【嘘予告】EP00 2014:ソウゴと千景   作:イナバの書き置き

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今回大分話が重いです。
後友人に相談した結果三人称っぽいサムシングに挑戦してます。


花結い編 第十四花 消失

 それは圧倒的で、しかし単純な力と力のぶつかり合いだった。

 

「はあッ!」

「ぬうッ!」

 

 オーマジオウとバールクスの拳が轟音を上げて衝突する度に凄まじい衝撃が発生し、樹海のどこかが弾け飛ぶ。

 私達も例外ではなく、激突の度に木の葉の様に巻き上げられ、樹海を転がり回る事となった。

 形勢はややオーマジオウ──ソウゴさんに有利のようだった。

 バールクスはソウゴさんのラッシュを捌ききれずに、時折打撃を受けてよろめいている。

 

「でやぁッ!」

「ぐうぅッ!」

 

 鋭く抉る様な一撃がバールクスの腹部を打ち抜き、よろめいた所を蹴撃が襲う。

 バールクスは抵抗も出来ぬまま吹き飛ばされ、樹海の根にめり込む様にして動きを止めるもソウゴさんが、オーマジオウがその程度で攻撃を止める筈が無かった。

 

『サイキョーフィニッシュタイム!』

 

 オーマジオウが召喚した大剣が巨大な光剣に姿を変え、必殺の構えを取る。

 

『キングギリギリスラッシュ!』

 

「うあぁぁぁぁッ!」

 

 天を衝く程の光剣がバールクスを樹海ごと呑み込み──────

 

「──リボルケイン!」

 

 その装甲に傷1つ付いた様子の見られないバールクスが光を剣で引き裂き、そのまま一気にオーマジオウに肉薄する。

 

「ああああぁッ!」

「ぬおおおおッ!」

 

 ソウゴさんは光剣で受け止め、そのまま両者一歩も引くことなく鍔迫り合いに移行する。

 お互いに引くことも進む事も出来ない、膠着状態に陥る。

 

 ────決着は、未だ付きそうにない。

 

 

 

 

 

 バールクスの顔が視界一杯に映る程の密着状態で拮抗する。今だけはオーマジオウの少しも表情を読み取る事の出来ない仮面に感謝している。きっと、他人には見せられない顔をしている。

 

 ────ここで、ここでバールクスを逃す事だけはあってはいけない

 

 オーマジオウの機能の1つであるパラレルラトラパンテにより思考を共有した平行世界の自分、2068年の自分、ありとあらゆる『常磐ソウゴ』が頭の中で叫んでいる。

『常磐ソウゴ』が最低最悪への一歩を踏み出した原因、そして平成に生きる全ての人々を虐殺した邪悪を前にして、ソウゴは怒りを爆発させていた。

 

「でやあぁぁぁぁッ!」

「があぁッ!?」

 

 怒りのままに『ジオウサイキョウ』の文字が刻まれた光剣を押し込み、膝を付いたバールクスの肩を焼く。

 

 ────後少し、後少しで全部終わる

 

 もう間もなく迎える邪悪の終焉にソウゴの心が歓喜で震える。平行世界全ての『自分』の意思を背負った今この瞬間だけは千景も、他の勇者も、神樹も忘れてバールクスを打ちのめす事に満足感を覚えていた。

 だからこそ、ソウゴは第三者の介入に一切気付く事が無かった。

 

「SOUGOさん!」

「────?」

 

 突如背後から出現した赤嶺の一撃にもソウゴは一切揺らぐ事は無かった。予測は出来ていなかったが、取るに足らない事象であったからだ。

 だが、その無謀な行動に一瞬集中が逸れる。

 バールクスが動くには一瞬で十分だった。

 リボル剣がサイキョージカンギレードをかち上げ、生まれた隙に電光石火の突きが打ち込まれる。

 

「とあッ!」

「ぐぅッ!」

 

 僅かに後退したのを確認したバールクスと赤嶺は大きく距離を取った。

 

「赤嶺、無事か」

「勇者部の奇襲は園子ちゃんのせいで失敗しちゃったけど、大丈夫。それより……自分の心配をして?」

 

 ────赤嶺か、邪魔するなら殺すか──? 

 

 2人のやり取りを無視して追撃を加えようとし────動きが止まる。

 

 ──いや待て、殺す? 俺が、人を? 守るべき民を? 

 

 思考に入ったノイズがソウゴの行動を阻害する。

『常磐ソウゴ』は守るべき存在である人を殺すのか──? 

 まるで電池の切れた機械の様にその場に静止するオーマジオウを一瞥し、バールクスは千景に声をかける。

 

「とんだ挨拶になってしまったが、俺達のタスクは果たされた。最早常磐ソウゴがこの世界に留まる事は不可能だろうな」

「そう言う事で失礼するね、郡ちゃん」

「待っ──────」

 

 2人が千景のリアクションを待つことなく撤退すると同時に、オーマジオウの全身から光が発せられる。

 

「これは──神樹に弾かれたのか」

「ソウゴさん──? まさか、オーマジオウになったせいで?」

 

 ソウゴの言葉に千景は深い絶望に叩き落とされた。

 

 ──またか。また私達を引き裂くのか

 

 千景はソウゴから何がなんでも離れまいとすがり付こうとして────その両手がソウゴの体をすり抜ける。

 今やソウゴは少しずつ光となって消失しつつある。

 千景は必死になって光の粒子をかき集めようとするものの、最早取り返しのつかないほど薄くなったソウゴの姿を見るや、涙に濡れた顔を樹海に打ち付け懇願する。

 

「嫌、嫌ぁ……! 私を1人にしないで! お願いだから置いていかないで……!」

「────」

 

 千景の哀願に答えられる者など、この場に1人もいる訳が無かった。

 そうして取り乱す千景以外の誰もが沈黙したまま────常磐ソウゴはこの世界から姿を消した。




・常磐ソウゴ
勝利を焦り過ぎて神樹から退去させられる。SOUGOがやったことから考えて仕方ない対応だとも言えるが冷静を大きく欠いていた。

・郡千景
精神がズタボロにされる。

・常磐SOUGO
予定通りソウゴを焚き付け神樹から追い出す。赤嶺とはそこそこ仲が良い。

・赤嶺友奈
ゆゆゆいでの通りに勇者部を奇襲するが中学生園子によって撤退に追い込まれる。SOUGOとは親戚おじさん感覚で接している。
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