〜プロジェクト東京ドールズ〜『化け物とドールの絆』 作:やさぐれショウ
敵を仕留められなかった悔しさを拭えず、自傷行為に走ってしまった青空 翔。未だに情緒不安定な彼を落ち着かせようとドールハウス専属の医者『片山 愛』はとあることを提案する。
では、本編へどうぞ
アタラクシアでリーパーを仕留められなかった悔しさを、翔は未だ拭えずにいた。
翔「…。」
翔はドールハウスの庭にあるベンチに座り、項垂れており…落ち込んでいた。そんな彼を、遠くから見守る人物がいた。
カナ「…翔君。」
カナであった。
愛「あ、カナちゃん。」
そこに、愛がやってくる。
カナ「…片山さん、翔君……」
カナは心配そうに翔を見る。
愛「あぁ…完全に落ち込んじゃってるね……」
カナ「リーパーを仕留められなかったこと…相当悔しかったんですね……」
愛「うん、あたしもそう思う。」
愛はそう言うと、落ち込んでいる翔の元に向かう。
愛「…翔君。」
そして、翔に声をかける。しかし、翔は項垂れたままである。
愛「…調子は、どう?」
翔「…。」
愛の質問に、翔は反応を示さない。
愛「あまり良くない感じかな…?」
愛がそう問いかけると、翔は小さく頷いた。
愛「…そっか…」
愛は口角を下げる。
斑目「カナ。」
そこに、斑目が姿を見せた。
カナ「斑目さん…翔君、落ち込んでしまっているみたいで……」
斑目「…。」
斑目は翔を見ると…翔はベンチに座り、項垂れていた。明らかに、落ち込んでいる。斑目は、落ち込んでいる翔を見て心配していた。
愛(う~ん……どうしたら翔君は落ち着くかなぁ……?)
愛は翔を落ち着かせる方法を考えた。
愛(……あ、そうだ…!)
そして、ある方法を思い付いた。
愛「ねぇねぇ翔君、ちょっと出掛けない?」
翔「…?」
翔は顔を上げて、不思議そうに愛を見る。
愛「まぁ、出掛けるって言っても…そんなに遠くに行くって訳では無いんだけどね。ちょっとした散歩みたいな感じかな?……どう?」
翔「…気分転換、か…?」
愛「そうそう!」
翔はしばらく考え込み…
翔「…行く。」
出掛けることにした。
愛「ホント!?やったー!」
愛は子どものように喜ぶ。
斑目「片山…一体どんな方法を思い付いたんだ…?」
カナ「さぁ、どうでしょうか…でも、何だか良い方法であるような気がします。」
翔は自室で服を着替え、出掛ける準備をしていた。手ぶらでも構わないと言われていたが、翔は財布は持っていくことにした。桜のような花や花びらがプリントされた『天空寺 タケル』の衣装に身を包み、準備は完了した。
翔(この服…プレミアムバンダイで売ってたから、ついつい買っちゃったんだよな…)
翔は愛が待つ事務所に向かった。
コンコンッ…
愛「はーい。」
翔「俺だ。」
愛「入っていいよ~。」
愛の言葉を聞いた翔は、
翔「失礼する。」
事務所に入った。愛も私服でいた。
愛「おぉ、翔君…その服装って、仮面ライダーゴーストの!?」
翔「そうだけど?」
愛「よく似合ってんじゃ~ん♪」
愛は目を輝かせながら、翔の私服姿を見る。
翔「てか、そこの3人は…?」
翔はミサキとナナミとアヤを不思議そうに見る。
愛「あぁ、ミサキちゃんとナナミちゃんとアヤちゃんも一緒に行きたいって。」
愛は微笑みながら言う。
ナナミ「せ、折角ですし…その……しょ、翔さんと出掛けたいです…///」
アヤ「あたしも翔と出掛けたくて♪」
ミサキ「私もです。翔さん、どこへでもお供します♪」
愛「人数も多いほうが、きっと楽しいよ♪」
翔「…そうか。」
愛「うん!それじゃ…行こ、翔君♪」
翔「…うん。」
そして、翔は愛、ミサキ、ナナミ、アヤと共に外出した。
外は雲一つない快晴であり、心地よい風が吹いていた。
愛「良い天気だね~♪」
愛は遠くを見る仕草をしながら言う。
ナナミ「愛さん、サンバイザー着けてるので手で影を作る必要は無いのでは…?」汗
愛「あはは、それもそっか。」
ナナミのツッコミに愛は笑う。
アヤ「でも確かに、良い天気ね♪」
アヤは楽しそうに言う。
翔「…。」
翔は街の雰囲気を見る。休日ということもあり、楽しげに歩くカップルらしき人たちや、家族連れの人たちの姿がよく見られた。
ミサキ「今回は蝶の姿が見られないわね。」
ナナミ「確かに…どういうことでしょうか……」
翔「良いじゃねぇか、今は安らぎの時なんだからさ…」
翔がそう言うと、
ナナミ「そうですよね…♪」
ミサキ「翔さんの言うとおりね♪」
ナナミとミサキは翔に共感した。
愛「ねぇ翔君、どこか行きたいとこはない?」
翔「今はねぇな。」
愛「そっか。もし行きたいところがあったら、遠慮なく言ってね♪」
愛は翔に優しく言った。
アヤ「そうだ、あたしのオススメのスイーツ店に行かない?」
アヤがそう提案すると、
愛「それイイね!」
愛は賛成した。
アヤ「この近くに、フレンチトーストが有名なお店があるの。どう?」
愛「へぇ~、そうなんだ!行きたいなー♪」
ミサキ「私は良いと思うわ。」
ナナミ「仕方ないですね…」
今時の女子の会話を挟むメンバー。
翔「…。」汗
翔は会話について行けずにいた。
アヤ「翔もどう?」
翔「フレンチトーストか……食ったことねぇから、少し興味がある。」
アヤ「決まりね、じゃあ行こー♪」
メンバー達はアヤの案内の元、有名なフレンチトースト店に向かった。
店につき、運良く席を取ることができた。メンバー達は注文を済ませ、会話を挟みながら待っていた。数分後、注文した料理が運ばれてきた。
翔「…おぉ。」
思わず翔は、声を出す。
アヤ「~♪」パシャッ
アヤはスマホで運ばれてきたフレンチトーストを撮影する。」
翔「…何やってんだ?」
アヤ「あぁ、写真を撮ってインスタグラムに載せるんだ。」
翔「ふーん。」
アヤ「翔はインスタグラムってやってないの?」
翔「やってない。俺がインスタグラム等のSNSを使えば、間違いなく“アイツら”が嗅ぎ付ける。それに……」
翔は続ける。
翔「お前らが俺と関わっていることを、アイツらに知られたくないんだ…ま、いずれ知られちまうだろうけど…」
翔はそう言うと、口角を下げてしまう。
愛「気を遣ってくれてるんだね、翔君。」
愛は翔に言う。
愛「これはあたしの価値観になっちゃうんだけどね……いずれ知られちゃうなら、今知られても構わないんじゃないかな?アイツらを拒んでいるって意味も込めてさ。」
翔「アイツらを、拒んでいるって意味……?」
愛「そう。戦うだけじゃなくて、色んな方法でアイツらに拒絶反応を示すんだよ。」
愛は翔に案を出す。
アヤ「あたしね、翔と関わっていることをアイツらに知られても別に構わないから。」
ナナミ「いずれ知られてしまうと感じていたら、今知られても私は構わないと思います。私達にだって、翔さんと関わる権利はあるんですし。」
ミサキ「愛さんの言葉にも一理ある。翔さんにとって、『ここが自分の居場所、安らぎの場所』って示す意味もあると思うわ。」
アヤ、ナナミ、ミサキも言う。
翔「……。」
翔は少し黙り込み…
翔「…そうだな。だったら、いいのかな…?」
と、言った。
アヤ「ふふっ、それじゃあ手始めに♪」
アヤはテーブルにスマホを置き、翔と写った写真を撮影した。
翔「おい…今撮った写真も、SNSに載っけるのか?」
アヤ「う~ん、検討中ね。」
翔「いやいや、やめとけよ…スキャンダルに発展しちまうだろ…」汗
神様(大丈夫大丈夫。)ニコニコ
神様はニコニコしながらテレパシーで言う。
翔(いや、だいじょばねぇよ!)
神様(この世界の人々は、君のことを大変気に入っている。それに、君はDollsを救った英雄だ。)
翔(そういう問題じゃねぇだろ…!)
神様(まぁまぁそう言うな。SNSを見てごらん?面白い内容が投稿されているぞ。)
翔(は、はぁ…?)
翔はスマホを開き、SNSを見る。
『いっそのこと、翔君とDollsのメンバーが写ってる写真とかでないかな~?』
『兄貴とDollsのツーショット写真や集合写真、見てみたい!』
『でも翔君、スキャンダルとか心配してるかも知れない…でも大丈夫だよ!翔君の頑張りはこの国からも認められてるから♪』
『それに、翔君なら…信頼できるし!』
翔「…何だこりゃ…」汗
SNSの内容を見た翔は困惑した。
神様(このような事実があるんだ。スキャンダルとかの心配はしなくても大丈夫だぞ。)
翔(これも、神様の仕業なのか?)
神様(いや、私は何もしてないぞ?)
翔(えっ?)汗
神様(それじゃ、精一杯楽しむんだぞ♪)
神様は姿を消した。
愛「いやぁ、ビックリだね。まさかSNSで翔君とDollsが写ってる写真を見たいって言う人がいっぱいいるなんて。」
愛はニコニコしながら言う。
アヤ「翔、さっき撮った写真、載せても大丈夫?」
翔「…好きにしな。」
翔はアヤに言う。
翔「俺は『お前達を拒んでいる』って意味も込めて、な。」
アヤ「OK、分かったわ♪」
アヤはフレンチトーストの写真と、翔とのツーショット写真をインスタグラムに載せた。その後、フレンチトーストを味わうメンバー達。
愛「ん~♪ほっぺが落ちちゃいそう♪」
ミサキ「糖分と粉物はよく合うわね♪」
ナナミ「…ふふっ…♪」
アヤ「ね、最高でしょ♪」
メンバー達は楽しげに会話を挟む。
翔「…。」モグッ…
翔もフレンチトーストを一口サイズに切り、口に運んだ。
翔「…!……♪」
思わず翔は目を閉じて上を向く。
翔(スゲェ……まるで、天に昇るような……まろやかな甘味が口いっぱいに、広がっていく……)
翔の表情は、とても幸せそうだった。
メンバー「「「「……♪」」」」
愛、ミサキ、ナナミ、アヤは幸せそうな顔をする翔を見て、思わず微笑んだ。店の中にいる店員や他の客も翔を見て思わず微笑み、和やかな雰囲気に包まれる。
愛(久しぶりに見たな~、翔君の幸せそうな表情♪)
ミサキ(良い表情ね…♪)
ナナミ(あぁ、何だかこっちまで…幸せになります…♪)
アヤ(このお店に来て正解だったわね♪)
翔「…?何だこの雰囲気…?」汗
和やかな雰囲気に包まれた店内に、困惑する翔。
アヤ「そ、それよりも食べよ?」
ナナミ「そ、そうですね…!」
ミサキ「時間が勿体無いわ。」
愛「落ち着いて食べてね、みんな。」
翔「…ま、いっか。」
メンバー達はフレンチトーストを再び食べ始める。そして、会計を済ませると店を出た。
愛「美味しかったね~♪」
アヤ「でしょでしょ♪また行きたいな~♪」
ナナミ「まぁ、悪くなかったです。」
ミサキ「あそこのフレンチトーストは、確かに絶品だったわ。」
翔「…だな。」
会話を挟むメンバー達。
愛「あ、そうだ。翔君のオススメスポットってあったりする?」
愛は翔に聞く。
翔「急にどうした?」
愛「いやぁ、何かあたし達ばっかり楽しむのも、申し訳ないって言うか…」
翔「俺は俺なりに楽しんでる、気にすることはねぇよ。」
翔は言う。
アヤ「あたし、翔のオススメスポット知りたいな~♪」
ナナミ「わ、私も…!」
ミサキ「私もです。何か得られるモノがあるかも知れないので。」
愛「翔君、お願いしてもいい?」
翔「……ついてきな。」
翔は案内を開始した。メンバー達は翔の後についていく。
翔の案内でメンバー達がやって来たのは…とある渓流だった。
愛「ここが、翔君のオススメスポット?」
翔「そうだ。」
ナナミ「大都会にこんな場所があったなんて、驚きです…!」
翔「俺もだ。」
翔はそう言うと、近くの岩に座った。
ミサキ「この場所、いつ見つけたんですか?」
翔「今。」
ミサキ「い、今…ですか…?」
翔の返答に、困惑するミサキ。
翔「野生の勘ってやつ…かな…?」
翔はそう言い、川のせせらぎに耳を傾ける。
アヤ「それにしても…良い場所ね、ここ♪」
愛「そうだね~、何か落ち着くなぁ~♪」
アヤと愛は思わず、ググ~ッと背伸びをする。
ナナミ「翔さんは、落ち着ける空間を探すのが得意なんですね…♪」
ナナミは翔に言う。
翔「たまたまだよ。」
翔はそう答えた。
ナナミ「翔さん。」
翔「…ん?」
ナナミ「そ、その…隣、座っても…いいですか?」
翔「あぁ。」
翔の返答を聞いたナナミは、翔の左隣に座った。ふと、ナナミはウトウトし始めた。
翔「何だ、眠いのか?」
ナナミ「…は、はい…少しだけ、眠いです…」
翔「なら寝な。眠れる時は、眠っとけ。」
翔はナナミに言う。その言葉を聞いたナナミは眠気に勝てず…翔に寄りかかって眠ってしまった。翔も目を閉じると、すぐに眠りについた。
愛「おっ…。」
ミサキ「どうしました、愛さん?」
愛「…。」
愛は軽く指差す。ミサキとアヤが、愛の指差す先を見ると……翔とナナミが、ベンチのような岩に座って眠っていた。
アヤ「翔、疲れていたのね…」
ミサキ「アタラクシアのこともあったし…無理もないわ…」
アヤとミサキは眠っている翔を見ながら、彼を起こさないような小さな声で話す。
愛「ナナミちゃんも良い顔して寝てるね…」
愛は微笑みながら、翔とナナミを見る。
ミサキ「本当ですね…♪」
アヤ「昔は…こんなに良い顔してなかったよね……あたしもだけど…」
ミサキ「それは否定できないわ……でも、今は違う…翔さんは、ここにいるから…」
アヤ「そうね…♪」
ミサキとアヤは小声で会話をする。
愛「翔君…ヨダレが…」
翔は少しヨダレをたらしていた。愛はハンカチを取り出すと、翔の口元を丁寧に拭いた。
愛「…本当に可愛いなぁ…♪」
愛は優しく微笑み、眠っている翔の頭を撫でる。愛と翔の血は繋がっていないが、愛にとって翔は弟である。愛する弟に危害を加えることはない……彼女の微笑みは、優しい母性が具現化したモノである。
アヤ「あ、ナナミ…」
ナナミは幸せそうな顔をして、眠っている。ずっと会いたかった人に漸く会うことができ、まるで『離れたくない』と言っているように翔に寄りかかり、彼の服の裾をぎゅっと握りしめていた。
ミサキ「幸せそうな顔をして寝てるわね…♪」
アヤ「本当ね…♪」
愛「ふふっ、何だかお兄ちゃんと妹みたい…♪」
ミサキ、アヤ、愛は眠っている翔とナナミを見て、思わず微笑んだ。
ナナミ「…すぅ……すぅ………翔さん……♪」キュッ
ナナミは翔の服の裾を握り、翔の名前を呟き…幸せそうに眠っていた。
数十分後…翔が最初に起き、その後にナナミが起きた。ナナミは自分の状況を理解すると、顔を真っ赤に染め上げ、愛にからかわれた。メンバー達はドールハウスに帰ったのだが、ナナミはドールハウスにつくまで顔を赤く染めたままであった。
いかがでしたか?今回はここまでです。
久しぶりのほのぼの回を書きました。愛、ミサキ、ナナミ、アヤと共に外出した青空 翔。時には案内人となり、メンバー達を自然の世界へと連れていった。そこで安らぎの時を迎え、漸く…落ち着きを取り戻すことができたのであった。
次回も、お楽しみに。
では、またね