〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第三百七十六話 残渣

わたしは−−

 

わたしは……誰?

 

わたしは………何……?

 

わからない、わたしというものが…と

 

わからない、何もわからない、

 

なぜなら、消えてしまったから。

 

 

 

まあ……まだ『残っている』のね?

 

どうしてかしら?

 

 

 

知っていること……

 

それでも、残っていること……

 

それは……

 

ピグマリオン……

 

ピグマリオンは、知っている。

 

赦してはいけない、わたしたちの敵

 

通してはいけない、わたしたちの…

 

狩らなければならない、わたしたちの敵……

 

 

 

これを熱量にしてしまうのも良いけれど……

 

ふふ……そうね…!

 

 

 

わたしは、『それ』を繋ぐ楔…

 

わたしは、『それ』を遮る壁…

 

わたしは、『それ』を狩る者…

 

そしてわたしは、わたしたちは−−

 

 

 

最後の奇跡を起こしましょう。

 

アナタの望む奇跡を私が代行する……

 

そしてアナタは、アナタたちは−−

 

 

『それ』を滅ぼす槍となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛「…ん……あれ、アタシ…寝ちゃってた…?」

 

とある病院にて、目を覚ます愛。どうやら、眠ってしまっていたらしい…

 

ヤマダ「お、愛さんが目覚めている……じゃあ交代っすね〜……スヤァ……」

 

そんな彼女を見たヤマダは、仮眠を取り始めた。

 

愛「えっと……あ、アヤちゃんもいる……寝てる……」

 

近くにはアヤの姿もあるが、彼女もスヤスヤと寝息を立てて眠っている。その時、病室ドアが開くと…シオリが入って来た。

 

シオリ「おはようございます……愛さん。ユキさん、どうですか?」

 

愛「そうだ、ここは病院……ユキちゃんは…まだ……」

 

ユキはまだ、目を覚まさない。やがて、他のメンバー達もユキが眠る病室に集まった。

 

シオリ「ここに来るのは久しぶりかもしれませんね…立て続けにいろいろありましたし……」

 

愛(斑目所長から聞いたことある……この病院は、ドールハウスと関係がある……フィールやピグマリオンをちゃんと認知している、ドールハウス専用の病院。)

 

アヤ「愛さんも検査とかでここに来てるでしょ?」

 

愛「…そうだったかな?」

 

愛もドールハウスに来たばかりの頃は、この病院に何度か来ているのだが…指で数える程だった。ちなみに、翔も検査のために何度かここに来ている。

 

シオリ「翔君も、サクラさんと一緒にここに来てましたよね。ドールハウスに来る前、ここにも寄っていたと聞いていますが……」

 

それは、サクラがドールになったばかりで翔がドールハウスに保護された頃……サクラも検査を行い、その後翔も一緒に検査が行われた。この時点では、彼の中に眠るアマゾン細胞は覚醒していなかった。そのため、身体は異常なしという結果だった。ただ、精神状態が非常に不安定であったため、『精神疾患』という診断を受けた。

 

愛「翔君もあの時、あちこちに連れ回されてた気がするけど……」

 

レイナ「入院もしたはずよ。あの池袋での戦闘の後に……」

 

愛「そんな事もあったなぁ、アタシもあの時は焦ったよ。」

 

ドールハウスに保護され、Dollsと関わっていく中で漸く…心から信頼できる仲間達と巡り会えた翔は、仲間を守るために力を振るった。時には無茶をして、全力で数多の脅威と戦った。度重なる無茶で力尽きた時、この病院に搬送されて入院した。だが、彼の回復力は早く…すぐにドールハウスへ帰って来た。

 

シオリ「そういえばあの時は、EsGの診断のために手当てだけ行ってすぐドールハウスに…」

 

この病院は、一般の病院とは違う病院…国家関係者のみが訪れる場所だ。

 

シオリ「ここは国家公務員協同連合会が設置した、古くからある病院で…ドールハウスに拠点機能が移る前はここが作戦拠点にも使われていたと聞いています。」

 

現在は、ドールハウスにて作戦会議が行われているが…その前は、ここで作戦会議が行われていたそうだ。だが、それは随分前の話……

 

アヤ「…そのころのことって知らないわね。シオリはその時もう……?」

 

シオリ「いえ、ドールが生まれる前のはずです。新宿に関連するようで、記録が少ないようですが…」

 

レイナ「ドールハウス以外で私達の状態を検査できる数少ない施設……そう聞いているわ。」

 

愛「そうなんだ…そんなに前から……」

 

翔を失った悲しみに暮れるDolls達のケアは、ドールハウス3巨頭がメインだったが、愛が来る前はこの病院にて診察を受けていた。

 

ユキ「…………。」

 

こうしている間にも、ユキは未だに目を覚まさない。

 

ヤマダ「……にしてもマジ起きねーな。まさか……ヤマダと寝だめ勝負するつもりなのか……」

 

アヤ「んなわけあるかっ!!」

 

ヤマダの言葉にツッコミを入れるアヤ。

 

ヤマダ「とまあ…冗談はさておきもう3日……愛さんの記録を超えようとしている…」

 

アヤ「……。」

 

愛「……。」

 

その時、病室のドアがノックされる。

 

カナ「みなさん…起きてます…?今、大丈夫ですか?」

 

愛「うん、大丈夫。」

 

愛が返事をすると、カナが病室に入室する。

 

カナ「おはようございます。チームCのスケジュールを調整したので……ユキちゃん!!」

 

カナは目を丸くしている。

 

アヤ&ヤマダ「「えっ!?」」

 

アヤとヤマダもユキの方を見ると……いつの間にか、彼女は目を覚ましていた。

 

ユキ「……。」

 

アヤ「ゆ、ユキ!?」

 

レイナ「起きたのね…!」

 

シオリ「よかった…!」

 

だが、目の光は消えており…虚ろな表情を浮かべている。

 

ユキ「……。」

 

メンバー達が喜ぶ中、彼女だけは何も言わず黙っている。

 

ヤマダ「は〜〜〜〜〜……ふひひ……も〜ユキさんってば寝坊は罰ゲーム−−」

 

ユキ「……。」

 

ヤマダ「……ん?ユキさん?聞こえてます?」

 

ヤマダがどれだけ声を掛けても、ユキは反応を示さない。そして……

 

 

ユキ「…聞こえて、いる。

 

 

漸く言葉を発した。だが、いつもの彼女の口調ではない…どこか、機械的な喋り方で……

 

アヤ「ああっ…よかった…よかったよぉ……」

 

しかし、メンバー達はユキが目覚めた事の喜びの方が大きく、彼女の異変にはまだ気付いていないようだ。

 

愛「うんうん…も本当に…本当によかった!」

 

愛もユキの異変に気付いていない様子。

 

ヤマダ「う〜ん……?」

 

彼女の異変に気付いているのは、今はヤマダのみのようだ。

 

愛「あれ、ヤマダちゃん……どうかしたの?」

 

ヤマダ「…ユキさん、コレだーれだ?」

 

ヤマダはスマホの画面に写る翔の写真をみせる。

 

ユキ「青空 翔。ドールハウス専属用心棒。」

 

ヤマダ「コッチは?」

 

次に、アヤを指さしながら問い掛ける。

 

ユキ「アヤ。」

 

ヤマダ「あちらのふたりは?」

 

ユキ「シオリ。レイナ。」

 

ヤマダ「じゃあ、ジブンは?」

 

ユキ「アンジェリカ、改めヤマダ。」

 

ヤマダの質問に淡々と答えるユキ。いつもはメンバー達をさん付けで呼んでいるのだが…今のユキは、メンバー達をさん付けで呼んでいない。

 

ヤマダ「……なんだこりゃ。」

 

そして、他のメンバー達も次第にユキの異変に気付き始める。

 

アヤ「ゆ、ユキ?どーしちゃった?大丈夫?」

 

カナ「はっ…と、とにかく、各所連絡します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、STARS本部ビルでは……

 

アナウンサー『東京都荒川区にて大規模な交通事故が立て続けに発生し、数十名が死亡、数百名が怪我を負いました。』

 

翔「……。」

 

メンバー「「「……。」」」

 

STARS一同がニュースを見ていて、暗い顔をしていた。

 

雪枝「…あ、あの…隊長さん……」

 

翔「…どうした?」

 

雪枝「…私、悔しいです……都民を守るために、STARSはいるのに……守れなかった人達がいるって、実感して……」

 

雪枝の目からは涙がこぼれる。

 

翔「…俺もだ。」

 

STARSは都民を守るという使命を背負っている。だが、この事故では多くの死傷者が出てしまった。メンバー達は、悔しい思いをしていた。

 

翔「…確かに、俺達STARSは都民を守るためにいる。しかし、俺達にだって救えねぇ命はある…どれだけ手を伸ばしても、届かねぇ事だってある……」

 

都民を守るための戦闘組織とはいえ、彼らも全知全能ではない…救えない命もあれば、届かぬ事もある。ストライカーの隊長だった彼は、誰よりもそれを理解している。妖魔を狩るどころか高みの見物をしているストライカー達…対して妖魔を狩るのは隊長である自分と、今はストライカーを辞めているSTARSメンバー達。限られた人数の中で、多数の妖魔を相手するのは困難を極めた。最悪の場合、一般市民が妖魔に殺される瞬間を目の当たりにしてしまうこともあった。市民から吐かれる罵詈雑言やクレームの嵐…それに便乗して暴言を吐いてくるストライカー達。そんな経験をして来た翔とSTARSメンバー達は、複雑な顔をしている。

 

翔「…今は落ち込むとしよう……溜め込むのは良くねぇ、気の済むまで悔しい思いを吐き出せ……」

 

翔がそう言うと、メンバー達は声を上げて泣いた。翔は声を上げたりはしないが、静かに涙を流していた。

 

翔「お前達…これだけは頭ン中に入れておけ……お前達のおかげで、助かった命は大勢ある……家族や遺族からも感謝されたんだ…だから、お前達のやった事は…誇りに思える事だ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斑目「意識が戻ったようで何よりだ……」

 

その頃、ドールハウスでは…Dolls一同が帰還し、ユキはあの病院にて再び検査を行った後、ドールハウスに帰還するそうだ。

 

斑目「精密検査の結果、特に身体的異常は無いらしい。すでにこちらに向っていると連絡が入った。アヤ、ヤマダ、ユキが戻ったらシミュレーターでの最終検査を手伝ってくれ。」

 

アヤ「もちろん!」

 

ヤマダ「そっすね……もちろん……OKっす。」

 

こちらも、仲間の異変を目の当たりにし…複雑な顔をしているメンバー達の姿があった。原因不明の異変に、メンバー達の不安は大きくなるのであった。

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