〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
STARSは今日も、東京都内で任務に励んでいた。これまで、自衛隊を初めとする国家機関でも見つけられなかった行方不明者を、STARSはどんどん見つけていく。都内には大量のモシュネ達が、姿を消して捜索を行っている為、少しの異変をすぐに見つけられる。だが、行方不明者が全員無事とは限らない…中には残念ながら遺体となって発見された者や、日常生活に支障を来す程変わり果てた姿で発見された者も大勢いた。それでも、STARSには感謝の言葉が次々と贈られていた。
『息子を見つけてくださり、ありがとうございました。』
『貴方達がいなければ、自分は死んでいました。』
『貴方達のおかげで、希望を持つことができました。』
しかし、批判的な言葉もある。
『どうしてもっと早く動いてくれなかったんだ?』
『政府非公認組織だからか、何だか信用できない。』
『どうせなら死人を出せずに全員見つけ出せよ。』
等々、理不尽な言葉もある。これに対して、隊長である翔はこうコメントしている。
翔「お前達は、何か勘違いをしているようだな。俺達STARSは、何でも完璧にこなす全知全能なんかじゃねぇ。意志のある人間なんだ。どんなに手を伸ばそうが、届かない事だってあるし俺達だけでは…はたまた他の組織を手ェ組んだってどうにもならない事だってあるんだ。言いたい放題言っているそこのてめぇはどんなんだ?行方不明者を見つけられるのか?死人を出さずにだ……できもしねぇ奴が、死人を出すなだの全員見つけ出せだの偉そうに語ってんじゃねぇ。そんな綺麗事、二度とほざくんじゃねぇぞ…世間知らずのクソガキ共。」
このコメントは荒れに荒れ、SNSでは『度胸あり過ぎ隊長』と話題になった。
その頃、STARS本部ビルでは……
翔「よく集まったな。」
翔はSTARSメンバー達に、それぞれ封筒を手渡した。
フェイ「たいちょー、それなぁに?」
翔「給料だ、お前達はよく頑張っている。ほら、受け取れ。」
それは、メンバー達に渡すお給料だったのだ。封筒には、20万円程の現金が入っていた。
翔「少なくて悪いが、お前達の頑張り次第ではボーナスが出るかもな。」
あから「…隊長殿、これは夢なのかい?」汗
翔「バカ、現実に決まってんだろうが。流石にタダ働きさせる訳には行かねぇだろ?給与未払は労基に違反だからな。」
メンバー達にそれぞれ給与を手渡す翔。勿論、彩羽にもある。
彩羽「流石に受け取れない…って言っても、拒否権はないんでしょ?」
翔「当たり前だ。こっちが逮捕されるっての…」汗
彩羽「えぇ〜!?それはやだぁ!!」
翔「だったらさっさと受け取れバカ姉貴。お前達も、これを貯金するなり何でも好きなもん買うなりしやがれ。」
メンバー達は翔にお礼を言いながら給与を受け取る。その後、翔は外の空気を吸おうと屋上に向かった。
翔「……。」
江東区有明エリアにあるSTARS本部ビルの屋上からは、東京の景色を見ることができる。ゆりかもめの車両基地やレインボーブリッジ等も見える。更に、海が近くにあるため潮の香りも堪能できる。夜になれば、高層ビル等の東京中の建物が宝石のように輝く。これらを気に入り、ここに本部ビルを建てた翔。少しでもメンバー達の心の癒しになればと考えたのだ。豊洲市場という市場もあるため、買い物にだって困る事はない。遊びたければ、パレットタウンに行けば良い…そこが嫌なら、ゆりかもめに乗って都内に行けば良い。とにかくここは、好条件が出揃っているのだ。
翔(今は真っ昼間だからか…映えねぇなぁ……)
目を細めながら屋上からの景色を眺める翔。
翔(ドールハウスにゃあ、屋上に温泉だのガーデンだのあったが…生憎、ウチはそれができる程資金に余裕はねぇんだ……)
ドールハウスにいた時は、そんなに退屈は無かった。それもそのはず…所長である斑目が色々配慮してくれたのだから。気付かぬ内に自室が拡張されていたり、屋上の温泉には彼イチオシの寝転び湯だってある。そこから見る満天の星空は格別だ。更に、風呂上がりのコーヒー牛乳も飲める。こんなに美味すぎる話等、どこにもない。
翔(ただ、あそこは…裏があり過ぎた……胸糞悪い話だって、聞きたくねぇ程あった……って、今は辞めだ…せっかくの気晴らしが台無しだぜ。)
そんな時、モルガナが近くに姿を現した。
翔「…何の用だ?」
モルガナ「いいえ、ここから見える景色は素晴らしいですね。」
翔「……そりゃあ何よりだ。」
モルガナもこの場所を気に入っているようだ。
モルガナ「貴方の事ですから…仲間達の事を考えて、ここを選んだのですね?」
翔「…さぁな。」
モルガナ「お陰でメンバー達のメンタルは良好ですよ?」
翔「アイツらは出来る奴らだからな、自身で心身をコントロールできんのは羨ましい限りだ…ん?」
ふと、ビルの下に目を向けると…そこには、Dollsのメンバー達の姿があった。彼女達は本部ビルの前で足を止める。
翔「…近付くなっつったろぉが……わかんねぇ連中だなぁおい……」ジャカッ…
思わずライドブッカーの銃口を向ける翔だが、モルガナが待ったを掛けた。
モルガナ「私が対応します。」
翔「…何かあったらすぐ呼べよ?」
彼女達の対応をモルガナに任せ、銃口を降ろす翔。
シオリ「ここに…翔君がいるんですよね?」
レイナ「えぇ、そうよ……」
来ていたのは、チームAとチームBの合計6人。彼女達の前に、モルガナが姿を現す。
サクラ「も、モルガナさん…!」
モルガナ「用件は何でしょうか?」
ヒヨ「よーけん?」
モルガナ「はい、何か理由があってここに来たんですよね?」
笑顔を絶やすことなく話すモルガナ。
ミサキ「翔さんは、不在なの?」
モルガナ「隊長さんに用件があるなら、私が代わりにお伝えします。」
ナナミ「直接お会いする事は」
モルガナ「残念ながら…」
どうやら彼女達、翔の様子を知りたくて来たようだ。だが、翔自身が彼女達と会うことを拒んでいるのをモルガナは知っている。彼女は翔の秘書という役割を担っているのだから。
シオリ「私達は、貴方方に依頼をしたくて来たんです。」
モルガナ「…依頼ですか、内容は?」
シオリ「私達は重大な任務に当たっています。害特が行動不能になった今、STARSの皆さんの手助けが必要です。どうか、受けていただけないでしょうか?」
ドールハウスでは、任務が難航しているそうだ。だが……
翔『そいつァ無理な相談だな。』
モルガナの通信機から聞こえて来る翔の声。
レイナ「翔君…!?」
翔『俺達は何でも屋なんかじゃねぇんだ。受け付けられねぇ依頼だってあんだよ……てか、そっちの任務ならそっちで何とかしろ。こっちだって都民を守るので忙しいんだ。我々にだって休息は必要なんだ、お前達に割く時間が勿体ねぇよ…』
翔の声はどこか冷たい。
翔『見てられねぇな、こうなる事を望んだのは…ドールハウスだろ?手ェ組む相手を間違えたようだなぁ?てか、敵対関係である奴らにこうして頼みに来るなんて…ドールハウスはつくづく頭のネジがブッ飛んでんなぁ?』
更に、ここまで来た彼女達を馬鹿にするような発言をする。
翔『この際だ、もうどうだって良い…お前達に刃を向けたお陰で、あのバカ連中はまんまと罠に掛かってくれたんだ。お前達に敵対してんのはなぁ、あのストライカー共をお前達から引き離す為だ。』
ナナミ「では、またいつも通り一緒に」
翔『まぁだわかんねぇのか?俺がお前達と共に行動すりゃあ、ストライカー共はお前達にも目ェつけるだろぉが。それじゃあ折角の作戦が水の泡になっちまうだろ…?…もうお前達の任務の邪魔はさせん…我欲を満たす事しか考えてねぇ外道の相手は、俺達STARSの任務。東京都の浄化はお前達の任務。そうだろ?』
ドールハウスと敵対する理由を話した翔。しかし、Dollsはこれに納得していない。
サクラ「翔さん、もしかしてあの時の事を」
次の瞬間、Dollsの近くに爆発が発生した。しびれを切らした翔が、彼女達目掛けて発砲したのだ。
翔『それ以上喋ったら、どうなるか…分かってんだろォなァ?』
通信機から聞こえてくる、彼の冷たい声…それは、昔の彼に戻ってしまったようだった。
翔『お前達も、本気で任務を遂行したいのであれば…もうこれ以上、俺達と関わるのは辞めろ。2度も言わせんじゃねぇぞコラ…』
モルガナ「…そういう事です、お引き取りください。」
そして、Dollsは去って行った。
翔「……。」
去って行くDollsを、本部ビルの屋上から見下ろす翔。
翔(…これでいい、もう2度と……奴らの邪魔が入らねぇようにする為にな……)
無表情を貫き、彼は彼女達が見えなくなるまで見下ろすのであった。