Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

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今回の話を入れて、魔女ハンター編は あと4話です。
終わったら徐々に話を戻していきます。

197話です!どうぞ!


Mission197 ドリームウォーカー~記憶の世界へ~

神父殺しの犯人である魔術師ラッセルは、コナー達に捕まり魔女評議会の判決で投獄された。

魔女評議会の部屋にハエが居た事により、それをヒントにコナーは、老神父が まだ生きている事を突き止める。

しかし呪いを掛けられており、猶予は あと2日。それを過ぎれば、老神父の命はない。

“死を思い出せ”・・・老神父からのメッセージを見付け、コナーは魔術により記憶を見る方法を選ぶ。それを頼んだ相手は、セリーナだった。

そしてセリーナとコナーは、ダンテ達に見守られながら記憶の中へと意識を落とした。

 

 

*記憶の世界*

 

コナーが目を開けると、部屋からダンテ達の姿が消えていた。その代わり、部屋の中で雪が降っている。

 

セリーナ「無事に入れたようだな」

 

コナー「セリーナ」

 

セリーナ「後ろを」

 

ソファーから立ち上がり、言われた通り後ろに振り返る。そこには壁が無く、雪が降り積もる峡谷の道を、嘗ての仲間の騎士団が隊列を組み歩いていた。

 

セリーナ「この日だったな」

 

コナー「あぁ」

 

この日の事は、コナーも よく憶えている。騎士団の中にはコナーも居て、魔女の女王を討伐するための遠征だった。

また後ろを振り返るとホテルの部屋は消えており、800年前の風景が どこまでも続いている。その先には、高層ビル並みの巨木が立っていた。それこそが、魔女の女王の木だ。

その木を見ながら、コナーの脳裏には女王との戦いが蘇っていた。木の中に入ると配下の魔女に襲われ、魔術や鋭く伸びた爪で騎士団が次々と倒れ、火の手が上がった木の内部で、コナーが女王と1対1で戦った記憶が。

気付くと、2人は木の内部に立っていた。

辺りは火に包まれ、壁には串刺しにされた女王と、女王の木を焼く炎に己も焼かれた過去のコナーが、床に座り込むように鎮座していた。

 

コナー「“死を思い出せ”か・・・何を見ればいい?」

 

セリーナ「ぐっ・・・!?かはっ・・・!」

 

コナー「セリーナ・・・?セリーナ!」

 

突然セリーナが胸を抑え、その場に踞ってしまった。心配したコナーが駆け寄るが、何が起きているのか分からない。

その時、男の声がコナーの名を呼んだ。声がした方を見るが、燃え盛る炎以外は何も見えない。

 

セリーナ「(誰かが・・・術に干渉してる・・・!)」

 

何者かが、記憶の世界との繋がりを断ち切ろうとしていた。魔術を使ってるセリーナは、諸に その影響を受けていた。

男の声は まだ聞こえる。

 

?『コナー、目を覚ませ

 

その言葉と共に、大男が姿を現す。

 

 

*ニューヨーク ホテル 3月24日 21:01*

 

その瞬間、セリーナとコナーは記憶の世界から弾き出され、気付けばホテルの床に倒れていた。

意識が朦朧としながら、コナーは仰向けになる。髭を蓄えた大男が、コナーを見下ろしているのが視界に入った。

 

?「よう、魔女ハンター」

 

コナーの首には注射器が刺さっており、それを引き抜いて起き上がろうとしたが、右腕には手錠までされていた。手錠の もう片方は、床から天井へと伸びる魔術で作られたポールに繋がれている。

セリーナも意識がハッキリしない状態で顔を上げると、赤黒い蔦と戦うダンテとネロの姿があった。ダンテとネロは剣で蔦を斬り捨てるが、どこからともなく無数に現れ、キリがない。

砲撃は味方にも被害が出る可能性があり、艦娘達は艤装を使おうにも戦えずにいた。

セリーナとコナーが記憶の世界に入った後、大男が部屋に侵入した。ネロと摩耶が追い出そうとしたが、どこからか現れた蔦に襲われ、ダンテとネロも そちらの対処で手一杯で、セリーナとコナーへの接近を許してしまっていた。それが、セリーナとコナーが記憶の世界から弾き出された経緯だった。

 

?「無理に引き戻されると、数時間は意識が乱れる」

 

起き上がったコナーは大男に掴み掛かろうとしたが、手錠のチェーンの長さが足りず手が届かない。

 

?「過去を掘り返すな。忘れるべき事もある」

 

セリーナ「貴様・・・何故こんな事を・・・?!」

 

?「セリーナ様、会えて光栄だ」

 

セリーナは魔術を もたらした始祖として、魔女や魔術師の間では有名な存在だった。

魔剣ダンテとレッドクイーンに蔦が巻き付き、ダンテとネロは剣を奪われないように引く。しかし、2人の力でも振り解けず、身動きが取れなくなった。

 

鹿島「っ・・・きゃあっ!」

 

ダンテ「鹿島!」

 

死角から忍び寄った蔦が鹿島の首に巻き付き、鹿島は蔦が伸びている穴に引き摺り込まれてしまった。その穴の先には、闇が広がっている。

ダンテは魔剣ダンテを消し、穴に飛び込み鹿島を追った。

 

ネロ「おいおいマジか!」

 

摩耶「ヤ、ヤバいって!」

 

ネロと摩耶の身体にも蔦が巻き付き、穴へと引き摺り込まれた。

ただ1人 難を逃れた神通は、隠し持っていた短刀を手に大男へ斬り掛かる。すると大男は、口から火炎を吐き出し、神通の身体を焼きながら吹き飛ばした。それでも神通は立ち上がり、大男に挑み続ける。

神通が時間を稼いでる間に、コナーは反対側の窓の方へ走る。窓に手を伸ばすが、チェーンの長さもあり届かない。

必死に手を伸ばし続けていると、指先が窓の縁に触れた。どうにか縁を掴み、手錠から右腕を引き抜こうとすると、コナーの右手の骨が潰れ、形が変わる。骨が砕けた事により、手錠の輪っかからコナーの腕が抜けた。

コナーは睨むように大男を見据え、戦闘態勢に入る。同時に、驚異的な治癒能力で歪になったコナーの手が、元に戻った。

 

?「お前も仲間のように死ね」

 

神通「っ・・・!」

 

大男が倒れる神通に止めを刺そうとするが、解放されたコナーが雄叫びを上げながら大男に殴り掛かり、神通から戦いを引き継ぐ。

格闘戦の最中、コナーはポールを へし折り、それを武器に大男を捩じ伏せる。

 

コナー「友を呪ったな」

 

倒れて膝を突く大男に止めを刺そうとポールを振るが、見えない障壁に阻まれた。障壁には罅が入るように、魔術を示す模様が入る。

 

?「友か・・・精々5分で吐いたぞ」

 

その言葉に怒りを露にしたコナーは、もう1度ポールを振り下ろし、罅の入った障壁を完全に砕いた。しかし、その時にできた隙を狙われ、突き飛ばされたコナーが壁に めり込んで床に落ちる。

コナーが顔を上げると、周りの風景が変わっていた。それは大男が打った注射の影響で、幻覚を見ていた。コナーの目にはホテルの部屋ではなく、女王の木の内部に居るように見えている。

 

?「不死身ならホテルでの乱闘も余裕か」

 

大男は倒れて動かないコナーを踏み付けた。幻覚を見てるコナーには、大男の姿が見えておらず、抵抗もできず床に這いつくばるしかなかった。

 

?「意識は肉体ほど強くないな。思い出を振り返るのは もう終わりだ。今のセリーナ様では それもムリだろう」

 

大男は手に持つ粉を吹くと、粉は小さな花火のように火花を散らし、それは火炎となり部屋を燃やす。これではホテルに宿泊する他の客にも被害が出てしまう。大男を止めるため、神通は立ち上がって戦いに戻る。

コナーの幻覚を解くため、セリーナは動かない身体を無理矢理 動かし、コナーの元へ向かう。しかし、幻覚を見るコナーには、醜悪な魔女が自分に襲い掛かろうとしてるように見えていた。

コナーに接近したまではいいが、セリーナは首を掴まれ息ができない。

 

セリーナ「おい・・・妾を殺す前に・・・あっちを何とかしろ・・・!」

 

コナーは全力で手に力を入れ、首を締め上げる。腕を振り解こうとするが、セリーナの腕力では びくともしない。

セリーナも何かの粉を取り出すと、それをコナーに吹き掛ける。

 

セリーナ「息を・・・息をしろ・・・!」

 

鼻から粉を吸引したコナーの幻覚が解け、醜悪な魔女からセリーナの姿に変わる。コナーは驚いたような表情で、首から手を離した。

 

セリーナ「奴を・・・止めろ・・・」

 

その言葉を最後に、セリーナは意識を失った。

大男が神通を捩じ伏せ動かなくなったのを確認すると、足下から蔦が伸び、大男に絡み付いて引き摺り込もうとする。

正気に戻ったコナーは逃がすまいと、飛び掛かって大男の服を掴んだ。

 

?「いつまでも不死身と思うな。死は訪れるぞ、魔女ハンター!」

 

しかし、蔦の力に敵わず、大男は完全に床に沈んだ。床に空いた穴も塞がり、コナーの腕が床に埋まってしまう。

力任せに腕を引き抜くと、その手には大男の服の切れ端が残っていた。服の切れ端には、何故か赤土が付着している。

部屋には、とてつもない勢いで炎が燃え広がっている。コナーは意識を失っている神通とセリーナを抱え、部屋から脱出した。

ホテルの外では警察や消防が駆け付け、消えた大男が その様子を見ていた。

 

 

*???*

 

蔦の影響で闇に引き摺り込まれたダンテ達は、真っ暗な空間の中に居た。真っ暗であるにも拘わらず、互いの姿は視認できる不思議な空間だ。

 

ネロ「皆、無事か?」

 

摩耶「な、何だよ ここ・・・?」

 

ダンテ「鹿島、首に痣ができちまったな」

 

鹿島「これぐらい へっちゃらです」

 

心配を掛けまいと、鹿島は気丈にも笑顔を見せる。こんな状況であっても笑顔を見せる鹿島に、ダンテも自然と笑みを溢していた。

 

摩耶「なぁ、どうやって元の場所に戻るんだ?」

 

ダンテ「適当に歩いてたら、いつかは戻れる」

 

ダンテの言う事は本当なのかと、摩耶はネロを見た。悪魔を相手にすると、別の空間に飛ばされるのは よくある事なので、ネロもダンテの言葉を肯定した。

そこに、遠くから無数の骸骨が、槍や剣を持って こちらに向かってくるのが見える。

 

ネロ「あれ悪魔だな」

 

ダンテ「魔術師の仕業でも、やっぱノリは一緒か。おい、あいつら全部 潰すぞ」

 

ダンテは魔剣ダンテを その手に出す。

相手が悪魔であるなら、これは既にダンテの仕事だ。そうなれば、コナーの件にも首を突っ込む理由ができた。

 

ネロ「全部 倒したら、戻れる事を期待したいな」

 

鹿島「ここなら、兵装も使えますね」

 

ネロもレッドクイーンを背中から抜き、摩耶と鹿島も艤装を展開して主砲を構える。

 

摩耶「作戦は?」

 

ダンテ「適当に頼む」

 

摩耶「それじゃ分っかんねぇよ!」

 

ダンテ達は この空間から脱出するために、押し迫る無数の骸骨との戦いに突入した。

 

 

・・・・・・

 

*タワーマンション 3月25日 15:12*

 

翌日、神通は見知らぬ部屋のベッドで目が覚めた。横にはセリーナが眠っている。

腕を見ると、包帯が巻かれている。大男の火炎で負った火傷を、誰かが手当てしてくれていた。

ここが どこか確認するために、ベッドから出て窓に向かう事にした。そこからの眺めは、ニューヨークの街並みと海が一望できた。

 

神通「素敵な眺め・・・」

 

ここはコナーが住むタワーマンションだった。

コナーは昨日の間に、神通とセリーナだけでなく、教会から老神父を ここに運び込んでいた。今は部屋の1つにあるソファーに寝かせている。

その部屋の扉を開け、コナーが入ってきた。そのまま傍にある椅子に座り、老神父に語り掛ける。

 

コナー「頑張るんだ、相棒。必ず術者を見付けて、呪いを解く」

 

若神父「コナー、来てくれ!FBIのデータベースだ!」

 

別の部屋に居る若い神父に呼ばれ、コナーは そちらに向かった。

その声は、神通にも聞こえていた。

 

コナー「戻せ」

 

若神父「分かった」

 

神通が話し声の聞こえる場所まで行くと、コナーと若い神父が2人でパソコンを見ていた。

角に身を隠し、話を盗み聞きする。

 

コナー「奴じゃない・・・止めろ、こいつだ」

 

パソコンの画面には犯罪者リストの情報が映っており、そこには昨日 現れた大男の顔写真と共に、情報が載っていた。

 

コナー「なぜ記憶を取り戻す邪魔を?」

 

若神父「B・ケノーラ、通称“悪魔(ベリアル)”、フィンランド国籍」

 

奇しくも、昨日の大男の魔術師の渾名は、あの悪魔である炎獄の覇者ベリアルと同じ名だった。

 

コナー「ラッセルの雇い主だ」

 

若神父「先代を呪った奴?」

 

若い神父の質問に、コナーは頷き肯定する。

一連の繋がりから この魔術師ベリアルが、投獄された魔術師ラッセルを雇っていたと簡単に予測できた。つまり、黒幕は魔術師ベリアルという事になる。

 

若神父「いつの世にも破壊者は現れる」

 

神通「セリーナさんは奴とは違います。人間と同じです」

 

我慢できなくなった神通は、角から飛び出しセリーナの弁護をする。魔女を目の敵にしてるコナーの事だ。きっとセリーナの事も同じように見ているに違いない。

コナーと若い神父は振り返り、コナーは神通と向き合うために椅子から立ち上がった。

 

コナー「見た目は似てても違う。魔術が血に流れてる。危険な魔術がな」

 

神通「・・・・・・・・・」

 

コナー「ホテルでは邪魔が。セリーナが起きたら もう1度 記憶の中に入る」

 

神通「セリーナさんは今、どういう状態なんですか?」

 

コナーの話では、記憶の世界との繋がりを断ち切られ、その魔術を使っていたセリーナに反動が諸に返り、衰弱してる状態だった。

 

神通「そんな状態で、セリーナさんに また魔術を使わせるつもりですか?!そんな風にするために、会わせたんじゃありません!」

 

コナー「・・・・・・・・・」

 

神通「仲間が傷付き、どこかに消えてしまったから あなたを責めてる訳ではありません。事実を言っただけです」

 

コナー「・・・・・・・・・」

 

神通「・・・セリーナさんを連れて帰ります」

 

神通が立ち去ろうとするのを、コナーは落ち着き払った声音で引き止めた。

 

コナー「俺だって こうなるとは思わなかった。力を貸してくれるなら、消えた仲間は俺が助け出してやる」

 

神通「・・・どうやってですか?」

 

コナー「あれも魔術だ。術者を殺せば、消えた連中は戻ってこられる」

 

セリーナには申し訳ないが、そういう事ならと神通は渋々 協力する事にした。消えたダンテ達を取り戻す方法があるなら、今は まだ日本に戻る訳にはいかない。

 

コナー「君には感謝してる。動けない俺の代わりに、ベリアルと戦ってくれた」

 

神通「仲間のためです。きっとセリーナさんも・・・」

 

コナー「そうか・・・」

 

コナーはセリーナとの事を考えながら、若い神父の方へ戻り、魔術師ベリアルの服の切れ端を渡した。

 

コナー「奴の上着に赤土が付いてた」

 

若神父「赤土?」

 

コナー「分析して糸口を掴め」

 

若神父「了解」

 

若い神父に一仕事 頼み、神通の方に戻ると見せたい物があると言って、神通の手を引いて2人で どこかに出掛けた。

 

 

・・・・・・

 

*洞窟 16:21*

 

コナーに連れられ、神通は街にある隠し洞窟にまで来た。壁一面には壁画が描かれている。

 

コナー「魔女の歴史を描いた壁画だ。セリーナが魔術と秘薬の扱い方を教え、後に彼女達は魔女や魔術師と呼ばれるようになった。それが魔女の始まりだ」

 

壁画にはセリーナと思われる魔女が、数人の男女に何かを指導してるような様子が描かれている。

神通は不思議そうに壁画を見ていき、その中に武器を持った男が描かれてるのを見付けた。

 

神通「あなたですね?」

 

コナー「そうだ」

 

神通「目元で分かります」

 

そう言われ、コナーは照れ臭そうに笑った。

別の壁画には巨大な木と邪悪な顔をした魔女達が並び、その頂点に立つ1人の魔女が君臨する壁画を、コナーは指を指す。

 

コナー「『ドリームウォーカー』だ。女王に仕える暗殺者。奴らは敵の心に潜り、大切な記憶を、とんでもない悪夢へと捩じ曲げる」

 

神通「歴史の講義ですか?私を怖がらせるつもりですね?」

 

コナー「奴らは秘術を使い、薬ナシで記憶に入れる。セリーナは その力を宿してる。俺は心の奥底にある何かを思い出したい。セリーナだけが頼りだ」

 

神通「しかし、これ以上 協力するかは、セリーナさん次第です。もしセリーナさんが拒めば、別の方法を探してください」

 

コナー「分かった」

 

 

・・・・・・

 

*街 18:30*

 

ある店の裏口から、盲目の魔術師デズモンドが出てくる。彼は今日も商売の取引をしており、丁度 終わって帰る所だった。

暗い路地を歩いていたが、彼は不意に立ち止まった。何かの気配を感じ取り、辺りを警戒する。

気のせいかと思い、帰り道の方へ向いた途端、誰かにサングラスを奪われた。気配がなかった事で、驚いた魔術師デズモンドは後ろに後退る。

サングラスを奪ったのは、魔術師ベリアルだった。

 

ベリアル「同胞の面汚しめ」

 

デズモンド「仕方なかったんだ!コナーに脅されて!」

 

後退り逃げようとする魔術師デズモンドと、それを ゆっくりとした足取りで追う魔術師ベリアル。

そんな状況の中、街の灯りが徐々に消え、2人の周りを闇が囲む。

 

ベリアル「お前に役をやる」

 

魔術師ベリアルが何かの呪文を詠唱すると、魔術師デズモンドの姿は完全に闇の中に消えた。

 

ベリアル「影を楽しめ」

 

そう言った魔術師ベリアルが立ち去ると、街の灯りが元に戻り、その場には魔術師デズモンドが持っていたトランクケースだけが残されていた。

 

 

・・・・・・

 

タワーマンション 3月25日 20:25*

 

夜、セリーナが目を覚ましたのだが、魔術を行使できるかも怪しい状態だった。

それでも、黒幕である魔術師ベリアルの狙いを突き止めるための答えが、自分の記憶の中にあると考えるコナーは、セリーナに頼むしかなかった。

 

コナー「あと1度だけだ、頑張ってくれ」

 

セリーナ「お前、本気で妾を殺すつもりだな?」

 

セリーナは協力を渋っていた。限界を超えた魔力の行使は、命を削る事になる。いくら不老不死の身体を持つセリーナでも、それをやるのは命を落とす危険があった。

 

コナー「もう他に方法はない。相棒に残された時間もだ」

 

セリーナ「相棒の命は助けたいが、妾の命は どうなってもいいと?」

 

コナー「そうは言ってない」

 

セリーナ「人間は魔女を どう思ってる?緑色の肌でトンガリ帽子、性格は邪悪、魔女裁判で火炙りか?お前も そう思ってるんだろ!」

 

神通「セリーナさん、落ち着いてください。身体に障ります」

 

セリーナ「落ち着けるか!」

 

コナーからの頼みは、今のセリーナからすれば死ねと言われてるのと同じ事だった。そんな事を頼まれれば、長年 追われていた事も含め、鬱憤が爆発して声を荒げてしまう。

 

コナー「・・・・・・魔女裁判は過ちだ。彼女らは無実だった」

 

セリーナ「本当に魔女だったなら?火炙りは妥当か?こういう事だろ、妾が有罪になっても、誰も気にしない」

 

神通「そんな事ありませんよ!」

 

きっとコナーは、魔女の最後が どうなろうと どうでもいい。そう思ってるに違いないとセリーナは思っていた。だが、コナーの口から返ってきたのは意外な言葉だった。

 

コナー「俺は気にする」

 

セリーナ「・・・よく そんな事が言えるものだな」

 

コナー「人間と魔女は、ずっと過ちを繰り返してきた。俺と お前も含めてな。もし これが終わったら、話をしよう。これまでの事と、()()()()の事を」

 

セリーナ「ぁ・・・」

 

それは この800年の間で、コナーが初めてセリーナに歩み寄った瞬間だった。

コナーは今のセリーナ自身を見たのと、これまでの過ちを省みて、これからのセリーナとの関わり方を考えようとしていた。それは、セリーナが ずっとコナーに求めていた答えだった。

コナーの前向きな答えに、セリーナは もう少しだけ頑張ってみる事にした。

 

セリーナ「今回は妾は一緒に行けない。神通、さっきは怒鳴って悪かった。一緒に行ってやってくれないか?」

 

神通「わ、私ですか!?」

 

ドリームウォーカーとしての力を使うには、今のセリーナでは魔力が足りず、外からでしか干渉できなかった。そのため、前回のように一緒には行けない。

もう1つ問題があり、魔術師ベリアルに強制的に引き戻された事で、記憶の世界が混濁してる可能性がある。記憶の持ち主であるコナーが1人で入れば、記憶の渦で迷子になってしまうのだ。

それを防ぐには、誰かがコナーの心を繋ぎ止めなければならない。セリーナが一緒に行けないとなると、神通しか居なかった。

 

神通「どうすればいいか分かりませんが、やってみます」

 

セリーナ「あまり長くは見せられない。急いで目的の物を探せ」

 

神通とコナーが目を瞑ると、セリーナが魔術を行使する。神通とコナーの意識は、記憶の奥底へと沈んだ。




次回も宜しく お願い致します!

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