【嘘予告】EP00 2014:ソウゴと千景   作:イナバの書き置き

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珍しく早めに更新出来ました。


第二十二花 寛容

「ま、待って下さい常磐さん! 山伏さんはまだ目覚めたばかりなんですよ! 安静にしてないと──」

 

「案ずるな、話はすぐ済む」

 

 しずくの体調を案ずるひなたの意見を一蹴してソウゴ──いや、魔王は部室の外へと歩き出す。

 

 マズい。誰かが止めなければならない。

 

 そう誰もが思っているのに口を開く事すら憚られる威圧感が、魔王からは放たれていた。咄嗟に魔王を制止したひなたも恐怖から手が震えている。

 

 無理もない事だ、と千景は思った。

 今勇者部の前にいるのは心優しく最高最善の王を夢()()青年ではなく、自らの全てを擲って世界を守った──世界しか守れなかった青年の成れの果て、「時代」の墓守なのだから。

 常磐ソウゴと魔王では守るべきものも、失ったものも違う。その差が気迫の差となって表れているのだ。

 

 ──何度か会っていなければ、私だってどうなっていたことか

 

 千景は今ソウゴを乗っ取ったのはかつて夢の中で遭遇した魔王と同一人物だろうと直感で見抜いていたが、だからこそ彼の怒りに身が竦んでしまっている。

 

 ──せめてウォズさんがいれば、もう少しここに留めておけたかもしれないのに

 

 その気になれば、世界をも壊す魔王の力を十全に理解しているのは千景とウォズだけだ。

 いや、そもそも状況を正しく認識しているのは千景だけだ。周りの人達は突然ソウゴが恐ろしくなった様にしか見えていない。

 下手を打てば即座に行動に移す事は千景にも容易に想像出来た。

 ならば、今自分に出来る事は──

 

「……そうね、行きましょう。ソウゴさん」

 

「千景さん!」

 

 咎める様にひなたが叫ぶが、今はそんな場合ではない。この世界の存亡が懸かっているのだ。

 

 ひなたに肩を寄せ、囁く様な小さい声で説得を試みる。

 魔王には筒抜けかもしれないが、それでもここでひなたが死ぬのは御免だ。

 

「お願い、上里さん。今だけは私の言う事に従って。──仲間から死人が出る所は見たくないわ」

 

「そんな、常磐さんが私達を攻撃するなんて出来るんですか」

 

 ソウゴが人を殺す筈がないと信頼されていた事に千景は少し安堵したが、尚更止めなければならないと語気を強めた。

 

「ええ、出来る。今の『彼』は間違いなくやる。それだけの覚悟と怒りがソウゴさんにはあるの。彼の征く道を妨げたら死ぬわ」

 

「そうですか……分かりました」

 

「話は済んだか」

 

「ええ。行きましょう」

 

 説得が終わったのと合わせて魔王が千景に声をかける。

 話が終わるまで待機してくれていたので案外融通は利くのかもしれない、と千景は人心地ついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「話す事は何もねぇ」

 

「……」

 

 シズクの開口一番つっけんどんな言葉に千景は頭を抱えた。

 頭まで布団を被ってガタガタ震えながらなので精一杯の強がりなのだろうが、その強がりで惨状になるかもしれないので止めて欲しいものである。

 

 銀から事情を聞いた所では、この山伏しずくと言う少女は二重人格で「しずく」に危機が迫った時は荒々しい性格の「シズク」が表れるらしい。

 とは言え自らを打ちのめした魔王の眼光から布団を被って威嚇する姿は微笑ましいものがある。

……相手が魔王でなければの話だが。

 

「……ソウゴさん、ここは一旦出直した方が良いんじゃないかしら」

 

「いや、良い」

 

 バッサリと切り捨てられ何とも言い難い表情となった千景を他所に、魔王は膨らんだ布団の丁度シズクの頭があるであろう位置に手を載せた。

 

「……」

 

「な、なんだよ……」

 

 すわ大惨事かと身を固くする千景とひなただが、魔王はそんな2人の予想を裏切りそのまま布団越しにシズクの頭を黙々と撫でだした。

 シズクも含めて全員が困惑する中一頻り撫で終わった魔王は、ボソリと呟いた。

 

「お前が平成を冒涜するアナザーライダーへと成った事、それは赦しがたい罪だ」

 

「だ、だったら殺せば良いだろ。なんでこんな事しやがる……!」

 

「だが、友を人質に取られ、抵抗出来なかった事は情状酌量の余地がある」

 

「──」

 

「加えて力の差を知りながら私に挑んだその勇気、仲間を尊ぶその精神、称賛に値する」

 

「──」

 

「故に赦そう。私はお前を害する気はない。だから、話してくれないか」

 

「な、何を……?」

 

 千景は己の耳を疑った。てっきり魔王はシズクに尋問めいた行為をするものだと思っていたが、早々に赦してしまうとは考えもしなかったのだ。

 それ程千景が夢で見た魔王の『怒り』は苛烈だ。

 怯えるシズクに魔王は淡々と問いかける。

 

「あの時私を襲撃したアナザーライダーはお前以外全て偽物だ。本物がどこにいるか知りたい」

 

「は……? 何だよ、それ。楠が、雀が、弥勒が偽物って、冗談だろ……?」

 

「否。いくらお前の目は誤魔化せても私に通じるものか。《アレら》は全てワームが変じた瞞しに過ぎない」

 

「そんな……!」

 

「知らないか。ならば申し訳ない事をしたな。では、上里ひなた」

 

「な、なんですか?」

 

 一人合点がいった様に頷き、魔王はひなたを呼びつける。

 ビクリと反応したひなたの方を見向きもせずに魔王は保健室の戸を引いた。

 

「山伏の看護はまかせる。私にはすべき事がある」

 

「は、はい……」

 

 言うだけ言って魔王はスタスタと去って行った。

 何とも言えない空気が保健室を漂う。

 

「……あっ! ま、待ってソウゴさん!」

 

 しばし呆然とした千景も慌てて外へ飛び出して行った。

 残されたひなたは、布団から安堵した様子で顔を出したシズクを見て溜め息をついた。

 

 

「……あなたも、災難ですね」

 

「ホント、怖かったぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に良かったの、ソウゴさん。まだ何か隠しているかもしれないわ」

 

「いや、あれ以上は知らないだろう……直感だがな」

 

 廊下をズンズン進むソウゴを追いかけながら疑問を投げ掛ける。

 千景は仲間への信頼は強いが、だからこそ敵に1度抱いた疑念を払拭出来ずにいた。

 しかし「直感」と返されたら閉口するしかない。魔王の直感とくれば尚更だ。

 

「──それに、随分と怯えさせてしまった。見ていて気の毒だったからな」

 

「ぅえっ?」

 

 魔王らしからぬ発言に思わず変な声が出た。

 千景が逢った魔王はそういう「慈悲」とか「気遣い」とか言った言葉とは無縁だと思っていた。

 

「……特段おかしい話でもないだろう。私にこの『常磐ソウゴ』を孤立させる意図などありはしない。体を借りているだけだからな」

 

「……撫でる必要はあったのかしら」

 

 少し拗ねた声色になった。

 正直に言おう。あんな場面だと言うのに千景はシズクに嫉妬していた。

 漸くソウゴを取り戻したと思ったら魔王に乗っ取られたので、頭を撫でられたシズクが心底羨ましかったのである。

 それは私の権利だろう、と──

 

「どうなのかしら」

 

「まぁ、そうだな。──おじさんなら、きっとそうするだろうと思っただけだ」

 

 

 ──そう言うのだと、言い辛いじゃない

 

 何でもない風に飛び出した重い理由に千景は自らの失策を悟った。

 この流れで自分も撫でて欲しい等と言える筈がない。

 それでもこの鬱憤はどこかで晴らさねばならない。きっとそうだ。

 魔王の前に躍り出た千景は指を突きつけ、無慈悲な宣告を降す。

 

「今日の夕飯は激辛カレーにするわ」

 

「待て。何故だ」

 

「鈍感なソウゴさんが悪いのよ」

 

「撤回してはくれないか」

 

「嫌よ、絶対にしないわ──」

 

 

 

 

 

 

「さて──」

 

 何とも穏やかな言い争いをする2人の背後、物陰から白い服の男が現れる。

 全身の所々にノイズが走る異様な男は、手元のノート型デバイスを開くと、そこに記された文章を読み上げ始めた。

 それに2人が気付く様子はない。

 

「──こうして最高最善の魔王を夢見た青年はその意識を封じられ、戦いは次のステージへ進みました」

 

「そう、時は移ろいゆくもの──いつまでも止まったままではいられません。

 故にどれ程止まった様に見えようとも平成は終わり、次の時代のライダーが────おっと」

 

 

 

「少し喋りすぎましたね」




・常磐ソウゴ(2068)
通常ソウゴと区別するため地の文では魔王。
ソウゴを乗っ取りはしたが形振り構わないと言う程ではない。
シズクにうっかり父性(魔王の想像する中で)を発揮してしまう。

・郡千景
しっとぐんちゃん
あっ…この魔王思ったより優しい…!

・山伏しずく/シズク
魔王と対面したら即座にシズクにバトンタッチするのもやむ無し。でも怖いものは怖い

・上里ひなた
かわいそう

・???
ゲイツがいるなら当然いる(暴論)
でも出そうと考えたのは書いてる最中なので今後どうするかは全く考えてない。





極めて個人的な事なんですが
『ライフル・イズ・ビューティフル』
見てますか?
個人的に(念押し)オススメなので是非見て下さい(元ライフル部員並の主張)
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