愛(そうだよ…不安になることなんて無い……今まで色んなことを乗り越えて来たんだもん。皆が居る限り、きっと大丈夫。それに、翔君はいつかきっと…帰って来てくれる、アタシはそう信じてる。皆も、翔君を信じてる。)

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、STARS本部ビルでは……

 

翔「戻ったz」

 

彩羽「翔く〜〜〜〜ん!!」

 

彩羽が戻ってきた翔に飛び付き、彼を抱き締めた。

 

彩羽「お姉ちゃん心配したんだぞ~?怪我してない?お腹空いてない?」

 

翔「大丈夫だ、だから離せ。」

 

彩羽「え〜〜〜〜!?や〜だ〜♪」

 

翔「ぶっ飛ばされてぇのか?」

 

彩羽「すいませんでした…」

 

威圧感のある声を出すと、彩羽はすぐに翔を離した。

 

ミネルヴァ「そういえば、Dollsに会ったんだって?」

 

翔「あぁ、偶々な。んで、ユキが握り飯をくれたんだ。」

 

小春「そうだったんですね。」

 

翠「国民的アイドルが作った料理、有名料理店の品よりも格別だろうなぁ♪で、どうだったの隊長ちゃん?」

 

翔「そりゃあ美味かったさ…デカくて食い応えもあったし、色んな具が入ってたから食ってて楽しかったぜ。こんな思いをしたのは、生まれて初めてだ。」

 

ユキが作った具沢山おにぎり、翔は気に入ってたようだ。

 

翔「お前達は昼飯済ませたのか?」

 

マリ「まだ。」

 

翔「なら、出前でも頼むか。何が食いたい?」

 

あから「ボクはガッツリ食べたいな。」

 

フェイ「じゃあカツ丼で!!」

 

ほたる「あたしもそれにします!!」

 

モニカ「カツ丼かぁ、良いねえ♪」

 

翔「俺もまだ食い足りねぇから頼むとするか、全員カツ丼で良いか?」

 

「「「良いです♪」」」

 

翔はカツ丼屋に電話をし、メンバー全員分を注文した。

 

モシュネ「隊長さん。」

 

翔「おぉ、お前達もご苦労だったな。」

 

先に帰還していたモシュネ達を労う翔。

 

黒モシュネ「まだまだ行けるでアリマスヨー!!」

 

翔「そうか、ならしっかり休んでいつでも力を発揮できるようにしておけ?」

 

赤モシュネ「了解!!」

 

翔「そうだ、モルガナ。時間があれば、コイツの解析を頼めるか?」

 

その後、採取した霧の瓶をモルガナに渡す。

 

モルガナ「では、昼食後に解析しますね。」

 

翔「助かる。」

 

モルガナ「少しでも隊長さんのお力になれるなら、私は何でもしますよ。」

 

翔「気持ちはありがてぇが、『何でもする』って言葉はあまり使わねぇ方が良い。自分の逃げ道を無くしちまうからな。いざという時に、逃げられなくなる。」

 

モルガナ「ふふっ、肝に銘じさせていただきます。」

 

やがて、出前が到着し、メンバー達はランチを楽しむのであった。

 

翔(……ユキ、ありがとうな。お前が作った握り飯の味、ぜってぇ忘れねぇぜ。)

 

心の中で、ユキに感謝をする翔。ドールハウスを離れても、自分を想い続けている存在がいると認識できたのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。