〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
レイナを名前で呼ぶようにした『青空 翔』は、ちょっとだけレイナに心を開いていった。…が、未だに人を信じることに恐怖を感じていた。
そこで、愛が翔に話しかけてきて、自身の過去の出来事を語りだした。
では、本編へどうぞ
レイナとある程度の会話を挟んだ翔は、レイナとラウンジカーに戻っていく。
レイナ(嬉しい…翔君と話ができて…♪)
レイナは翔と会話ができたことに、喜びを感じていた。そんなレイナを背に、翔はラウンジカーに戻っていった。
春香「あ、翔さん!どこに行ってたんですかぁ~!?」
翔「展望車に行っていた。どこへ行こうが、俺の勝手だろう。」
翔はそう言うと、ソファーに座った。
貴音「翔様?」
翔「何だよお前…?」
貴音が翔の近くに移動し、
貴音「お隣、よろしいですか?」
翔「好きにしろよ。」
翔がそう言うと、貴音は翔の左隣に座った。
貴音「私(わたくし)、『四条 貴音(しじょう たかね)』と申します。」
翔「…青空 翔だ。」
貴音が自己紹介した後、翔は貴音に自己紹介した。
貴音「…。」
翔「…。」
貴音「…。」
翔「…?」
貴音「…それ以上は、言えません。」
翔「…そうか。」
貴音の言葉を聞いた翔は、貴音から目を背けた。
貴音「…翔様は、いけずです…」ムウッ
貴音は少し頬を膨らませた。
翔「それ以上は言えねぇんだろ?だったら無理に話す必要はねぇ。いけずって言うのは、筋違いじゃねぇか?」
翔の言葉に、貴音は何も言い返せなかった。その後、少しの間、沈黙が続いたが…貴音が翔に話しかけた。
貴音「翔様。」
翔「…何だ?」
貴音「私達のことを助けてくださって、ありがとうございました。」
貴音は翔に、E達から救ってくれたことのお礼を言った。
翔「礼なら萩原と菊地に言え。俺はただ、アイツらの依頼を受けただけのこと…アイツらが依頼をしてこなかったら、E達の悪事に気付けなかったんだ。」
貴音「そんな事はございません、翔様が快く依頼を受けてくださったお陰でもあります。」
貴音は微笑みながら言う。
翔「そうか。それより、765プロはもう大丈夫なのか?」
貴音「ご親切におっしゃってくださって、ありがとうございます。はい、事務所にも笑顔や平和が戻って来ました。もう、大丈夫です♪」
翔「…そうか。」
765プロの現状を聞いた翔は、内心安心していた。
ここで……
斑目「そろそろ部屋を決めたいと思う。カナ、説明を。」
宿泊する部屋決めをすることになった。
カナ「はい、どの部屋に泊まりたいか確認して、もし入りきれないと感じたら、カラオケで勝負してもらいます。例えば……和室寝台個室は4つありますが、これが4グループを越えてしまうと、勝負していただく形になります。」
斑目「ありがとう、カナ。何か質問はあるか?」
斑目の問い掛けに全員、首を横に振り「大丈夫。」と伝えた。
斑目「大丈夫だな。よし、ではグループを発表する。」
グループは『春香、千早、サクラ、シオリ』、『雪歩、真、ミサキ、レイナ』、『真美、亜美、貴音、ヒヨ』、『やよい、美希、伊織、ナナミ、アヤ』、『あずさ、響、律子、ユキ、ヤマダ』、『斑目、カナ、愛』、『高木、赤羽根』、『翔』となった。翔が1人なのは、斑目による配慮である。
愛「じゃあまずは…翔君、どの部屋が良い?」
翔「俺は1人だからどこでも良い。あまり広い部屋を使ったら、迷惑だろ?」
伊織「水くさいわねぇ、そんなに気にしなくても良いのよ?」
伊織は翔に言う。
翔「…?…どういうことだ?」
伊織「このデンライナーゴウカは、貸切状態なのよ。だからさ、そんなに遠慮しなくても良いのよ?」
翔「…マジかよ…けど、俺は1人なんだ。あんまり広い部屋使ったって、落ち着ける訳ねぇ。言っておくが、俺は遠慮してねぇ。」
デンライナーゴウカが貸切状態であることを知った翔は少しだけ驚いたが、それでも表情を変えずに言った。
翔「ともかく、俺は余った場所で良い。」
翔はそう言った。その後、グループごとにリクエストを聞いて、和室が一室だけ余った。翔はその部屋を利用することになった。そして解散の合図が出て、一同はそれぞれの部屋に移動した。
翔は和室寝台に向かった。
スーッ…
入り口の襖を開けると、まるで旅館のような広々とした空間が広がっていた。
翔「…。」
翔(…おいおい。ここ、広すぎねぇか…?)
目が点になり、困惑する翔。
翔「…とりあえず、入るか…」
翔は靴を脱ぎ、部屋に入る。部屋に入ると、畳の香りが翔の鼻をくすぐる。
翔(…落ち着くな、この部屋は…)
翔はあぐらをかくと、窓から見える景色を眺める。その時…
コンコンッ…
入り口がノックされた。
翔「はい。」
愛「翔君、愛さんだよ♪入っても良い?」
翔「…。」
翔は少し黙り込むと…
翔「問題…パワードイクサーを呼び出すには、『フェイクフエッスル』が必要である。○(マル)か×(バツ)か。」
愛に○×クイズを出した。
愛「えぇっ!?…バツ!バツ!」
翔「入って良い。」
翔がそう言うと、
愛「やったー!お邪魔しま~す♪」
愛が入って来た。
愛「いやぁビックリした~、いきなりマルバツクイズを出されるとは、予想外だったなぁ~、たはは~。」
翔「それで、用件は?」
愛「ううん、折角の旅行なんだから、翔君と話したいな~って思ってね。」
愛はそう言うと、ニコッと微笑む。
愛「何か聞きたいこととかある?お姉さん、何でも答えちゃうよ♪」
翔「…何でも?」ピクッ
『何でも』という言葉に反応する翔。
愛「そ!何でもだよ♪」
翔「なら……何故俺を怒らない?」
愛「えっ…?」
翔の質問に困惑する愛。
翔「これまで俺は、あんたらに散々悪態をついてきたんだ…何故怒らない?」
愛「何故って言われてもね…うーん……翔君は、誰を信じたらいいのか分からないから、つい悪態をついちゃうんだよね?」
翔「そうだ…けど、だからといって…悪態をついて良いわけではないだろう…ま、俺が言えることじゃねぇけど…」
愛「翔君の言ってることは正しいよ。けど、あたしは翔君を怒ることはできないなぁ……あたし、怒ること好きじゃないし…むしろ、嫌いだな~……怒られるのも嫌い…」
翔「…?」
愛「それに…翔君は、悪気があって悪態をついている訳ではないって、皆は分かってるしさ。新しい人に対して、警戒心を抱くことって、普通のことだし…新しい人に悪態をついちゃうほど、辛い経験をしたんだって思うと…怒りたくなくなるんだ。むしろ、受け止めてあげたいって思うの。」
翔「…。」
愛「翔君も、怒られることって好きじゃないでしょ?」
翔「…怒られたって平気だ。」
愛「そっか。強いんだね、翔君は。」
翔「バカ言え…今まで散々な目にあってきたんだ……もう、怒られることには慣れちまったんだよ…」
翔はそう言って、黙り込んだ。
愛(翔君の話から考えられることは……翔君は今まで、自分の努力を誰からも認められなかった。認められるどころか、時空管理局やストライカー達に利用され…挙げ句の果てには…用がすんだら、お払い箱のように捨てられた……翔君にだって、自由があるのに…!)
愛は翔を見て、そう思った。
愛「翔君、もっと我儘言っても良いんだよ?」
翔「急に何だよ?」
愛「いや、部屋決めの時、どこでも良いって言ってたのが気になったんだ。あ、いや…別に悪い訳ではないよ!?ただ…「俺はここが良い。」とか、何て言うか、その~……遠慮しなくても良いんだよ?」
翔「言ったはずだ、俺は遠慮してねぇよ。」
愛「う~ん、そっか~。」
翔「そうだ、片山さん。」
愛「ん~?愛で良いよ~。」
翔「片山さんは、医者なんだろ?」
愛「そうだよ。」
翔「何故、医者になろうと思ったんだ?」
翔は愛に、医者になろうと思った理由を訊ねた。
愛「そうだね……あたし、元々軍人だったんだよね…多くの人たちを守るために、軍人になったんだ。」
愛の話に、黙って耳を傾ける翔。
愛「あたしには、弟がいたんだ。翔君と同じぐらいの年のね…でも……弟は、死んじゃったんだ…」
翔「…!?」
愛「その当日、沖縄辺りにテロリスト達が上陸してきてね、民間人を襲撃したの。その時、あたしもテロリスト達に迎え撃つべく、戦場に出されたの。銃声や逃げ惑う人たちの声が聞こえる中、あたしは逃げ遅れた人たちを救助しててね…そこに、弟の『聖(さとし)』も着いてきてたの…」
翔「…。」
愛「聖はあたしに言った…「僕も手伝う!だから、1人で抱え込まないで、姉さん!」って……そう言われた時、何だか身体が軽くなるのを感じた…でも、聖は……テロリストに撃たれて、命を落としたの……あたしを庇ってね……」ツー…
愛の目から、涙が流れる。
翔「…。」
愛「その時のあたしは、聖を撃ったテロリストを射殺した。そのテロリストの死体にも、何10発も銃弾を撃ち込んだ。でも、瀕死の聖に呼ばれて、あたしは正気を取り戻した。聖は、「姉さんは、僕の自慢の姉さんだよ。だから、僕の分まで生きて……大好きだよ、姉さん…」って言って、息を引き取った……後日、聖の葬儀が行われてね、その時のあたしは子どものようにワンワン泣いた…大切な弟を、家族を守れなかった自分の無力さを思い知らされて…大好きな弟を失った悲しさ…色んな負の感情が、あたしを蝕んだの……」
翔「…。」
愛「でも、聖に心配かけさせたくなかったから…無理矢理泣き止んで…独学で医学を猛勉強した……それで、国家試験とかを受けて、それに合格して医者になったんだ。もう…大切な人を失いたくないから…苦しんでいる人たちを、1人でも多く助けたいから……だから、あたしは医者になったの。」
愛は涙をハンカチで拭いた。
愛「翔君、あたしはDollsの専属コーチだって、知ってた?」
翔「…あぁ。」
愛「あはは…最初に翔君と会った時、カナちゃんが説明してたよね…」
愛は苦笑いした。
愛「あたし、歌とダンスが得意でね…それがきっかけで、斑目所長からスカウトされたんだ。初めのDolls達は、何だかもの悲しそうだったの……でもね、接していくうちに、ちょっとずつ明るさが出てきたの。」
翔「あんた、随分とまぁ馴れ馴れしい接し方だよな?」
愛「あはは……最初にカナちゃんから言われたな~。「ちょっと馴れ馴れしいんじゃ…」って…でも、それがあたしなりの教育方法だからね……だけど、その教育をしてきたお陰なのかわからないけど、Dollsの皆も少しずつ明るさを取り戻していったんだ。…明るさを取り戻したDollsの娘達、「愛さんあのね~。」って懐いて、妹みたいだった。もう、彼女達が可愛くて仕方なかった…そして、カナちゃんの付き添いで巡回に行った時に……」
愛は翔の方に顔を向けた。
翔「…?」
愛「翔君、君と出会ったんだ。」
愛は続ける。
愛「翔君、聖にそっくりだから…思わず…「聖。」って呼びそうになった…思わず、聖が帰って来てくれたって思った…」
翔「…。」
愛「だから、あたしは決めたんだ…翔君を守ってみせるって……翔君を、救ってみせるってね。」
愛はそう言って、優しく微笑んだ。
翔「…俺は赤の他人だ。」
愛「大切な人に、『赤の他人』だなんて関係ないよ。例え血が繋がってなくても…あたしにとって、翔君は自慢の弟だよ♪」
翔「…聖さんはどうなんだよ?」
愛「聖だって、あたしの自慢の弟だよ♪」
翔「…アンタ、変わってんな…」
翔はそう言うと、窓の景色を眺め始めた。
愛「あたしも窓の景色を見よ~っと。隣良い?」
翔「…好きにしろ。」
愛「えへへ、やった♪」
愛は翔の左隣に座り、窓の景色を眺め始めた。
翔「…片山さん。」
愛「なぁに?」
翔「俺さ、『レイナ』のことを、金髪って呼ぶのを、やめたんだ。」
愛「え、そうなの?」
翔「あぁ。けど…俺はまだ、誰を信じたらいいのか…未だに分かんねぇ……」
愛「うん。」
翔「けど…そんなんで立ち止まってちゃ、何も変わらないって、思うんだ……いずれ、Dollsのメンバーを名前で呼べるようになれたらって思ってる。」
愛「そうなんだ。でも翔君、無理してない?」
翔「状況を変えるには、時には自分が変わっていく必要もあるんだよ…それに、今まで俺はずっと無理して生きてきた…無理はできる。」
愛「そっか。でも、あんまり無理しなくても良いからね?もし何かあったら…お姉さんにも、相談してね♪」
愛は翔に優しく微笑み、翔の頭を撫でた。翔は頭を撫でられることは好きではないが、この時の翔は…愛の手を払ったりしなかった。
愛「翔君、あたのしの話を聞いてくれてありがとう♪それと、いろいろ話をしてくれてありがとう♪」
愛は翔にお礼を言うと、立ち上がった。そして、翔にウィンクをすると、部屋を出た。
再び1人になった翔は考えた。
翔「大切な人に、『赤の他人』だなんて関係ない…か…」
翔(あれ…?俺は…何のために、妖魔と戦って来たんだ…?)
そして、数十分考え込んだ。
翔(…思い出した……ストライカー達から理不尽な仕打ちを受ける中だったから……『罪の無い人に…自分と同じような目に合って欲しくない。』…そんな思いから、俺は妖魔と戦って来たんだった…今は、ジャドウやピグマリオンとも戦っているけどな……ピグマリオンと戦う理由は、妖魔と戦って来た時と同じ理由だけど…今夜は、ジャドウと戦っているのは、何のためなのか…考えるか…)
そう思い、翔は1人……自分は何のために、ジャドウと戦っているのかを、 考えるのであった。
いかがでしたか?今回はここまでです。
愛がフレンドリーに接する理由……そして、自身の過去を翔に話した。愛の話に、黙って耳を傾ける中…「大切な人に、『赤の他人』だなんて関係ない。」という言葉が、翔の心に残った。そして、自分は何のために戦っているのかを、改めて考える翔であった。
愛に頭を撫でられ、翔は不思議と愛の手を払ったりしなかった。
次回も、お楽しみに。
では、またね