〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第三百八十九話 再編

次の日、ドールハウス内にある作戦室に集まったDolls。そこに、カナが入室した。

 

カナ「…みなさん、お待たせいたしました!『先に進めてほしい』と連絡がありましたので、作戦会議を始めます。」

 

どうやら、この場にいない斑目と連絡が取れたようで…漸く作戦が始まろうとしていた。

 

カナ「まずは、先日提案して頂いた作戦。『オボルス』について。ライブを行いながらカーロンを討伐する作戦…結論からいいますと、こちらは認可されました。」

 

アヤ「やった…!!」

 

ライブをしつつ、敵を倒す作戦は認められた。しかし…

 

カナ「ただこれについて、クリアしなければならない問題が1つあります。」

 

それを実行するには、条件があるようだ。

 

カナ「これは元自衛隊閣僚…戦略家方面からの認可条件でもあるようですね……」

 

カナはそう言うと、機械を操作し…マップに赤い円を出した。1つ目は世田谷区、渋谷区、目黒区辺りに…2つ目は北区、板橋区、豊島区辺りに…3つ目は荒川区、墨田区、台東区、千代田区、中央区、江東区辺りに…4つ目の巨大な円は、港区、品川区、大田区辺りに表示されている。

 

サクラ「−−えっと、これは……今までの浄化ライブの場所ですか?」

 

ナナミ「渋谷に池袋……新宿を挟む大都市からはじまり−−」

 

アヤ「次は…スカイタワー。新宿から離れた感じだったよね?」

 

ミサキ「ええ…墨田区に現れたシレーヌ。これは予定外の作戦だったはず…」

 

レイナ「六本木もそうね。危険個体の対応に浄化ライブをマッチさせた…」

 

どうやらこの円は、これまでにDollsが行った浄化ライブによって浄化された場所のようだ。

 

カナ「そう、本来の作戦では新宿の東西…練馬区と千代田区あたりが次のターゲットでした。ところでみなさん、この浄化範囲図を見て、なにか気付いたことはありませんか?」

 

サクラ「これを見て、気づく事……?」

 

カナの質問に、少し考えるDolls。最初に答えたのは、ヒヨだ。

 

ヒヨ「はいはい、はーい!丸がだんだん、おっきくなってま〜す!!」

 

ナナミ「そんな、単純な…」汗

 

ヒヨの回答にツッコミを入れるナナミだが……

 

カナ「そう、ヒヨちゃん、大正解!」

 

ナナミ「ええっ!?」

 

ヒヨ「やったー!」

 

意外にも、彼女の答えは的中した。

 

カナ「最初に成功した渋谷区と最近の港区、明らかに浄化範囲が違うのが分かると思います。これはDollsの知名度と人気が増し、世間的な認知が高まったため、と結論されました。」

 

浄化が成功した範囲が、次第に大きくなった事を表す赤い円。これは、Dollsの人気と知名度が更に増加し、世間からの認知が高まった証拠でもある。

 

カナ「今ならチーム単位でも渋谷規模の浄化が可能…メンバー個人でも条件が整えば……」

 

ミサキ「浄化が可能であると…」

 

カナ「これを踏まえ、みなさんの提案は見込みがあるものと判断されました。」

 

今の段階では、1チームごとに、渋谷区程度の大きさの地域を浄化可能になったDolls。そのため、オボルスの実行は可能の見込みがある。

 

カナ「しかし、全員でフルタイムのライブを複数回、時間を空けずに行うのは消耗が激しすぎます。」

 

時間を空けずに複数回のライブを続けて行うと…Dollsのエネルギー消耗が激しいという事が、問題である。

 

カナ「そこで、作戦の修正提案になります。上流から各メンバー個人のライブを時間差で実施…」

 

カナが機械を操作すると、小さな赤い円が6つ海側に向かって表示され…最後には江東区の海側に巨大な赤い円が表示された。

 

カナ「リレー形式でライブを繋ぎ…全体をひとつの大きなライブイベントと認識させ、身体への負担軽減、ファンからのフィール回収、どちらも高水準で保てるよう工夫します。」

 

ナナミ「今の流れから、もしかしてと思いましたが…」

 

ヒヨ「わわわわわっ!ひとりライブ〜〜!?」

 

カナ「はい…題して

 

 

 

『Dolls流し雛LIVE』

 

 

そして作戦名は『オボルス』改め…

 

 

『オペレーション・オルフェウス』

 

 

です!!」

 

それは、荒川上流からメンバー1人がライブを行い、次のメンバーにバトンを繋いでいき、最後に江東区を舞台に大きなライブを行うという作戦だった。メンバー達の負担を減らし、尚且つフィールを効率よく回収し、最後にカーロンを撃破するという流れである。

 

シオリ「『オルフェウス』…ギリシャ神話の吟遊詩人ですね。美しい竪琴で、あらゆる生物を引き寄せるという…」

 

カナ「具体的な内容としては、川沿いに仮設されたライブ会場を順に回していくイメージです。荒川沿いで行われる花火大会とのコラボ、複数のミニライブも想定して広範囲をカバーします。もちろん、新曲も用意していますからね!」

 

今回のライブでも、新曲を披露するようだ。

 

カナ「作戦概要については以上です。なにかご質問はありませんか?」

 

シオリ「……質問というよりも、何だか圧倒されてしまって…」

 

アヤ「わかる。なんかここまで来たかーってカンジ!」

 

レイナ「ええ。音楽のバトンというのも気に入ったわ。とても私達らしい。」

 

今回のライブは、これまでのライブとはやり方が違う斬新なモノだ。それに圧倒されるDollsチームリーダー達。

 

ナナミ「それもそうですが…『投影』のことを考えると、本番前に水準に達しないといけないのでは?」

 

サクラ「確かに、ライブ本番よりも前に完璧にしないといけませんね…!」

 

ミサキ「呆けてる暇はないわね。レッスンを更に強化して−−」

 

気合を入れ始めるメンバー達。しかし……

 

 

ユキ「−−45%同意。賛同しかねる。」

 

 

…ユキだけは、作戦に納得していない様子。

 

ヤマダ「……は?」

 

ユキ「作戦『オルフェウス』には、賛同しかねる。ドール総員での対策、攻撃を推奨する。」

 

カナ「…ユキちゃん、それはどうして?」

 

ユキ「『オルフェウス』の準備期間、推定30日…『オボルス』の準備期間、推定20日。気象条件はいつ整うか知れない。猶予を与えるのは下策。特別警戒個体に対しての優先度認識に差がある。犠牲・消耗の対策より討伐を優先すべき−−」

 

アヤ「ぎ、犠牲って…ユキ、あんた何言って……」

 

ユキの言葉に戸惑うメンバー達。そんなユキに、カナは言う。

 

カナ「複雑なイベント構成に、長い準備期間…これには理由があります。」

 

アヤ「…か、カナさん?」

 

カナ「それは、Dollsのファン…観客への安全の保証。」

 

サクラ「あ…!!」

 

ユキ「…………。」

 

カナの反論に、黙り込むユキ。

 

カナ「ユキちゃん、あなたは−−」

 

その時、思いもよらぬ訪問者が姿を現す。

 

???「都民の命より、何を優先しているのか…という話だね。」

 

その声は、低い男性のものだ。

 

愛「……え?」

 

ミサキ「どうして貴方が…?」

 

入ってきたのは、小鳥遊大臣だった。

 

カナ「お疲れ様です、小鳥遊……司令官。ちょうど、作戦の詳細を説明し終えたところです。」

 

小鳥遊「それはごくろう。」

 

アヤ「はあ!?司令官って…マダラメさんは…?」

 

突然の小鳥遊大臣の訪問、及びカナの『小鳥遊司令官』という言葉に困惑するアヤ。

 

小鳥遊「おや?もう少し待ったほうがよかったか……では、挨拶を……

 

 

−−この度、国土調査院特別課課長・斑目 セツナに代わり

 

臨時で諸君らの指揮を執ることになった

 

小鳥遊 修一

 

 

だ。」

 

愛「ま、斑目所長の代理…!?」

 

小鳥遊「ああ。改めて、よろしくお願いするよ…片山君。」

 

斑目が居ない今、臨時でドールハウスの指揮官となった小鳥遊大臣。これをこの場にいない翔が聞けば、間違いなく激怒するだろう。何故なら彼は、墨田区での一件があって以来…小鳥遊大臣を含む害特を信用しなくなったからだ。

 

サクラ「か、カナさん……?」

 

カナ「斑目所長の不在時には、害特の作戦指揮に基本同意することになっています。」

 

戸惑うサクラに淡々と説明するカナ。

 

ヤマダ「ほーん…そんな簡単にすげ替えちゃうもんなんすね?こりゃ、翔さんが聞けば間違いなくブチギレるでしょうねぇ?」

 

小鳥遊「あくまで一時的なものだ。斑目君の『所用』が終われば軍配は即座にお返しする。害特の部隊も一時的にドールハウス指揮下で動いたことはある。そういう類の臨時処置だよ。それでも、納得は難しいかな?」

 

ミサキ「貴方のことは信頼しています。害特には、いつも助けていただいていますから。」

 

ミサキはそう言うが、これも翔が聞けばたちまち怒るだろう。

 

ミサキ「ですが…互いの領分というものがあるはずです。」

 

小鳥遊「ははっ!君の居様(いさま)は本当に至誠そのものだな。年寄りには、目が眩んでしまうよ。」

 

ミサキ「……。」

 

小鳥遊「…まあ、やりにくいのは当然だ。こう見えて、私もとまどっているよ。」

 

そういう割には、落ち着いているように見える小鳥遊大臣。

 

小鳥遊「…だが、君達は(さと)い。充分に理解しているだろう?『オペレーション・オルフェウス』は、我々、害特と連携が必須だ。こちらとて、国民の安寧こそが望む未来。充分に手を取り合う理由となるはず…仮に君たちの作戦、『オボルス』を実施したとしても、連携は必要になるだろう。ゆえに我々は犠牲を抑える作戦を採用する。目的のためにも、有事の建前的にも……守るべきは…一般都民、そうではないかな?」

 

愛「……。」

愛(今はここに翔君はいない…小鳥遊大臣が言ってる事は最も……それなら……)

 

愛は小鳥遊大臣の前に移動すると、深々と頭を下げる。

 

愛「……小鳥遊大臣、Dollsを、よろしくお願いいたします。」

 

ミサキ「愛さん……」

 

アヤ「…はあ、愛さんがそういうなら仕方ないわね。翔はここに居ないし……」

 

シオリ「ええ、そうですね。」

 

レイナ「そうね。幕が下りるまで、踊り続けてみせるわ。」

 

愛さん決断に、渋々納得するDolls。

 

小鳥遊「…理解を得られて何よりだ。それでは早速、仕事をさせていただこう。」

 

小鳥遊大臣は、最初の指令を下す。

 

小鳥遊「−−これより、ドールの通常任務の再起を宣言する。近く行われることが決定した浄化ライブのために、予定地の汚染値を下げてもらいたい。諸君には、このまま荒川流域に向かってもらい、害特と共にピグマリオンの掃討を頼む。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、STARS本部ビルでは…

 

翔「良いか?荒川が舞台になっているなら、Dollsは間違いなくそこでライブを行う。それに伴い、ストライカー共がそれを妨害しに来る。本来なら、ドールハウスと連携すべきだが…今回ばかりはそうは行かねぇ。」

 

こちらでも、作戦会議が行われていた。STARSは妖魔及びストライカーと戦い、都民を守ることが使命。しかし、ストライカーを欺くべく…ストライカーに狙いを定めるのではなく……

 

翔「お前達はまず、Dollsを攻撃しろ。ただし、殺すなよ?」

 

…まずは、Dollsに狙いを定める事にしたのだ。ストライカー達の魔の手からDollsを切り離すべく、翔が考案した作戦だ。

 

翔「んで、ストライカー共がDollsから完全に目を離したタイミングで、妖魔及びストライカー共を攻撃…良いな?」

 

マリ「了解。」

 

ほたる「わかりました!」

 

雪枝「は、はい…!!」

 

モニカ「よーし、ストライカー達からDollsを守るために…アタシは喜んで悪役になるよ!!」

 

STARSメンバー達は、皆この作戦に納得している。ストライカー達の視線をDollsから離す事が目的と知った今、罪悪感を無くし、一時的にDollsと敵対する事を決意した。

 

翔(別に、Dolls(アイツら)に対して悪いだなんて思っちゃいねぇ……これは仕方のねぇことなんだ…浄化ライブが遅れれば、それだけこの世界の浸蝕スピードが速まる…ストライカー共の邪魔が入れば尚更な……だから、俺が…俺達が、悪役になってやろうじゃねぇか。)

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