〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
新宿から帰還したDollsと翔。その中で、サクラは……気持ちの整理がつかないままでいた。
翔はサクラの元に向かい、話を始めようとする。サクラは戦う理由を考えるが、中々思い付かずにいた。考えている中、再びアタラクシアに向かうよう命令が下る。
では、本編へどうぞ
斑目「皆が収集したデータに基づき、新宿の調査結果が報告された。新宿の旧都庁にある場所にピグマリオンの本拠地と思しき『塔』が確認された。この塔を便宜上、“アタラクシア”と命名する。」
“アタラクシア”…ピグマリオンの本拠地と思われる塔の名前である。
翔「“アタラクシア”……」
カナ「アタラクシアは全長250メートル。これは観測上の数値であり、実際の高さは不明です。またアタラクシアは蝶の数が多く、通信ジャミングで内部の正確な情報は不明です。」
翔「その情報を得るには…あそこに直接入らなきゃならねぇんだろ?」
カナ「翔君の言うとおりです。建物に直接侵入しない限り、内部の情報を手に入れることはできません。」
斑目「しばらくアイドルは休業だ。アタラクシアの攻略を最優先ミッションとする。」
斑目の言葉に、サクラは言う…。
サクラ「また、あそこにいくんですか……」
カナ「…そうなります。」
カナは険しい表情を浮かべて答えた。一同は黙り込んだ。
カナ「ひとまずは待機時間とします。」
斑目「感傷に浸る間も惜しい。休める時には休んでおけ。」
Dollsは観測室を出た。
翔「…。」
翔は険しい表情を浮かべ、俯いてしまう。
愛「…翔君。」
翔「…俺は何度も戦場を経験してきた……ある程度は整理できてる。」
愛「そっか、翔君…ストライカー達の隊長だったもんね……」
翔「それもそうだが…ストライカー達から逃げている時も、妖魔と戦った……Dollsのメンバーにも言ったが、そんな状況で見てきたのは…………」
斑目&カナ&愛「……っ。」ゴクリッ…
翔は重い口を開いた。
翔「…沢山の、人の死体だ……」
斑目&カナ&愛「っ!?」
翔の言葉を聞いた3人は、声が出ない程驚いた。
翔「かつての俺は…『一人も死人を出したくない』って思いで妖魔と戦っていた……とある村に妖魔が現れ、俺はストライカー達を引き連れた…ストライカー達が何もしない中、俺と俺の味方のストライカー達が妖魔と戦ったんだ……俺は何もしないストライカー達に「お前らは、妖魔から人を守る存在なんじゃないのか!?」って言った…けど……」
3人「…。」
翔「アイツらは、全く聞く耳を持たなかった……だから俺は、妖魔達と戦うことで精一杯だった……冷静さを失っていた……んで、戦いは終わったけど…死人を出してしまったんだ……俺の思いは届かず、俺は死人の家族から散々罵倒された…『何でお父さんを守れなかったんだよ』、『ストライカーは怪物から人を守る存在じゃないのかよ』…ってな……」
斑目「…そんな……」
カナ「翔君は妖魔達と戦っていたのに……」
愛「責められるのはストライカー達の方じゃん!…翔君は、何も悪くないのに…」
斑目、カナ、愛は口々に言う。
翔「…いや、俺も責められて当然だ……」
カナ「ど、どうして…?」
翔「言ったろ?俺は冷静さを失っていたんだ…そのせいで、俺はストライカー達に的確な指示を出せなかった……全部が全部…アイツらが悪い訳ではない……現場から帰る時、ストライカー達からは散々暴言を吐かれたよ…『その程度で、よく隊長という肩書きを背負っているな』、『あんたには無能という言葉がお似合いだ』、『人殺し』とかな……アイツらは俺だけじゃなく、俺の味方のストライカー達にまで、暴言を吐いた…『こんな役立たずの味方をしている貴女達も無能だ』、『無能が意見を出すな』、『無能が戦場に出る資格は無い』とかな…」
斑目「…!…ストライカー共…なんて身勝手な奴らなんだ…!」
カナ「何もしなかったくせに…!」
愛「翔君達を無能呼ばわりしてたけど、本当に無能なのはストライカー達じゃん…!それに、戦場に行って何もしないアイツらが、戦場に立つ資格は無いよ!」
感情的になる3人。
翔「あぁ、アイツらは何もしなかった……その結果が、今のアイツらの戦い方だ…あんたらも見たろ?アイツらの無様な戦いを…」
翔は斑目、カナ、愛に言う。
愛「…うん、Dollsのストーカー達が世界を変えた時にね……」
カナ「ストライカー達…上手く連携が取れていませんでしたね……」
斑目「確かに…想像以上に無様なモノだった……」
3人は、ウエスタンな世界での出来事を思い出した。そこでストライカー達の戦いを見たが…それは無様なモノだった。
翔「南田さんが言ったように、アイツらは連携を取れてねぇ。恐らく…俺を連れ戻すことに必死で、戦闘訓練を怠っているんだろうよ。」
翔はそう言うと、観測室の椅子に座った。
愛「あ、翔君…そこ、斑目所長の」
斑目「良い、気にするな。」
斑目は愛に言った。
翔「さて、話を戻すか……戦いが終わった後、俺は…自身の思いは『綺麗事』だってことに、漸く気付いた…自分の心が愚かだったってことに、漸く気付いた……そこで学んだのは…『俺たちにだって、救えない命はある』、『どんなに手を伸ばしても、届かないことだってある』ってことだ……」
斑目「……青空…」
カナ「……翔君。」
愛「…翔君…」
話を終えた翔は椅子から立ち上がると、観測室を出ていった。
あの後、翔はDollsの女子寮に向かった。
ガチャッ…
翔「邪魔するぞ。」
雪枝「あ、隊長さん。」
翔「よぉ、雪枝。サクラはいるか?」
雪枝「あ、はい。自分の部屋にいますよ。」
翔「サンキュー。」
翔はサクラの部屋の前に向かうと、
コンコンッ…
ドアをノックした。
サクラ「…はい。」
翔「俺だ。」
サクラ「あ、どうぞ…」
サクラの声を聞いた翔は、サクラの部屋に入っていく。
翔「サクラ、ちょっといいか?」
サクラ「……あ、はい。」
サクラは悲しげな顔をしていた。
翔「……元気…な、訳ねぇよな……」
サクラ「元気じゃ……ないです。あの光景が
頭にこびりついて…ミサキさんの言った通り、私、ドールというものを勘違いしていました。」
サクラは口角を下げる。
翔「…そうか。」
サクラ「……。」
そこに……
シオリ「…はじめはみんな、そうですよ。」
シオリがやって来た。
サクラ「シオリさん……」
シオリは語り始める。
シオリ「ドールになった直後は記憶も感情もありません。だから、戦う理由もありません。そして、ドールになった以上、戦い続けるしか、道はありません。」
翔「…戦い続けるしか、道はねぇ…か……」
シオリの言葉に、翔は口角を下げた。
シオリ「サクラさんも、戦う理由を見つけてください。それを持つことができなければきっと、身体より先に心が壊れてしまいますよ。」
翔はシオリに質問する。
翔「シオリ……お前の戦う理由は、何だ?」
シオリ「そうですね…」
シオリは、翔の質問にこう答えた。
シオリ「私はDollsの仲間が好きです。少しでも、みんなと一緒にいるために戦います。」
翔「…そうか。」
シオリ「それと……」
シオリは翔の元に振り向く。
シオリ「私は翔君が大好きです。それは、Dollsのみんなも同じ……もう、翔君を失いたくない…翔君を守るために戦います。」
シオリは優しい笑顔で翔に伝えた。
翔「それが、お前の戦う理由か…ありがとな、答えてくれて。」
シオリ「いいえ…質問してくれて、ありがとうございました…♪」
サクラ「戦う理由……」
その時……
PPP--
カナ『待機時間は終了です。再び、アタラクシアへ侵攻します。』
待機時間の終了と、アタラクシアへの侵攻が告げられた。
シオリ「さあ、行きましょう。翔君。アタラクシアへ。」
翔「あぁ、行こうか。」
翔はDollsと共に、再びアタラクシアへと向かった。
ナナミ「ここがアタラクシア--旧東京都庁、というわけですか。薄暗くてジメジメしてなかなかに気が滅入る場所ですね。」
翔「あぁ…そうだな……」
ナナミ「それにしても----」
ナナミの視線の先に、翔も視線を向ける。そこには……
男性?「ああああああああああ……あうあああああああ……」
女性?「ひゃひゃひゃひゃひゃ……」
正気を失った人たちの姿があった。
サクラ「皆さん、この奥へと向かっているようです。」
シオリ「まるで巡礼者のよう。この先に何があるんでしょうか……」
アタラクシアの奥へと向かおうとした、その時……
PPP--
カナ『--ッ!ピグマリオン反応検出!』
ピグマリオン反応が出た。
カナ『ジャミングのせいで発見が遅れました!迎撃態勢、用意!』
そして、ピグマリオン達が姿を現した。
サクラ「しょ、翔さん、来ます!」
翔「…上等だ!行くぞ!」
Dollsはそれぞれの武器を構え、翔は爪を立てるような野性的な構えを取り、ピグマリオン達に立ち向かった。
いかがでしたか?今回はここまでです。
結局…サクラの戦う理由は、見つからなかった。しかし、戦いを経験し、彼女はゆっくりと……ゆっくりと……戦う理由を、探して行く。
妖魔達が彷徨く戦場を何度も経験してきた翔は、ある程度は整理していたものの……人の死体を見ることは、辛いことであった。
次回も、お楽しみに。
では、またね