268話です!どうぞ!
鎮守府に残っていた艦娘達は、ニコと魔女ハンターのコナー、元ネイビーシールズのメンバーと共に、魔界化が拡がる街へと突入した。
その頃Vと天龍型も、際限なく現れる悪魔を倒しながら街を進んでいた。
他の者は、未だ行方が分からない。
*街 6月20日 5:32*
陸軍兵士を保護した鳳翔達は悪魔を倒した後、そのまま横須賀鎮守府を目指して車で走っていた。
外は雨が降り始め、暗い雰囲気の街を走る中、更に憂鬱な気分にさせてくる。
ニコが運転するバンの後部で、鳳翔と大淀、香取型は魔界化について話し合っていた。
鹿島「アーロンの話が正しければ、今も この街は、周囲を巻き込んで魔界化を続けてるはずです」
鳳翔「魔石の力ですね」
ニコ「私の世界でも そうだったが、時間はないぞ。こうしてる間にも、どんどん拡がってやがる」
香取「ニコさん、あなたの世界では どうやって止めたんですか?」
ニコ「ダンテとバージルがクリフォトを破壊して、魔界の入り口を閉じた。まぁ そのせいで、2人は魔界に取り残される事になったけどな」
鹿島「そうなると、ルキフェルスを止めるだけでは魔界化は止まらないでしょう。やはりクリフォトを直接 叩く必要がありますね」
話してると、ニコがバンを止めた。
どうしたのか訊いてみると、ニコは顎を しゃくって前方を見るよう促した。鳳翔達がフロントガラスから前を見ると、その先の道が陥没していた。
ニコ「こりゃ車じゃ通れないな」
どうしたものかと困っていると、装甲バス1号車に乗るディーコンから無線が入る。彼も、ニコが止まったのを不思議に思っていた。
ニコ「この先は行けない。回り道する必要がある」
ディーコン『ならソープに道を探してもらう。ちょっと待っててくれ』
鎮守府でバックアップを担当するソープに、衛星画像から問題なさそうなルートを探すように頼み、それまで皆は立ち往生する事となった。
一方その頃、Vと天龍型も、雨の中を歩いていた。
そんな中、天龍型は ある物に視線を向ける。それは道の あちこちにあり、網目状の樹木か蔦か何かが、辛うじて人の形を成していた。
天龍「あれって・・・」
V「あれはクリフォトに血を吸われた人間の成れの果てだ」
Vから聞かされた事実に、天龍型は胸を締め付けられる思いだった。
幾つもある人間の成れの果ての中には、母が子を庇うように抱き締めているような形の物もあった。
龍田が近付き軽く触れると、崩れて塵となってしまった。
龍田「ぁ・・・」
天龍「子供も見境なく狙ってるのかよ・・・」
V「子供だろうが女であろうが、クリフォトにとっては餌である事に変わらない。お前達も、気を付けないと こうなる」
感傷に浸っていると、空気を読まず悪魔が何体も現れた。現れたのはエンプーサと、臀部が緑色の『グリーンエンプーサ』。
グリーンエンプーサ━━蟻の中には、仲間を癒すために蜜を分泌させる種が居る。この個体も それに似た特徴を持っており、臀部に蓄えた血が、悪魔を癒す成分に変化してるようだ。
それを利用して仲間を癒すのが、この個体の役目だ。それをさせないためには、発見次第こいつを早急に仕留めなければならない。
だが、口から毒性の粘液を吐く事もあり、注意はしなければならない。
天龍型は、行き場のない怒りや悲しみを ぶつけるように、悪魔に斬り込んでいく。
Vは動かず、2人の戦いを見ていた。
グリフォン『V、飛んでる奴の説明しなくて良かったのか?』
V「自分達で気付くだろうさ。危なくなったら お前が助けろ」
グリフォン『結局オレ任せか。頼れるグリフォンちゃんは辛いね~』
天龍型は砲撃でエンプーサを木っ端微塵にし、刃で斬り倒していく。グリーンエンプーサは少し離れた場所を飛び何もしてこないので、向かってくるエンプーサを優先していた。
天龍型だけで確実に悪魔の数を減らしていたが、グリーンエンプーサが動いた。
斬り倒され身体が残っていたエンプーサの所まで行くと、臀部から液体を出しエンプーサに掛けた。すると、倒したはずのエンプーサが起き上がり、また襲い掛かってきた。
天龍「復活した!?」
更にグリーンエンプーサが、口から粘液を吐き出し、天龍型は咄嗟に飛び退いて回避する。
龍田「あれを浴びるのはマズそう。天龍ちゃん、飛んでるのは私に任せて」
天龍「よっしゃ!赤いの、俺が相手だ!」
龍田がグリーンエンプーサの排除に当たり、回復の妨害をしてる間に天龍が同時進行でエンプーサを片付けていく。
天龍型に戦闘を任せ楽をしていたVだったが、ふと誰かの視線を感じ、そちらを見てみる。そこには、小学生くらいの子供が こちらを見ていた。
子供はVと目が合うと、走って逃げてしまった。逃げた先は、今となっては無人となったスーパーだった。
V自身も何故かは分からないが、その子供が気になり、後を追ってスーパーへ向かう。
グリフォン『おい、V!?』
*スーパー*
悪魔と戦う天龍型を置いてスーパーに入るが、中は僅かな灯りだけを残して薄暗い。
出入り口付近に子供の姿は無いため、奥に向かったのかもしれない。
グリフォン『おいVってばぁ~。こんな所に入って どうしたんだよ?また腹でも減ったのかぁ?』
V「・・・子供が居た」
グリフォン『子供~?まーた気紛れの人助けかよ』
奥へ進むと、箒を武器に構え、子供が こちらを睨んでいた。
その後ろでは、母親らしき女性が商品棚の下敷きになっている。
Vが1歩 歩を進めると、子供は外敵に威嚇するように怒鳴った。
子供「お母さんに近付くな!」
グリフォン『お~い、このノリ前にも見たぞ。もう行こうぜ?天龍チャン達ほったらかしだし』
お呼びじゃないと分かり、グリフォンは子供を放置し、まだ悪魔と戦っているであろう天龍型の所へ戻るのを勧める。しかし、Vは動かなかった。
V「・・・こんな所で何をしてる?」
子供の話では、母親は このスーパーの経営をしてるそうで、閉店後も1人で仕事をしていたそうなのだが、魔塔が現れた時の地響きで母親が心配になり、家から見に来たら この有り様だったそうだ。
母親を助けようと商品棚を どかそうとしたが、子供の腕力では敵わず ずっと このままだった。
それからは母親を護るために、静かに ここで立て籠っていたらしい。
激しい爆発音などが聴こえ、気になり外に出たらV達が居たとの事だ。
子供「僕がお母さんを護るんだ!お母さんに近付く奴は誰も許さない!」
Vは後ろで倒れる母親を見る。頭からは血を流し、動く気配もない。
時間が経っているからか、血は黒く変色して固まっている。
魔界化が始まってから ずっと この状態なのだとしたら、母親は既に死んでる可能性もある。
子供故に それに気付かず こうしてるのなら、この場所では そんなもの無意味に等しい。死んだ者に縋り この場所に留まっても、いずれは悪魔に見付かり同じ運命を辿る事になる。
いつまでも ここに居ても意味がない。そう思ったVは、子供に真実を告げる事にした。
V「お前の母親は既に死んでる。悪魔に見付からない内に逃げろ。お前も死ぬぞ」
子供「嫌だ!お母さんから離れない!お母さんは死んでない!僕と お母さんに近付くな!ここから出ていけ!」
子供は母親に しがみ付き、泣きながら喚きVを拒絶する。
子供の様子に、グリフォンはウンザリしていた。
グリフォン『ほら、結局こうなるんだから早く行こうぜ?人の親切 足蹴にするような失礼な奴、助けてられっかよ』
ここまで拒絶された以上、Vにも どうしてやる事もできない。いや、してやるつもりはない。
いい加減スーパーから出ようとしたが、店内にも大量の悪魔が現れた。現れたのは鎌を持つヘルカイナだった。
グリフォン『うわあああああ!?こっちにも来ちゃったじゃねぇかよー!!』
子供「ば、化け物・・・」
振り返ったら悪魔と ご対面で、グリフォンは驚き叫んでしまう。
子供も、その死神のような恐怖を感じさせる見た目に怯えていた。震えてはいるが、母親からは離れない。
Vが冷静に悪魔を見ていると、子供がVに懇願してきた。“助けて”と。だがVは、子供に対しても非情だった。
V「なぜ俺が お前を助ける?」
子供「え・・・助けてくれないの?」
V「これは とんだ笑い草だ。他人を拒絶しておきながら、今度は助けてくれか」
子供「だって仕方ないだろ!あんな化け物に勝てる訳ないじゃん!大人なら助けてよ!」
グリフォン『Vーー!!こいつら どうにかしてくれよ!オレだけじゃムリだってーーー!!』
グリフォンが電撃を放ち悪魔の接近を止めているが、悪夢であるグリフォンでは悪魔にトドメを刺す事ができない。そのため、倒しても倒しても起き上がってくる。
グリフォンの悲鳴を聞きながらも、Vは手伝わず子供との会話を続ける。
V「母親は自分で護るんじゃないのか?戦う覚悟も命を懸ける覚悟もなく、デカい口を叩いたのか?」
子供「じゃあ どうしたらいいんだよ?!僕は どうしたら・・・!」
子供なりの正義感を持っていたが、いざ その時になり何もできないと思い知り、子供は母親に寄り添いながら涙を流す。
V「逃げればいい」
子供「・・・でも、それじゃあ お母さんは・・・」
V「みっともなく泣き喚きながら逃げればいい。お前だけでも助かるかもな。お前には それしかできない。(そうだ、力がなくては、何も護れはしない)」
子供は涙を流しながら母親を見詰め、しばらく考えると、自分の答えを出した。
子供「嫌だ!お母さんを置いて逃げるなんてできないよ!お願いだから助けてよ!」
Vは泣き喚く子供を見ながら、幼き日の自分と重ねていた。
魔帝ムンドゥスの配下に襲われ、母親は死に、弟とも生き別れた。
あの時、自分が悪魔に襲われた時も、自分も目の前の子供のように叫びたかった。“助けて”と。だが助けてくれる者は居なかった。
生き延び家に向かうと、家族との大切な場所は燃えていた。それを見てバージルは確信した。家族は皆 死んだと。自分が弱かったせいで、母と弟を助けられなかったのだと。
目の前の子供を見ていると、不甲斐なかった昔の自分を見ているようで、Vは腹立たしかった。
V「・・・・・・っ!?」
子供「お母さん!」
昔に思いを馳せていると、倒れる母親から短い呻き声がした。その瞬間、母エヴァとの記憶がフラッシュバックする。
“バージル、ダンテ、誕生日おめでとう”
次の瞬間、Vの身体は弾かれるように動いていた。
倒れる商品棚を掴み、持ち上げようとするが、腕力が普通の人間並みになったVでは、些か力不足だった。
子供は驚いた。助けてくれる様子が一切なかったVが、急に母親を助けてくれるような行動を取った事に。突然の事に、戸惑いを隠せない。
子供「何で・・・?」
V「何をしてる?母親を助けるんじゃないのか?」
子供「う、うん!」
子供も商品棚を掴み持ち上げようとするが、子供の腕力が加わっただけでは商品棚が持ち上がらない。
グリフォン『Vーーー!!!早くしてーーーー!!!!』
V「うるさい、少し待ってろ・・・!」
グリフォン『ずっと待ってんだけど!』
見兼ねたシャドウがVの意思とは関係なく出てくると、影となり商品棚の下に入り込む。
影は大きく膨らみ、商品棚を持ち上げていく。
V「そのままにしておけ!」
Vが母親を引っ張り、商品棚の下から引き抜く。
影は商品棚を呑み込み、そのまま商品棚を食べてしまった。
グリフォン『お前ー!また そんなの食べて!腹 壊すぞ!』
グリフォンが叱り付けるが、腹が膨れたのか影は満足気にゲップしていた。
子供「お母さん!」
V「(やはり人間の身体は不便だな・・・)」
子供が泣きながら母親に縋るのを見ながら、Vは疲れたのか その場に座り込み、息を吐いていた。
子供「あの・・・」
V「何をしている?早く逃げろ」
子供は母親に肩を貸しながら、2人で一緒に裏口の方から逃げた。
グリフォン『モ、モウ限界・・・!』
死にもの狂いで悪魔を止めるグリフォンを見ながら、Vは不敵な笑みを浮かべながら、記憶にある詩を口ずさむ。
V「“慈悲と憐憫、平和と愛に人は苦境の中で祈る”」
グリフォン『こんな時に またポエムかよ!?』
V「“これら喜びの美徳に向けて、人は感謝の念を捧げるのだ”」
Vが片手を天高く挙げ、指を弾く。その瞬間、Vの髪から黒い粒子が浮き上がり、髪の色が銀色に変わる。
グリフォン『オマッ!?バカやめろ!』
Vがやろうとしてる事に気付きグリフォンが叫ぶが、もう止める事はできない。
床から黒いドロドロした物が湧き出ると、それは1つ目の巨人ナイトメアとなる。
*街*
スーパーの外では、悪魔を倒し終わった天龍型がVを探し回っていた。
天龍「ったくよぉ、俺達が悪魔 片付けてる間に、あいつら どこ遊びに行ったんだよ?」
龍田「天龍ちゃん、こっちにも居ないわ~」
Vの姿が無く困っていると、近くの建物からレーザーが飛び出し、天龍型に向かってきた。直撃は免れたが、時間差で爆発した その余波に、天龍型が吹き飛ぶ。
レーザーの発射元であるスーパーは瓦礫となっていた。その瓦礫の上部が崩れ落ちると、Vとグリフォン、シャドウが顔を出した。
ナイトメアは ぶっ放すだけ ぶっ放し、さっさとVの髪に戻っていた。
グリフォン『お前さぁー!何で いつもザコ相手に大技ぶっ込むんだよ!癖なの!?それともストレス溜まってんの!?』
V「やり過ぎたか・・・」
グリフォン『当たり前だろ!』
天龍「ゴラァー!!危ねーだろうがー!!」
グリフォン『あ、天龍チャン生きてる』
その後Vとグリフォンは、天龍型に瓦礫から出してもらい、シャドウはVの中に戻っていた。
Vが服に付いた粉塵を払っていると、先程 助けた母子が戻ってきた。
V「まだ逃げてなかったのか」
子供「あの・・・まだ助けてもらった お礼してないから」
母親「助けていただき、ありがとうございました」
子供「ありがとうございました!」
母子が頭を下げ感謝を口にするが、Vは礼などに興味がないため、無視して どこか遠くを見ている。
天龍型は どういう事なのか分からず、首を傾げていた。
天龍「なぁ、何があったんだよ?」
グリフォン『お嬢チャン達がチンタラ悪魔と遊んでる間に、こっちは人助けしてたんだよ。少しは見習いな』
天龍型だって、何も遊んでいた訳ではない。必死に命懸けで悪魔と戦い、居なくなったVを心配して探し回っていた。
グリフォンの嫌味に、天龍の怒りが爆発した。
天龍「この手羽先野郎があああああ!!」
グリフォン『ア゛ー待って!待って!!ア゛ァ゛ーーーー!!!』
お馬鹿2人は放っておき、龍田は母親の方の怪我に気付き、応急処置になるが手当てする事にした。
V「早く行くぞ。俺達には時間がない」
龍田「この人達を放っておけないでしょ。行きたいなら1人で行って」
Vは溜め息を吐き、瓦礫の上に腰掛け手当てが終わるのを待つ事にした。
天龍とグリフォンは、相変わらず追いかけっこをしていた。
天龍「待ちやがれコラァー!」
グリフォン『待つ訳ないだろ おバカちゃん!お返しだ、喰らえ電撃!』
天龍「あびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ!!」
手当ても終わり出発しようとするが、Vは またしても足を止められる事になった。龍田が、この母子も一緒に連れていくと言うのだ。
V「足手纏いだ」
龍田「悪魔が徘徊してるのに、こんな場所に置いていけない」
天龍「俺も賛成」
V「・・・・・・連れていくなら お前達で護れ。俺は責任を持たんぞ?」
龍田「大丈夫、そのつもりだから」
一応Vからの了承を得て、母子も連れていく事になった。
天龍は子供を安心させるために、そちらに話し掛けていた。
天龍「よーし、俺が一緒なら、怖い悪魔なんて返り討ちだからな?見ろ、この刀と眼帯。ふふ、強そうだろ?」
子供「弱そう」
母親「コラッ!」
子供からの無邪気で心ない返答に、Vと龍田は咄嗟に顔を背ける。笑いそうになるのを堪えている。
ショックだったのか、天龍は無表情で静かになるが、グリフォンが隠す事もなく爆笑するものだから、天龍が怒って また追いかけっこが始まった。
思わぬ同行者が増え、騒がしくしながらも、V達は先へと進む。
その頃 鳳翔達は、ソープから教えられた別ルートを走っていたのだが、ソープから新たに情報を教えられていた。
ソープ『街の中で強い光が発生した。何かが起きてるようだ。そこから近いぞ』
ソープが衛星画像で観測した光は、ナイトメアが放ったレーザーの光だった。
ディーコン『どうする?そんな場所に民間人が居るとは思えないぞ』
鹿島「行くだけ行ってみましょう。仲間や民間人が居なくとも、何かしらの手懸かりは見付かるかもしれません」
6台はソープに教えられた場所へ急行した。その付近に、Vと天龍型が居るとは知らずに。
無事に合流できるか分からないまま、彼女達は それぞれ、魔界化が拡がる街を進み続けるのだった。
次回も宜しく お願い致します!