147話です!どうぞ!
*クラブ『リーパー』 11月2日 14:44*
“J”と呼ばれる正体不明の男が経営するクラブ『リーパー』。その店の前に、ジョン・グルーバーの車が止まる。車からはVが降りてきた。
これからVは、ジョン・グルーバーとして店に入る。ジョン・グルーバーの車に乗ってきただけで本人と思ってもらえるか疑問にも思うだろうが、店の前にはドアマンが立っている。ホテルでもドアマンが居るが、ドアマンは出入りの多い客を覚えるのに、車で客を覚える場合がある。客の顔を覚えられなくても車で判断される。その理由から、車を盗んだ事にも意味はあるのだ。
車から降りたVは振り返り、腰を折り車内のダンテを見る。
V「運転手、ここで待ってろ。すぐに戻る」
ダンテ「さっさと行けよ」
V「ふっ、また後でな」
グリフォン『(お前は今から“ジョン・グルーバー”だ。ジョン・グルーバーらしくしろよ)』
V「(本人を知らないのに どうしろと言うんだ?)」
Vが店に近付くと、案の定ドアマンが対応した。
ドアマン「ジョン・グルーバー様ですね、どうぞ」
Vは後ろを振り返り、ダンテと視線を交わす。ダンテが頷くと、Vはドアマンの案内でクラブの中へ入った。
ボーイ「グルーバー様、お待ちしておりました。どうぞ こちらへ」
ドアマンからVの対応を引き継いだボーイが、店の奥へと案内する。
クラブと言っても中は静かだった。障子のような薄い仕切りに囲まれた個室が並び、中の光で人の影が浮かび上がっている。しかも、女の艶のある声も漏れている。クラブは表向きなのか?
ある個室に着くと、ボーイはVに振り返った。
ボーイ「ではグルーバー様、どうぞ お楽しみください」
個室の中に通されると、中には1人の、殆ど裸と変わらない女が待っていた。その女には見覚えがあった。鎮守府にも居る艦娘の筑摩と同じ顔だった。
Vは個室の中を見渡す。辺りには口では言えないような道具が並んでいる。中には、拷問で使うような物まである。いよいよ怪しさが全開になってきた。
筑摩「お待ちしておりました、グルーバー様。どうぞ こちらへ」
V「・・・・・・っ!?」
言われるままに筑摩に近付くと、筑摩は隠し持っていたナイフで襲い掛かってきた。Vは筑摩の腕を掴み、殺るか殺られるかの揉み合いになる。
Vの頭の中で、グリフォンの声が響く。
グリフォン『(頑張れV!女に負けるな!)』
V「(うるさい!少しは手伝ったら どうだ)」
格闘の末、どうにかナイフを奪い取り、筑摩を取り押さえる事に成功する。
V「落ち着いてくれ、何もしない」
筑摩「・・・・・・?」
そこに、異変に気付いたボーイが仕切りの外から声を掛けてきた。Vは咄嗟に筑摩の口を手で塞ぐ。
ボーイ「グルーバー様、大丈夫ですか?」
V「問題ない。今 楽しんでいるんだ、邪魔しないでくれ」
ボーイ「・・・失礼しました」
何とかボーイは誤魔化せたようで、ボーイの影が仕切りから離れていく。それを確認したVは、筑摩から離れた。
筑摩は ずっとVに疑いの目を向けていた。
筑摩「・・・あなたは、本当にジョン・グルーバーですか?女に酷い事をすると聞いていたのに・・・」
V「それも そうだろう、俺はジョン・グルーバーではないからな」
筑摩の質問に、Vは まるでイタズラが成功したように笑った。
筑摩「では、誰ですか?」
V「誰でもいい。お前は艦娘だな?同じ顔をした女を知ってる」
筑摩「はい、私は利根型 重巡洋艦2番艦、筑摩です」
V「お前も売られたのか?」
筑摩「海軍に、売られました・・・」
V「お前を売ったのは海軍ではなく、一部の将校だ。そいつらは全員 粛清されたらしいが」
筑摩「・・・そうですか・・・」
V「次のオークション会場の場所が知りたい。どうにか俺を潜り込ませられないか?」
筑摩「買い手には教えるように言われてますので」
このクラブで働いてる筑摩は厚待遇を受けているようで、経営者であるJにも唯一 近付ける艦娘らしい。場所も知っていて、当日もオークション会場で接待があるらしい。Jに近付くのは簡単かもしれない。
オークション会場の場所を聞いたVは、もう ここに用はないので帰る事にする。
V「一緒に来い。序でだ、助けてやる」
筑摩「私は身体にGPSと爆弾を埋め込まれています。逃げても居場所が分かる上に、最悪 爆破されてしまいます。行ってください、オークションには入れるようにします」
筑摩は一緒に来る事を拒んだ。Vは1人で颯爽と店を出る。店を出ると車は待っていた。Vは すぐに乗り込む。
ダンテ「どうだった?」
V「問題ない、場所と日時は聞いた。車を出せ」
走り出した車内では、またもやVの頭の中でグリフォンの声が響く。
グリフォン『(“一緒に来い”とか紳士だねぇ。艦娘の お嬢チャン達と一緒に居て情でも移っちまったか?)』
V「(無駄口を叩くな)」
グリフォンの指摘に関しては、Vも正直 分からなかった。何故あんな事を言ったのか、何故あの艦娘を助けようとしたのか、V自身も自分の行動に驚いていた。
V「ダンテ、艦娘を助けるのは無理かもしれないぞ?」
ダンテ「根拠は?」
V「場所を教えてくれた艦娘が言っていた。“爆弾を埋め込まれている”と。恐らく他の艦娘も同じだ。逃げても居場所が分かり、起爆されれば どの道 死を迎える。それでも お前は助けるのか?」
ダンテ「・・・理由なんか関係ねぇ、こいつは俺の仕事だ。それに、端っから全員 助けられるとは思っちゃいない。出たとこ勝負だ」
・・・・・・
*オークション会場 11月5日 15:10*
3日後、クラブの筑摩に教えられた場所に来た。そこは ある港にある倉庫街で、その内の1つである倉庫の中に、会場があった。
中は大きな音でテクノミュージックが流されており、今日のために作られたステージで、商品の艦娘が露出の多い衣装でランウェイをしていた。買い手が買う気になるように仕込まれた演出だろう。艦娘も自分の命が懸かっている。逆らわずに客にアピールしていた。客も艦娘を見ながら何かしら騒いでいる。オークションとは思えぬ喧騒だ。
オークションを進行する男も、1人1人 艦娘の紹介をしながら商品を斡旋している。
Vは一旦 物陰に隠れると、身体からグリフォンが出てくる。
グリフォン『倉庫で即席の会場にしては、派手だな』
V「俺は筑摩を探す。お前は これを付けて上を飛んでいろ」
グリフォン『何だコレ?』
V「カメラだ、夕張が作ったらしい」
グリフォン『これじゃペットじゃねぇかよ・・・』
V「嘆くのは後にしろ。
Vから首輪を付けられたグリフォンは、嫌々ながらも飛んでいく。
首輪には小型カメラが仕込まれており、スイッチを入れただけで映像を記録できる。VがJと接触した時に顔を写す事ができれば、身元も特定する事ができるはずだ。
Vはミュージックを聴きながら、艦娘と客を見ながら倉庫の中を歩く。すると、前方からタイトなパーティードレスを着た筑摩が歩いてきた。
筑摩「お待ちしておりました、ジョン・グルーバー様。どうぞ こちらへ、特等席を用意してあります」
筑摩の案内で2階に上がる。2階と言っても、倉庫内の事務所と そこに続く金属の通路があるだけだ。
通路を進むと、事務所から白の高級スーツに身を包む杖を持った老人と、ガラの悪そうなモヒカン頭のアフリカ系アメリカ人、そして護衛と思われる黒スーツの男が複数人 出てきた。
老人「ここではテスト運用をするらしい。契約はアメリカに戻って彼らの目的が果たされるまでだ」
モヒカン頭「心配すんなよ、上手くやるって」
老人「お前は頭に血が上りやすい。契約外の事は控えろ」
モヒカン頭「はいはい、じゃあな」
老人「待て、誰が刑務所から出してやったと思ってる?」
モヒカン頭「感謝してるよ、老いぼれ」
老人との会話が終わり、モヒカン頭の男は踵を返して立ち去ろうとする。そこを筑摩に案内されるVと擦れ違う。擦れ違う時、モヒカン頭の男はVを品定めするような眼を向けていたが、Vは無視した。
筑摩が老人の前で止まると、紹介が始まった。
筑摩「ミスター・J、こちらジョン・グルーバー様です。今回のオークションの お客様です。グルーバー様、こちらがミスター・Jです」
見付けた。この白の高級スーツを着た老人が、“J”と呼ばれる艦娘売買を取り仕切っている男だ。Vは気付かれない程度の笑みを浮かべた。
筑摩は役目を終え、その場から立ち去り他の客の相手に向かった。
Vは一瞬だけ上を見る。頭上では気付かれないようにグリフォンが旋回しているのが確認できた。
J「よく来たグルーバー。噂は私も聞いている」
V「いい噂である事を願う」
どうやらダンテが確保したジョン・グルーバーは、アホだが仕事に関しては優秀なのか、噂になる程のようだ。
J「謙遜する事はない。さっきの男を見たかね?彼はいかん、君と違って思慮に欠ける。世界は私や君のような者が動かしていくのだ。分かるだろう?」
V「だが世界を推し量るのは難しい。世界は歪だが、それが時として自分を有利にする事もあれば、足元を掬われる事にもなる」
J「確かに そうだ。その若さで達観した眼を持っているとは気に入った。特別に好きな艦娘を選ぶといい・・・何人でもな」
そう言って、Jは護衛の男達と事務所に戻る。
Vも そこから離れ、人目の付かない場所へ移動する。すると、グリフォンも戻ってきた。
グリフォン『枯れ枝みたいなジジイだったな』
V「だが眼は死んでいない。力と欲に駆られた眼をしていた」
グリフォン『ヤバい奴ってのは皆 眼がギラギラしてるもんだからな』
Vが手を差し出すと、グリフォンはVの身体に戻る。Vの手には首輪が落ちてきた。
それを仕舞うと、今度はシャドウが出てきた。
V「行け、ダンテに合図を出せ」
シャドウは影となり どこかへ消えた。
外ではダンテと艦娘達、海軍捜査部と警察が協力して待機している。合図で一斉に乗り込む手筈だ。
Vは筑摩を探した。
V「筑摩」
筑摩「・・・・・・!?どうして まだ居るんですか?」
V「ここから逃げろ、爆弾は何とかしてやる。起爆スイッチは誰が持ってる?」
筑摩「こちらへ」
筑摩はVと共にステージの裏を通り、今 居る倉庫と連結している隣の倉庫へ向かう。そこには休憩中のJの部下が数人 居た。
2人は物陰に隠れながら男達の様子を窺う。
筑摩「あそこに居る男、彼が艦娘の監視を担当してる責任者です。起爆スイッチは いつも彼が持っています」
V「なら奴から奪うとしよう。お前は行け」
筑摩が どこかに姿を消すと、入れ替わるようにグリフォンが出てきた。そして丁度シャドウも戻ってきた。
グリフォン『それで?どうやって奪う?』
V「
グリフォン『はいよ、了解』
表情こそ分からないが、グリフォンの声音は まるで悪い笑みを浮かべている時のような声だった。
前と同じ━━Vが着ている服は、以前Vに絡んだチンピラ風の強盗から殺して奪った物だ。その後も杖を持ってるだけで身体が不自由なカモだと思われ、何度も強盗に絡まれた。狩る側でなく狩られる側とも知らずに・・・。グリフォンとシャドウがそれを返り討ちにし、逆に強盗から有り金を全部 奪った。そうして食費や交通費、ダンテへの依頼料を稼いだ。
その時のように、殺すか再起不能にまで追い込み起爆スイッチを奪うつもりだ。
Vが物陰から出ると、男達もVに気付いた。
黒スーツ「何だ お前?」
Vは手に持つ杖の頭を男達に向けると、グリフォンとシャドウが現れ襲い掛かる。男達は銃を抜くが、グリフォンが電撃で焼き殺し、シャドウが身体を変化させ棘を伸ばし、男達の身体を貫いていく。
Vは倒れる男の懐から起爆スイッチを探し当てると、それをシャドウに向かって放り投げた。シャドウは身体の一部を刃に変えて斬る。起爆スイッチは真っ二つになり地面に落ちた。
V「あとはダンテ達が上手くやる・・・うわっ!?」
自分のやるべき事を終わらせ立ち去ろうとするが、倉庫の一部が吹き飛び鉄骨や瓦礫が落ちてくる。
オークションに来ていた客の、パニックになる声も聞こえてくる。
V「ダンテの奴、俺ごと殺す気か・・・?」
グリフォン『V、急いで ここから離れるぞ!ここは もう持たねぇ!』
シャドウが影となりVの足下に来ると、それに乗り瓦礫などを避けながら脱出を試みる。
*倉庫街*
一方、倉庫の外でも混乱が生じていた。
ダンテ達が倉庫を包囲して突入しようとしたが、倉庫の一部が突然 爆発し、更にJの部下からの銃撃を受けていた。海軍捜査部と警官隊は応戦、銃撃戦になっていた。
海軍捜査部からは、以前 舞鶴提督を事件の捜査に巻き込んだ女捜査官も居た。
捜査官「ダンテ提督、これは どうなってるんですか!?突入作戦が台無しです!」
ダンテ「俺も どうなってんのか知りたいとこだ!バージルの野郎・・・!」
ダンテも、爆発はVの仕業だと思っていた。
あの爆発はダンテ達によるものではない。勿論Vでもない。そうなると・・・?
吹雪「司令官、どうしますか!?」
ダンテ「殺さねぇ程度に砲撃しろ!」
漣「いや難しいんですけど!?」
Vは倉庫の外に出ていた。外は戦争のような有り様で、あちこちで銃撃の音が鳴り、硝煙の臭いが風に乗って漂う。
グリフォン『V、隠れろ!』
Vの方にも、Jの部下が現れ発砲してくる。Vは咄嗟に物陰に隠れた。
グリフォン『いくら魔力で身体を強化してても、今のお前は人間と変わらねぇ。当たったら死んじまうぜ』
V「今はダンテと合流するのが先だ。これではバージルに戻る事もできん」
閻魔刀はダンテに預けている。バージルに戻るには閻魔刀が必要だ。立ち塞がる障害を気にせず戦うには、ダンテと合流する必要がある。
グリフォン『メンドクセェなぁ、もうっ!』
グリフォンとシャドウが飛び出し、邪魔なJの部下を一掃していく。
そこでVは、クラブで働いていた筑摩を見付けた。
V「(何故まだ ここに居る・・・?)」
Vは銃弾が飛ぶ中を走り、筑摩へ駆け寄る。
V「なぜ逃げていない?!」
筑摩「私・・・あの・・・」
V「来い!」
黒スーツ「艦娘が逃げたぞ!」
グリフォン『来やがれモブキャラ共がぁ!』
Vは筑摩の手を取り走る。それを援護するようにグリフォンとシャドウがJの部下へ攻撃を仕掛ける。
筑摩は1度 後ろを振り返るとVの手を振解き、Vを突き飛ばした。
V「っ・・・何を・・・!?」
筑摩「逃げて・・・」
次の瞬間、筑摩の身体が爆発した。Vは筑摩の血飛沫を浴びて真っ赤に染まる。
グリフォン『何やってんだV!逃げるか隠れるかしろよ!おいってばぁ!』
Vは動かず、呆然としていた。
V「(なぜ俺を助けた?また無駄だったのか?俺は また・・・)」
Vの眼が、こちらに銃を撃つ黒スーツ達に向く。その内の1人が手に持つのは、起爆スイッチ。起爆スイッチは1つではなかった。これは殺された筑摩も知らなかった事だ。
後ろを振り返った時、他の起爆スイッチを見て自分の死を悟った。だからVを巻き込まないように突き飛ばした。
黒スーツ「へへっ、逃げるから こうなるんだ」
V「下劣な者には軽蔑を・・・!」
Vは片腕を上げ、指をスナップする。Vの髪から黒い粒子が浮き上がり、黒から銀髪へと変わる。その瞬間、倉庫の壁を突き破ってナイトメアが現れた。
ナイトメアは暴れ回り、眼からレーザーを発射して倉庫街を焼き払っていく。
その様子は、ダンテ達からも見えていた。
長門「ナイトメアだと!?皆殺しにするつもりか!?」
ダンテ「チッ、あとは任せたぞ!」
ダンテはキャバリエーレに乗り、中心地へと急いだ。
・・・・・・
その後、Vは駆け付けたダンテに ぶん殴られ、ナイトメアの破壊も止まった。
予想 以上の被害を出したものの制圧は成功し、オークションの買い手とJの関係者 数名を逮捕した。
しかし、オークションを取り仕切っていたJは姿を消していた。どうやら あの混乱の中で、上手く逃げたようだ。
起爆スイッチは売られる艦娘 全てを爆破する物ではなかったらしく、爆破された筑摩 以外の艦娘は保護された。爆弾を摘出すれば、あとは海軍がケアをするはずだ。
Devil May Cry鎮守府も事後処理を手伝い、忙しく動いている。
バージルも元の姿に戻っており、1人で海を見詰めていた。そこへダンテが近付く。
ダンテ「お前 何 考えてんだ」
バージル「・・・今は話す気分ではない」
ダンテ「・・・何があった?」
グリフォン『ダンテちゃん、今は そっとしといてやってくれ』
バージルへと戻った時に、契約が消えて3体の悪夢はバージルから解き放たれた。今は また飛鷹、時雨、羽黒と契約し直し、3人に宿っている。
後日、海軍捜査部の調査で、Jは既に国外へ行ってしまっていた事が判明した。最初から国外へ逃げるつもりだったのか、こちらの突入作戦が知られていたのか定かではないが、用意周到に準備していたようだ。
クラブ・リーパーも、警察が踏み込んだ時には もぬけの殻だった。
Jに関しては、カメラの映像を解析し、今後も調査が続けられる。
一先ず、日本での艦娘売買の事件は一旦 終息する事となった。
Devil May Cry鎮守府は、また悪魔と深海棲艦への対処に向けて、改めて動くのだった。
次回も よろしく お願い致します!