〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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やさぐれショウでございます。
この世界の地図には、ある場所が記されていない。それは…『新宿』。
これに違和感を覚えた翔は、Dollsと共に調査に向かうことにした。そこで、彼らを待っていたのは……
では、本編へどうぞ


第四十四話 忘れ去られた都市

旅行から帰ったドールハウスのメンバー達は、任務に戻った。

斑目「旅行から帰って次の日で悪いが…調査員たちによる『新宿』捜索の結果が届いた。」

カナ「ついに、はじまりますね。」

翔「始まるって、何が…?」

翔の疑問に、斑目は言う。

斑目「魔都『新宿』の調査・探索は我々ドールハウスの最も重要な任務だ。」

翔「ちょっと待てよ、新宿って…地図に記載されてねぇぞ?どういうことだ?」

混乱する翔に、ミサキが話し始めた。

ミサキ「かつて東京の心臓部だった都市…しかし、それを覚えている者は誰もいません。」

翔「何…!?」

ユキ「ピグマリオンがうまれた地。……私達は、そう聞いています。」

翔「あの化け物達が、生まれた場所……そんなバカな……」

ここで、斑目が語り出す。

斑目「3年前の13時58分ーー全世界から新宿の記憶が奪われた。そして、それ以降ーーピグマリオン達が現れるようになったんだ。」

斑目の説明に、翔は唖然としていた。

ヤマダ「つまり、つまり、つまりーー敵さんの本拠地ってことっすか!?」

斑目「そうだ。恐らく、間違いないだろう。」

ヤマダの言葉に、斑目は答えた。

斑目「新宿は汚染が極度に酷く、迂闊に近づくと記憶が奪われかねない。」

翔「なら、どうやって近づくんだ?」

翔は斑目に質問をぶつける。

斑目「そこで地下トンネルを掘削して汚染度が低いルートを開拓していた。それが漸く完了。ドールの出動が可能になったのだ。」

斑目は言う。

ミサキ「今まで以上に危険な任務になりそうですが…だからこそ、やりがいを感じます。」

斑目「心強いな。」

ミサキの言葉に、斑目は言った。

斑目「…まずは現在の新宿がどうなっているのか現地へ行って調査をする。」

ここで、カナが説明を始める。

カナ「短時間かつ広範囲に調査をするため、チームを3つにわけます。」

その後、斑目は渇を入れる。

斑目「新宿は忘れ去られた禁忌の都市。今までの任務とは勝手が違うぞ。気を引き締めろ。」

Dolls「了解!」

翔「妖魔も化け物共も…ぶっ潰してやるよ!」

翔も気合いを込める。

愛「すごい気合いだな…無理しないでね、翔君。」

翔「俺は今まで無理して生きてきた。無理をしないことなんて、知らないね。」

翔はそう言って、Dollsと共に新宿へと向かった。

 

 

地下トンネルを通って数十分後……

忘れ去られた都市『新宿』に到着した。至るところにキノコのような何かや枯れ木のようなモノが生え、青白い蝶が飛び回っていた。

翔「これが…新宿……?…なんてことだ……」

禍々しい景色へと変わり果てた新宿を目の当たりにし、翔は言葉を失った。

ミサキ「敵の本拠地と思しき地区です。…慎重に調査を進めましょう。」

ユキ「すごく…嫌な気分です。」

ユキは口角を下げる。

翔「俺もだ…まるでゴーストタウンだな。こんなに広いのに、誰も異変に気付かねぇのかよ……」

翔は険しい表情を浮かべる。

ヤマダ「これだけの改ざん力と改変力。ヤバい感じはひしひしと伝わるっすな~。」

ヤマダはそう言うが、何故か笑顔である。

PPP--

カナ『…それだけではないようです。周囲に生体反応が多数検出されています。』

カナが通信機を通して話しかける。

翔「何?化け物か?妖魔か?」

カナ『…いえ、これは人間の反応です。』

翔「何だと…?…まさか、ここにもストライカー共が!?」

翔は警戒心を強める。しかし、新宿にいたのは……

男性1「あう?」

男性だった。

翔「っ!?」

翔はビックリして尻餅をついた。

ミサキ「翔さん!」

ミサキがすぐに翔に駆け寄った。

ミサキ「大丈夫ですか?」

翔「あぁ、大丈夫だ。」

翔はすぐに起き上がった。そして、周りを見渡す。

男性2「あうあああああああああああああ………」

女性1「ひひ…ひっひっひっひっひ…!」

男性3「ひゃははははははは…あははははははははは……」

よく見ると、新宿にいる人達は、とても正気ではなかった。

翔「っ!!」

ミサキ「こんなところに人が…!」

ユキ「見たところ、正気を失っているようです。」

カナ『どこかへ向かっているようですが、一体、どこに----ッ!?』

翔「どうした!?」

翔は通信機でカナに声をかける。

カナ『前方に巨大な反応があります!』

更に……

カナ『なに、これ……!EsGが…震えている……』

翔「おい!いったい、どうしたんだよ!?」

その時…

ユキ「この感じ…ここは、嫌、です。」

ユキが拒絶反応を示す。

カナ『いえ、これは----』

忘れ去られた都市で…翔、ミサキ、ユキ、ヤマダを待っていたのは……

翔「…何だよ、アレ…?」

ミサキ「これは……塔?」

塔のような巨大な建物だった。枯れ木のような何かに包まれており、周囲に青白い蝶が飛び交っている。

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斑目『なんという、ことだ……』

通信機を通して、斑目は呆然とした声を出した。

斑目『ああ、そうか。そういうことか………ようやく…たどりついたな。』

翔「おい、ここってまさか…!?」

斑目『各員に告ぐ。…そこは敵の本拠地に間違いない。』

翔「何!?ここが…あの化け物共の!?」

どうやらこの塔は…敵の本拠地のようだ。

斑目『警戒しつつ、先へ進め。』

塔に向かおうとしたその時…

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カナ『EsGより、ピグマリオン反応検出!反応パターンから新種と推測されます!』

ピグマリオン反応が出た。

ミサキ「…はじめるわよ。テアトル、展開準備!」

ヤマダ「新型キターーーー!お待ちかねのバトルの時間っす!」

ユキ「翔さん、指示をください…!」

翔「よし。ここで迎え撃つ…俺はアマゾンウィップでお前らを援護する。お前らは上手く連携をとって化け物共を全滅させろ。」

翔はアマゾンズドライバーからアマゾンウィップを取り出し、静かに待ち構える。

ミサキ&ユキ「了解。」

ヤマダ「了解っす!」

ミサキ、ユキ、ヤマダもそれぞれの武器を召喚し、同じく静かに待ち構える。数十秒後……ピグマリオンが襲撃してきた。イーターやウォッチャーは勿論のこと…左右に歯車の形をした車輪のようなモノがついた新型のピグマリオン『ウィーラー』の姿があった。

翔「アイツが新型か…」

ミサキ「ユキ、ヤマダ!行くわよ!」

ユキ「了解です。」

ヤマダ「言われなくても!!」

ミサキ、ユキ、ヤマダはピグマリオンの群れに立ち向かい、翔はアマゾンウィップを構える。ミサキはソード、ユキはガン、ヤマダはハンマーを使ってピグマリオン達を撃破していく。翔はアマゾンウィップを巧みに使いこなし、ミサキ達を援護する。段々と数が減っていくピグマリオンだが、そこに……

妖魔「!!」

旧式妖魔、偵察型妖魔が3体ずつ現れた(合計6体)。

翔「邪魔すんじゃねぇ!!」

翔は襲いかかってきた妖魔達をアマゾンウィップで吹っ飛ばした。

ミサキ「こんな時に、妖魔!」

ヤマダ「空気が読めない連中っすなぁ…」

翔「妖魔は任せろ!お前らは目の前の敵に集中しろ!」

ユキ「分かりました、翔さん。」

ヤマダ「翔さん!こっちは後少しで片付くっす!いつでも助太刀に行けるっすよ!」

翔「ありがとう!けど、お前らは戦闘が終わったら休め!ここからは…俺のステージだ!!」

翔はアマゾンウィップをしまい、腰をどっしりと落とした野性的な構えを取る。妖魔達は一斉に、翔に襲いかかってきた。翔は妖魔達に突っ込んでいき、肉弾戦を挑む。

翔「ムンッ!ムンッ!せぃやっ!」

強烈な一撃を妖魔達に叩きんでいく翔。偵察型妖魔はガンを取り出し、翔目掛けて発泡してくるが…翔はバク転で弾丸を回避した。体勢を立て直した翔は、アマゾンハチェットを取り出すと…

翔「オラッ!!」ブンッ!

偵察型妖魔達に向かって投げた。アマゾンハチェットはフリスビーのように回転しながら飛んでいき…

ザシュザシュザシュッ!!

偵察型妖魔達を切り裂いた。

ヤマダ「おぉっ!!今のスゲーーーー!!」

翔の戦いを見守るヤマダは、思わず声をあげる。翔は残る3体の旧式妖魔達目掛けて走り、肉弾戦で戦いを繰り広げていく。

翔「せいっ!はぁっ!やっ!」

翔は敵を切り裂くように、チョップ攻撃で旧式妖魔達と戦う。一体の旧式妖魔が後ろから攻撃してきたが、翔はそれを素早く察知し、左に避けた。その旧式妖魔の攻撃は別の旧式妖魔に命中し、攻撃された妖魔は攻撃してきた妖魔と仲間割れを始める。その隙に、翔は残った旧式妖魔と一騎討ちを開始する。妖魔が腕を振り上げれば、翔は振り下ろされた妖魔の腕を掴み、華麗に投げ飛ばした。そのまま腕を離さず、もう一度妖魔を投げ飛ばす。更にもう一度投げ飛ばし、最後はハンマー投げのように妖魔を投げた。

ミサキ「すごい…翔さんが圧倒している…!」

ユキ「敵の動きを正確に捉えています…そして、早い。」

ミサキとユキも翔の戦いを見て、驚きを隠せずにいた。翔は起き上がろうとする妖魔に飛びかかり、その身体に思い切り噛み付いた。まるで、狼が…獲物を喰らうように……そして、

翔「がぁぁあああああああ!!」ブチブチィッ!!

妖魔を食いちぎった。食いちぎられた妖魔は血を吹き出し、そのまま消滅した。妖魔の血で口元を真っ赤に染め上げた翔は、仲間割れをしている2体の旧式妖魔に向かって走っていった。地面を蹴って飛び上がり、両足で2体の妖魔を同時に蹴った。蹴られた2体の旧式妖魔は、後方に勢いよく吹っ飛んだ。翔は起き上がると、1体目の妖魔目掛けて走り、無理矢理起こすと顔面を何発も殴った。そして、最後の1発を打ち込むと、その旧式妖魔は消滅した。翔はすぐにもう1体の旧式妖魔目掛けて走っていく。最後の旧式妖魔は走ってきた翔に腕を振り下ろして来たが、翔はこれをヒラリとかわし、妖魔の背後に回った。その後、妖魔の足元を攻撃し、転ばせた。そして転ばせた妖魔を掴むと、妖魔の頭を地面に向けて持ち上げた。

翔「はぁっ!」ズドォンッ!

翔は妖魔の頭を地面に思い切り打ち付けた。

 

※…(ウルトラマンティガの『ウルトラヘッドクラッシャー』をイメージしてください。)

 

最後の旧式妖魔は目の光を消し、消滅した。

翔「ふぅ…相変わらず歯ごたえのねぇ連中だなぁ?」

翔は口元を血を拭きながら余裕そうに言い、アマゾンハチェットを回収した。

ミサキ「新型と聞きましたが…肩すかしですね。」

ミサキは退屈そうに言う。

ヤマダ「ヤマダは満足ですよ。次のアプデに期待ってところっす。」

ヤマダは言う。

ユキ「翔さん、大丈夫ですか?」

ユキがそう言うと…

ミサキ「…っ!?翔さん!ケガはありませんか?」

ミサキは翔に駆け寄り、彼の身体をペタペタと触りながら言う。

翔「大丈夫だよ。」

翔がそう言うと、

ミサキ「…よかった。」ホッ…

ミサキは安心した。

ヤマダ「ミサキさん…ちと、過保護すぎないっすか?」汗

ミサキの様子を見たヤマダは困惑しながらミサキに言う。

ミサキ「何を言っているの、ヤマダ。翔さんにもしものことがあったらどうするの?」

ヤマダ「いや、大丈夫だったじゃないすか…」汗

ミサキ「次は大丈夫って保証は無いのよ!?」

翔「…何やってんだ、アイツら……?」汗

翔はミサキとヤマダのやり取りを見て、困惑していた。

ユキ「翔さん…♪」

すると、ユキが翔にくっついてきた。

翔「おう、ユキ。お前は大丈夫だったか?ケガしてねぇか?」

ユキ「はい、大丈夫です。」

翔「そうか…にしても……お前ら3人、中々やるじゃねぇか。」

翔はミサキ、ユキ、ヤマダを見て言う。

ミサキ「当然です。とりわけ、この3人は戦闘特化ですから。」

ミサキは続ける。

ミサキ「翔さん、最近は色々ありましたが…どうか、忘れないでください。私達がドールである、ということを。」

ミサキは翔の目を真っ直ぐ見て言った。

翔「生憎だが、俺はお前らを人形だなんて思っちゃいねぇ……人として見ている。」

翔は続ける。

翔「何故なら……お前らにだって『怒る』、『泣く』、『笑う』等の感情がある…それに、それぞれの意志があるんだ。そんなお前らを、人形って認識できるかよ……もう一度言う、俺はお前らを『人』として見ている。誰が何と言おうと、お前らは人だ。」

3人「「「…翔さん♪」」」

翔の言葉を聞いた3人は微笑んだ。だが、安心したのもつかの間……1匹の青白い蝶が通りかかった。

ユキ「…まだ、終わりじゃない、です。」

翔「ちっ…まだいたのか…」

PPP--

カナ『さらにピグマリオン反応、増加!もう!次から次へと--』

通信機を通して、カナは言う。

ヤマダ「ふひひ!おかわり上等っす!」

ミサキ「すでに目視範囲内だわ!接敵、開始--!」

翔「何体来ようと、ぶっ潰すまでだ!!」

ピグマリオン達が再び現れた。ミサキ、ユキ、ヤマダ、翔の4人はピグマリオン達に立ち向かう。Dollsの3人は、それぞれの武器を振るう。翔は肉弾戦でピグマリオン達と戦う。

ヤマダ「いよっと!…翔さん、武器はいらないんすか!?」

翔「いらねぇ…自分の身体こそが最高の武器だ!!」

翔はそう言って、野性的に構える。飛びかかってきたリスナーやキッカーには『カポエィラ』で対抗し、襲いかかってきたイーターにはプロペラのような高速スピンで対抗した。更に、突撃してきたウィーラーに対しては、

翔「っ!!」ガシッ!

パワー勝負を仕掛けた。

翔「…っ!!」ザザザ……

ミサキ「翔さん!!」

押される翔を心配し、駆けつけようとするミサキ。だが、次の瞬間……

翔「うおりゃぁぁあああああああ!!」

翔はちゃぶ台を返すように、ウィーラーを投げ飛ばした。投げられたウィーラーは他のピグマリオン達とぶつかり合い、消滅した。ウィーラーとぶつかった他のピグマリオン達も全滅した。

PPP--

カナ『クリアリング完了。ピグマリオン反応、消失しました。』

通信機を通して、ピグマリオン反応が無くなったことを伝えるカナ。

ミサキ「さすがに敵の本拠地……攻勢が今までの比でないわね。」

ヤマダ「純粋物量で来られると、クエ回すのもダルいっすね。」

翔「途中で、妖魔の乱入もあったしな…」

ユキ「でも、嫌な感じ、とまりません。やっぱり、ここは嫌、です。」

翔「あぁ、俺もだ……」

ヤマダ「翔さん、体調とか大丈夫っすか?」

翔「それについては問題ねぇ。ヤマダ、お前はどうなんだ?」

ヤマダ「ヤマダは大丈夫っすよ、心配サンキューっす♪」

一通りピグマリオンを討伐し、ひとまず安心する翔達。そこに……

サクラ「翔さん、みなさん!」

サクラ達がやって来て、翔達と合流した。

ミサキ「…そっちも大丈夫だったみたいね。」

サクラ達が合流した所で、カナが指示を出した。

カナ『それでは塔の中へと進んでください。安心してください。周囲に生命反応はありません。』

翔「…何?」

翔はカナの言葉に引っ掛かった。

ミサキ「いきましょう、翔さん。」

翔「あ、あぁ…」

翔は戸惑いつつ、Dollsと共に塔の中へと入っていく。

塔に入ると……

翔「うっ!?…鉄の匂い……まさか…!」

鉄のような匂いが、翔の鼻をくすぐった。

ミサキ「いや、これは----」

彼らの目の前に飛び込んできたモノ、それは…………………瓦礫が散乱しており、至るところに赤いシミが飛び散っていた。倒れている人が数人いる。

サクラ「ひっ!?」ビクッ

サクラは声が出ない程驚いた。

サクラ「なに……これ……血、なの……?」

翔「何人か人が倒れている……!」

サクラ「しょ、翔さん…助けましょう…!」

翔「待て、サクラ。ここに入る前、南田さんが言った言葉…覚えているか?」

サクラ「…えっ…?」

翔の言葉に、サクラは困惑する。

ミサキ「……カナさん。」

PPP--

カナ『…さきほど、言ったとおりです。』

そして、残酷な事実を突き付けられる。

カナ『周囲に…生命反応はありません。生存者は……ゼロです。』

ここに生存している者は……誰もいないのだ。

PPP--

斑目『現場を記録したら、即時離脱しろ。…そこはピグマリオンの狩場だ。』

翔「ここが…奴らの狩場、だと…?」

サクラ「うっ……ううっ……」ポロッ

残酷な現実を突き付けられ、泣き出すサクラ。

ミサキ「……ッ!」

ミサキは、息を飲んだ。

サクラ「…………。」

サクラはショックのあまり、放心状態になっていた。

翔「…なんてことだ……」

翔は口角を下げ、右手で頭を抱えて俯いた。

ヤマダ「せっかくいい気になったのに誰得胸糞展開でヘドが出るっす。」

ヤマダは不機嫌そうな表情を浮かべ、右手で頭を抱えた。

ミサキ「顔をあげてください、翔さん。」

ミサキは口角を下げて、翔に言った。

ミサキ「この機会に言っておきます。…私たちはドールです。ピグマリオンと戦うために存在しています。翔さんは分かっていると思いますが、幸せな結末だけではありません。…むしろ、この過酷な現実こそ、私たちの戦場です。」

翔「……。」

サクラ「これが…本当の戦場……」

ミサキ「翔さん、サクラ…覚えて、おいてください。これが、私たちの戦いです。」

翔「…あぁ、覚えておく。」

翔は口角を下げたまま、返事をした。

PPP--

カナ『Dolls、帰還してください。』

カナから指示が出て、記録を終えたDollsと翔は帰還するため、塔を出た。

 

 

 

塔を出て、帰路を歩く一同。

サクラ「……。」

サクラは俯いたままである。そんなサクラに、翔が話しかけた。

翔「サクラ…辛いよな?」

サクラ「…はい…とても辛いです…」

サクラは口角を下げたまま答える。

翔「…そうだよな……俺も同じだ…」

翔は自分がストライカー達の隊長時代を基に、サクラに言う。

翔「俺もさっきのような戦場を、幾度も経験してきた……」

サクラ「…ストライカー達の隊長だった時、ですよね……?」

翔「あぁ、そうだ。その時の俺は、一人も死人を出したくないって思いで、妖魔達と戦っていた。とある村に妖魔が現れた…ストライカー達が何もしない中、俺は俺の味方だったストライカー達と共に、妖魔と戦った。けどな……」

翔は続ける。

翔「…結局、俺の思いは届かなかった……俺も戦うことで精一杯で、指示を出せなくてな…そのせいで、死人が出ちまったんだ……それでな、死人の家族から散々罵倒された…『何でお父さんを守れなかったんだよ』、『ストライカー達は、怪物から人を守る存在じゃないのかよ』…とかな……」

サクラ「…でも、ストライカー達も翔さんの指示に従わなかったのも……」

翔「…それもある。けど、全部が全部…アイツらが悪いって訳ではない……俺も、冷静さを失っていたんだ…」

サクラ「…翔さん…」

他のメンバー達「…。」

翔の話に、他のメンバー達も黙って耳を傾ける。

翔「戦いが終った後、ストライカー達から散々暴言を吐かれたよ……『その程度で、よく隊長という肩書きを背負ってるな』、『アンタには無能という言葉がお似合いだ』、『人殺し』とかな……アイツらは、俺の味方のストライカー達にまで、暴言を吐いた…『こんな役立たずの味方をしている貴女達も無能だ』、『無能が意見を出すな』、『無能が戦場に出る資格は無い』とかな……」

翔の話を聞いたサクラは呆然とし、他のメンバー達は静かに怒りを燃やしていた。

翔「その時…俺の思いは『綺麗事』だったことに、漸く気付いた……自分の心が愚かだったことに、漸く気付いたんだ……そこで学んだのは…『俺たちにだって、救えない命はある』、『どんなに手を伸ばしても、届かないことだってある』ってことだ……それでも俺は、ストライカー達から逃げている時も…一人でも多くの人を守りたくて、妖魔と戦った……けど、そんな中で見たのは…沢山の、人の死体だった……ストライカー達は妖魔退治より、俺を連れ戻すことに専念していて…妖魔はやりたい放題だった訳だ……そんな中で妖魔と戦えたのは……俺だけだったんだ…」

Dolls「…。」

翔「さて、話は一旦ここまでにしておく……もうすぐドールハウスに到着するからな…」

気が付くと、ドールハウスの近くに来ていた。Dollsと翔はドールハウスへと入っていき、新宿から生還したのであった。




いかがでしたか?今回はここまでです。
忘れ去られた都市で、彼らを待っていたのは……残酷な現実だった。これを身を持って知った翔は、『自分たちにも、救えない命はある』、『どんなに手を伸ばしても、届かないことだってある』ことを改めて思い知らされた。

妖魔との戦闘シーン辺りで、『仮面ライダー鎧武』の台詞を書きました。

次回も、お楽しみに。
では、またね

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