Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

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海域攻略の話だけじゃ持たないので、2つの話を平行して進めたいと思います。

186話です!どうぞ!


Mission186 発動!FS作戦~セリーナからの依頼~

*南太平洋FS海域 3月7日 7:25*

 

FS作戦が発動された。

元帥からの命により、Devil May Cry鎮守府はFS作戦の第1段階の任務に就いた。精強な主力艦隊を以て、FS諸島 敵泊地攻撃を実施する。

主力の第5艦隊に大和、武蔵、扶桑、山城、摩耶、鳥海。

支援の第6艦隊に蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、比叡、霧島、第7艦隊に祥鳳、瑞鳳、金剛、榛名、那珂、吹雪、第8艦隊に龍驤、飛鷹、隼鷹、鈴谷、漣、潮。

4艦隊は現在、敵航空集団A群と航空戦を繰り広げていた。

敵艦隊の編成は軽母ヌ級elite3隻、軽巡ツ級、駆逐イ級 後期型2隻となっている。

正規空母と軽空母が発艦した艦戦が、軽母ヌ級eliteが発艦した艦載機とドッグファイトを繰り広げ、対空機銃と三式弾を用いた対空攻撃により、弾は光となり、空には連鎖的な爆発が起きる。

そして海には、敵機と味方機が炎を上げながら墜落していく。

 

瑞鳳「制空権、確保しました!」

 

摩耶「よし!」

 

弾幕の中を飛び抜けながら、艦爆と艦攻、水上機が敵艦隊に突撃する。

爆弾と魚雷が投下され当たり所が良かったのか、軽母ヌ級elite2隻を残して後は轟沈した。

 

飛龍「第2次攻撃隊、発艦!」

 

2度目の航空戦も制空権の確保に成功し、残っていた軽母ヌ級elite2隻も轟沈せしめるに至った。

敵泊地を目指し、艦隊は予定の航路を進む。

 

漣「こんだけ空母が揃ってると、楽なもんですねー」

 

鈴谷「当然じゃん、鈴谷に任せときなさいっての!」

 

龍驤「アホ!まだ始まったばっかりやで、気ぃ引き締めや!」

 

「「はぁ~い・・・」」

 

龍驤に怒られ、鈴谷と漣が覇気のない返事を返す。

楽なように感じるが、これは まだ序盤だ。敵泊地には鬼級の深海棲艦が居ると情報を得ている。油断は禁物だ。

怒られているのを吹雪が苦笑いで見ていると、ふと疑問に思った事があり、大和型の2人に聞いてみる事にした。

 

吹雪「大和さん、武蔵さん、大本営には戻らなくて良かったんですか?」

 

大和「はい、元帥からの直々の命令でしたから」

 

武蔵「それに、お前達と共に戦えるのは我々も嬉しく思うからな」

 

FS作戦を できるだけ早く終わらせたい元帥は、大和型の2人にDevil May Cry鎮守府に残り、協力するよう命じていた。

FS作戦が完遂すれば、大和型は大本営に戻る手筈になっている。

 

瑞鶴「でも、大和型が居ると心強いわよね」

 

武蔵「・・・大型建造すれば、いずれは大和型を着任させられるだろ?Devil May Cry鎮守府は許可が下りていたはずだが?」

 

『あー・・・』

 

武蔵からの指摘に、Devil May Cry鎮守府の艦娘達は何とも言えない顔をした。

大型建造は、通常の建造よりも多くの資材を投入する事で、通常の建造では着任しない艦娘を鎮守府に着任させる事ができる。大型建造では、大和型の建造も可能となっている。

実は、大型建造の事はダンテには内緒にしていた。

 

龍驤「いや、まぁ、そうなんやけど・・・」

 

比叡「うちの司令は、ちょっと・・・」

 

大和「何か問題があるんですか?」

 

『う~ん・・・』

 

ダンテは度々 大和をデートに誘ったりと、言動や行動に浮わついたものがあり、大和もダンテに甘いところがある。

 

那珂「(流石に、大和さんのせいとは言えないもんね・・・)」

 

ダンテが自分に甘い大和を建造できる大型建造の存在を知れば、自分だけの部下である大和が出てくるまで資材を放り込み、建造しまくる可能性があった。

 

霧島「(お金も無いのに資材まで無くなったら、いよいよ鎮守府も終わってしまう・・・)」

 

それが分かっていたので、艦娘達は誰も鎮守府で大型建造の話を出す事はなかった。

 

金剛「(これ以上 提督を誑かす女は要らないデース・・・!)」

 

扶桑「(・・・・・・金剛さん!?)」

 

横から金剛の顔を見てしまった扶桑が、ビクッと身体を硬直させる。金剛の顔は、憎しみの籠った般若のような顔をしていた。

艦隊メンバーの様子から事情が よく分からない大和型の2人は、不思議そうな顔で互いの顔を見合わせ、首を傾げるのだった。

 

 

・・・・・・

 

海を進み続け、艦隊は あるポイントで止まった。

敵泊地には東から攻め込む事になっているのだが、艦隊が居るのは敵泊地から西へ行った場所だ。作戦を遂行するには回り込む必要がある。

北から回り込むのか、南から回り込むのか、ルートは2つだ。羅針盤の妖精さんは どちらでも好きな方へ行くように言っている。

 

山城「どうしますか?」

 

鳥海「北側ルートには敵潜水艦隊と、姫級の深海棲艦が確認されています」

 

霧島「そして南側ルートは、空母を基幹とした艦隊が確認されています」

 

支援艦隊には空母が多く編成されている。強い敵を相手にして時間が取られ、夜になってしまえば一気に戦力ダウンだ。

かと言って、姫級を放置するのも気が咎めてしまう。

どちらに行くべきか悩ましい。

 

摩耶「けど対潜装備を積んでる奴は少ないだろ?」

 

飛鷹「でも、軽空母なら対潜攻撃も可能よ。ある程度なら・・・」

 

隼鷹「じゃあ上 行く?」

 

榛名「しかし、主力艦隊への被害が大きくなれば、作戦続行は不可能です」

 

どうするか決まらない中、武蔵は目を瞑り、静かに思案していた。そして口を開いた。

 

武蔵「北に行こう」

 

大和「武蔵?」

 

武蔵「編成から考えても厳しいかもしれないが、姫級と鬼級を叩く事ができれば、敵の戦力を大きく削ぐ事になる。後々の事を考えれば、敵の戦力を弱らせておくべきだ」

 

隼鷹「まぁ、端っから今日中に終わる任務でもないしね~」

 

武蔵「それに、誇りある大和型なら強い敵と戦いたいしな」

 

鈴谷「そっちが本音!?」

 

吹雪「何だか、武蔵さんが司令官に似てきたような・・・」

 

武蔵「ふっ、ダンテ提督に恋い焦がれるなら当然だ」

 

言った瞬間、金剛が とてつもないスピードで武蔵に近付いた。武蔵の胸ぐらを掴み、至近距離でガンを飛ばす。

 

金剛「・・・・・・・・・」

 

武蔵「すまん・・・何か知らんが、すまん・・・」

 

何も言葉を発さない事が、妙に恐怖心を煽る。武蔵は、咄嗟に謝る事しかできなかった。

こんな所で仲間割れしてる場合ではないので、武蔵から離れない金剛を引き離し、潜水艦隊と姫級が居るとされている北側ルートへ舵を切った。

 

 

・・・・・・

 

航路を進み、吹雪のソナーに反応が現れた。反応は4つ、潜水艦 防衛線Bラインだ。編成は潜水ヨ級elite2隻、潜水カ級2隻だ。

 

吹雪「敵影4!まもなく会敵します!」

 

隼鷹「先手必勝だね、ひゃっはー!」

 

軽空母は艦載機を発艦。

艦載機は那珂、吹雪、漣、潮と共に爆雷を投下していく。爆雷は一定の水深にまで沈むと、爆発を起こす。

 

瑞鶴「・・・殺った?」

 

吹雪「ちょっと待ってください」

 

蒼龍「・・・・・・!?魚雷!」

 

大和「回避!」

 

艦隊に接近した魚雷が爆発し、艦隊を巻き込んで水柱が上がる。

霧のようになる水飛沫の中、艦隊が高速で飛び出した。被弾はしていたが、掠り傷程度に済んでいた。

 

摩耶「仕留め損なってるじゃねぇかよ!」

 

飛鷹「まだ これからよ!吹雪、数は!?」

 

吹雪「残り2!来ます!」

 

更に魚雷が迫っていた。艦隊は増速と減速を切り替えながら、器用に魚雷を躱していく。

上空を旋回していた艦載機が、対潜攻撃を継続する。それに合わせ、那珂、吹雪、漣、潮も爆雷の投下を続ける。

敵潜水艦は大破したのか、雷擊攻撃が止まった。更にソナーに映る反応が離れていく。

 

吹雪「敵潜水艦、撤退していきます!」

 

金剛「チャンスデース!今の内に進むデース!」

 

撤退してくれるなら願ったり叶ったりだ。弾薬は他に使うべき相手が居る。ここで深追いするのは得策ではない。

艦隊は索敵機を飛ばし、次なる敵艦隊を探す。

 

 

・・・・・・

 

索敵機が敵泊地の東側に位置するポイントで、敵航空集団 支援打撃群を発見した。編成は戦艦棲姫、軽母ヌ級elite2隻、駆逐イ級 後期型2隻だ。

艦隊は攻撃隊を発艦。

艦載機が雲の更に上を飛び、パイロットの妖精さんが雲の切れ間から肉眼で敵艦隊を視認すると、一気に急降下していく。

艦娘の艦載機の接近に気付いた敵艦隊は、これを迎え撃つために艦載機を発艦する。重苦しい雰囲気を纏った黒い影が、幾つも飛び立つ。

 

飛龍「制空権 確保!攻撃開始!」

 

激しい空中戦を制したのは、艦娘の艦載機群だった。

航空攻撃により、軽母ヌ級eliteの1隻が小破、駆逐イ級 後期型2隻が轟沈する。

 

摩耶「弾幕を張れ!」

 

撃ち漏らした数機の敵機による航空攻撃により、鳥海と榛名、吹雪が被弾。鳥海は小破にも満たなかったが、榛名は小破となり、吹雪が中破となる。

 

武蔵「この程度で、武蔵は倒せんぞ!」

 

戦艦棲姫『シズミナサイ!

 

艦娘と深海棲艦、両艦隊の攻撃は激しさを増していく。航空戦、航空攻撃、砲撃、雷擊、持てる力の全てを出し、互いの攻撃が戦場を飛び交う。

続く戦いの末、陽が水平線へと消えた。夜の闇が、戦場を包み込む。

 

大和「第6から第8艦隊は下がってください!第5艦隊、夜戦に突入します!」

 

武蔵「ふっ、痛快だ!武蔵、突撃するぞ!付いてこい!」

 

扶桑「扶桑型の本当の力、見せてあげる!」

 

山城「邪魔だ・・・どけぇぇぇぇぇぇっ!」

 

摩耶「お前・・・あたしを怒らせちまったなぁ!」

 

鳥海「伝統の夜戦・・・今こそ お見せする時!」

 

飛鷹「グリフォン、援護してあげて!」

 

グリフォン『よっしゃー!

 

飛鷹の身体の刺青が這うように動き、宙に浮くとグリフォンの姿に変わる。

第5艦隊は気合いの咆哮と共に、夜戦に突入して敵艦隊に突撃する。

第6から第8艦隊は、戦闘の流れ弾に巻き込まれぬよう、離れて見守る。

夜の海に、瞬く閃光が輝いていた。

 

 

・・・・・・

 

*イタリア 車内 19:31*

 

移動式事務所『Devil May Cry』のバンが、夜のイタリアを走っていた。車内には運転するニコ、そしてネロと夕張が居た。

何故イタリアに居るかと言うと、理由はセリーナだ。自分の島に戻っていたセリーナが、珍しく便利屋としての仕事を依頼してきた。その仕事は、1人の魔術師が残した手記を奪還する事だった。

セリーナは この世界の魔帝ムンドゥス、覇王アルゴサクス、羅王アビゲイルの残された力の行方を調べていた。そして行き着いたのが、魔術師『アルバート』だ。

魔術師アルバートは生前、魔術を使い、異形の存在を使役していたそうだ。

その魔術師アルバートが残した手記に、魔帝ムンドゥス、覇王アルゴサクス、羅王アビゲイルの力の行方が記されている事まで突き止めた。

 

ネロ「セリーナの奴、自分から言い出して来ないのかよ」

 

セリーナが依頼してきた事と、目的とする物が かなり重要であるため、てっきりセリーナも動くと思っていた。しかし、セリーナは一緒には来なかった。

実は その手記、回り回ってイタリアのオークションを斡旋する とある男の手に渡っていた。

手記は その男の持つ屋敷にある金庫に保管されており、今夜 売りに出される事が判明している。

人間相手に魔力弾を ぶっ放す訳にもいかず、金庫破りも専門外なため、セリーナは鎮守府で待つと言っていた。

 

夕張「3人だけで大丈夫かな?」

 

ネロ「仕方ない。ダンテ達は今、手が離せないからな」

 

夕張「うん、急な話だったもんね・・・」

 

今頃ダンテや艦娘達はFS作戦のために動いている。それにより、ネロ達は少人数で動く事になった。

 

ニコ「おい、もうすぐ目的地に着くぞ」

 

ネロ「分かった。ちゃんと脱出地点に居ろよ」

 

ニコ「私が置いて帰る訳ないだろ」

 

オークションのパーティーに潜入するため、ネロと夕張は正装に着替え始める。

 

夕張「ネ、ネロ、覗かないでね?」

 

ネロ「覗かねぇっての!」

 

ニコ「(こんな調子で大丈夫かよ・・・?)」

 

 

・・・・・・

 

*モコ湖 屋敷 20:14*

 

タキシードに蝶ネクタイを着けたネロと、薄い緑色のパーティードレスを着た夕張が、オークションが開かれるモコ湖の近くに建つ屋敷に到着した。

ニコは屋敷から離れた場所で2人を降ろし、先に脱出地点に向かった。

 

ネロ「凄いな・・・これ全部 骨董品集めが趣味の連中か?」

 

夕張「そういう事になるわね」

 

屋敷には、高級車が何台も停まっており、招待を受けて同じように着飾った者達が大勢 集まっていた。

屋敷には武器は持ち込めない。出入り口には警備の人間が立っており、危険物を持っていないかのチェックをしている。

しかも警備は武装しており、不審者と気付かれれば一方的に撃たれる事になる。

 

ニコ『金持ち連中に負けないように、イチャイチャしながら入れよ。バカップルみたいに』

 

イヤホン型の無線機から、ジョークみたいな事を言うニコの声が聞こえてくる。

 

ネロ「おい、遊びじゃないんだぞ」

 

ニコ『これ潜入作戦だろ?なら怪しまれないようにしないとな』

 

オークションで競り落とせるような お金は無いので、金庫から手記を盗む作戦だ。気付かれてはならない。

ニコの提案にネロがウンザリしていると、夕張は停まってる高級車の1台の後ろに回り込み、ゴソゴソと何かを始める。

屋敷に直行すると思っていたネロは、怪訝な顔で夕張を呼ぶ。

 

ネロ「夕張、屋敷に行くんだろ?早く行くぞ」

 

夕張「そうなんだけど、ちょっと待って」

 

ネロ「何してる?」

 

夕張「煤 取ってるの」

 

夕張はハンカチで、車のマフラーの中の煤を取っていた。

 

ネロ「人の車 掃除してる場合かよ、早く来い」

 

夕張「金庫は指紋認証なの。だから・・・これが役に立つ」

 

取った煤をハンカチで包むようにして、バッグの中に入れる。トイレに行っても、手を洗った後には使えそうにない。

ニコの言う通り、カップルを装うために夕張がネロと腕を組む。

 

ネロ「おい、手 拭いたか?俺の服まで汚れちまう」

 

夕張「仕方ないでしょ、ハンカチ使えないんだから」

 

夕張はパンパンと手の汚れを払い、改めてネロと腕を組む。

屋敷の正面玄関まで行くと、警備に止められた。

金属探知機でネロと夕張が調べられるが、何の反応もなかったので すんなりと屋敷の中に通された。

屋敷の中はシャンパングラスを持った人達が、顔見知りと談笑したりして人で溢れていた。そこに加えてウェイターや別の警備の人間も立っており、人の多さに酔ってしまいそうだ。

 

ネロ「金庫は どっちだ?」

 

夕張「見取り図だと、向こうだったはず・・・」

 

金庫があるのは この屋敷のオーナーの部屋だ。その部屋に向かうが、2人は断念して咄嗟に背中を向ける。

 

ネロ「クソッ・・・!」

 

ニコ『ん?どうした?』

 

ネロ「金庫に行けない」

 

ニコ『行けないって どういう事だ?』

 

ネロ「警備の人間が立ってる」

 

ニコ『突破できないのか?』

 

夕張は背中越しで、扉の前に立つ警備の人間を見る。当然ながら、他の警備の人間と連絡や連携を取るために無線を付けている。

 

夕張「突破しようとしたら他の警備を呼ばれる」

 

ネロ「どうする、プラン変更するか?」

 

夕張「・・・・・・私に考えがある。ネロ、今から私が言う物を探して」

 

夕張から集めるように言われた物を聞き、ネロは耳を疑った。集めるにしても、屋敷の中で自由に行き来できる場所は限られている。

 

ネロ「ムチャ言うなよ」

 

夕張「問題、この屋敷で自由に歩き回れるのは誰?」

 

ネロ「そりゃ この屋敷の持ち主と警備の人間・・・」

 

ネロは辺りを見渡しながら考える。その時、トレイに飲み物が入ったグラスを乗せたウェイターの姿が目に入った。

 

ネロ「・・・あとはウェイターだな」

 

夕張「それと指紋が要るから、屋敷のオーナーの使ったグラスも取ってきて」

 

ニコ『頑張れウェイター』

 

ネロ「こんな所まで来て奉仕かよ・・・」

 

ネロは愚痴りながらも すぐに動いた。ウェイターが置いたトレイを取り厨房に向かう。

脱いだ上着をゴミ箱に突っ込み、トレイを持ったままホールへ戻った。蝶ネクタイをしていた お陰で、どこから見てもウェイターだ。髪色が少々 目立つが、きっと大丈夫だろう。

ネロはウェイターを装いながら、招待した客と談笑する屋敷のオーナーへ近付く。

トレイを差し出すと、屋敷の主人は空になっていたグラスを置いた。これで指紋は手に入った。

ネロは すぐに厨房に向かった。

スタッフの居ない一角を陣取り、ネロはグラスの乗ったトレイを置くと、引き出しや棚を漁ってテープと電池を探す。

スタッフは忙しいため、ネロを気にする余裕はない。

 

ネロ「あったぞ」

 

夕張『じゃあ言う通りにやってみて』

 

無線で夕張が指示する通り、先ずは予め夕張から渡されたハンカチ、それに包まれている煤をグラスに付着させる。その後に毛の柔らかいブラシで軽く撫でてやる。すると あら不思議、グラスに指紋が浮かび上がった。

あとは指紋のある場所にテープを貼り、剥がすと透明なテープに指紋が写る。これを使えば、指紋認証は突破できる。

次にネロは、厨房にある物置部屋へ入った。必要なのは鉄と導線だ。

 

ネロ「今 何してる?」

 

夕張『ブドウ食べてる』

 

ニコ『暇してる』

 

ネロ「働いてるの俺だけかよ!」

 

ネロを待つ間、夕張はパーティーで提供される料理やフルーツを楽しみ、ニコはバンで待機なので暇だった。

ネロは延長ケーブルのラバーカバーを剥がし、導線だけにする。

次に小型の発電機の一部を分解し、板状の鉄も入手すると、指紋付きのテープ、電池、導線、鉄をトレイに乗せて またホールに戻る。

ウェイターと客を装うネロと夕張が通り過ぎる瞬間、夕張はトレイの上に乗せられた物を取りバッグに入れた。その足でトイレに向かう。

女性用トイレに入った夕張は、バッグから電池、導線、鉄を取り出した。

 

夕張「(さぁ、ここからは夕張さんの科学の お勉強よ)」

 

目に見えない強いエネルギーも、コツさえ知っていれば操れる。例えば導線に、電流を流せば磁界ができる。その導線で鉄製の物を巻けば、弱い磁力も強くなる。

導線を密に巻き付けて出来た電磁石は、近くの電子機器に障害を起こす。磁石が強い程、その影響も大きい。

 

夕張「(これで問題は解決ね)」

 

電池と導線、鉄で作った即席の電磁石を手に、夕張はトイレから出た。

夕張は1人で、オーナーの部屋の前に立つ警備の人間に近付く。ネロもウェイターを装いながら見守る。

すると、警備の人間が小さな悲鳴を上げてイヤホンを外した。耳に付けたイヤホンから、大音量の異音が鳴ったのだ。

故障と思った警備は無線を取り替えるため、持ち場から離れた。その隙にネロと夕張は、オーナーの部屋に侵入した。

 

ネロ「・・・・・・金庫どこだ?」

 

オーナーの部屋には、金庫らしき物が見当たらない。オークションで大金が動く程の物を保管するのだ。簡単に目に付くようには置かないだろう。

 

夕張「多分、隠し扉か何かがあると思う」

 

ネロ「急いで探すぞ」

 

ネロと夕張は、オーナーの部屋を隈無く探していく。彫刻を退かして その台座を調べたり、オーナーのデスクの引き出しも見てスイッチなども探すが、中々 隠し扉に繋がるものは出てこない。

夕張は壁を調べる事にした。

 

夕張「隠し扉 出てこい、隠し扉 出てこい、隠し扉 出てこい・・・いや~ん♪」

 

壁に飾られた絵画の裏に、スイッチが見付かった。押すと壁が動き、隠し扉が出てきた。

中に入ると、今度は巨大な金庫室の扉が待っていた。

あとは金庫室を開けて、魔術師アルバートの手記を失敬して逃げるだけだと思っていたが、夕張は動かない。どうしたのかと思い夕張を見るが、夕張は顔色を悪くしていた。

 

ネロ「どうした?早く開けろよ」

 

夕張「手形認証・・・」

 

ネロ「何?」

 

夕張「これ、指紋認証じゃない。手形認証なの」

 

指紋認証は指先の指紋だけでロックを解除できるが、手形認証では手の平全体をスキャンしてロックを解除する。手に入れた指紋だけでは金庫を開けられない。

2人は このピンチを、どう切り抜ける?




次回も宜しく お願い致します!
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