【嘘予告】EP00 2014:ソウゴと千景 作:イナバの書き置き
やっぱり毎日更新してますね私。
消えていく。
私の中から消えていく。
ソウゴさんの声、ソウゴさんの温かさ、ソウゴさんとの思い出、ソウゴさんとの約束。
彼が私に与えてくれた人生の、その全てが焼け落ちる。
全部が燃えたら後には一体何が残る?
何もない。
私には何も残らない。
ソウゴさんから与えられた物を失ったら私はあの村で一生腐っていくだけの生きる屍になる。
嫌だ。
絶対に嫌だ。
この温もりを手放したくない。あんな苦しみに満ちた生活に戻りたくない。私はソウゴさんの隣を歩きたい。
────でも、その為にソウゴさんに無理を強いるの?
ソウゴさんはあんなに戦った。あんなに傷ついた。もう悩んだり、辛い目に会う事はしないで欲しい。
でも、私は彼に身を削らせようとしている。
私は一体どうしたらいいのだろう。どうしたら──────
「……夢?」
最悪の目覚めだった。
汗まみれの身体を引き起こし何とか布団から這い出る。壁にかかった時計を見ればまだ午前5時だった。学校に行くにしても早すぎる。もう1度寝よう、と体を横にしようとした瞬間声をかけられる。
「やぁ、千景君」
「──────!?」
何故か朝食を作っているウォズさんがいた。部屋に鍵も掛けたはずなのにどうして、と言う疑問より早く、昨日彼とソウゴさんの話を盗み聞きしてしまった気まずさがやってくる。
「……どうやって、入って来たの?」
「それは今はどうでも良い事だね。それより君に話があってね……朝食がもうすぐ出来る。食べてから話そうか」
「……ええ」
「……」
「……」
お互い無言のまま朝食を食べる。ウォズさんの料理は普段なら美味しいと感じるのだろうがこの気まずさではとても味など分かったものではない。
「……ご馳走さま……その、ありがとうございます……」
「お粗末様でした。それじゃあ、早速本題に入ろう」
片付けもせずに話を始めるのか。何となく何を話すつもりか予想がついていた私はどうにかしてこの場から逃げ出したかったが、ウォズさんはそれを許すつもりは無いらしい。
「君は昨日、私と我が魔王の話を盗み聞きしていたね?」
「……その、ごめんなさい……」
やはりその話題だった。きっと私には聞かれたくない話題で、2人だけの思い出話。到底謝って許されるとは思わないが、謝罪しない訳にはいかなかった。
「ああ、いや別に私達の昔話を聞いたのは別に責めたりはしないよ。本題はそこじゃない」
「は……?」
意外だった。2人にとって聞かれたくないし触れられたくない話題だと思っていたのに──
「私は君の誤解を正しに来たんだ。我が魔王が言っても君は納得しないだろうしね」
「……どういうこと?」
誤解。誤解等あっただろうか。まるで見当が付かない。
「どうも君は自分が我が魔王に愛する事を強要している、と勘違いしている様だがそれは思い違いも甚だしい、と言っておきたくてね」
「そんな事、ある訳ないでしょう……!」
「それはどうかな? 君は我が魔王とそれなりに暮らしをしてきた様だが、私には及ばない。先達の言葉は聞いてみるものだよ?」
一体何なのだこの人は。朝っぱらからいきなり現れたかと思えばソウゴさんの理解者面で言いたい放題言ってくる。
「簡潔に言うとだ、千景君。我が魔王は君が我が儘を言ってくれない事に不安を覚えているんだ」
「な────!?」
「君が去った後我が魔王はぶちぶちと愚痴を吐き続けた訳だが、聞いてみるかい?」
「ちょっ……ちょっと待って!」
予想外の方向性の発言に混乱した私を無視してウォズさんは懐から取り出したICレコーダーのスイッチを入れる。
『千景はさぁ……良い子すぎるんだよぉぉぉ……あの位ならもっと言いたい事があるはずなのにぃ……』
『わ、我が魔王……もしや甘酒で酔っておられる……?』
『ちょっとウォズ! 話聞いてんの! ……千景は言いたい事の1つもあるはずのに何でか俺に文句の1個も言わないんだよぉぉぉぉ……やっぱり我慢してるよね……ねえウォズ、どうしたら良いのか教えてよぉ……その本に何か書いてないのぉ……?』
『……我が魔王、逢魔降臨歴は検索エンジンではないのだが』
『いいから! ウォズも何か知恵出してよぉ―』
「分かってくれたかい? 千景君。足りないなら後2時間分あるが……」
「わ、分かったからもういいわ……」
どうやら私の勘違いだったらしい。ホッとした。
私がソウゴさんを苦しめていたら、自分自身を一生許せなくなりそうだったから、安心した。
「それでだ。私は君にもっと我が儘を言うように説得しに来た訳なのだが、これを聞いてまだ抵抗するかい? それなら────」
「いえ、分かったわ。そうね──きっとお互いに思い遣りが擦れ違ったみたい。……もうちょっと、頑張ってみるわ」
「そう言ってくれると非常に助かるよ。我が魔王を宥めるのは大変だったんだ……」
どうやら非常に迷惑をかけてしまったらしい。申し訳なさが込み上げてくる。
「ご、ごめんなさい……」
「いや、別に君が謝る必要などないよ。これも昨日我が魔王に頼まれた事だからね──────おっと、もう1つやるべき事があった。千景くん、受け取ると良い」
ウォズさんが何かを投げて寄越す。
両手で受け止めたそれは、ソウゴさんも使っているジクウドライバーと、見知らぬライドウォッチだった。
「ゲイツ君の形見だ。使う事がないと良いんだが、もしもの時に備えて君に託しておく」
「私に……?」
「君だからこそ、だよ。私では我が魔王を助けられない時があるかもしれない。その時は『家族』である千景君が代わりに我が魔王を救って欲しい」
「────分かったわ」
重い責任を背負った。私は死んでしまったソウゴさんの友人の分まで私が戦わねばならない。
でも不思議と悪い気はしなかった。今なら、なんだってやれる気がした。
(明光院)ゲイツの出番はありませんが(仮面ライダー)ゲイツの出番は作ります。
・常磐ソウゴ
甘酒で酔う。あんまりに千景が良い子なので逆に不安を覚え愚痴を吐き出した。
・郡千景
勘違いしていたけど仕方ないよね。普通に思い遣りとか出来るのでそこで擦れ違った。
・ウォズ
忠臣。お互いのすれ違いを正す気遣いも出来るしもしもに備えて千景の戦力を強化する名采配。