ラスタル・エリオンはアリアンロッド艦隊を指定の宙域に展開し終えたところだった。
「予定時刻は15分も過ぎている。」
通信兵が応えた
「一隻来ます。貨物用輸送艦が一隻です。」
ラスタルは応えた。
「ん?輸送艦一隻か。新しいモンターク商会は戦艦を買う金もないと見える。マクギリスの時とは大違いだな。」
ザッザッ
「こちらモンターク商会のユーズ・エイトロッドだ。ラスタル・エリオン総司令とお見受けするが。」
通信相手にラスタルは答える。
「いかにも。私がラスタル・エリオンだ。いやはやまさかこの平和な時代に決闘とはね。しかし仮面というのはいささか失礼ではないかな。」
ユーズ・エイトロッドと名乗った男は仮面をしていた。髪型はマクギリスに似ていなくもないが髪の色はマクギリスの金髪よりやや黄色がかっている。第一マクギリスの胡散臭い貴族風の雰囲気がない。どちらかといえば火星の土くれが似合う男のようだ。
「それは失礼。少々事故にあったものでね。しかし、あなたを討つのはこの私ではない。この暁がやる。」
仮面の男の隣には、背の低い少年がいた。
「子供か、、、。阿頼耶識を使えば我々に勝てるとでも?この宇宙の人類ならば、阿頼耶識の悪魔達を私が下したことも知っていると思うが。まぁよい。勝算あってのことだろう。」
「怖気づいたのか?」
ラスタル・エリオンが答える。
「いや、また昔のように幼い子供を殺めるかもしれないと思うと気が重くてな。」
「そういうあなたは顔が笑っているようだが?これまで爺の相手ばかりで退屈だったろうラスタル・エリオン。楽しませてやるよ。人間の力をな。」
「それは楽しみだ。貴様が遅刻したおかけでこちらの姫様はご立腹だ。」
ザザッ
ジュリエッタが回線に割り込んできた。旗艦ファフニールのスクリーンにジュリエッタの顔が大きく映し出された。
「総司令!私は腹を立ててなどいません!」
仮面の男が答える。
「これはこれは。先の大戦で悪魔を討ち取った英雄、ジャンヌ・ダルクの再来と相まみえるとは光栄だ。遅刻のお詫びだ、ラスタル・エリオン。決闘開始はこちらのMSの発艦と同時で構わない。」
「それはありがたい。遠慮なく屠らせてもらおうか。ジュリエッタ、聞いたな。」
ジュリエッタが応える。
「ハッ。」
しばらくすると仮面の男が言った。
「すまないが少し発艦までお待ちいただきたい。なにしろそちらのアリアンロッド艦隊と違って我々は練度が低い。」
ラスタルは答えた。
「こちらの準備はできている。奇襲でもなんでもやって見給え。」
仮面の男は答えた。
「さすがラスタル・エリオン総司令。懐が広い。では。」
ザザッ
旗艦ファフニールの通信兵が応える
「通信切れました。」
ラスタル・エリオンは考えていた。さぁどう出る?仮面の男。奴らの狙いがいまいち見えないのが気になった。モンターク商会はその昔マクギリスが隠れ蓑に使っていた会社だ。今更復讐というわけでもあるまい。それにマクギリスを直接殺したのはガエリオだろう。第一、アリアンロッド艦隊と輸送艦一隻では勝負にすらならない。仮に悪魔を投入してくる場合に備えてダインスレイヴ部隊も展開してあるのだ。奇襲攻撃でもしようものならものの数秒で輸送艦は搭載MSと共に宇宙のチリとなるだろう。こちらはガンダム・ヴィダールとジュリエッタを用意している。これに勝てるMSとパイロットを奴らは用意しうるのというのだろうか。まさか、、、な。
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モンターク商会の輸送艦 ホタルビ改 の中は慌ただしかった。
艦内をアナウンスが流れている。
「発進シークエンス準備」
「エイハブリアクター、3番、5番、7番開放」
「E.O.B スラスター全基同調!」
「リアクター4番、スタンバイ!」
「メインエンジンとリンク完了!」
「AGSスタンバイ!異常なし!」
「E.O.B メインエンジン点火!」
「コントロールをパイロットへ」
仮面の男は言った
『頼むぞ暁』
茶髪の少年が返す
『任せろユージン。暁、ガンダムバエル・ウィス・レクス。発射準備完了。』
発射まで15、14、13 、、、
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アリアンロッド艦隊旗艦ファフニール内
通信兵が応える
「敵輸送艦から、膨大なエイハブウェーブを確認。この固有周波数は、、、ガンダム・バエルです!!」
ラスタル・エリオンが答える。
「ほう、、、オモチャを直してきたか。」
通信兵が再度答える。
「しかしこのエイハブウェーブは通常のMSにしては大き過ぎます。3倍以上のゲインがあります。」
流石のラスタル・エリオンに冷や汗が奔る。まさか火星に埋まっていた古のMAを掘り出してきたのではあるまい。もしMAの動向をギャラルホルンが知らなかったとすれば軍の怠慢も甚だしい。敵MAはダイン・スレイブ部隊にてつるべ撃ちにするしかない。後ほどギャラルホルンの然るべき部署も締め上げる必要がありそうだな。しかし、、、だとしてもアリアンロッド艦隊の勝利は揺るがない。仮面の男が人類の敵であるMAを出してきた時点でもはや決闘とはいえまい。甘い、甘すぎるぞ仮面の男。そう考え直すとラスタル・エリオンは平静を取り戻した。
通信兵「巨大な熱量確認!一機きます!」
ラスタル「来たか。お手並み、、、
通信兵「これは、、、早すぎます、、、間もなく接艦!
ラスタル「は、、、?」
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ジュリエッタはガンダム・ヴィダールのコクピットで呼吸を沈めていた。今更巌流島でもあるまいと思うが、敵輸送艦は遅刻の上中に引きこもっているのだ。何もないと考える方がおかしい。それでもギャラルホルンを司るアリアンロッド艦隊、その代表として自分が負けるわけにはいかない。しかし、ヴィダール、いや彼はマクギリスに勝利後、ガエリオ・ボードウィンの名に戻ったが、今や彼との模擬戦でも互角に近い成績を出している私に勝てる相手がいるのだろうか。これまでもギャラルホルン内外で何度か決闘もしたが苦戦する敵はいなかった。火星であの、MAを屠った悪魔のようなMSが出てくることはもうない。
そうぼんやりと考えているのも束の間、ジュリエッタは輸送艦から暴力的なエイハブ・ウェーブが拡がっていくのを感じた。周りの静けさに反してまるでブラックホールとホワイトホールが衝突でもしたかのようだ。寒気がした。もう敵機の発艦を待たずに輸送艦を沈めてしまうべきではないか。迷いが冷や汗と共に頭をよぎった。しかし騎士としてまたボードウィン家当主代理としてもそんな恥ずべき行為はできなかった。腹の底から湧き上がる恐怖を抑え込んだ。そしてラスタル総司令に通信を繋ごうとした瞬間だった。
輸送艦が暴力的な真っ白い光を放った。視界が一面真っ白になった。
「司令、、、あなた、、、」
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突如として旗艦ファフニールの前に出現したガンダムバエル・ウィル・レクスはすれ違い様に腕部ブレードでブリッジを切断した。それが、総司令官ラスタル・エリオンの最後だった。
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E.O.B. 【 External Overd Booster 】
その後の戦争を大きく変えたこの拡張ブースターは、MSの三倍以上もの長大なロケットブースターをMSの背面に接続したものだ。このE.O.B.によって、強固なエイハブ・リアクターとガンダムフレームを伴った最強の兵士を開幕早々に敵将の眼前に出現させることができるようになった。一方、E.O.Bによる高速機動は人体への負荷が甚大であり容易にパイロットを破壊した。人体の知覚を超えた高速機動は人体とMSの感覚を一体化させる阿頼耶識が必須であり、またパイロットには阿頼耶識による脳の負荷のみならず極大なGがかかった。エイハブリアクターによる反重力装置(AGS)をもってしても全てを相殺できなかった。一度の使用でほとんどのパイロットがなんらかの障害を患ったと言われている。
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こうしてアリアンロッド艦隊とモンターク商会の決闘はモンターク商会の勝利に終わった。
鉄血のオルフェンズはとても面白い物語だったので書きました。最後は鉄華団全滅エンドに近かったのですが死んでも死んでも新しい芽が出てくるというのが鉄血のオルフェンズのように思います。