【嘘予告】EP00 2014:ソウゴと千景 作:イナバの書き置き
──こんな不出来な子供を押し付けてしまって申し訳ない──
千景は不出来な人間などではない、と俺は言うことが出来なかった。
ここで反論してしまうことで、不必要な揉め事を起こしてこの一件を無に帰してしまうのが千景にとって一番良くないと
だから俺は一刻も早く千景を連れその場から離れる事を選んだのだが、本当にそれで良かったのだろうか。
だれもいないクジゴジ堂で1人考える。もしゲイツだったら、おじさんだったらどうしていただろう──
──常磐ソウゴの日記より──
生まれ育った故郷を離れ、ソウゴさんと共に電車に乗った。小学校での遠足以外で集落を出た事が無かった私だったが、窓の外を流れる景色を幾ら眺めてもこの事態に対する現実味が湧かずぼんやりとするばかりだった。そんな私を気遣ってか、ソウゴさんは必要以上に語りかけてきた。
「俺に敬語なんて使わなくて良いから。これから一緒の所に住むのに敬語使ってたら気が滅入っちゃうでしょ?」
「え、ええ……わかりま──わ、わかったわ、ソウゴさん」
「千景はどういう料理が好き? カレーとか? いやでもやっぱり四国なんだからうどんは欠かせないよねぇ──」
「う、うどんが……好き……」
「わかった。今日の夕飯はうどんにしよう! それでさ、俺、おじさんがやってた時計屋に住んでるんだ。千景は──」
私がどういう返事をしたのかはあまり思い出せないが、彼の言葉は今でも1つ残らず思い出せる。今だったら高嶋さん達といくらでも出来る様なこんな何気無い会話でも、あの頃の私には特別なモノに思えて、だから一生忘れる事はないと確信していた。
そうして何時間か電車に揺られ、私達は他の何にも代えがたい1年を過ごす事になる『クジゴジ堂』に辿り着いた──
ソウゴさんに背中を押されて入ったクジゴジ堂は、何と言うべきか1人で住むには広すぎる、と言うのがパッと思い浮かんだ感想だった。
まるで今の今まで何人か住んでいたかの様な生活感があるのに、実際に住んでいるのはソウゴさん1人と言う違和感。
──もし
もしその違和感の正体にもっと早く私が気付けていたら、彼の支えになれたかもしれなかった──
「ごめん千景」
「ソ……ソウゴさん……そんなに謝らなくても……」
「本当にごめん────────」
「────うどん作れなかった……」
ソウゴさんは料理が下手だった。と言うより後に分かった事だが、今まで彼はどうやって生活してこれたのか不思議な程家事が出来なかった。
その為彼が歓迎会と称して作ってくれたスペシャルうどん(自称)も、うどんのようなナニカとしか言えない物体に変貌したのは当然の結末だった。
──けれども、もう何年食べていないか分からない『家族』の手料理は何よりも嬉しくて、気付かぬ内に嗚咽を漏らしていた。
「わ―ッ! ごめん! ホントにごめん! 泣くほど無理して食べなくて良いから! ほら千景無理しないで──」
「ごめんなさい……そういうのではないの……私、私嬉しくて……ッ」
これが私とソウゴさんの、初めての食事。とても暖かかった彼との思い出の欠片。
・常磐ソウゴ
家事をおじさんに任せきりなのでもちろん料理は出来ない。クジゴジ堂は時空改変で『あったことにした』けど仲間には会えない。
・郡千景
うどんがヤバい
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