〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第三百九十二話 霧散する記憶

戦闘から帰還したDollsは、すぐにメディカルルームへと移動させられた。

 

ミサキ「はぁ……戦闘から戻った途端、メディカルルームに直行だなんて。」

 

サクラ「なにか問題でもあったんでしょうか?おかしなことはなかったと思いますが……あ、でも…翔さんが……」

 

その時、カナが入室してくる、

 

カナ「−−みなさん、お疲れ様です!」

 

アヤ「カナさん!」

 

カナ「…突然のメディカルチェック、申し訳ございませんでした。前提として、みなさんの心身にそこまでの被害はありませんでした。こちらの詳細については、小鳥遊司令官から説明があります。ただいま状況把握に現場へ向かわれたので、音声のみになりますが…繋げますね。」

 

カナは機械を操作すると、小鳥遊司令官の通信機と繋げた。

 

 

PPP--

 

 

小鳥遊『−−やあ、入れ違いになってすまないね。まずは今回の任務、ご苦労だった。実は−−』

 

ようやく霧の被害が把握できてね…

 

愛「え…被害、ですか……?確かに、事故が起きていたような…」

 

小鳥遊司令官の言葉に、何故か困惑する愛。荒川流域を中心に、謎の霧による被害が出ている。それにより、死傷者が大勢出た事故も発生…多くの者にトラウマを植え付けた。愛は、その事をあまり覚えていないようだ。

 

小鳥遊『ああ、カーロンの形態……あれは攻撃への回避行動ではなかった。れっきとした、反攻だった…やられてしまったよ。』

 

あの濃霧は、カーロンによる攻撃で発生したという小鳥遊司令官。

 

ミサキ「攻撃?あの霧が…?」

 

小鳥遊『…『完全に攻撃を放棄した害特メンバー』…この異様さがわかるかね?』

 

レイナ「攻撃を、放棄…!?戦闘意志の喪失ということかしら?」

 

小鳥遊『いいや、事態はもっと深刻でね。感情の欠落に記憶の混濁…明確な『被害』だ。』

 

今回の濃霧によって、壊滅的な被害を受けたのは害特メンバー達もだった。感情が無くなり、記憶も曖昧になったり、戦闘を行える状況ではなくなったのだ。

 

小鳥遊『あれは霧として物理的に人の体内に侵入し、体はそのままに内側から記憶を喰らっている…』

 

愛「それって、まさか……!」

 

小鳥遊『そう、この攻撃の本当の恐ろしさは−−

 

 

記憶を失いながら行動してしまうことにある

 

 

霧、というが実体は水分、つまり微粒子……乗り物や建物の中にも侵入しうる…もし車や電車を運転している最中や料理で火を使っている最中に、喰われたとしたら…』

 

アヤ「交通事故とか……火事が起きる…?」

 

小鳥遊『被害者は『忘れた』ことすら忘れてしまう。残された体は危険すら認識できなくなる……恐怖という概念すら失い、悲鳴すらあげない。潜在的な被害者の規模の把握すら困難だ。』

 

カーロンから発せられた霧は、人体に入り込むと…侵入した者の記憶を内側から徐々に奪っていく。そのため、当たり前のようにできていたことができなくなってしまうのだ。車や携帯電話、ガスコンロ等の機械操作のやり方…火の使い方すらも忘れさせてしまい、事故を発生させる。それ以外にも、人間の感情をも奪う…喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、はたまた恐怖という概念も奪って行く。事故のトラウマや大切な者を失った悲しみすらも忘れてしまう。

 

小鳥遊『害特の調査でわかった範囲では、霧が出ている時だけで事故件数は約50件。』

 

愛「ご、50…!?」

 

一同「「「!!??」」」

 

小鳥遊司令官の言葉に、驚きを隠せない一同。

 

小鳥遊『ああ…シレーヌと同規模の被害と見積もっているが、実際はもっとひどい可能性がある。行方不明の数、失踪者の捜索願いも、これから増える可能性が高い……そこに、青空君が我々に敵対…事態は最悪だ。』

 

ミサキ「シレーヌ以上って、ウソでしょ…!?」

 

ヒヨ「悪くなればなるほど気づけないなんて…やだね、こわい……」

 

今回の事故は、シレーヌの時と同様…いや、それ以上になると予測されている。それに追い打ちをかけるように、翔がドールハウスに敵対するという史上最悪な事態へと発展している。

 

アヤ「…じゃ、じゃあ、あたしたちは!?翔は!?何か…忘れてる?記憶を喰われてるの!?」

 

Dollsメンバーと翔を心配するアヤ。しかし……

 

 

「−−問題ない。」

 

 

…と、ユキが横槍を入れた。

 

愛「え…?」

 

ユキ「力を得た人形たち、アマゾン、オルフェノク、転生者、ストライカーたちに、問題は起き得ない。『奇跡』が()された時点で影響は受けない。また、この世の住人ではない者も影響は受けない。」

 

カーロンの霧は、Dollsには影響は無いとユキは言う。更に、アマゾンである翔、大助、白河 昇…オルフェノクである一海…転生者である紫、友香、諒芽…そして元ストライカーを含むストライカー達も霧の影響は受けないのだ。

 

小鳥遊『−−−−すまない、今なんと?』

 

ユキ「奇跡が代行され、我らは神を滅ぼす槍となった。滅ぼすものであり、喰われるものではない。強度的に、干渉を許す可能性は1%未満。可能性は無いに等しい。」

 

ヤマダ「…もう霧は怖くないってことすか?それに、転生者とかこの世の住人でないヤツとか、どんな理屈なんだ……」

 

ユキ「この奇跡は、青空 翔、片山 愛に向けて帰結している。ゆえに、青空 翔も片山 愛も影響は受けない。」

 

愛「え!?そうなの!?」

 

今のDollsを現場にて指揮する愛も、影響を受けないようだ。

 

アヤ「ゆ、ユキ……」

 

小鳥遊『−−ふむ、成る程。資料の通り…その新しい武器…ドレスは感情、記憶を強固に防護しているようだ。』

 

カーロンに遭遇した際に彼女達の身に纏ったドレスと武器は、感情と記憶を守っていると小鳥遊司令官は言う。

 

レイナ「小鳥遊大臣……いえ司令官。なぜ、ドレスの性能のことを…?」

 

小鳥遊『斑目君のAIほどではないが、こちらでも分析は行っているのでね。』

 

彼も斑目同様、分析等を行っている為…ある程度ドレスの性能を理解している。

 

ユキ「……。」

 

小鳥遊『ともかく霧への対抗策は不要のようだ。必要でも…やらざるを得ない状況ではあったが……それと、先日ユキ君の証言にあった『テアトルのコントロール』について…実際の作戦に使えるのか、詳細なデータを得たい。』

 

テアトルのコントロールについて、害特はまだ把握できていないようで…試してほしいと小鳥遊司令官は言う。

 

小鳥遊『君たちは把握しているかもしれないが、我々にもわかる記録を行ってほしいのだよ。』

 

愛「……わかりました。」

 

小鳥遊『それではドール諸君に片山君…良い夢を−−』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドールハウスで霧の詳細がわかった時点と同時に、STARS本部ビルでも霧の詳細が判明した。

 

翔「何、この霧は記憶を喰らっているだと?」

 

モルガナ「はい、人間の記憶を内部から喰らい…認知症のように物事を忘れさせるようです。」

 

翔「マジかよ…お前達は大丈夫なのか?どんな些細な事でもいい、何か変わった事とかはないのか?」

 

霧の詳細をモルガナから聞いた翔は、メンバー達を心配する。しかし…

 

あから「大丈夫さ、何ともないよ!!」

 

ほたる「あたしも平気です!!」

 

「わ、私も大丈夫です。」「心配いらないよ。」「大丈夫です。」

 

STARSメンバー達は、特に霧の影響を受けていないようだ。

 

翔「姉貴は、どうなんだ?」

 

彩羽「うん、アタシもへっちゃら。心配ありがとう、全く翔君ってば…心配性なんだから〜、もぅ〜♪」

 

彩羽も霧の影響を受けていないようだ。頬ずりしてくる彩羽を退かした翔は、一海達に連絡を入れ始める。

 

一海『もしもし?』

 

翔「一海か、俺だ。」

 

一海『おう、どうしたんだ?』

 

一海達にも、霧の詳細を説明する翔。

 

紫『何、記憶を喰らう…?』

 

翔「そうだ、お前達はどうだ?何か変わった事とかはねぇのか?」

 

友香『私達なら大丈夫ですよ。』

 

諒芽『俺も俺も、全然元気!!』

 

一海達も霧の影響を受けていなかった。

 

翔「なら良い…我々STARSは、引き続きドールハウスとの敵対関係を維持する。ストライカー共が完全にドールハウスから目を背けるまでな……」

 

STARSはドールハウスをストライカーの魔の手から切り離すべく、ドールハウスとの敵対関係を続けるようだ。

 

翔「お前達、これから大変になるぞ…今回の事故による行方不明者や失踪者の捜索願が急激に増える事が予測される。その時が来たら、決して手を抜くな…どんな結果であれ、行方不明者及び失踪者を見つけすよう努めろ。」

 

「「「了解!!」」」

 

翔「よし、解散だ。各々身体を休めておけ。」

 

解散の指示を出すと、STARSメンバー達は作戦室から退室していく。そして、モルガナを呼び止めた。

 

翔「モルガナ、ちっと手ェ貸してくれるか?」

 

モルガナ「隊長さんのためなら、なんなりと。」

 

翔「助かる。最近、荒川流域を中心に妖魔目撃情報が後を絶えないそうだ…それも、ヒトが寝静まった夜にな……」

 

モルガナ「もしや、行方不明者や失踪者をストライカー共が…?」

 

翔「かもしれねぇな…ったく、やる事がいちいち狡猾で苛つくぜ……お前と俺で、食い止めるぞ。」

 

モルガナ「わかりました。」

 

翔とモルガナは夜になるのを待ち、メンバー達が寝静まったタイミングで本部ビルを後にした。

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