プロローグ
その目覚めは、とっても暖かな母の腕から始まった。
僕の名前はチャーリー・モロウ、2019年の世界からやってきた転生者だ。
最初に気づいたのは、自分の体が縮んでいるということだった。
おかしいと思って体を見ると、何故か自分が赤ん坊になっており、目の前には母親らしき女性と、父親らしき男性がこちらの目が覚めるのをじっと見つめていた。
「あなた、目を開けたわ」
「おお、でかした、なんて可愛らしいんだろう、こんなにも可愛らしいのに男の子だなんて信じられないよ」
「ふふっ、そうね...私もまさかこんなに可愛らしい子が産まれるなんて思ってもみなかったわ、ねえ...名前はちゃんと考えてくれた?」
「ああ、考えてあるよ、『チャーリー』この子の名前はチャーリーだ」
「チャーリー、チャーリー、うん...良い名前ね、あなたの名前はチャーリーよ、産まれて来てくれてありがとう、やっと会えたね愛しい私たちの子」
...それから5年後。
やあ皆、僕はチャーリー、チャーリー.モロウだ。あの目覚めから5年経った今、僕は父さんの仕事を手伝っています。
「チャーリー、そっちのネジを取ってくれ」
「わかった!、これだね父さん」
「ありがとうチャーリー、それじゃ次は.....」
彼の名前はガブリエル・モロウ。
僕の父親で、時計職人を営んでいる。
「ガブリエル、チャーリーに仕事を手伝って貰うのは良いけど、怪我をさせないように気をつけてね」
彼女はミシェル・モロウ、僕の今世の母親で、僕が父さんの仕事を手伝っていると微笑みながら(目は笑っていない)注意してくるんだ。
僕を心配してくれるのは良いんだけど、濁った目で話しかけてくるのはやめて欲しい、結構怖いんだ。
「大丈夫だよ母さん、僕は父さんの息子なんだからね、怪我なんかしっこないよ、だから安心して」
「ごめんなさいね、私最近あなたがお父さんの手伝いをするようになってから不安で仕方がなくて...。
でも、あなたの言葉を聞いて安心したわ、気をつけてねチャーリー」
こんな風に結構過保護な母さんなんだ。
毎回、安心させてあげるのに苦労するけど、僕も家族のことが大切だから、その気持ちが良くわかる。
「チャーリー、母さんと一緒に二階へ上がっていなさい、ここからは僕が一人でやるから」
「うん、じゃあ母さんと一緒に昼食の用意をしておくね」
「ああ、楽しみにしているよ」
これが僕の日常、父さんや母さんと一緒に、ありふれているけど、幸せな日々を過ごしていた。
だけど、その3日後。
僕の人生を大きく変えることがあった。
???「こんにちは、母の時計を取りに来ましたの、誰かいらっしゃいませんか?」
その日僕は、運命に出会った。
「いらっしゃい、父さんは出かけているから、ちょっと待っててくれるかな?」
「わかりました、ここで待たせていただきますね」
「待っている間に自己紹介でもしようか、僕の名前はチャーリー、君の名前は?」
「チャーリーさんですね、はじめまして、私はシャルロット・コルデーと申します、仲良くしてくださいね」
これが彼女、シャルロット・コルデーとの出会いだった。
「へえ、チャーリーさんは、お父さんの手伝いをしているんですね」
「うん、材料のネジを父さんに渡したり、道具を片付けたり、最近は時計の作り方を習い始めたんだ」
「そうなんですか、でしたら、いつか私が大人になったときは、貴方に時計をお願いしますね」
「えっ、本当に僕何かで良いの?、コルデーさん」
「そんな他人行儀な呼び方をせずに、シャルロットと呼んでくださいな」
「それじゃ、シャルロットさん」
「はい」
「さっきも聞いたけど、本当に僕で良いの?、時計作りなら父さんの方が上手だと思うんだけど」
「ふふっ、きっと大丈夫ですよ、なにせこれから何年も後のことですから、きっと上手に作れるようになっています。
だから、約束です。私が大人になったらはじめての時計は、貴方が作ってください」
「うん、わかった。君が初めて身につける時計は必ず僕が作ろう」
僕と彼女の最初の約束。
彼女との最初の思い出がこれだった。
今思うと、この時からだったのだろう。
僕が、彼女に惹かれていたのは。
それから僕たちは何回も会った。
「チャーリー、一緒にピクニックに行きましょう」
「うん、行こう!」
最初の頃は、僕もまだまだ堅くて、必ず『さん』づけで呼んでいたけど、次第にそれもなくなって、互いに名前で呼びあうようになった。
それから、数年の月日が流れ、僕たちは13歳になった。
そして、
「チャーリー、お母さんが」
彼女の母親が亡くなった。
「チャーリー、私は修道院に入ることになりました」
「なっ、どうして!」
「花嫁修業と言われましたけど、多分家が困窮しているからだと思います」
「じゃあ、つまりは口減らしじゃないか!」
「仕方ないですよ、母が死んでから父もいっぱいいっぱいなんです、私のことまで見ていられないのでしょう」
「そんな、でもそうしたらしばらく会えなくなるね」
「大丈夫ですよ、永遠に会えなくなるわけではありません、だからそんな不安そうな顔しないでください」
「シャルロット」
「はい」
「ちょっとここで待っていてくれないかな、君に渡したい物があるんだ」
「わかりました、ここで待っていますね」
...5分後。
「シャルロット!」
「チャーリー、そんな慌てなくても良かったのに」
「あはは、ごめんごめん、どうしても君にこれを渡したかったから」
彼女に渡した物は。
「あの日の約束、ちゃんと守ったよ」
あの日の約束、彼女が身につける初めての時計だった。
「チャーリー、これは」
「実はさ、君と約束したあの日の家に、父さんへ時計の作り方を教えて欲しいって頼んだんだ」
「...えっ」
「そしたら父さん、途中から僕たちの話を聞いてたらしくてさ、めちゃくちゃはりきって僕に作り方を教えてくれたんだ」
「そんなことが」
「そっ、それでいろいろあって出来上がったのがその時計なんだ、本当ならもう少し後に渡す予定立ったんだけど、君が修道院に入っちゃったら渡せなくなるからね。
だから今渡すことにしたんだ」
「チャーリー.....ありがとう、とても嬉しいです」
「シャルロット、僕は君が喜んでくれるだけで、とっても嬉しいんだ。
だから、修道院を出たら僕と結婚してくれないか」
「へっ?」
「本当はもっと前から言おうと思ってたんだけどさ、僕なりに覚悟ができたから言わせて貰うよ。
シャルロット、僕は君が大好きだ!」
「ええーーーーー!!」
...5分後。
「ごめん、びっくりさせちゃったね」
「いえ、でも嬉しいです。貴方が私を好きでいてくれて」
「返事を聞かせて貰っても良いかな?」
「ええ、私の返事は最初から決まっています」
「チャーリー、私も貴方を愛しています」
これが、破滅の始まりだった。