〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第四百十二話 天使の贈り物

ユキが病院に搬送され、およそ1時間程経過した。

 

サクラ「ユキさん……大丈夫でしょうか?」

 

ミサキ「診断は……薬袋(みない)先生が行ったのでしょう?心配する理由なんてないわ。」

 

サクラ「そうですね……」

 

薬袋先生とは、ユキが搬送された病院にいる医師であり…ドールハウスに直接所属していない。翔の事も知ってはいるものの、彼との面識は殆ど無い。彼女のその腕は本物であり、国家も認める程の名医である。ドールハウス専属医である愛と深雪と蜜璃の上司の立ち位置におり、基本的にDollsメンバーのみの診察を担当している。また、ファクトリーの開発研究にも関わっており、ドールハウスの技術長でもある。アマゾン細胞もアマゾンも知っているが…アマゾン細胞の研究及びアマゾンである翔の診察は、3人のドールハウス専属医が担当している。一海達事と仮面ライダーも知っている。

 

シオリ「そういえば、確か出張中でしたよね?ルリちゃんを連れて行こうとしていましたけど。」

 

ミサキ「また妙なことを……」

 

サクラ「何ででしょうね……ルリちゃんの気分転換のため……とか?」

 

現在、薬袋は出張中である。だが、何故かルリを連れて行こうとしたらしいが…その理由は分からない。

 

ミサキ「仮にも国家が厳重に保護している子どもを一職員が連れ回そうとするかしら?」

 

シオリ「そうですね……普通はしないと思いますが、先生ですから……」

 

サクラ「でも、ユキさんを診てもらえたのはタイミングが良かったですね!」

 

ヤマダ「ま、あのバーサマ、腕は確かっすからねぇ。それより……」

 

アヤ「ユキのこと、マダラメの言ってたことどうするか、よね……?」

 

ヤマダ「じゃ、改めて整理してみっか……」

 

メンバー達は改めて、現状を整理する。

 

ヤマダ「まず我々の目的はいつものユキさんに戻ってもらうことで……OK?」

 

アヤ「そう…それが絶対よ!」

 

EsGに乗っ取られたユキを元通りにする…それは、絶対条件である。

 

ヤマダ「で、ユキさんがど〜なってしまったのかそっから考えていくとして−−EsG。『天使』とやらがくれたチートシステム。ドールハウスは実はこいつに頼りっきりだった。正直理屈のわからないブラックボックスだけど、作戦立案から分析まで、何でもオマカセ超便利。で、ど〜ゆ〜わけかそいつがユキさんの中に居座ってると。」

 

これまで、ドールハウスはEsGのお陰で任務を成功してきた。だが、そのEsGが何故かユキを乗っ取ってしまっている。その原因は不明だ。

 

ヤマダ「まずこいつをど〜にかしないとっすよね?」

 

アヤ「そもそも……その天使って何なのかしら。神様が敵だとか言うし……天使だっていうなら、神様側なんじゃないの?本当に、あたし達の味方なのかな……」

 

ヤマダ「うさんくさいのは確かっすな。主語のでかいイキリ野郎のようだ……」

 

EsGの言葉には、理由のわからないものが多い。天使とは何なのか、神を滅ぼす理由とは何なのか……

 

レイナ「私たちの能力も、それに近いものなのよね?斑目所長が言うことが確かなら−−」

 

ヒヨ「ギアも……ヒヨたちの心臓も地面に埋まってたオーパーツ……」

 

ナナミ「まさか国道調査院がカムフラージュでもなく、そのままの意味とは思いませんでしたね。」

 

ヒヨ「でもその人型のオーパーツ?そのヒトは『天使』でEsGじゃないんだっけ。」

 

ナナミ「そのようですね。本体はその天使で、EsGはAI…自動で動く分身のようなものと。」

 

レイナ「ギアの適正判断もEsGが介入している……ギアとその天使にも強い結びつきがある……」

 

ナナミ「結びつきが強い……ユキさんへの干渉もそれと関係が?」

 

レイナ「所長はその天使とユキの力を借りてピグマリオンに襲撃された新宿から脱出……その後、ドールハウスを設立し、天使からEsGシステムを受け取った……」

 

ナナミ「話してる途中でカナさんが、その記憶を思い出していましたね……」

 

ヒヨ「ユキちゃんがピグマリオンを倒して……カナちゃんとか他のみんなを助けたんだよね?ユキちゃんはそのときのこと、覚えてないのかな?みんなは何か、聞いたことある?」

 

シオリ「私は聞いたことありませんね……確か…一番最初の鮮明な記憶は私との会話。それより前は夢のように曖昧だと……」

 

サクラ「シオリさんやアヤさんが聞いたこと無いなら、その時のことはわからなそうですね。」

 

少なくとも今は、ユキの記憶は戻りそうな感じはしない。

 

シオリ「『アパテイア』でしたか?あの装置でも……?」

 

アパテイアと呼ばれる装置を使っても、記憶も感情も何も見えなかった。

 

ミサキ「……そもそもあれも、EsGのもたらしたものよね……私たちは……私たちのことすら知らないままずっと……」

 

天使からの贈り物は、常識では考えられない奇跡をいくつも起こしてきた。しかし、今ある機材ではユキに何かできることはない……

 

ミサキ「所長も言っていたわね。ユキの記憶を取り戻せるとしたら−−」

 

シオリ「今のユキさんに残っている記憶からたどって、関連する記憶の回復を図る……」

 

サクラ「ユキさんの記憶にある場所に行って、覚えていることを聞き出す……ですね。」

 

シオリ「理にはかなっていると思います。」

 

今のユキにできることは、彼女の記憶にある場所に向かって彼女が覚えていることを直接聞き出すこと。

 

サクラ「私もDVDでチヒロさんや当時のDollsのことをたくさん思い出しましたし、きっかけがあれば、きっと…!」

 

僅かな希望を信じ、いつも通りの彼女を取り戻す…しかし……

 

ヒヨ「EsGもそうだけど、ヒヨ達には…翔さんも居ない……」

 

困難に直面した際、EsGだけではなく…翔という存在が、ドールハウスの頼りになっていた。だが、頼みの綱である彼は居ない。

 

ナナミ「ストライカーから私たちを遠ざける為に、敢えて私たちと敵対しているんですよね……」

 

アヤ「あぁもう、クヨクヨしない!!」

 

暗くなりかけた雰囲気をぶち壊すアヤ。

 

アヤ「いつまでもそんなんじゃ翔に笑われるでしょ!!」

 

翔が居ない寂しさはあるものの、悲しんでいる暇はない。

 

アヤ「行くしか無いわ、思い出の場所巡り!!」

 

ヤマダ「う〜む、気は向かないんですけどね……」

 

アヤ「……何でよ!あんた、ユキがこのままでいいと思ってるの!?」

 

ヤマダ「んなわけないっつーの!ジブンは……あのマダラメもよく知らないって言うアレ…天使だかなんだかにオトシマエつけさせるほうがしっくりくるんすよ……そう思わないっすか?だって、やったのはそいつっショ?」

 

アヤ「そうかもしんないけど……!どこにいるかもわからないじゃない!だったら……できることしようよ……!」

 

ヤマダ「……そう……ヤツがどこにいるかわからねーからそれもできない……クソッ!!どんなに考えても手段がない……こうしていてもイライラするだけだし……!」

 

今回の出来事の原因と思われる『天使』の居場所はわからない。今はただ、自分達ができることをやるしか方法はないのだ。

 

アヤ「気持ちはわかる……でも翔だって、ユキがいつものようになってくれる事を望んでる!!ユキが元に戻れば、翔も安心して帰って来れる…違う?」

 

ヤマダ「……。」

 

ヤマダは少し沈黙した後、静かに口を開く。

 

ヤマダ「……じゃあリーダー。どっから行きます?」

 

アヤ「ヤマダ……思いつくとこ片っ端からいくわよ!最近行ったとこから順番に!!」

 

Dollsはユキを救う為に動き出す。こうして、ユキの為の作戦が開始された。

 

 

 

その頃、観測室では……

 

斑目「…翔が私たちと敵対しているだと?」

 

愛「はい、理由は…ストライカー達をドールハウスから遠ざける為だと……」

 

斑目「それは翔本人が言っていたのか?」

 

愛「そうです。」

 

敵対する翔に頭を悩ます斑目の姿があった。

 

カナ「折角心を開いてくれたのに…また、元に戻ってしまいましたね……」

 

斑目「…痛手だ。」

 

蜜璃「……。」

 

蜜璃の腕を食べてしまった翔は、ドールハウスを離れて行った。それだけではなく、もうドールハウスとは無縁だと…敵対までしてしまった。理由はどうであれ、翔が居なくなったのは…ドールハウスにとって致命的だ。どうにもならない時、翔の支えがあってDollsは数多の試練を乗り越えて来た。決別してしまったメンバーを元に戻したのも、翔だった。常に彼女達の近くに居て、彼女達を一番支えて来た翔…

 

斑目「…七草、腕は大丈夫なのか?」

 

蜜璃「はい、今ではほぼ動かせるようになりました。」

 

蜜璃の左腕は完全にくっついており、普通に日常生活を送れる程動かせるようになっていた。抜糸も既に終わっており、綺麗にくっついている。

 

蜜璃「あれは事故だったんです…決して、翔君が悪いわけではありません……」

 

斑目「…そうだな。」

 

蜜璃「所長…私は、翔君を苦しませている時空管理局が憎いです……!どうして、何の罪もない翔君がこんなに苦しい思いをしないと行けないんですか……翔君をアマゾンにした時空管理局が、憎くてたまりません……!!」

 

深雪「…蜜璃さん、私もです。」

 

元は人間だった翔…そんな彼をアマゾンという怪物にした元凶は時空管理局……怪物になってしまった事で、生き辛さを感じている翔。人間の姿を保っていなければならない…食人衝動を抑えなければならない……生きる上でハンデを背負ってしまった翔。そのせいで、翔は苦しい生活を余儀なくされている。

 

斑目「…翔、戻って来てはくれないのか……」

 

翔がドールハウスと敵対する理由を知った斑目は、思わず頭を抱えてしまう。いつの日か、彼がドールハウスに戻って来る日は訪れるのか……

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