〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第四百六話 望まれた奇跡

ある日のドールハウスにて……Dollsはシミュレーションルームにて訓練を行っていた。

 

ナナミ「おや……サクラさん、どうかしましたか?」

 

サクラ「……テアトルを展開している人の記憶が外に『投影』されているんですよね?」

 

ナナミ「そのようですね……イメージ次第で結構毎回違うようですが…」

 

メンバー達はカーロン討伐と港区浄化ライブを成し遂げる為、投影を試していた。

 

サクラ「この映像……ユキさんの番ですけど…」

 

今、投影されているのは…Dollsが墨田区で歌ったバラード曲の映像だ。

 

サクラ「このユキさんのテアトル投影…なんというか…すごく見覚えがあって……」

 

ヒヨ「見覚えがあるって、ど〜ゆ〜こと?」

 

ナナミ「そりゃ…あるんじゃないですか?私達のライブなわけですし……」

 

サクラ「い、いえ…このとき確か…ユキさんはステージにいなくて……」

 

ナナミ「…!そういえば……!!」

 

この時、ユキとミサキとヤマダはステージに居なかった…存在意義を奪われ、やけになった彼女達はピグマリオンとの戦闘が禁止されているにも関わらず、戦闘を続けていたのだ。

 

ヒヨ「でも、すごくイメージしなきゃダメだからって、ライブの動画たくさんみたよね?それって、その記憶だったりするんじゃない?」

 

サクラ「そう……!そうですよ!!」

 

ヒヨ「ほよ?」

 

サクラ「映像で見たまま過ぎる…細かい仕草も…そっか…だから見覚えが……」

 

投影された映像…それは、過去のライブ動画を見た記憶を映し出す事であると知ったサクラ。

 

ユキ「作戦では今回のライブ進行を記憶する。この任務に最低限のイメージを記憶した。」

 

サクラ「そうだったんですか……さすがユキさん、完璧ですね!でも、自分でやるなら自分で立ったステージのほうが記憶が鮮明で……『投影』しやすそうですけど。」

 

ナナミ「確かに……他のチームのライブを投影しようと思ったら…結構がっつり覚えてないといけなさそうですしね。」

 

ユキ「過去のライブ記憶を遡る事は不可能。新規に投影イメージを補完した。」

 

サクラ「……え?」

 

ユキの言葉を聞き、困惑するサクラ。

 

アヤ「は?今、なんていってーー」

 

ヤマダ「聞き捨てならないっすな……誰の何のライブの記憶がないって?」

 

ユキの言葉に、アヤとヤマダが食い付く。

 

ユキ「ライブ映像は新たに記憶した。記憶は存在している。」

 

ヤマダ「ちげーっす……記憶遡れやいって言ったっショ…ユキさんが思い出せないのはどれだって意味っす。」

 

ヤマダの問に対するユキの答えは、これだ。

 

 

すべて

 

 

ヤマダ「ぐ……」

 

アヤ「ちょっ、ちょっと待って…覚えてないって、こと……?」

 

言葉を詰まらせるヤマダに代わり、アヤがユキに言う。

 

アヤ「今までのこと…あたしたち…ずっとやってきたことでしょ……」

 

ユキ「その記憶は存在しない。

 

アヤの言葉を否定するユキ。

 

レイナ「そんな……とても信じられないわ……あの時の想いも、熱も、鼓動も……」

 

ユキ「その感情は存在しない。

 

ヒヨ「う、うそだあ…『存在しない』って、そんな…!」

 

ナナミ「そんなはず…ないでしょう!私よりもずっとたくさんのライブを……」

 

ユキから放たれる言葉に、戸惑いを隠せないメンバー達。

 

ユキ「記憶、および感情から熱量を抽出、すでに消費されている。

 

シオリ「記憶がなくなる…?まさか……Eモード…!?」

 

それは、かつてシオリ自身に起こった『Eモード』と呼ばれる症状…強大な力を引き出すが、最悪の場合……今までの記憶を全て失うというリスクがある。

 

シオリ「そんなこと……記憶を失うことが、みんなとの想い出を失う事がどれだけ辛いか…どうして…どうして……記憶を……」

 

愛「シオリちゃん……」

 

ミサキ「…ユキ、説明して。貴女の記憶がどうなったのか……」

 

ミサキの問を聞き、ユキは語り始める、

 

ユキ「Eモードは発動していない。記憶は奇跡の代行のために熱量に変換された。」

 

シオリ「奇跡……ですって……?」

 

ユキ「神を滅ぼす槍となる。それが、望まれた奇跡

 

愛「神を滅ぼす……槍……?」

 

ユキの言葉の意味がわからず、困惑する愛。

 

愛「それは…誰が望んだことなの……?アタシは…翔君は…皆は……そんな事、望んでない……!!」

 

ユキ「望んだのは、人類。」

 

サクラ「じ、人類…?ユキさんや私たちの話じゃないんですか…?」

 

ユキから発せられる言葉に、メンバー達は戸惑っている。

 

ヤマダ「わかんねーっすな……結局ユキさん、アンタ今、どーなってんすか?」

 

ユキ「……。」

 

ヤマダの質問に答えることなく、黙り込むユキ。

 

ヤマダ「言い方なのか……?じゃあ、アナタは誰?もしくは何?

 

ユキ「……。」

 

尚、黙秘を続けるユキ。

 

ヤマダ「チッ……これもだめか……」

 

アヤ「さっきから……何言ってるのよ…ヤマダも……わけわからないこと言わないで!!」

 

思わず声を荒げるアヤ。

 

アヤ「ユキは…ユキに決まってるじゃない!!ユキの心の中にはユキの感情があるはずでしょ!?ユキも、あたしも、あんたも!それで生きてるし、それで戦ってるじゃない…!」

 

ここにいるユキを、ユキであるとアヤは言う。

 

ヤマダ「リーダー……でもーー」

 

ユキ「2%同意。」

 

ヤマダが何か言いかけた時、ユキから放たれた言葉…それを聞き、固まるアヤとヤマダ。

 

ユキ「奇跡のための感情を熱量とし返済にあてる。それに伴い存在強度が低下。残った熱量を使用し、個体の維持を優先。擬似権能、他戦闘に支障なし。」

 

アヤ「う、うそ………うそよ……………じゃあ今のあんたは…!どうやって気持ちを感じているの……どうやって生きてるのよ!?」

 

ユキ「行動に感情トレースが必要なケースはEsGシステムが代行。」

 

ヤマダ「EsG……!そうか、アレか……!!」

 

ユキの今の言葉を聞き、全てが結び付いたヤマダ。

 

ヤマダ「ユキさん!今のユキさんは……」

 

 

EsGが

 

 

動かしている?

 

 

ヤマダの言葉を聞き、目を丸くするメンバー達。

 

愛「…!!」

 

アヤ「Es…G……」

 

それに対するユキの答えは……

 

 

ーー98%同意

 

作戦提案、優先度の解釈も可能

 

EsGは今、『この中』にある

 

 

…であった。つまり、目の前のユキはユキではない……EsGだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マキナ「ーーああ…お茶を蒸らしすぎてしまったわね。これはもう捨てなきゃ。

 

……だけど、がっかり。覚めたお茶より、ひどい出来。

 

せっかくの奇跡だったのに…物足りない…物足りないわ…

 

…わかっているわ。足りなかったもの、それはアナタ。

 

アナタの想い、アナタの寵愛…アナタが忘れてしまった、アナタの本当の願い…

 

まだ……人形のままだからかしら?それとも……

 

人らしくなりすぎて槍になりきれないから?

 

ふふ……ふふふ…………

 

ならば、心を塗りつぶしましょう。

 

その刃を、諦念の鉛で磨き上げるの。

 

あらゆる変質を経た私の『舞台装置』……

 

最後にまた、その在り方を変えてーー

 

神滅の槍に、必殺の呪いをーー

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