【嘘予告】EP00 2014:ソウゴと千景   作:イナバの書き置き

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なんだかんだ言って毎日更新してますね


EP00-6 誕生日

「そう言えば千景の誕生日っていつなの?」

「2月3日よ」

「結構近いんだ。よし、お祝いパーティーでも開くか。何か欲しい物とかある?」

「誕生日って……何か貰えるの?」

「え?」

「え?」

 

 そんな会話をソウゴさんとしてから2週間程たった。驚くべきことにどうやら誕生日とは祝う物だったらしい。世間一般では常識らしい。しかし親から疎まれ周囲から傷つけられてきた私はそんなことすら知らなかった訳だが、ソウゴさんは私の為にパーティーを開いてくれるらしい。ソウゴさんは全く料理が出来ないのでどうするのか心配だったが、当人が料理人を呼ぶから大丈夫だと自信満々に言い張るので信じてみようと思う。そんな2人だけのささやかなパーティーを楽しみにしていたのだが──

 

「千景! ソウゴさんから聞いたぞ……誕生日が近いらしいな、何で言ってくれなかった!」

「え、いや……特に言う必要はないかと思って……」

「私と千景の仲じゃないか! パーティーにも招待してもらったからな! ひなたを連れて必ず行くからな! 待ってろ!!!」

「そんな『首を洗って待ってろ』みたいに言われても……大体パーティーは家でやるんだからどこにも逃げようがないでしょう……」

 

 学校では相も変わらず乃木さんと珍妙な関係を続けていたが、あの堅物の乃木さんがゲーム以外でこんな変なテンションになる位なのだから私の誕生日に対する認識は余程非常識らしい。

 それにしてもソウゴさんもソウゴさんだ。彼は乃木さんと上里さんに私の誕生日をバラし、パーティーに招待してしまった。人が増えるのは悪くはないが、ソウゴさんと2人きりの誕生日が消えてしまったのも中々に恨めしい。

 しかし──

 

 ──欲しい物、欲しい物ね……今そんなのあるかしら──

 

 そう、何を隠そう私はクジゴジ堂に来て以来、およそ不自由を感じたことなどなかった。

 ゲームは大体故郷から持ち出してきた物で足りたし、たまに欲しいゲームソフトがあれば言わずともソウゴさんが気を利かせて買ってきてしまうのだ。そんなソウゴさんの気遣いに申し訳なさを感じつつもその優しさにどっぷり浸かっていた訳で、私は現在欲しい物など全く無いのだ。

 むしろソウゴさんに感謝の気持ちをこめて何かしてあげようかと考えていた矢先にこの事態なので、私は教室の机で頭を抱えるしかなかった。

 

「悩んでいても仕方ない、か……帰るしかないわね」

 

 商店街の中を通って帰宅する。冬なのだから当然だが最近は特に寒い。早くクジゴジ堂に帰って暖まろう。

 そんな事を考えながら歩いていたが、ふと足が止まった。ショーウィンドウの中のマネキンが、イヤーマフを付けている。白い、シンプルなイヤーマフだったが、何故だかそれに目が釘付けになって離れない。思い返せばほぼ一目惚れの様相だった。一体何分そうやってショーウィンドウを眺めていただろうか。ふと我に返った私は、足早にその場を去るしかなかった。

 

 次の日から毎日、学校から帰る際にショーウィンドウを眺めるのが日課になった。毎日そんな事をしていれば流石の私もこのイヤーマフが欲しくて仕方がないことに気付いていた。しかしこのイヤーマフは値段がそれなりにするもので、私はおいそれとこれが欲しいとソウゴさんには言い出せなかった。

 

 そうして言い出せないまま2月3日────私の誕生日がやって来てしまった。

 

『千景、誕生日おめでとう!』

 

 学校から帰るなりクラッカーの音が私を出迎えた。なんと乃木さんと上里さんは先回りしてソウゴさんと一緒に待ち構えていたらしい。奥の方で何やら作業している門矢士の姿もも見える。

 

「さあさあ、千景さんは本日の主役なんですから座って座って」

「そうだ! 千景が今日の主役なんだからこの私、乃木若葉が誠心誠意甘やかしてやる」

「士ー! 早く料理出してー!」

「なんで俺が料理を作らなきゃならんのだ……おい魔王、まさかお前俺にケーキまで作らせるつもりなんじゃないだろうな……?」

「えー? そう言いつつ士なら作ってくれてるんじゃないのー?」

 

 皆のてんやわんやに巻き込まれながら、私は口元が緩むのを抑えられなかった。誕生日って、こんなに楽しい──────

 

 

 

「そう言えば、誕生日プレゼント渡すの忘れてた」

 

 皆が帰った後、ソウゴさんが思い出した様に呟いた。

 

「いえ、いいの……私、今日とても楽しかったわ。これが何よりのプレゼント。きっと一生忘れない思い出になる……」

「ふーん、じゃあこれ要らないんだ?」

 

 そう言ってソウゴさんが手元の箱から取り出したのは私がずっと眺めるしかなかったあのイヤーマフだった。

 

「それ……なんで……?」

「ひなたから教えてもらったんだ。毎日じっと見てるからきっと欲しいんじゃないかって。欲しいなら言ってくれれば良いのに」

「でも……そんな、それ、高かったでしょう……?」

「良いんだよ、それくらい。俺達『家族』でしょ? 家族に位今まで言えなかったわがまま言っちゃいなよ」

「うん……! うん……!」

 

 1日に2度もこんな幸せを貰ってしまって、もう私は頭がどうにかなってしまいそうだった。生きてきて良かったって、そう思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この世界にあるダイマジーンは3機で間違いない。その上その全てが詳細な位置はわからないが日本のどこかに潜伏しているようだ」

「──魔王、奴らがいつ起動するかわからん以上、覚悟は決めておけよ」

「勿論、わかってる」

 

 千景には指一本、触れさせるものか──────




・常磐ソウゴ
祝福の鬼だ!と言うこともなく普通の誕生日パーティーを開く。千景には指一本ふれさせないよ(魔王特有の威圧感)

・郡千景
誕生日祝ってもらえて良かったね。イヤーマフはゆゆゆいで付けてたやつ。千景に生きてて良かったって言わせたからもう実質完結でしょ(暴論)

・乃木若葉
他人の誕生日にテンションが高い。のわゆ本編と違って交流が早くからあるためそれなりに仲が良い。

・上里ひなた
今気付いたけどまた一言しか喋ってないね君。

・もやし
一般料理人世界の破壊者


『次回、ソウゴと千景 最終回』


時の王者/Ride The Wind
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