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キリのいい場所がなくて、今回は いつもより文字数が多めになっちゃいました。
265話です!どうぞ!
前回までの『Devil May Cry鎮守府』は・・・。
合同演習が終わり、Devil May Cry鎮守府の艦隊とアメリカ艦隊も演習場に戻ってきた。
その直後、憲兵隊が演習場を包囲し、中将と鹿屋提督は艦娘売買と国家反逆罪の罪で拘束され、連行された。
街でR・ネロと戦っていた改以下の艦娘達だったが敵わず、R・ネロが繰り出す衝撃波に消し飛ばされそうになる。そこを、嘗て敵であり死んだはずのアーロンが現れ、艦娘達の窮地を救った。
合同演習の閉会式の途中、爆発音の後にダンテ、バージル、ルシアが転がり込むように吹き飛んできたため中断される。
そこにベルゼ、赤バージルの軍団、更に遅れてR・ネロまで現れる。
R・ネロの口から、ネロがルキフェルスの手に堕ちた事を聞かされ、合同演習に参加していた改二以上の艦娘達は、その事実に混乱して狼狽える。
ダンテはネロを取り戻そうとするが、ダンテとルシアはR・ネロの手で消え、バージルは消える直前で人間の側面を切り離し、Vだけは助かる。
赤城は、ダンテが死んだと聞かされショックを受けるのだった。
*横須賀鎮守府 演習場 6月6日 3:17*
R・ネロ「運命の巫女 赤城、お前がダンテを死に追いやったんだ」
赤城「私が・・・!?」
如月「赤城さんが、運命の巫女?」
加賀「何を適当な事を!」
R・ネロ「ダンテを この世界に呼び寄せる切っ掛けを作ったのは赤城だ。お前が呼ばなければ、ダンテが死ぬ事もなかった。お前が殺したんだ」
赤城「嘘・・・」
蒼龍「ちょっ、赤城さん!しっかりしてください!」
赤城は頭を抱え、力なく崩れ落ちてしまった。
R・ネロの話は、以前にも似たような事を聞いた事がある。それは、嘗て鉄底海峡アイアンボトムサウンドを支配していた、艦娘の赤城と分かたれた深海棲艦のアカギも、似たような事を言っていた。
“悲しい さだめに囚われる事なく戦場を駆け、運命を見通し、艦娘達の運命をも変える異世界の者を、招き入れる切っ掛けを作った”
それもあり、R・ネロが告げたダンテの死の話も信じてしまい、赤城は茫然自失となってしまう。
赤城「私が・・・私のせいで提督が・・・」
武蔵「しっかりしろ!ダンテ提督が死ぬはずがない!」
吹雪「赤城さん!赤城さん!」
皆が赤城に呼び掛けるが、赤城の耳には皆の声が遠くなっていくように聞こえ、意識も遠くなり、赤城の視界は真っ暗になった。
*???*
赤城は、気付けば真っ黒な空間に居た。何が どうなって この場所に来たのか、赤城本人ですら分からない。
辺りを見渡すが、どこもかしこも黒く、壁はあるのか、この場所の終わりがあるのかも分からない。
?『赤城』
後ろから声を掛けられ、振り返ると そこには、白い服に身を包んだ赤城が居た。正確には、アイアンボトムサウンドで赤城と1つになった、深海棲艦のアカギが そこに居た。
赤城「やっぱり、私の中に居たんですね」
アカギ『お前と1つになり、ずっと見ていた。お前は言った。希望があると。私は それを信じた。それなのに、諦めるのか?』
赤城「・・・・・・ごめんなさい・・・」
アカギ『・・・なぜ、謝る?』
赤城「私が提督を呼んでしまったから、提督が死ぬ事に・・・!どうして私に そんな力があるのか・・・自分が何なのか分からないの!怖い・・・!」
赤城は恐怖心を抑えようとするかのように、自身の身体を強く抱き締める。それでも、赤城の身体は震えていた。
アカギは、そんな様子の赤城を見て溜め息を吐いていた。
アカギ『死ぬ瞬間を見たのか?』
赤城「だって、目の前で・・・」
アカギ『私には、ただ消えただけに見えたが』
赤城「でも、私は どうすれば・・・」
アカギ『私は お前でもある。お前が戦えないのなら、私が代わりに戦おう。私に、全てを委ねろ』
指でアカギが赤城の額をチョンと小突くと、赤城の意識は完全に途切れ、その姿も消えてしまった。
残されたアカギは上を見上げ、人のものとは思えぬ雄叫びを上げた。
*横須賀鎮守府 演習場*
赤城『ア゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛!!!!』
加賀「あ、赤城さん・・・!?」
現実世界でも赤城が雄叫びを上げ、傍に居た人間や艦娘達は、突然の事に驚き狼狽えていた。
何が起きてるのか理解できないまま見守っていると、赤城の髪と肌は見る見る内に白くなり、着ていた服も白いワンピースのような物に変わった。
元帥「・・・・・・深海棲艦、だと・・・!?」
加賀「赤城さん、どうして・・・」
その姿は、赤城から分かたれた深海棲艦のアカギの姿だった。
赤城と1つとなり、彼女の中に居た深海棲艦のアカギが、赤城の身体を使い表に出てきていた。
アカギ『滅びよ!』
アカギはルキフェルスに向かっていき、肥大化した左手の爪で襲い掛かる。だが それを、ベルゼがリベリオンに似た剣で受け止めた。
アカギとベルゼの攻防が始まるのを見届け、R・ネロは指をスナップさせる。すると、横須賀鎮守府の本館を破壊しながら、巨大な塔が地面の下から迫り上がってきた。それは、嘗てバージルが封印を解いた魔塔テメンニグルに似ていた。
横須賀「あ、あれは何なの!?」
直後、地面の下から触手が伸び、鋭い尖った先端で艦娘や駐屯していた憲兵の身体を貫き持ち上げる。餌食となった者は、血を抜かれ干からびていった。
グリフォン『クリフォトの根!?早く逃げろ!アレに捕まったら お終いだぞ!』
人間や艦娘が逃げ惑う中、クリフォトの根は次々と彼らの身体を貫き、養分として血を抜き取る。
皆が逃げる中、加賀だけは呆然と立ち尽くしていた。その眼に映すのは、深海棲艦となった赤城とベルゼの戦い。
そして逃げようとしない加賀を放っておけず、瑞鶴が戻ってきた。
瑞鶴「ちょっと加賀、何してるのよ?!」
加賀「・・・・・・・・・」
瑞鶴「加賀!!」
加賀「・・・あなただけでも逃げなさい」
瑞鶴「ちょっと何 言って━━」
加賀「私は赤城さんを置いて逃げるつもりはない」
瑞鶴「そんなこと言ったって━━っ・・・!?」
口論してる間に、クリフォトの根が2人を狙ってくる。加賀は瑞鶴だけでも助けようと突き飛ばそうとするが、それよりも早くクリフォトの根が爆発した。
後ろを振り返ると、大本営の武蔵が艤装を構えていた。
武蔵「何をしてる?!逃げるぞ!」
瑞鶴「早く!」
加賀「待って瑞鶴!」
瑞鶴は問答無用で加賀を引っ張り、強制的に演習場から離脱させる。
その後を、武蔵も追い掛ける。
加賀「赤城さぁあああん!!!」
加賀は後ろに振り向きながら叫ぶが、ベルゼと戦うアカギの姿は、クリフォトの根に阻まれ見えなくなってしまった。
R・ネロ「この世界も闇に堕ちる・・・魔界化の始まりだ!」
横須賀鎮守府を起点に魔界化が始まり、ネロはルキフェルスの手に堕ち、ダンテとルシアは消え、バージルもVと魔王ユリゼンに分かれてしまった。この世界から、悪魔の脅威を止められる存在が消えた。
*Devil May Cry鎮守府 正面ゲート*
鎮守府に残っていた鳳翔、葛城、祥鳳、千歳型、明石は、憲兵からの連絡を受け正面ゲートに急いでいた。
正面ゲートに着くと、街に向かったはずの艦娘達がボロボロで倒れていた。
駐屯する憲兵隊が艦娘達を護るように、一緒に居た白衣の男に銃を向けている。
鳳翔は、葛城達に皆を入渠ドックに運ぶよう指示し、憲兵隊を掻き分け前に出ると、白衣の男アーロンを睨み付ける。
鳳翔「アーロン、まさか生きていたとは・・・。あなたには訊きたい事が山程ありますが、これだけは答えてもらいます」
アーロン「何かな?」
鳳翔「皆を傷付けたのは あなたですか?」
アーロン「違う。やったのは我が愚弟のルキフェルスだ」
1号「鳳翔さん、奴は大淀さん達を助けたと言ってます」
鳳翔「・・・信じろと?」
アーロン「信じるも信じないも勝手だが、もっと建設的な話をしよう。ネロ君がルキフェルスの手に堕ちた。恐らく横須賀鎮守府に居た者も手遅れだろう」
鳳翔「何ですって・・・!?」
アーロン「今 起きてる事を止めるには、我々が協力するしかない」
鳳翔「ふざけないで!あなたは敵でしょ!」
鳳翔の言葉に、銃を構えていた憲兵隊が引き金を引こうとする。それを察したアーロンは、魔術で生成した鎖で全員を拘束し、動きを封じた。
3号「う、動けねぇ・・・!」
鳳翔「くっ・・・!」
アーロン「頼むから・・・あまり魔術を使わせないでくれ・・・」
魔術を行使するアーロンは、どこか辛そうな様子だった。
アーロンが武力ではなく、純粋に これから どうするか話し合うか問うと、鳳翔は少しの間 考えてから頷いた。それを確認すると、アーロンは拘束してる鎖を消した。
鳳翔「あなたの知ってる事を全て話してもらいます」
アーロン「勿論さ。そのために来たのだから」
アーロンが そう言った直後、ポンッと気の抜けた音と共にアーロンの身体が煙に包まれ、煙が消えて出てきたアーロンの姿に、鳳翔と憲兵隊は驚き唖然としていた。
*埠頭*
鎮守府の埠頭では、ほっぽが1人で夜の海を眺めていた。
ほっぽ『アカギガ、ナイテル・・・』
ほっぽは何かを感じ取り、1人で夜の海へと入り姿を消した。
・・・・・・
*イギリス・ロンドン 街 イギリス時間19:17*
街の人気のない場所で爆発が起き、炎の中からトリッシュが飛び出し着地する。
炎の向こうからは、R・ネロが歩いて出てきた。
“運命の巫女”について調べていたトリッシュは、イギリスに滞在していた。
不穏な気配を察知し、宿から出て人気のない場所まで行き待ち構えていたのだが、現れたのがネロだったためトリッシュも最初は驚いた。
だがネロの様子が知ってるものとは違い、敵意を向けてくる事から応戦する事になり、今に至る。
トリッシュ「お前は何なの?」
R・ネロは何も答えず、駆けながら間合いを詰めてくる。
トリッシュは掌から稲妻を放つが、R・ネロは一瞬で姿を消し空振りに終わる。
後ろから気配がして振り返るが、R・ネロの赤く光る剣に斬り飛ばされ、地面に倒れてしまった。
トリッシュは顔を上げてR・ネロを見るが、R・ネロが手から放つ光を浴び、トリッシュの姿が消えてしまった。
R・ネロ「残るは1人か」
・・・・・・
*Devil May Cryの世界 街 アメリカ時間14:58*
Devil May Cryの世界では、レディが泊まっていた宿で、グラス片手にワインを楽しんでいた。
1人の静かな時間を満喫していたが、レディが泊まる部屋の壁が爆発して吹き飛んだ。
瓦礫を押し退けながらレディが出てくるが、爆発の影響で宿に火の手が上がり、火事になっている。
壁に空いた大穴から、宙に浮いたR・ネロが入ってきた。それを見て、レディはR・ネロを睨む。
レディ「知ってる顔だけど、私の知ってる彼じゃないわね!」
デビルハンターとしての経験から、即座にネロではなく敵だと判断したレディは、開口一番に銃の引き金を引く。撃ち出された銃弾がR・ネロに向かって幾つも迫るが、R・ネロは赤く光る剣で全ての銃弾を弾いた。
それでもレディは銃を撃ち続け、R・ネロは銃弾を弾きながら一気に間合いを詰める。
至近距離まで迫り、レディは首を掴まれ壁に押し付けられた。
レディ「放せ この野郎・・・!」
レディは もがいて その手から逃げ出そうとするが、R・ネロが放った光を浴び、レディの姿まで消えてしまった。
遠くから、サイレンの音が聴こえてくる。それを聴きながら、目的を達成したR・ネロは姿を消した。
・・・・・・
*艦これの世界 Devil May Cry鎮守府 正面ゲート 日本時間11:14*
もう昼と言ってもいい時間、正面ゲートの警備をしていた憲兵14号と37号は、遠くから誰かが歩いて こちらに向かってきているのが見えた。歩きで ここまで来るなど何の用かと不思議に思ったが、遠過ぎて誰なのか判らない。
ある程度 姿がハッキリしてくると、見た感じ服がボロボロであるのは判った。ホームレスか近くで事故にでも遭った人かと思ったが、もう少し様子を見る事にした。
顔もハッキリと判る距離になると、憲兵は驚き目を見開いた。こちらに来ていたのは、傷だらけの鹿島だったのだ。
急いで鹿島に駆け寄ると、丁度 鹿島が倒れそうになり、憲兵37号が寸でのところで受け止めた。
37号「しっかり!大丈夫ですか!?」
鹿島「たす・・・けて・・・」
37号「おい、医務室に運ぶ!明石さんに連絡を!」
14号「分かった!」
鹿島は医務室に運ばれ、明石の手当てを受ける事となった。
しかし意識を失っているため、何があったのか今すぐ詳細を聞く事はできないだろう。
・・・・・・
*医務室 18:40*
医務室は、意識の戻らない艦娘達で溢れていた。
それでも明石は、休まず皆のバイタルを確認しながら様子を見ていた。
そろそろ日が沈み夜になろうとする時間、艦娘達が目覚めた。
阿賀野「ぅ・・・ここって・・・」
明石「意識が戻ったんですね!」
寝起きで最初はボーッとしていたが、自分達が意識を失う前の事を思い出し、早口にネロの事やアーロンが生きていた事を明石に話し、鹿島はダンテ達の事を伝えた。
深雪「司令官が死んだって どういう事だよ!?」
鹿島「アーロンが生きていたんですか!?」
お互いに質問ばかりで、これでは会話にならない。怪我をしてるのも忘れて話は平行線だ。
明石「皆、ちょっと落ち着いて」
三日月「何で明石さんは落ち着いてられるんですか!?」
明石「動けるなら、会議室に行けば知りたい事は分かるから。今、鳳翔さんがアーロンと一緒に居る」
大淀「アーロンが!?」
艦娘達は医務室から飛び出し、急いで会議室に向かった。
そんな中、香取型だけは すぐに動かなかった。
香取「鹿島、無事で良かった・・・」
鹿島「うん、香取姉も・・・」
香取「明石さん、ありがとうございました。私達も行きます」
明石「はい、無理はしないように」
姉妹が無事だった喜びを噛み締め、遅れて香取型も会議室に向かった。
残された明石は、これから どうなってしまうのか、自分達は どうするべきなのか、皆目 見当も付かない状況に、憂いた表情をして床を見詰めるのだった。
・・・・・・
*会議室 18:55*
艤装を展開した艦娘達が会議室に着いて中に飛び込むと、丁度 鳳翔と目が合った。
高雄「鳳翔さん、アーロンは どこに!?」
鳳翔「皆さん・・・彼なら そこに」
鳳翔が見る視線の先を辿ると、コーヒーを飲む白衣を着た老人が座っていた。ネロやバージルが会った あの老人だ。
思ってた人物とは違い、艦娘達の思考が止まる。少しずつ頭が働くようになり、艦娘達は1つの疑問だけが脳内を占めていた。
『誰?』
老人「あれだけの事があったにしては、元気そうだね」
鳳翔「皆さん、落ち着いて聞いてください。彼がアーロンなんです」
目の前の老人がアーロンだと言われ、艦娘達は またしても頭がフリーズする。
嘗て敵として戦った時のアーロンも、何故か自分達を助けたアーロンも若い姿をしていた。以前、アーロン自身が不老不死と言っていたため、年老いる事はないはずだ。こんな年寄り 知らない。
朧「鳳翔さんだって知ってるじゃないですか。この人はアーロンじゃありません」
弥生「・・・騙されてる?」
鳳翔「そうじゃないんです。あなた達を助けたのは、紛れもなく彼なんです。それと、私達が戦ったのは、彼とは別のアーロンなんです・・・彼の言葉を信じるなら」
鳳翔の話に、艦娘達は頭が混乱する。自分達を助けたアーロンと目の前の老人が同一人物で、嘗て戦ったアーロンとは別人・・・もう訳が分からない。
老人「目に見えるものだけが真実という訳ではない、という事だよ。どれ、1つ実演でもすれば信じるかな?」
老人は椅子から立ち上がり、全身が光に包まれる。光が消えると、その姿は確かに艦娘達の知る若いアーロンに変わっていた。これには艦娘達も驚きを隠せない。
だが すぐに、元の老人の姿に戻ってしまった。
アーロン「ふぅー、疲れる・・・。改めて、私がアーロンだ」
手短に自己紹介を終わらせ、年老いたアーロンは ゆっくりと椅子に座り直した。
アーロンの姿が変わったのは、以前フォルトゥナでセリーナが大人の姿になる時に行使した魔術と、同じ魔術を使ったからだ。
実演を見せられ確かにアーロンであるのは分かったが、それでも色々と理解が追い付かず、艦娘達は呆けた顔をしていた。
鳳翔「私は1度 聞きましたが、皆で彼の話を聞きましょう」
鳳翔と艤装を解除した艦娘達も椅子に座り、アーロンの話を聞く姿勢になる。
因みに、鳳翔と一緒に鎮守府に残っていた葛城や千歳型などは、先にアーロンの話を聞いていたので、医務室で寝ていた艦娘だけで改めて話を聞く事になった。
それでも、訊きたい事は山程あり、何から訊けばいいか迷ってしまう。
そんな中、弥生が1番に質問を投げ掛けた。
弥生「何で生きてるの?」
それは艦娘達にとって最大の謎だ。
南方海域に現れた水上要塞での最終決戦、そこでアーロンを完全に倒したと、ダンテとネロ、川内、セリーナの口から確かに聞いた。
アーロン「君達が戦った私は、正確には私のクローンだったのだよ」
五月雨「クローンって・・・」
若葉「ベルゼと同じという訳か」
アーロン「その通り。あれは私も予定外でね。全てを話すには、少し昔話に付き合ってもらうよ?」
前元帥が まだ若く、横須賀鎮守府で提督をしていた時代、アーロンは海軍で深海棲艦の研究をしていた。
だが行き過ぎた実験が見付かり、海軍から雲隠れしてから凡そ10年後、アーロンの身体に異変が起きた。不老不死の力を失ったのだ。原因は判っていない。
普通の人間と同じように歳を重ね、老化によって自ら動いて目的を達成できないと考えたアーロンは、自身のクローンを造り、自分の代わりを担わせようとした。
だが そこで、予定外の出来事が起きた。クローンがオリジナルであるアーロンに反旗を翻したのだ。
クローンはオリジナルを異空間に閉じ込め、長い年月を掛けて数年前の大災厄を引き起こしたのだ。
アーロン「私のクローンではあったが、元にした時代が悪かった。不老不死の力を失う前の私をベースにした事で、クローンは魔石の呪縛に囚われていた頃の私と同じ考えを持っていた」
クローンにはオリジナルのアーロンの記憶も持たせていた。クローンが あの災厄を引き起こしたのは、その記憶が原因とも言える。
朧「クローンといえば、ベルゼも どうして生きてるの?提督からは死んだって聞いてたけど・・・」
その答えを、アーロンは知っていた。最初に会ったダンテのクローンとベルゼは、別個体らしい。
10ヶ月前、水上要塞の残骸が沈む南方海域で、深海棲艦が妙な動きをしていた。恐らく そこから、ダンテのクローンの無傷な個体を見付け、ルキフェルスが『ベルゼ』の名を与えたのだろう。
水上要塞には、ダンテのクローンが大量に保管されていた。1体ぐらい、無傷の個体があっても不思議ではないだろう。
阿賀野「大量製産されたモデルってこと?」
アーロン「そういう事になるね」
だが艦娘達には、それよりも気になる単語があった。
漣「“魔石の呪縛”って何?」
磯波「魔帝ムンドゥスが生み出した事にも関係あるんですか?」
アーロン「ルキフェルスから聞いたんだね。そう、あれは私の最初の過ちだった」
アーロン、ルキフェルス、セリーナが生きた文明は、悪魔の力を利用して繁栄を極めた。悪魔の力でも上手くコントロールできていた。
だが当時のアーロンは、科学者として更なる繁栄を求め、呼び出した魔帝ムンドゥスに力を懇願した。そして与えられたのは、人間界に元々 存在していた魔石を元に造り出された魔石だった。
アーロン「私は それを使って、更なる発展を試みた。そして成功した。だが あれは、使うべきではなかった」
実験を繰り返し、魔石の力で人間そのものを悪魔に変え、強力な人造悪魔を生み出す事にも成功した。戦争が起きても、楽に自国の防衛ができる程に力を持ってしまった。
そうしてる内に、アーロンを始めとした多くの者が、魔石の呪縛を受けていた。それは、魔帝ムンドゥスの洗脳と言っても差し違いなかった。
魔石の呪縛を受けた者は考え方が変わり、人間が持つ優しさや思い遣りの心を失い、欲しい物は力で奪おうと殺し合いにもなった。
それが間違っていると声を上げたのが、ルキフェルスとセリーナだった。
2人は人間と人間界を護るために、七騎士を率いて反乱を起こした。王族と王族との戦争だ。
悪魔の力を手離せないアーロンと、人間の尊厳を守ろうとするルキフェルスとセリーナでは、最早 対話で戦争を終わらせるのは不可能だった。
人間側には、悪魔とも違う人ならざる存在も加わり、戦争は混迷を極めた。
そして人間側の勝利が目前となった時、アーロンはルキフェルスとの一騎討ちに敗けた。それで終わるかと思われたが、そうではなかった。
アーロン「ルキフェルスは既に、魔石の呪縛に囚われていた。誰も気付かぬ内にね。戦争を起こしたのも、自分が魔石を手に入れ、何者にも敗けぬ力を手にするためだった」
愛宕「どうして、ルキフェルスは力を求めたの?」
アーロン「あいつには それしかなかったからだ」
アーロンは科学を、ルキフェルスは武術を、セリーナは魔術を母から教わり、その才能を伸ばしていった。
戦う事でしか自分の存在価値を証明できないルキフェルスは、どこまでも力を追い求めた。魔石の呪縛に囚われていたからか、それは日に日に酷くなっていったそうだ。
アーロンの話では、ネロも同じ状態らしい。
ネロは魔剣士スパーダの血族であり、同じく人間を愛し、人間界のために これまで悪魔と戦ってきた。艦娘達からすれば、そんな簡単にネロが魔石の呪縛に囚われるとは考えられなかった。
だがアーロンの見解は違った。どれだけ正しい考え方や誇り高き魂を持っている者でも、その魂とは異なる性質の物を使い続ければ、少しずつ精神が侵食され、壊れてしまう。
魔剣士スパーダの血と力を持ち、人間を愛する心を持っていても、精神が侵食されれば人が変わり、ネロですら闇に堕ちるとの事だった。
その話の上で、艦娘達には1つ心当たりがあった。確かに七騎士が持っていた魔石を使い始めてから、ネロは以前より怒りっぽくなり話を聞かなくなった。
雷「元に戻す方法はないの!?」
アーロン「それには時間がない。だから我々が協力しなければならない。予言が正しければ、ネロ君の力も━━」
若葉「ちょっと待て。予言って何の話だ?」
それはアーロンの時代に伝わっていた話だった。世界の災厄を払うには、運命の巫女と13人の
3千万年前は
望月「そういえば、朝潮型も そんなこと言ってなかったっけ?七騎士の1人が、“運命の巫女”が どうとかって話してたって」
アーロン「鳳翔君の話を聞く限り、今代の巫女は赤城君に間違いない」
涼風「その巫女さんが赤城秘書艦なら、
3千万年前、内10人はアーロンとルキフェルス、セリーナ、七騎士だった。
今の時代では恐らく、ダンテやネロ、バージルではないかとアーロンは見てる。
ただ、七騎士は既に6人が死に、残りのベルゼは紛い物であるため その資格はない。
ネロとルキフェルスは あの状態だ。13人という限られた人数の中で、今や誰が
アーロン「その上で止められるか どうかは、我々次第という訳だ」
鹿島「・・・事情は分かりました。ですが、あなたが私達の味方であるとは言えませんよね?」
アーロン「言っても信じないだろうが、不老不死の力を失った時、どういう訳か私は魔石の呪縛から解き放たれた」
それからは正体を隠し、陰ながら この世界で起きてる事の調査をしていたのだ。自分の二の舞にしないよう、新たな災厄を止めるために。
そう言われても、アーロンを信用できるという材料としては弱かった。アーロンとしても、今は信用を得るだけの証明はできないため、これ以上は どうする事もできなかった。
アーロン「私を信用できないのは理解できるが、君達に選択肢はないはずだ。今、横須賀鎮守府を起点に人間界の魔界化が始まってる。ルキフェルスが次に動くとすれば・・・」
この世界の理が通じず、自分の脅威となるデビルハンターの排除。それと、クリフォトの樹の成長を早める事だとアーロンは予測していた。
アーロンの考えでは、ダンテとルシアは死んでおらず囚われてるはずだ。
集めたデビルハンターの力を促進剤にし、クリフォトの樹の成長を早めて魔界化を広げるつもりだとした。
アーロン「急がなければ、デビルハンター達もネロ君も、そして赤城君、世界すらも手遅れになる」
人間界の魔界化が終われば、その瞬間がダンテ達の本当の死だ。
ルキフェルスと融合してしまったネロの心も、時間を掛ければ完全に消えてしまう。それまでに、彼らを助け出さなければならないのだ。
三隈「待ってくださいな。どうして赤城さんが手遅れに?」
鳳翔「1番 重要なのは赤城さんらしいのです」
アーロン「今頃 赤城君も捕まっているだろう。ルキフェルスは ただ捕まえた訳じゃない。赤城君の持つ、運命の巫女の力を欲してるからだ」
若葉「それをルキフェルスが手に入れれば、どうなる?」
アーロン「もう誰にも止められない」
鹿島「猶予は どのくらいですか?」
アーロン「本来クリフォトの樹が成長するのは凡そ1ヶ月だが、ダンテ君達が捕まってるとなると、恐らく2週間で終わる」
それまでに戦力を整え、ダンテ達を救出しなければならない。艦娘達は その期間で、それだけの事ができるか不安もあった。
会議室に沈黙が流れる中、不意に鳳翔が立ち上がり、アーロンに向き直る。
鳳翔「いいでしょう。あなたを信用する訳ではありませんが、今は協力関係を結びましょう」
大淀「本気ですか!?」
鳳翔「私達の利害は一致してます。そうですよね?」
アーロン「あぁ、私もルキフェルスには少々 腹を立てていてね。あいつの計画を阻止できるなら、喜んで協力しよう」
アーロンも立ち上がり、鳳翔と握手を交わす。
ただし、もし裏切った時は容赦しないと先に釘を刺しておくと、アーロンは笑らいながら、それでも構わないと了承した。
アーロン「それに今は、昔と違って“人間の可能性”というものを信じたいと思ってる。悪魔の力ではなくてね」
艦娘達は、ダンテ達を救出し、魔界化を止めるために動き始めるのだった。
次回も宜しく お願い致します!