〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
斑目「それでは、緊急会議を始める。と、言いたいところだが……」
カナ「チームCの皆さん、まだのようですね。」
ドールハウスにある観測室にて、ドールハウス一同が集まっていた。だが、チームCの3人が居ない…
シオリ「女子寮でも見かけませんでしたね……私が呼んできましょうか」
シオリが彼女達を呼びに行こうとしたタイミングで、チームCが観測室に入って来た。
ヤマダ「へ〜い失礼失礼。チームC参上っす〜。」
アヤとユキはだんまりしている。
蜜璃「へっ!?ヤマダちゃんが……連れてこられる側じゃない!?」
ヤマダ「ちょいちょい蜜璃センセー、なんすかそれ……いつもヤマダが徹夜明けでグロッキーみたいな……」
斑目「揃ったならいい。ミーティングを始めるぞ。」
チームCの遅刻を許した斑目の言葉を合図に、ミーティングが始まる。まずは、作戦の伝達から始まる。作戦名は『オルフェウス』と言い、イベント名は『Dolls流し雛ライブ』だ。この決行日が、10日後に決定した。突然の発表に、メンバー全員は驚き戸惑う。最速で建造するライブ会場では時間帯により、周辺住人への騒音という問題があったが……荒川流域で行われる花火大会とのタイアップという形で、その一貫として可能な限りの配慮を行われる。天候予測、近隣交通機関の乗車率、花火開催側との折衝、全てクリアしている。これは、EsGの回答も踏まえた日程だ。
ミサキ「EsG…ユキに聞いたということですか?」
ミサキの問いに、一瞬の沈黙が入る。そして、斑目が沈黙を破った。
斑目「……そうだ。作戦の成功率を高めるためにな。」
少しでも作戦成功へと近付くため、やむを得なかったようだ。これまでドールハウスは、EsGの助言を頼りに作戦を成功へと導かれていた。時に、翔の独断で成功した事例もあるが……
カナ「カーロンが移動開始する前に実施するには、それより先の日程では厳しいという結論です。近隣都民との摩擦も一番少なく出来るし、警備という形で人員配置もしやすいので…人はもちろん集まってしまいますが、事前対策は
斑目「本来なら、一般人がいない方が被害は防げるが、人がいなければフィールは収集できん……」
ピグマリオン退治の際は、一般人が居ないと良いが……ライブになれば、一般人がいなければドール達の生命源である『フィール』を集める事が出来ない。今回の作戦は、ピグマリオン退治とライブを同時進行という形で行うのだ。
斑目「イベントは、荒川上流に特設したライブ会場より開始だ。ここでのオープニングセレモニーは…チームCに任せる。」
斑目の言葉に、一同は目を丸くする。
愛「チームCに、ですか?でも、ユキちゃんが……」
ヒヨ「ユキちゃん……ライブまでに元気になってくれるかな……」
レイナ「いえ、だからこそフォロー……今のままでも大丈夫なように、ということね。」
斑目「その通りだ。ユキはその後すぐ、1番手として水上バスで送り出す。」
驚きや疑問、心配を抱くメンバーにライブ手順を説明する斑目。
斑目「歌によってライブ会場を繋ぐ役割に固定すれば、会場での会話に極力参加しなくても済むだろう。」
ナナミ「なるほど、アヤさんとヤマダさんのふたりがMCをするような形で開始すると。」
アヤ「ふたりで……ユキを……」
ヤマダ「……ふぁ~~しゃーねーっすなぁ。チームプレイってことで、了解っす~。」
これなら、合流する順番は前の資料通りで変更せず行けそうだとレイナは言う。カナもライブ進行には影響無いと言う。1番手がサクラ、2番手がナナミ、3番手がヒヨ、4番手がミサキ、5番手がレイナ……ミニライブをしてから合流するのは、シオリが最後だ。アヤとヤマダは河口にて合流…セレモニーをした後に車で別途向かう…という手順だ。
サクラ「ファンのみなさんが危険な目にあわないといいのですが……」
しかし、彼女達にとっての心配は…観客達だ……ピグマリオン退治を同時に行う為、彼らがピグマリオンの餌食にならないか……
斑目「……EsGの予想では、カーロンはお前達のテアトルに引き寄せられる。」
ミサキ「……ファンのフィールに向かわずに?その根拠は……あるのですか?」
ミサキの問いに対し、ユキの中に居るEsGはこう言った。
ユキ「神の肢体はギアが生み出す熱量に本能的に引き寄せられる。その習性を利用しテアトルの中に標的を誘い、カーロンを捕縛する。」
サクラ「……前にも言っていましたよね。実体を得たアイツを逃がさないようにって。今まで逃げられてしまったピグマリオンもいましたが、それを閉じ込められるということですか?」
サクラの問いにEsGはこう答える。
ユキ「カーロンに察知されるようテアトルを展開し移動。誘引された敵をさらにテアトルで覆う。感情の同調により、全固体のテアトルを融合……強固な『心の檻』とする。」
愛「感情の同調……?それは、もしかして--」
シオリ「……Eバーストのように心を重ねてテアトルを展開するということですか?」
ユキ「83%同意、ただし、同調による熱量を消費する必要は無い。出力されるエネルギーを攻撃に変換せず、テアトル内に留めるだけで実施可能。カーロンを引き寄せ、餌さとなる記憶から遠ざけ、順に合流しつつ現実の認知から隔離する。『印象の塔』も強いビジョンを投影可能。フィールの回収にも貢献すると予想。」
印象……それは投影のことなのか?それはテアトルの新しい力……その力も強くなることで、ライブも盛り上がるのかとアヤとヤマダは解釈する。
ミサキ「結局……根拠は貴女の判断のみ。そういうことよね?」
ユキ「合理的な作戦と認識、承認。実施に向け巡回を開始する。」
ユキの中のEsGはそう言うと、会議室から出ていってしまう。
カナ「あっ、ユキちゃん待って!!」
カナの呼び掛けにも反応せず……
斑目「気が早いことだ……仕方ない。お前達もついていってくれ。ピグマリオンによる余計な介入を避けるため、いつも以上に汚染度を下げる必要がある。既に浄化ライブ実施の水準は満たしているが、今までに無い広範囲の作戦になるからな……連絡は以上だ、引き続き--」
ヤマダ「その前に……言うことがあるんじゃないっすか?毎回トラブルでおあずけにされるのはさすがにそろそろ……ねぇ?」
斑目「……そうだな、その通りだ。では、私も行こう。」
少しの間、沈黙が走り……ヤマダがそれを切る。
ヤマダ「……ん?今なんと?」
斑目「現状、私の判断の確度は低い。どこにいても同じだ。であれば……」
カナ「…………わかりました。連絡のため私はこの場にいますので。」
斑目もDollsの巡回に同行するらしい。
斑目「すまない。」
アヤ「巡回に…マダラメさんも……?」
カナ「みなさん、愛さん……所長をよろしくお願いしますね。」
戸惑うDolls と愛と共に、斑目は巡回に向かった。