209話です!どうぞ!
ダンスホールまで案内されたネロ達だったが、そこで狂ったように躍り続ける人達が、突如として異形の怪物へと変貌した。
ネロ達がダンスホールから脱出すると、洋館の執事が戻ってきた。
彼に怪物が居る部屋に案内した事を責めるが、彼は何の事か分からないかのように惚ける。
執事がダンスホールの扉を開けて中を確認するが、そこには案内された時と同じく、多くの人が踊っているだけだった。これにはネロ達も、理解が追い付かず戸惑った。
その後 執事の案内で、遂に魔術師アルバートと顔を合わせる事になった。
魔術師アルバートはセリーナの頼みならと、手記に掛けた術を解き、ネロ達にも読めるようにする事を約束してくれた。
しかし、彼には まだやる事があり手が離せないらしく、術を解くのは それからになるとの事だった。
自分を魔術師アルバートの娘レイナだと言い張る天龍を、元に戻すようにも言うが、魔術師アルバートは天龍を自分の娘だと言って、これには聞く耳を持たなかった。
話も有耶無耶にレイナの部屋へと通されたネロ達だったが、
*洋館 レイナの部屋*
しばらくして、
ネロ「いいけど、見せたい物って?」
質問には答えず、
部屋を出る時、最後尾だったパティは誰かの視線を感じ、部屋の中へ振り返った。そこには、この洋館に入った時にも見た少女が、パティを見ていた。
パティは その少女を見て固まった。この少女は誰なのか、何故ここに居るのか、様々な考えが頭の中を巡り、動けなかった。
少女は何かを伝えようとして口が動いてるが、彼女の声だけは聞こえない。何も分からない。
如月「パティ、行くわよー?」
パティ「あ、うん!」
呼ばれて一瞬 目を離した隙に、少女の姿は消えていた。パティは顔を青ざめ、急いで扉を閉めてネロ達を追った。
・・・・・・
*地下室*
レイナに案内されるまま地下への階段を下り、辿り着いた部屋を見てネロ達は顔を強張らせた。その部屋には所狭しと拷問器具が置かれていて、正しく拷問部屋だった。
アイアン・メイデン、ギロチン、他にも どういう風に使うのか分からない物もある。ただ共通してるのは、どれも使われた後で、乾いた人間の赤い血が付着していた。
神通「レ、レイナさん、どうして こんな所に・・・!?」
戸惑うネロ達だったが、事態は悪い方向へと動き出す。廃村や山の中でも見た黒い影が、怨み言を吐きながら何体も現れたのだ。
影『よくも・・・よくも私達を殺してくれたな・・・!』
影『何で・・・俺達が殺されなきゃならない・・・!』
影『許さない・・・許さない・・・!』
影『お前も同じ目に遭わせてやる・・・!』
暁は恐怖から、無意識にパティに抱き付き、如月も最悪の状況に放心状態となる。
更に悪い状況は続き、部屋にある拷問器具の全てが宙に浮いた。所謂ポルターガイスト現象というやつだろう。
拷問器具には黒い影が取り憑き、同じように宙に浮いている。
神通「こんな狭い所で囲まれたら危険です!」
大潮が脱出のために扉を開けようとするが・・・。
大潮「大問題が発生しました!扉が開きません!」
ネロ「何!?クッソ、やるしかないな」
バージル「お前達は下がっていろ。こんな所で砲撃されたら堪らん」
ネロ「神通、皆を頼むぞ!」
神通は駆逐艦やパティ、
黒い影に取り憑かれた拷問器具は、肉体を痛め付けるための鋭利な部分を剥き出しに襲い掛かってきた。
ネロとバージルは、レッドクイーンと閻魔刀を手に拷問器具の破壊を試みる。刃を振り斬り付けるが、拷問器具には傷1つ付かなかった。
ネロ「何だよ これ、どうなってる!?」
破壊するなど容易いと思っていたが、手応えがない。破壊できないとなると、いずれは数で押され、神通達の方へと接近を許してしまうだろう。
ネロとバージルは、怨み言を吐き捨てる拷問器具を吹き飛ばし、押し返して引き離すしかできなかった。
だが、いつまでも相手はしてられない。何か方法を考えねば・・・。
神通達にアイアン・メイデンが迫り、それを視界の端に捉えていたバージルが、咄嗟に5本の幻影剣を射出する。すると、今まで傷1つ付かなかったはずのアイアン・メイデンに、幻影剣が突き刺さったのだ。
大潮「効いてる・・・効いてますよ!」
ネロ「親父どうやったんだ!?」
バージル「幻影剣を飛ばしただけだが・・・そうか、こいつらの弱点が分かった」
どうやら黒い影が取り憑いた拷問器具は、純粋な物理攻撃に耐性があるようだ。バージルの考えが正しければ、恐らく魔力を用いた攻撃や、炎や雷など、自然に由来する攻撃が効くのかもしれない。
ネロ「そういう事なら・・・オーバーチュア!」
幽体化させた右腕にオーバーチュアを装備し、電撃の掌底打ち『バッテリー』を繰り出すと、拷問器具に取り憑いた黒い影が、断末魔を上げながら吹き飛んだ。
ネロ「効いてる!」
如月「そのまま殺っちゃって!ボコボコにして!」
勝てる兆しが見え、早く ここから逃げたい如月の応援にも熱が入る。
更にネロは、自身の魔力で背中にデビルブリンガーを具現化し、拷問器具を殴ったり、掴んで引き千切って捨て、次々と破壊していく。
バージルも幻影剣を飛ばしながら、自身の魔力で形成したミラージュエッジで斬り捨てていく。
倒す方法さえ分かれば、2人に攻撃の手を緩める理由はない。拷問器具は次々と破壊され、その数を減らしていくのだった。
・・・・・・
影『どうして・・・どうして・・・俺達は殺されたのに・・・どうして・・・』
拷問器具が全て破壊された事で、取り憑いていた黒い影は怨嗟の呟きを残して消えた。
もう襲ってくる気配がないと分かると、ネロとバージルはデビルブリンガーとミラージュエッジを消した。
もう安心だと判断した神通達も身体から力を抜き、如月、暁、パティに至ってはヘナヘナと床に座り込んでしまった。
ネロ「レイナ、もう大丈夫だ。あいつらは居なくなった」
黒い影が消えても、
しかし、
ネロ「レイナ、これだけは教えてくれ。どうして ここに連れてきた?あの黒い影は何だ?」
問い掛けても、
それでも、答えてもらわないとネロ達も対処ができない。ネロも めげずに、レイナに問い掛け続ける。
埒が明かない状況に、バージルは隠す事もなく溜め息を吐き、艦娘達とパティは心配するような、困ったような表情で見守っていた。
ずっと怯えて泣いていた
ネロ「何?」
ネロ「待て、レイナ!」
得体の知れない存在が居る所で、
洋館の1階まで戻り、通路の前後を確認すると、走り去っていく
ネロ「レイナ!」
名前を呼びながら追うが、おかしい事に気付く。どれだけ全力で走っても、
レイナは今、天龍の身体で走ってるとはいえ、こちらも走っている。追い付けないとしても、引き離されない自信はある。それなのに、どんどん引き離されていくのだ。
ネロ「待て、行くな!レイナ!天龍ー!!」
ネロの叫びも空しく、
ネロ「クソッ、どうなってんだ!」
暁「は、早く探さないと・・・」
如月「けど、こんなに広くちゃ探しようが・・・」
ネロ達には共通して、嫌な予感がしていた。急いで
しかし、洋館は広く大きい。しらみ潰しに探そうにも、迷子になりそうだ。だが あまり時間を掛けてはいられないかもしれない。
ネロ「迷ってる暇はない」
ここで突っ立って迷ってる間にも、時間はなくなっていく。時間が掛かっても、兎に角 探すしかない。
ネロの一声で皆が探しに行こうとしたが、それをパティが止めた。
ネロ「パティ、今は天龍を探さないと━━」
パティ「あなたは誰なの?」
ネロ「・・・何 言ってるんだ?誰も居ないぞ」
パティはネロ達に目もくれず、壁の方に向かって誰かに話し掛けていた。
ネロ達には見えてないが、パティには洋館に入った時と、レイナの部屋で見た少女が見えていた。
レイナ「私はレイナ」
パティ「レイナ・・・?」
ネロ「こんな時に何の冗談だ?レイナなら天龍の身体で走ってっただろ」
レイナ「あの女の人を助けたいなら、私の部屋に来て。そこで私の日記を見て」
そう言って、レイナと名乗った少女は消えた。
天龍の中に居たのもレイナ。パティの目の前に現れたのもレイナ。これは いったい・・・?
パティ「レイナの部屋に行く」
神通「どうしてですか?」
パティ「レイナが来てって。天龍を助けたかったら日記を見てって言ってたの」
ネロ「今それ処じゃないだろ。誰も居なかったぞ」
パティ「でも ここに居たの!声も聞いた!」
如月「他に行く宛もないし、行ってみましょ」
ネロ「ああもう、分かったよ!」
レイナの部屋へは1度 行ってる。それなら迷う事はない。
ネロ達は、急ぎレイナの部屋へと向かった。
・・・・・・
*レイナの部屋*
レイナの部屋へと着くなり、ネロ達は すぐにレイナの日記を開いて読み進める。
最初は病気で身体が弱く、外で遊べない事など、
ある程度 知ってる事が掛かれたページは読み飛ばしていくと、日本に移住してからの内容がキナ臭いものへと変わっていった。
レイナの病気は治らないもので、残された時間が残り僅かとなった ある日、レイナは父である魔術師アルバートから儀式の話を聞かされた。“特別な存在を呼び出すために、レイナ自身を捧げなければならない”と教えられた。
レイナは儀式に参加しなくても、病気で自身が助からないと理解していた。それなら、病気で ずっと迷惑を掛けた父が喜んでくれるならと、レイナは子供ながらに その身を差し出す事を考えていた。
儀式の日が近付いた ある日、レイナは村人を呼んでパーティーを開く事を聞かされた。
レイナもパーティーは楽しみにしていた。外で遊べなくても、パーティーなら楽しめるかもしれない。最後に楽しい思い出ができるからと。
だがレイナにも、心境の変化があった。当日になって、招待した村人達も生け贄にする事を聞かされた。その意味は、レイナも理解していた。
『パーティーをする日の深夜0時、私は死ななきゃいけない。パパは“特別な存在”を呼ぶためって言ってた。でも、儀式はしたくない。やっぱり怖い。優しかった村の人達まで死んじゃうなんてヤダよ。パーティーが始まる前に、パパにやめてもらうよう お願いしてみようかな。そうすれば、誰も死ななくていいから』
日記は、そこで終わっていた。
ネロ達は、すぐに何かを言う事ができなかった。父親の目的のために娘を犠牲にする。それでもレイナは、健気にも父親のために それを受け入れていた。
そして、村人を助けるために魔術師アルバートを止めようとしていた。ここで日記が終わってる事から、きっと聞いてはもらえなかったのだろう。
ネロ達は どうにか、自分の中で感じる憤りを処理し、やっと言葉を紡いだ。
ネロ「儀式って何だよ?特別な存在?」
神通「もしかして・・・」
廃村や拷問部屋で見た影は、儀式で殺された村人の怨霊かもしれない。そう考えれば、怨み言を吐いていた事にも納得できる。
暁「待ってよ・・・じゃあ天龍さんが おかしくなったのは・・・」
如月「レイナの幽霊に取り憑かれた・・・?」
パティ「じゃあ私が見た女の子は?」
ネロ「あの時 誰も居なかったぞ」
パティ「そんなはずないわよ!確かに居たんだから!」
如月は、ダンスホールでネロと天龍の写真を撮った事を思い出し、何か写ってないか確認した。それを見て、如月はスマホを落としてしまった。
拾わない如月を見兼ねて神通が代わりに拾うと、画面には恐ろしいものが写り込んでいた。ネロと踊る天龍の肩に、くっきりと人らしき何かが写っていた。
如月は連写機能で激写してたので、全て確認してみると、その全てに同じものが写っていた。
天龍の肩の辺りで浮遊するように、栗色の長い髪に、パティが見たレイナと同じ白い洋服を着た少女らしき存在が写ってる。
恐ろしいのは その顔だ。人としての顔があるはずの場所は骸骨で、洋服もボロボロだった。
如月「絶対ダメなやつ・・・絶対ダメなやつ・・・」
暁「て、天龍さん・・・」
如月と暁が、あまりの怖さにガタガタと震えてると、軋む音をさせながら扉が ゆっくりと開き、如月、暁、大潮は咄嗟に神通の後ろに隠れた。
ネロ達には ただ扉が開いただけに見えたが、パティは違った。
パティ「レイナ・・・」
レイナ「パパを止めて」
パティ「止めるって どうやって?場所も分からないのに」
レイナ「ここは同じ日を繰り返してるの。私が死んだ日を。パパは また儀式をするつもり。けど私には止められない。パパには私が見えないから」
そう言ってレイナは、どこかへ行こうとする。パティはレイナを追い、ネロ達も慌ててパティを追った。
レイナを追うのは大変だった。姿を追って走るが、その姿が消えると通路の先に現れ、また消える。パティは見失わないように走るのに精一杯だった。
その後ろを走るネロ達は、訳が分からず走らされていた。
ネロ「急に何なんだよ?!」
パティ「レイナが天龍の所に案内してくれてる!」
ネロ「はぁ!?」
パティ「レイナが教えてくれたの!ここは同じ日を繰り返してるって!アルバートって人、また儀式をするつもりなのよ!」
バージル「そういう事か」
前回の儀式が成功してるなら、また儀式をやる必要はない。恐らく前回の儀式は失敗したのだろう。
天龍は自分を“レイナ”だと言っていた。天龍が どこかに行ってしまったのが儀式と関係あり、また儀式をやるつもりなら、深夜0時になれば天龍の命はない。
暁「パティに見えてるのがレイナなら、天龍さんに取り憑いてるレイナは何?」
ネロ「何だっていい!今は天龍の所に行くのが先だ!パティ、見失うなよ!」
パティに見えてるレイナが天龍の所へ案内してくれてるなら、頼りは それだけだ。
深夜0時まで どれだけ時間が残されてるのか、ここでの時間も分からない。見失えば、天龍は もう助けられない。
レイナを追って走っていると、ネロ達の前に執事が立ち塞がった。
執事「残念ですが、ここは通しません」
ネロ「お前、天龍を返しやがれ!」
執事「それはできません。我が主のため、折角 生きてる人間が外から来たのですから」
バージル「貴様の言う主とやらは、アルバートの事ではないな?」
執事「その通りです。私は本当の主から、儀式が上手くいくよう監視するため彼の元へ送られました。我が主が魔界から人間界へ来るためにね」
神通「悪魔だったんですね」
執事「それに、あなた達は儀式に必要ない。
そう言って執事の姿が変わり、まるで蝙蝠人間のような姿の悪魔となる。
悪魔『また儀式が失敗した時のために、あなた達を予備として置いておくのもいいかもしれませんね。どうです?生け贄となってくれるなら、今すぐには殺さないであげますよ。儀式が成功しても、奴隷として生かしてもらえるよう我が主に━━』
バージル「邪魔だ、どけ」
喋ってる途中で淡々と口を挟んだバージルは、高速移動しながら駆け抜け悪魔を通り過ぎると、いつの間にか抜いていた閻魔刀を鞘に戻した。
悪魔は何が起こったのか分からないまま、身体がバラバラになり死体となった。
大潮「バージルさんが居たら凄い楽です!」
バージル「貴様らも少しは役に立て。時間が惜しい、行くぞ」
ネロ達はバラバラになった悪魔の死体を避け、先へと急いだ。
しかし、少しでも悪魔の邪魔が入った事で、レイナの姿を見失っていた。
パティ「どうしよう、レイナが どこにも居ない」
ネロ「とりあえず進むぞ」
幸い、今は まだ、通路は一本道だ。ここは一先ず道なりに進めば心配ない。分かれ道が出てくれば、その時 考えるしかない。
*大広間*
洋館の大広間の床に、大きな魔法陣が描かれていた。
壁や柱には火の灯った松明が掛けられており、灯りは それだけだった。
そして魔法陣の中心には、魔術師アルバートと天龍が立っている。
アルバート「もうすぐだよレイナ。もうすぐ、これも終わる」
魔術師アルバートの手には、大きめのナイフが握られていた。
次回も宜しく お願い致します!