【嘘予告】EP00 2014:ソウゴと千景 作:イナバの書き置き
何とか文章が出てきました。
「今回の作戦について説明させて頂きます」
「前回様々なトラブルが発生しましたが、愛媛の奪還に成功しましたので続いて徳島へと攻め入ります」
「香川、愛媛両県の境界をバーテックスが越える気配は無いので当面は防備を無視しても平気でしょう」
「次にアナザーライダーの動向についてですが、勇者の皆さんが相対する相手は楠芽吹さんであると神託が降りました。残念ながらどのアナザーライダーになっているかは不明ですが、誰が本物であるか判っているだけ楽でしょう」
「よって、常磐さんには仮面ライダーバールクスと赤嶺友奈を足止めしてもらいます。彼らに横槍を入れられたら堪ったものではありませんから」
「アナザーライダーには、千景さんを中核とした連携で以て臨みます。中学生の園子さん、そして杏さんには状況を見て赤嶺さんを抑えてもらいますが、基本は此方の対処を優先して下さい」
「主に千景さんと若葉ちゃん、夏凛さんが芽吹さんの相手をする事になりますが、勝てないと思ったら直ぐ引いて下さい。相手がどう出てくるか分からない以上無駄な損耗は避けたいですからね」
「今回は赤嶺さん、アナザーライダーと言った不確定要素が多くいざ戦いが始まったら乱戦になると考えられますが、大まかでもに役割を分けておけば混乱は避けられる筈です」
「──作戦と言うよりただの指針ではないか?」
「それは、そうかもしれませんが……」
「と、兎に角! 連携を意識する事が大切です! 以上、何か質問はありますか!?」
「……歯がゆいわね」
はるか遠くで散発的に瞬く光を眺めながら、三好さんはポツリと呟いた。
その心情は理解出来なくもない。
「ソウゴさん、大丈夫なの……?」
「さあ……。まあ、あれだけ強いのが負けるなんてそうそう無いでしょうが……」
あれだけ念を入れて、態々ブリーフィング(?)までした作戦はソウゴさんの暴走と言う形であっさりと瓦解した。
確かに
結局、急遽作戦を変更した事で私と三好さんはここで待ちぼうけを食らっている訳である。
身も蓋もない言い方をすれば、暇なのだ。
「伊予島さん、ここにアナザーライダーを誘導するって言ってたけど……」
「信じて待つしかないでしょ。アイツらだってこの程度でへばる程柔じゃないわ」
「……そうね」
大した言葉である。仲間への信頼が厚いのは良い事だろう。
こうして2人して立ち往生するだけの時間にも意味があるのだとすれば、それだけで少し気が楽になる。
だから──
「……もうちょっと、落ち着いてくれない?」
「は? 私は落ち着いてるわよ!」
「そう……」
どう見たって落ち着いていない人間そのものな発言をする三好さんを尻目に私はその場に腰を落ち着けた。
説得力に欠けるが、彼女の言う通りここは信じて待つしかないのだ。
「ねえ」
「……何?」
やがて暇を持て余したのか、三好さんが
「──しっかし、あの魔王からよくウォッチを借りて来られたわね」
「私も正直驚いてるわ」
はっきり言って、
オーマジオウは家臣も仲間も失った空虚な王である。加えて世界の全てから憎まれながら戦い続ける孤独な王でもあった。
だから他人に頼らないし、そもそも頼り方を覚えていない。
私達はそう思い込んでいた訳だが、いざ頼んでみれば拍子抜けする程あっさりとウォッチを手渡されてしまったのである。
不思議だ。私達の理解を超えていくその姿こそやはり王たる資格と言う事なのだろうか。
「て言うか、これにライダーの歴史とやらが詰まってるのよね」
「そうよ。私も原理は知らないけど……」
「えっ。知らないで使ってたワケ? ゲームとかやってるみたいだし詳しいもんだと思ってたわ」
「あのねぇ……。機械弄ってれば精通してるだろう、とか言うのはステレオタイプな考え方よ。もうちょっと視野を広くすると良いわ」
ふわふわと中身の無い会話が続く。
私達は眼前に置かれたウォッチダイザーにセットされている19のライドウォッチを囲み、一つ一つ手に取っていた。
今更ではあるが、この小さな時計の中にライダーの歴史と力が詰まっているとは驚きである。
時代を駆け抜けた彼らの意志と記憶がこれにしか残らない、と言うのは残念だがかつてバールクスがしようとした事から考えればこの様な形でも残っているだけマシなのかもしれない。
かつて夢で見た蛍光色のライダーのウォッチはこの中にはない。それどころかオーマジオウに見せられた平成ライダーの記憶にも1人として彼と同じ姿のライダーはいなかった。
──何だったんだろう、あの夢
どう見たって仮面ライダーなのに彼の記憶に存在しないと言う事は、やはり私の妄想の産物なのだろうか。
「来るわよ」
「まだ、見えないけど……」
ドン、と言う音と共に一際大きな爆煙が樹海の彼方で上がった。
完成型勇者を自称していただけあって三好さんはもうアナザーライダーを捉えたらしい。
まあ三好さんは既に変身しているのだから、身体能力に大きな差があるのも納得だが。
「……何やってんのかしら、アイツら」
「どうかしたの?」
何か問題が発生したのだろうか。
直接的な誘導は伊予島さんが行うと言っていたので、ピンチだとするなら心配だ。彼女の戦術眼には助けられているが、戦闘能力は不安がある。
正直に言って、樹海を走り回って誘導するなど出来るのか、と言う思いもあった。
「いや、そのぉ……」
「何よ」
「銀が杏を背負ってこっちに猛ダッシュしてるわ。しかも凄い笑顔でボウガン乱射してるし……。うわぁ、あんな不安定な姿勢からよく当てられるわね……」
「えぇ……?」
三好さんもいよいよ頭が手遅れになってしまったのか。言葉から想像するだけで首を捻らざるを得ない。
忌憚なくいってしまえば、伊予島さんは折角お膳立てした作戦がぶち壊されてしまった悲しみをアナザーライダーにぶつけている様にしか感じられない。
「まぁ、考えても無駄よね。行くわよ」
「……そうね」
切り替えが早くて何よりだ。
私は当面忘れられそうにない。
だが──折角ソウゴさんから託されたのだ。
何としても成果は出したい。
『ゲイツ!』
既に巻いてあったジクウドライバーにライドウォッチをセットする。
「──変身」
『仮面ライダーゲイツ!』
強化された視覚が勇者とアナザーライダーを捕捉する。
「ブレイド、響鬼、オーズ、ドライブ……オーズは前回いたから他3体の内誰かってことね」
「ええ。芽吹……ぶん殴って目ぇ覚まさしてやるから、覚悟しときなさい」
士気は上々。
コンディションもバッチリ。
そう、これはつまり──
「何か、行ける気がするわ」
・郡千景
暇を持て余している。正直ソウゴがウォッチ渡してくれるとは思わなかった。