〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』   作:やさぐれショウ

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やさぐれショウでございます。
サクラは戦う理由を見つけられないまま、仲間達と再びアタラクシアへと足を運んだ。
襲いかかってきたピグマリオン達を撃破し、アタラクシアの奥へと足を進める。そこには……
では、本編へどうぞ


第四十六話 捕食者の領域

襲いかかってきたピグマリオン達を撃破した翔とDollsは、奥へと足を進める。

ナナミ「うっ…………」

奥にも、おびただしい数の死体が転がっていた。

ナナミ「なんて酷い光景……血の匂いでむせ返りそうです。」

翔「ここは更にヒデェな……」

サクラ「ひどい……」

翔(それだけじゃねぇ……妙な気配を感じる…)

ここで、シオリが口を開いた。

シオリ「ここにある遺体…今までのものとは違いますね。」

翔「…あぁ。どの遺体にも、デケェ爪痕がある。」

シオリ「これは一体……」

翔「それに…」

翔も口を開く。

翔「さっきから、妙な気配を感じるんだ。」

ナナミ「妙な気配…ですか?」

翔「あぁ、恐らくここには……何かがいる。慎重に足を進めるぞ。」

その時、

サクラ「あ、あれを見てください!」

サクラが声をあげ、先に進む。

翔「あ、おい!」

翔、ナナミ、シオリもサクラの後を追う。更に奥へと進むと、そこには……

女の子「ひっく、ひっく…」

1人、泣きじゃくっている幼い女の子の姿があった。

サクラ「だ、大丈夫!?」

サクラは泣いている少女に声をかける。

女の子「お姉ちゃん……誰?」

サクラ「私は…サクラっていうの。貴方のお名前は?」

ルリ「わたしはルリ。」

この少女の名前は『ルリ』である。

翔「おい、サクラ…?…って、えっ?」

ナナミ「こんなところに子ども…?」

そこに、翔とナナミ、シオリが合流した。

シオリ「よかった……どこもケガはしてないみたいです。」

すると…

ルリ「あ!?ナナミンとシオリンだ!」

ルリはナナミとシオリを見て声をあげた。

シオリ「あら?私たちのこと知ってるの?」

シオリはルリに問いかける。

ルリ「ルリ、知ってる!ルリね、Dollsのこと大好き!」

ルリは元気よくシオリの問いかけに答えた。

ナナミ「…そうですか。だったら、サインあげますよ。」

ナナミはルリに微笑む。

ルリ「本当に!?」

ナナミ「もちろんです。だから、ここから出て帰りましょう。」

ナナミは優しい笑顔で、ルリに言う。しかし……

ルリ「あっ……それは…たぶん無理だよ。」

ルリは驚きの言葉を口にした。

4人「「「「えっ?」」」」

ルリの言葉に、困惑する4人。

サクラ「どうして?」

サクラがルリに聞くと…

ルリ「新しいパパがここから出たらダメだって。」

と、ルリは言う。

翔「新しい…パパ?」

ルリ「新しいパパはルリの本当のパパとママを殺して、食べちゃったの。」

翔「…はっ…?…な、なにを…言っているんだ?」

翔はルリの衝撃的な言葉を聞き、言葉を失った。

ルリ「ルリがここから動いたらきっと、パパはルリのこと食べちゃうの。」

翔「…まさか…!」

その時……

ビー!ビー!

カナ『ピグマリオン反応検出!頭上10M、回避してください!!』

ピグマリオン反応が出た。

翔「何!?お前らこっから離れろ!!」

翔の言葉を耳にしたサクラ、ナナミ、シオリはすぐにその場を離れた。そして……

ザシュゥン!…ズドォンッ!

白い身体に赤く鋭い爪が特徴の、人型のピグマリオンが降り立った。

サクラ「ピグマリオン……!」

翔「アイツは、あの時の!?」

その時…

ルリ「パパ、やめて!Dollsのみんなを殺さないで!」

ルリが声をあげた。

???「キシャシャシャシャ!!」

嘲笑うような声を出す人型ピグマリオン。

翔「コイツが…新しいパパだと…!?」

翔はルリの説得を開始する。

翔「ルリちゃん、目を覚ませ!!ソイツは君のパパではない!!」

しかし、翔の訴えはルリには届かない。

斑目『子どもを囮にする、だと……こいつは知性を持っているのか--』

カナ『気をつけてください!EsGのアラートが鳴りっぱなしです!』

???「キシャシャシャシャ!!」

人型ピグマリオンは爪を振り上げる。

翔「来るぞ!」

翔は野性的に構える。サクラ、ナナミ、シオリは剣を構える。

???「キシャシャシャシャ!!」ブォンッ!ブォンッ!

人型ピグマリオンは爪を振り回す。

翔「ちぃっ!!」

翔は攻撃を避け続ける。

ナナミ「くっ!」ガキンッ!ガキンッ!

シオリ「…っ!!」ガキンッ!ガキンッ!

サクラ「つ、強い--!」

ナナミとシオリ、サクラは剣で攻撃を防ぐ。

シオリ「このピグマリオン……今までの比じゃありません!」

ナナミ「なんなの、コイツ……!」

翔「前よりも強くなってる…!?」

PPP--

斑目『これ以上は消耗する一方だ!撤退しろ。他のチームを待つ時間はない。撤退しろ!今すぐにだ!』

斑目から撤退命令が下された。

サクラ「ルリちゃんを…せめて、ルリちゃんを助けないと…!」

サクラがそう言うも…

斑目『あきらめろ。』

斑目はきっぱりと言った。

サクラ「そんな……!」

斑目『青空、シオリ!引きずってでも、サクラを離脱させろ!』

シオリ「了解しました!サクラさん、離脱します。」

その時…人型ピグマリオンが爪を振り下ろしてきた。

ガキィンッ!

翔「…っ!!」

翔はアマゾンブレードで攻撃を防いだ。

ナナミ「翔さん!私たちに指示を出してください!」

翔「分かってる!退却だ!退却しろ!!」

翔はそう叫ぶと、人型ピグマリオンの腹部にハイキックを繰り出し、吹っ飛ばした。

サクラ「そんな…翔さん!」

翔「気持ちは分かるが、こっちが死んだらもとも子もねぇだろうが!!退却するぞ!!」

翔の指示で、サクラ、シオリ、ナナミはその場を離れる。翔もサクラ達の後を追い、その場から離れた。

 

 

 

アタラクシアを出た翔達は、JMR新宿駅近くまで来ていた。

シオリ「…ここまで来れば大丈夫です。」

ナナミ「…あり得ないです。あんなの、聞いてないです……アタラクシアに…正体不明のピグマリオン…」

翔「…アイツは、かつてドールハウスを襲った化け物だ…!」

翔の言葉に、シオリとナナミはハッとする。

ナナミ「そう言えば……あの時の!?」

シオリ「でも、あのピグマリオンは…翔君が倒したはず!!」

翔「…アイツが復活した…!?…そんなバカな…!」

ナナミ「お先、真っ暗です。本当、サイアク…!」

暗いムードになる翔達。

サクラ「ルリちゃん……私、助けてあげられなかった…」

そこに……アヤ、レイナ、ヒヨが合流した。

アヤ「ちょっと聞いたわよ。そっちは大丈夫なの!?」

ナナミ「なんとか、大丈夫です。お気になさらずに。」

アヤ「翔、ケガしてない!?大丈夫!?」

ナナミの言葉を聞いたアヤは、翔の元に駆け寄る。

翔「平気だ。」

アヤ「そう…良かった。」

アヤは安心する。

レイナ「…さすがに一筋縄ではいかないようね。」

更に…ミサキ、ユキ、ヤマダが合流した。

ミサキ「所長から連絡がきました。…ひとまず、我々も帰投しましょう。」

翔「…。」

その時、翔の表情が険しくなる。

ヤマダ「…?…翔さん、どうしたんすか?」

翔「…お前ら、先に行ってろ。俺はちょっとだけここに残る。」

翔は眉間にシワを寄せ、警戒心を強くする。

レイナ「翔君を置いていけない、私たちも残るわ!」

翔「……。」

翔(そうだったな…俺はやっと、信じられる人たちと出会えたんだ……)

翔「…なら、翔の見える範囲に隠れて、見守っててくれるか?」

翔はDollsに言う。

ミサキ「…でも、翔さんを1人にするわけには…」

翔「危ないと感じたら呼ぶ。」

ミサキ「…分かりました。翔さん、お気をつけて。」

ミサキは翔の右手を優しく包むと、翔の言われた通り、他のメンバー達と共に、近くの建物内に隠れた。

翔「……。」

翔は声をあげる。

翔「おい、てめぇら……いることは分かってんだよ。出てこいよ!!」

すると……

「流石は、隊長さんだね。」

瓦礫の裏から、裏切り者のストライカーチーム『ココナッツ・ベガ』の4人が、姿を現した。

翔「てめぇら…性懲りもなくまたノコノコとやって来たか……」

リョウコ「隊長さんを連れ戻すためだもん。」

イミナ「隊長には、いい加減に戻って貰わないと困るんだよ。」

翔「何回言わせるんだ?俺はてめぇらの元には戻らねぇよ。」

ハヅキ「隊長さんにその気が無くても、あたし達は隊長さんを連れ戻すよ。」

アコ「アコっちたちからは逃げられないよ、ボス?」

ストライカー達は戦闘態勢に入る。

翔「それなら…俺はてめぇらを喰らってやるよ?捕食者の領域に足を踏み入れたこと、後悔するが良い…」

翔はそう言うと、爪を立てるような野性的な構えを取り、腰をどっしりと落とした。今の翔の目は、獲物を狙う餓えた獣のような目をしていた。その目からは……尋常じゃない程の『怒り』が溢れていた。

リョウコ「行くよ!」ジャカッ…

リョウコは機関銃を掃射した。アコは狙撃銃から弾丸を放った。翔は側転や前転で弾丸を回避した。そして、リョウコとアコがリロードを行った瞬間、走り出した。

ハヅキ「っ!!」

イミナ「へへっ、来たな?」

翔「っ!!」ダンッ!

ハヅキ&イミナ「「っ!?」」

翔は地面を勢いよく蹴って空高くジャンプし、ハヅキとイミナを避けた。落下する際、リョウコにキックを繰り出した。地面に着地した後、アコの身体を思い切り引っ掻いた。

アコ「がっ!?」ブシュゥッ!

アコの傷から血が吹き出した。リョウコとアコは戦闘不能になった。

ハヅキ「リョウコ!アコ!」

翔はハヅキとイミナの元に振り向くと、

翔「…フンッ、来いよ?」クイクイッ

挑発した。

イミナ「っ!?こんのぉぉおおおおおお!!」

翔の挑発に乗ったイミナは、翔目掛けて走り出した。

ハヅキ「イミナ、待ちな!!」

イミナ「でやぁぁああああああああああ!!」

イミナはハヅキの呼び掛けに聞く耳を持たず、拳を大きく振りかぶって翔に襲いかかった。

翔「…バカが。ムンッ!」ドゴォッ!

イミナ「ぐはっ!?」

翔はイミナの腹部にハイキックを繰り出した。イミナは吹っ飛ばされ、地面を転がる。

ハヅキ「っ!!行くよ!!」

ハヅキは双剣を構え、翔目掛けて走り出す。

ハヅキ「はぁっ!そらっ!!」

そして、双剣を振り下ろすが…

翔「ムンッ!せやっ!」バシッバシッ!

翔はハヅキの手から双剣をはたき落とした。そして、

翔「せいっ!やっ!はぁっ!ムンッ!」

殴る、蹴る等の肉弾戦でハヅキを追い詰めていく。

ハヅキ「っ!?」

ハヅキは翔の攻撃を受けるばかりであった。

翔「せぇぇえええいっ!!」ドゴォッ!!

ハヅキ「がはっ!!」

翔はハヅキの腹部に右ストレートを打ち込んだ。ハヅキは勢いよく吹っ飛ばされ、背中から壁に激突した。壁にはクレーターのような跡が出き、ハヅキは壁から落ちてうつ伏せに倒れ、戦闘不能になった。

イミナ「ぐっ…ハヅキまで…!」

翔「さて…後はてめぇだけだぞ?」

イミナ「…隊長を連れ戻すためにも、退くわけにはいかない!!」

イミナはそう言って立ち上がり、翔目掛けて走り出した。

翔「…なら俺も……容赦しねぇ…」

翔もイミナ目掛けて走り出す。翔はキックパンチ等の肉弾戦でイミナを攻撃する。

翔「おらぁっ!でぇいっ!はぁっ!」

イミナ「ぐっ!…くそ!」

イミナ(何であたしの思うようにいかないんだよ!隊長よりもあたしの方が戦闘力は上なはずなのに!!)

翔「よそ見してんじゃねぇよ、ぐぁぁあああああ!!」ザシュゥゥウウウウウッ!!

翔は救い上げるようにして、思い切りイミナを引っ掻いた。

イミナ「ぐわぁぁああああああ!!」

イミナの身体は宙を舞い、地面に叩きつけられた。

イミナ「うぐっ…ま、まだだ…!!」ヨロッ…

翔「…しぶとい野郎め……なら……」

翔は立ち上がったイミナ目掛けて走り出し、イミナを捕らえると……

翔「っ!!」ガブッ!!

イミナの左肩付近に思い切り噛み付いた。

イミナ「がぁぁああああああああっ!!あっぐぁぁあああああ!!」

苦しそうな声をあげるイミナ。しかし、翔は噛む力をどんどん強めていく。そして……

翔「ぐぁぁあああああ!!」ブチィィィイイイッ!

イミナを食いちぎった。

イミナ「ぎゃぁぁああああああああああ!!」ブシュゥゥウウウウウウッ!!

イミナの左肩付近からは勢いよく血が吹き出した。イミナは仰向けに倒れ、戦闘不能になった。

翔「…相変わらず弱ぇな……」プッ…

翔は肉片を吐き捨て、口元の血を拭きながら言った。

翔「おい、出てきてもいいぞ。」

翔がそう言うと、Dollsが建物内から出てきた。

アヤ「翔、容赦なくやったのね。」

アヤは戦闘不能になったストライカー達を見ながら言う。

翔「あぁ…かつてアイツらが、容赦なく俺を傷つけたようにな…」

翔はゴミを見るような目で、戦闘不能になったストライカー達を見る。

ユキ「…翔さん。」

ユキは不安そうな顔をして、翔を見る。

翔「ユキ、俺は大丈夫だから。心配すんなよ、な?」

翔がそう言うと、ユキは安心したのか笑顔を見せた。

翔「さて、今度こそ帰ろっか。」

翔の言葉に、Dollsは頷いた。サクラ、ただ1人を除いては……

サクラ「…。」

翔「帰ろう、サクラ。」

サクラ「……わかり、ました。」

そして……Dollsは翔と共に、ドールハウスへと戻っていった。




いかがでしたか?今回はここまでです。
アタラクシアに謎の少女『ルリ』がいた。しかし、残念ながら救出はできなかった。理由は……新型の人型ピグマリオンが現れたからだ。「アイツは、あの時の!?」という翔の言葉から、現れたピグマリオンの正体はお分かりいただけましたか?このssの第六話、第七話を見ればお分かりいただけるかと……。
それと…最近、裏切り者のストライカー達の出番が無かったので、この回で登場させました。
次回も、お楽しみに。
では、またね

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