〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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第四百二十四話 返済の時

巡回に所長である斑目が同行する事に、未だ戸惑いを隠せないDolls 。現在、彼女達は荒川河川敷のとある橋に来ている。

 

斑目「……静かだな。霧も出ていない。」

 

ヒヨ「ひよっ…?そう…だねぇ……」

 

ナナミ「霧……まぁ、今出てこられても困ると言えば困るのですが……」

 

ヒヨ「……ヒヨたちに反応するなら、出てきちゃったりしないのかな?」

 

斑目「天候的に湿度が高い状況でなければ、その可能性は低いらしい。空気中の水分に大きく行動が制限される。今の湿度では広範囲に現れることはできんだろう。」

 

愛「そ、そうなんですね……」

 

所長がすぐ間近に居るという緊張感からか、いつものようなわちゃわちゃした会話がない一同。

 

「随分珍しい組み合わせだなぁ?」

 

「「「っ!?」」」

 

聞き覚えのある声がした方を見ると、橋のアーチ上部構造から翔がDolls 一行を見下ろしていた。

 

斑目「……翔。」

 

翔「久しいなぁ斑目さん…アンタもたまには外に出て散歩でもしたらどうだ……とでも言ってやろうと思ったが、その必要は無さそうだな。いや、んなことより……“あの映像”、当然見たよなぁ?見てねぇだなんて言わせねぇぜ?」

 

斑目「…勿論だ。」

 

翔「あのバカ連中は行動不能になったが、まだ知能のある妖魔がいる……とはいえ、我々STARSがソイツらを発見次第すぐに潰しているがな……」

 

淡々と語る彼の右手にはガンモードのライドブッカーが握られている。言葉や行動次第では、Dollsを攻撃してくる可能性も高い。そう思った斑目は、緊張しながら言葉及びすべき行動を慎重に選んでいる。

 

翔「霧の話、俺にも聞かしてくれよ?例えば……当日までに雨とか降っちまったらどうする?」

 

斑目「……その可能性は、30%ほどある。何もしなければな……」

 

翔「へぇ…んじゃあどうやって雨を降らす?」

 

斑目「…人工的に雨を降らせる。東京に雨雲が到達する前にな。」

 

斑目からの返答を聞き、少しずつ口角が上がっていく翔。微かに笑う彼を、不気味がるDollsと愛。

 

愛(まだ翔君はアタシ達の味方って訳じゃない……1つでも言葉や行動を間違えれば……)

 

翔「…何だその顔は?嗚呼、まぁアンタの思ってる通りの事だ……俺はまだお前達の敵だからなぁ?」

 

愛「~ッ!!??」

 

翔に心を読まれ、顔を青ざめる愛。

 

翔「人工的に雨を降らせる…空から水でもばら蒔くつもりか?んな事できんのか、なぁ?」

 

斑目「……可能ではあるだろう。準備だけはしてある…少しでも、確度が高まるのであれば……」

 

翔「……へぇ?」

 

斑目「今回は他にもいくつかの装置を使う。害特……自衛隊とも連携する。」

 

害特……その言葉を聞いた瞬間、微かに笑っていた翔の表情が、すぐに無表情になる。

 

斑目「…っ。」

 

翔「…で?」

 

斑目「…カーロンがその周囲に限界しやすいように、水上バスの回りにのみ霧を散布する装置…その霧にプロジェクションマッピングでライブを投影する装置なども作戦の(かなめ)になる。」

 

翔「…中々ぶっ飛んだことするじゃねぇか……ただ、害特が所有する負の結晶すら1つ増やす程の予算じゃあねぇだろ?」

 

ナナミ「……それって、オートギア…?」

 

翔「その通りだ。ま、あんな使い物にすらならねぇガラクタを製造する為、大金をドブに捨てるよりかは…アンタらの行う作戦の方がよっぽど価値がある。俺はそう思ってるぜ?」

 

またも微かに笑みを浮かべる翔。

 

翔「…んで、斑目さんよぉ?霧をばら蒔く装置の他に、何がある?」

 

斑目「……人工の霧に花火の煙、VRを応用した映像技術だ。」

 

翔「成る程……Dollsの『投影』にも頼りはするが…夜空やライブ会場への映像投影……それは現在の技術でサポートでもすんのか?それはEsGの提案か?それとも……得体の知れねぇ奴からの提案か?

 

またも無表情になる翔。

 

斑目「……いや、ライブを具体的にどうするか決めるのは私とドールハウスのアイドル側のスタッフだ。翔、君も知っているだろう?」

 

翔「当たり前だ……つまり、EsGや得体の知れねぇ奴…『マキナ』の野郎の作戦じゃあ、人命への配慮が足りてねぇんだろ?」

 

斑目「…そうだ。」

 

斑目の反応を見て、「だろーな……」と気だるげに言う翔。

 

アヤ「結局あいつ……なんなの……?天使って…いったいどういうヤツなの?」

 

アヤの質問に、黙って頭を抱える斑目。

 

斑目「私は……あれと、夢の中で遭遇した。」

 

翔「……?」

 

斑目「…翔、君もそうなのだろう?」

 

アヤ「ゆ、夢…?翔も、アイツと……」

 

翔「その通りだ。リーパーをぶっ倒したぐらいから、時々マキナの野郎が夢に現れるようになった。」

 

斑目「そうか…やはり接触したのはその時期か。」

 

ヤマダ「やはり……って。そん時から知ってたんすね?」

 

斑目「EsGが翔に接触したことを確認している。カナもその辺りのことは知っている。」

 

ヤマダ「接触を確認……どんか夢見たか観測できるってことか?そんな技術が……いや、オーパーツってそうか……」

 

斑目「フッ……正直何でもありなのかと疑うくらいだ。理解が追い付く暇もない。」

 

アヤ「オーパーツ……EsGとその天使って、どっちがどっちなの?」

 

聞いた限りでは、その天使が主体…EsGが道具という解釈をしているヤマダ。だが、どちらも意思があるような感じらしい……

 

斑目「私も概ねそう解釈している。アレは前にも言ったように我々の敵の敵…ピグマリオンとそれを吐き出す『神』を滅ぼす。そう言って人類に協力を持ちかけてきた。正直その時の我々はピグマリオンのことすらよくわかっていなかったのだがな……マキナの協力でギアは発掘され、ドールが……増えていった……もしその協力がなければ東京……いや、日本全土が既に新宿のようになっていただろう。」

 

ピグマリオンを、そのピグマリオンを生み出す神を滅ぼす為…マキナが人類に協力を持ちかけた事で、ドールという兵器が生まれた……数多の命が犠牲になったものの、ピグマリオンの侵食は新宿に留まったままだ……

 

アヤ「じゃあ……味方のはずじゃないの?なんでユキに……」

 

翔「敵の敵……必ずしも俺らの味方じゃあねぇ。そういうことだろ……」

 

斑目「人の形をしているだけで、我々の理念は通じない。人間的な善悪は判断基準ですらない……」

 

ヤマダ「確かに……ヤベーやつ感ビンビンでしたね……」

 

斑目「EsGについては理屈はわからんが、実体はデータベースのようなものだと認識している。」

 

ヤマダ「はぁ?データが実体?データなんて所詮……いや、あの霧もそうだ…空気中の水分にのりうつるとかそういうヤツらがいるんなら……」

 

斑目「電子の配列か、あるいは記憶の堆積か……少なくともEsGはその由来を持つことで、『接続』さえできればコンピューターはおろか、脳に直接干渉することが可能であるようだ。夢というのはその手段、コンピューターでいう回線のようなものなのだろう。」

 

ヤマダ「マジかよ……」

 

斑目「ただし、EsGができるのはそこまでらしい。抵抗する相手に干渉することはできない。」

 

翔「……ッ。」

翔(こちとら抵抗したぜ?なのに、何故奴は干渉できんだよ……?)

 

ヤマダ「ソレ、とてもそこまでってレベルじゃないっすけどね……」

 

斑目「夢に現れるのはマキナ本人の意識……EsG は補助。応答はするが自我は無い。思い付く中で一番近い概念がAI……EsG について周囲にはそう説明した。」

 

翔(AIだと……?)

 

斑目「EsGのことを知っているのは極一部……私と上層部……総理大臣とその周囲、今この話を聞いているお前達と、通信を傍受しているカナだ。」

 

カナ『お気づきのようで……』

 

翔(ま、そうだろうな……)

 

盗み聞きのような真似をせずとも、共有はしてあるはずだが…

 

カナ『でも、先日ドールハウスに現れたあの天使。あの存在については私も何も知りません。まだ何か……心当たりがあるのでは?』

 

Dollsの心当たりでは、デウスも…天使という言葉を口にしていた。マキナと反応が同じであったため、デウスも天使であろう。だが、あれはこちらの味方ではない。時には牙を剥いて襲い掛かって来たこともある。

 

カナ『……総理も、そのことはご存知で?』

 

斑目「EsGの存在は当然報告済みだ。マキナについても報告はしたが…あくまでEsGとセットの人型オーパーツ、それ以上でも以下でもないという見解だ。」

 

カナ『そう、ですか……』

 

天使に関する研究には下地があった。今はピグマリオンと呼ばれている敵。『未知の霊障(れいしょう)』を研究していた機関だ。ドールハウスはその機関の研究を受け継ぎ、ユキの運用可能を持って実働を開始したのだ。その頃、マキナが再び斑目の夢に現れ…人類に対してある宣言をした。それは……

 

 

奇跡の代行者が定義されるその時まで

 

世界を動かす歯車が揃うその時まで

 

舞台を汚す忌まわしき吐瀉物

 

その浄化のため奇跡を貸与(たいよ)する

 

…であった。遠回しな言い方で、まるで予言のようだとシオリは言う。それに対し、人類はこのように解釈した。

 

 

歯車はDollsの心臓である『ギア』

 

吐瀉物とはピグマリオン

 

舞台とは東京

 

浄化とはピグマリオン討伐

 

 

マキナはドールの力を『貸与』している。本来は、自分のものであると宣言している。そしてその期限が、奇跡の代行者が現れるまで……と……

 

サクラ「奇跡の……代行者……」

 

斑目「『翔』のことだ。

 

翔「……何?」

 

斑目から発せられた言葉に、皆は翔に注目する。斑目は続ける。

 

斑目「ドールになった者の記憶を失わず、その感情を即座に取り戻した。ドールの感情を最大まで引き出し、EsGの判断を覆す最良の結果をもたらした。記憶と感情に触れ、破損したはずのそれを復元することすらしてみせた。そして…テアトル……ドールの行使する奇跡の力を、自分の力であるかのように執行する……EsGの動向をずっと監視していた結果、翔への接触を確認できた。それで直感した。宣言通り……」

 

『その時』が来たのだとな

 

斑目「……ギアの発掘も、適正者の選定もEsGによって指示されていた。これらすべてが『貸与』されているのだとしたら、我々はピグマリオンと戦う術を、つまり……人類はピグマリオンという脅威に対し、ドールという対抗手段を失う。」

 

翔「何だと……!?」

翔(もしDollsが失われれば、この世界は…終わりじゃねぇか……!!)

 

ピグマリオン退治の主はドールによる討伐と浄化だ。仮面ライダーという兵器では、ピグマリオン討伐はできても汚染された地域を浄化することはできない。

 

サクラ「私たちが……失われる……?いったい、どうなってしまうんでしょうか?私たち、これから……」

 

斑目「マキナはお前達を人形と呼んでいた。しかし今は違う。」

 

翔「神を滅ぼす槍だったな……待てよ、だとしたら…役割は変わらねぇはずだ……おいEsG、どうなんだ?」

 

翔はユキを睨みながら言う。すると、ユキの中にいるEsGが口を開く。

 

ユキ「88%同意。神を討つ、その役割に変化は無い。しかし、基準を満たさない槍は必要ない。この槍には、別の存在への転生を実施する。」

 

翔「ユキのことか……!!」

 

アヤ「だったら……基準を満たせば良いんでしょ!?」

 

ユキに近づくアヤとヤマダ。

 

アヤ「ユキが弱っているなら……あたしたちがそれをカバーする!!」

 

ヤマダ「そっすね……ジブンらもう一蓮托生(いちれんたくしょう)なんでねぇ?ユキさんひとり、役割チェンジっつーのは筋がとおらないっショ……!!」

 

ユキ「…熱量の上昇を検知。転生を望む傾向を確認。効率のよい存在強度の変換が期待される。」

 

ヤマダ「チッ……またあれか……!!」

 

アヤ「マダラメさん!さがって!!」

 

ユキ「偽物と対峙し、本当の『自分』を理解せよ。『試練』は最終段階へと移行する。」

 

河川の向こうから、ドッペルゲンガーが現界する。そのタイミングで、翔のバッヂ型通信機が鳴る。

 

翔「俺だ、どうした?」

 

あから『隊長殿!!本部ビル近くに飛翔型急襲妖魔(レイドオブリ)が出た!!今、皆で討伐に当たっているけど、苦戦を強いられている。助けてくれ!!』

 

翔「わかった、すぐに行く。」

 

江東区にある本部ビルに、巨大な妖魔『急襲妖魔』が現れたようだ。STARSメンバーを救うべく、翔はオーロラカーテンを出し、その中に入っていった。

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