298話です!どうぞ!
*街 ?月?日 21:23*
艦娘の世界から見て、別の道を辿った“未来”と呼べる もう1つの異世界。その世界は文明が滅び、人類と艦娘が淘汰され、悪魔と深海棲艦、悪魔に魂を売った人間が支配する暗黒時代。
その世界では、僅かに生き残った人間と艦娘がレジスタンスとなり、今も戦いを続けている。
荒廃した街の中で、嘗て沢山の商品を並べ、沢山の客で賑わっていたであろうスーパーに、2人の艦娘が来ていた。
1人は過去とは違い髪を伸ばし、橙色の戦闘服を身に纏う川内型 軽巡洋艦1番艦、川内。
もう1人はツインテールに結っていた髪をストレートに下ろし、赤と白の戦闘服を身に纏う長良型 軽巡洋艦2番艦、五十鈴。
五十鈴「それじゃあ手分けして探すわよ。私は売り場を探すから、川内はバックヤードお願い」
川内「了解」
2人は食料の調達をしていた。
世界が崩壊してから、文明の要であった要所は全て稼働しておらず、当然ながら食料製産工場なども止まっている。
それに加え、この世界で生きる者は様々なグループに属し、各々のグループが食料を探して奪い合っているので、こういうスーパーなどは既に人の手が入り、食料が残ってる可能性は低く、食料を調達するのも困難な状況だった。
そんな状況下で、2人で手分けして食べれそうな物を探してると、バックヤードの方を探していた川内は あるダンボール箱に目が止まる。
近付いて中を確認し、川内は嬉しそうな笑みを浮かべると、ダンボール箱を持って売り場の方に戻った。
川内「五十鈴、久々の ご馳走 見付けたよ!缶詰!」
五十鈴「嘘!?」
売り場の方で探していた五十鈴は、一目散に川内の所に来てダンボール箱の中を見ると、箱一杯に缶詰が入ってるのを見て笑みを溢す。
五十鈴「缶詰とか久々に見たんだけどー!」
川内「裏に まだ沢山あったから、しばらくは困らないと思うよ」
五十鈴「じゃあ、後で調達班に連絡して運び出してもらおっか」
食料不足の この世界では、缶詰ですら豪華な食事と言える。
久々のマトモな食料を見付けたからか、2人の お腹が盛大に鳴る。すると2人は、互いの顔を見た。そして2人は気付いた。同じ事を考えてると。
川内「浜風には悪いけど」
五十鈴「先に私達だけで食べちゃおうか?」
浜風と彼女と一緒に居る人間の部隊は、少し離れた場所で見張りをしており、合流予定時間までは まだ時間があるため、空腹に負けた2人は先に腹拵えする事にした。
川内「ねぇ、どうする?どれ食べる?」
五十鈴「くぅ~っ、どれにしようか悩む~!」
川内「早く決めなよ。合流予定時間 来ちゃうから」
五十鈴「ん~、じゃあパイナップルにする!」
川内「じゃあ私は桃ね」
2人はスーパーにあるプラスチックのフォークを用意し、それぞれ選んだ缶詰を開ける。するとフルーツ特有の甘い匂いが広がる。
時代が時代なので、賞味期限や消費期限を気にしてたら生きていけない。
「「いただきまーす!」」
缶詰のフルーツをフォークで刺し、口に運ぶと・・・
「「甘ーい!」」
口の中に久しく食べていなかったフルーツの甘味が広がり、ほっぺたが落ちそうなのか2人は手で頬を押さえる。
それから2人は、キャッキャと楽しそうに話しながら缶詰を美味しく食べた。こうしてると、見た目相応の女の子という感じだ。
蜜まで飲み干した2人は、レジスタンスの拠点に連絡を入れてスーパーの座標を伝え、調達班に食料の運び出しを頼んでから、缶詰が入ったダンボール箱1つを持って、浜風が待つ合流ポイントへ向かった。
・・・・・・
川内と五十鈴は合流予定時間より早く、合流ポイントのビルへ着いたのだが、様子が おかしい。そこら中に、人の形をした死体が転がっていた。
だが それは、最早 人間ではない。この世界で『感染者』と呼ばれる人間の成れの果てだ。
未来では、川内が過去に行って破壊した あの魔界兵器を元に、様々なタイプの魔界兵器が造り出された。その中には、ウイルスを ばら蒔くタイプが存在する。
ウイルスに感染すると体毛が全て抜け落ち、眼球の瞳も白くなり、人肉を求めて さ迷うゾンビのようになる。
感染者に噛まれたり引っ掻かれたりした者も感染し、同じく感染者の仲間入りする事になる。
川内はダンボール箱を床に置いて小太刀を抜き、五十鈴は緑色のノコギリ刃をした剣を抜く。ノコギリ刃の剣は、どことなくダンテが持っていたルドラに似ていた。
まだ感染者が居るかもしれないため、2人は警戒しながら ここに居るはずの浜風を探す。
2人で付かず離れずの距離を保ちながら移動して浜風を探していると、柱に凭れ掛かって座り込む浜風を五十鈴が見付けた。
五十鈴「浜風・・・!」
浜風「うっ・・・五十鈴さん・・・」
浜風に駆け寄ると彼女は生きていたが、腕に噛まれた痕があり血が出ている。
五十鈴「川内・・・!」
感染者を引き寄せないよう極力 声を抑えながら川内を呼ぶと、彼女も すぐに駆け寄り浜風を見る。
川内と五十鈴は辛そうな表情で互いの顔を見合わせてから、何事もなかったかのように明るく振る舞いながら浜風に声を掛ける。
川内「浜風、こんな所で寝てたら風邪 引いちゃうよ」
浜風「すみません・・・感染者が現れて・・・部隊も全滅して・・・全部 倒したんですが、油断してしまい・・・」
五十鈴「1人で よく頑張ったわ、偉いじゃない」
油断してやられてしまった事は咎めず、五十鈴は優しい声音で労い、浜風の頭を撫でる。
仲間が減っていく中で、たった1人で現れた感染者を全て倒したのだ。数秒前まで仲間だった者も相手に、手に掛けるのも辛かっただろうに。咎める事などできるはずもない。
川内はダンボール箱に入ってる缶詰を1つ手に取り、浜風に見せる。
川内「浜風、見て、缶詰 見付けたんだよ。食べる?」
浜風「凄いですね・・・食べたいです・・・」
川内がフォークを差し出し、浜風は それを手に取ろうとするが、上手く掴む事ができず空振りに終わる。もう浜風には、物を掴む力も残されていなかった。
川内は泣きそうになるのを堪えながら缶詰を開け、フォークで みかんを突き刺す。
川内「大丈夫、ほら、口 開けて」
浜風が弱々しく口を開けると、川内はフォークで刺した みかんを口まで運び、食べさせてあげる。
浜風「甘い・・・」
浜風は久しぶりに食べたフルーツの甘さに、微かに笑みを浮かべた。
浜風「川内さんは・・・過去に行って・・・提督と会ったんですよね・・・?」
川内「うん・・・相変わらずだったけどね」
浜風「私も・・・直接 会って・・・謝りたかった・・・!きっと・・・怒ってますよね・・・?」
川内「そんな事ないよ。提督は それぐらいの事で怒ったりしないって、前にも言ったじゃん」
浜風は、後悔の涙を流していた。
この未来の浜風は、最後までDevil May Cry鎮守府に馴染む事がなく、何度もダンテを襲っては命を狙った。
そして1番の後悔は、ダンテが自分を庇って死んでしまった事だ。ダンテが死んだ事で、自分を助けてくれた人に今まで何て馬鹿な事をしてしまっていたのだろうと、何て酷い事をしていたのだろうと、これまでの自分の行動を悔やんだ。自分さえ居なければ、ダンテが生きていれば こんな世界にならなかったはずなのに。
ダンテが死んでから今日まで、浜風は ずっと後悔し続けた。小さな身体の駆逐艦が背負うには、あまりにも長く、重過ぎる後悔だった。
浜風「2人に、お願いがあります・・・私を、殺してください・・・」
川内「諦めちゃ駄目だよ!」
浜風「私は、感染してます・・・2人を襲ってしまう前に・・・どうか・・・」
川内「そんなこと・・・」
川内は何か手立てはないかと、五十鈴を見た。だが、五十鈴は残念そうに首を横に振るだけだった。
感染者を治す治療法は見付かっていない。だから感染した者を人のままにするには、脳を破壊するか、頭を切り落として殺すしかない。せめて人のまま死なせてやるのが、感染した者への唯一の救いなのだ。
五十鈴「川内・・・」
川内「ごめんね浜風・・・ごめんね・・・!」
川内は涙を流しながら小太刀を抜き、その刃を浜風に振り下ろした。
浜風「(これで やっと・・・提督に謝れる・・・)」
・・・・・・
*レジスタンス拠点 22:55*
レジスタンスの拠点へと戻った川内と五十鈴は、レジスタンスの指導者の部屋で話していた。
部屋の主である指導者の姿は無く、2人は小さなモニター越しで指導者と話している。
?『浜風君の事は残念だった。せめて ちゃんと弔ってやれれば良かったんだが』
五十鈴「浜風は私達で墓を作って埋めておいた。弔いなら もう済んでるわ」
?『そうか・・・。残念ではあったが、2人に頼みたい事がある』
五十鈴「前みたいな話なら嫌だから。損害を補填する代わりに、仕事を引き受けろって言われてるのよ?」
?『先方とは私が話をしておく。だが これは、2人にしか頼めないのだよ。断るなら、我々は どんどん仲間を失う事になる。浜風君のようにね』
川内「っ・・・!」
浜風の話を引き合いに出され、川内は拳を握った。
川内も五十鈴も、この指導者を信用してる訳ではない。だが この暗黒時代では、彼の知識や技術が必要なのだ。生き残るために。だから2人は、不本意ながらも彼の下に付いている。
?『川内君、どうかね?引き受けてくれるかね?』
川内「今度は何をしようとしてるのか次第かな」
レジスタンスは世界が崩壊してから、自力で魔界兵器の破壊に1度も成功していない。
弱点を探そうと様々な策を講じて戦いを挑んだが、全てが無駄に終わり、逆にレジスタンスの数が減る一方だった。
そこで指導者は、魔界兵器に対抗できるであろう唯一の存在を呼ぶ事にした。
だが その存在を呼ぶには、膨大なエネルギーを必要とする。文明が崩壊した この世界では、そこまでのエネルギーを簡単に手に入れる事はできない。
?『という訳で、また あそこに潜入してもらいたい』
五十鈴「でも、前にエネルギー横取りした時、アレは壊れたのよ」
?『情報では修理されたらしく、現在 稼働中だ』
五十鈴「あんだけ壊れたのに直せたんだ・・・」
川内「ちょっと待ってよ。“唯一の存在”って まさか・・・」
?『君にとって悪い話ではないと思うが?また彼に会えるのだから』
川内「どこがさ!それで もし死んだら どうするつもり?!私は、2度も あの人が死ぬところなんて見たくない!」
五十鈴「私も川内と同じ意見よ。こればっかりは、悪趣味が過ぎるんじゃない?川内の気持ちも考えたの?」
?『だが他に手はない。このまま全滅するか、彼が光明を もたらしてくれるのを期待するかだ』
川内「だったら私が弱点を見付ける!」
?『それで何人が死んだと思ってる?君達まで喪う訳にはいかない』
五十鈴は神妙な顔で川内を見ながら少し考え、指導者が映るモニターに向き直る。
五十鈴「分かった。でも あそこに乗り込むのは これで最後よ」
川内「五十鈴!」
勝手に引き受け、話を進める五十鈴に川内が怒鳴るが、確かに自分達では どうやっても魔界兵器の弱点は見付けられないし、その手のプロに意見を聞いてみた方がいい。
それに付け加え、指導者が“彼”と呼ぶ者には直接 戦ってもらわず、自分達だけで戦い、それを見ながら彼に弱点を見極めてもらえばいいと五十鈴は説いた。川内は それならと、渋々 納得した。
こうして川内と五十鈴は、指導者に与えられた任務を終わらせるために、拠点から出るのだった。
・・・・・・
*地下道 ?月?日 3:13*
東京の街の地下深くには、人知れず広大な地下迷路が張り巡らされていた。ここが いつ、誰によって建設されたのかは不明だ。
そんな地下道を、指導者から任務を受けた川内と五十鈴が歩いていたのだが、2人は憂鬱そうだった。
五十鈴「はぁ、ここに潜入するのも2度目ね」
川内「そうだね」
世界が滅んだ後、悪魔や深海棲艦、その配下となった人間が世界を支配したが、彼らも一枚岩ではなかった。それぞれ独自のグループを作り組織していた。
それは生き残った善良な人間と艦娘も同じで、この世界は今、戦国時代のように群雄割拠の様相を体していた。
その内のグループの1つが、東京の地下を根城にしているのだが、彼らは ある物を持っていた。それは原子力発電機だ。
文明が崩壊した後、彼らは東京の地下に原子力発電機を建造し、彼らにとって それは、この時代を生き抜くために必要なエネルギー源だった。
川内と五十鈴は、その原子力発電機に用があり、こうして東京の地下に潜入している。
そんな中、川内は感慨深そうに溜め息を吐いた。
川内「また提督に会えるんだ・・・楽しみだなぁ」
五十鈴「まったく、嬉しそうにしちゃって。あんだけ反対してたくせに、目が恋する乙女になっちゃってるわよ?」
川内「えー?そんな事ないって」
何気ない会話をしてるが、ここは言うなれば敵地。和やかな会話は そう続かない。地下道を進み広い空間に出た2人の前に、ガスマスクを被り、自動小銃を持つ奇妙な連中が現れた。
このガスマスクを被った連中は、『オーファン』と呼ばれる者が立ち上げた組織に属しており、自分達を『グールズ』と称している。
グールズのメンバーは人間であるのだが、地下に潜り生き延びたまではいいが、食料の調達が困難で常に空腹であり、人間や悪魔を食べる事で食い繋いでいる。
時には仲間同士で共食いする事もあり、もうマトモな思考はしていない。
もう1つ補足するなら、グールズは外部の侵入者は決して許さないので、出会ったら最後、必ず襲い掛かってくる。襲われた者は その後、彼らの食料となる。
川内「見付かったか・・・」
五十鈴「もうマジ最悪なんだけど・・・」
川内は小太刀を抜き、五十鈴はルドラに似た剣を抜き、いつでも戦闘に入れるようにする。
グールズ「侵入者だ!」
グールズ「殺せぇ!」
グールズ「肉・・・肉ぅうううう!!」
グールズは川内と五十鈴に向かって、手にしていた自動小銃を一斉に撃ってくる。川内と五十鈴は、銃弾が飛んでくる中を駆け抜け、グールズの集団に飛び込む。
この世界では、過去にはない独自の技術が確立されている。川内と五十鈴が着ている服も そうであり、身体能力を飛躍的にアップさせる機能がある。
その恩恵を受けて、2人は普通の艦娘とは比べ物にならない動きで、銃弾を避けながらグールズを斬り捨てていく。
たった2人だけで集団の相手ができているが、1つだけ難点がある。それは些か数が多い。地下道の奥から、騒ぎを聞き付けたグールズが次から次へと現れるのだ。
川内「ちょっ、こんなのマトモに相手してられないって!」
五十鈴「分かってるわよ!川内、道を開いて!私が後詰めを担うから!」
川内「だったら大技 行くよ!」
川内の持つ小太刀から稲妻が迸り、小太刀を目一杯 振る。すると、巨大な電撃の斬撃が走り、グールズが纏めて消し炭になる。
その隙に、川内と五十鈴は奥へと走り目的地を目指すが、別の場所から集まってきたグールズが2人を追ってくる。
五十鈴は立ち止まり振り返ると、ルドラに似た剣に風を纏わせ、それを大きく振る。剣から放たれたカマイタチが追ってくるグールズを斬り刻み、吹き飛ばす。
グールズの追跡が途切れた隙に、五十鈴は川内を追って また走る。
・・・・・・
目的の原子力発電機がある場所まで辿り着き、2人は通路の角から顔を出し、様子を伺う。原子力発電機の傍には、10人の見張りが居る。
川内「・・・・・・前より見張りの数 増えてるし」
五十鈴「でしょうね。前に派手に ぶっ壊したし、また壊されたら困るから警戒してんでしょ」
川内「まぁ、こういう時は勢いだよね」
五十鈴「先手必勝」
川内と五十鈴は角から飛び出し、見張りに向かって駆け出す。
グールズ「艦娘か!?」
グールズ「発電機に近付けさせるな!」
見張りのグールズが自動小銃を撃ってくるが、川内と五十鈴は それに怯む事なく飛び込み、10人の見張りを一気に殲滅する。
原子力発電機の元に向かい、五十鈴は持ってきたデバイスを繋げ、原子力発電機の端末をカタカタと操作していく。
川内「ねぇ、エネルギー横取りしたら、前の時みたいに壊れるよね?」
五十鈴「多分ね」
この原子力発電機も、当然ながら放射能の心配はある。だが川内と五十鈴が着る戦闘服は、指導者が作った特別な物で、放射能を遮断し被爆を防ぐ事ができるため心配ない。
グールズの連中は対策などしてないため被爆してるのだが、どういう訳か突然変異して順応している。その お陰か防護服も無しに、原子力発電機の元で生活しながら生きていられていた。
ただ、彼らがガスマスクを被っているのは そこに理由があった。突然変異してから彼らは常にガスマスクを被り、決して素顔を見せる事はなかった。
川内「グールズの連中、また怒って無理難題 突き付けてくるかもよ?」
五十鈴「まぁ、その時は
川内「分かってるよぉ」
五十鈴が端末の操作を終わらせる間、川内はグールズが来ないかの見張りを担当するが、その間は退屈そうだった。
グールズの所有する原子力発電機に用があった理由は、以前 川内が時間を越え、過去に向かった時に膨大なエネルギーを必要としたからだ。指導者は それを、またやろうとしていた。ダンテが生きてる過去に、川内を送るために。
この時代ではエネルギーは貴重だ。文明が崩壊してから、僅かな電力しか確保できないような時代だ。だからグールズが所有する原子力発電機が生み出す膨大なエネルギーは、こういう時には都合がいい。
五十鈴「よし、エネルギー確保!完了よ!」
五十鈴がデバイスを外すと、原子力発電機がバチバチと火花を散らし、明らかに異常だと判る異音を鳴らしながら停止した。というか、壊れた。
すると遠くから、異常を察知したグールズの慌ただしい声が聞こえてくる。
川内「絶対あいつら怒るって!」
五十鈴「仕方ないでしょ!また見付かる前に逃げるわよ!」
慌ただしく こちらに向かってくる複数の足音がする。
川内と五十鈴も目的を果たした今、もう ここに用はない。見付かるのも面倒なため、2人は急いで地下道を脱出するために その場を離れるのだった。
・・・・・・
*南西諸島海域 8月8日 11:34*
赤城を探しに姿を消したダンテは、こちらの世界に戻ってから広大な海で、ずっと赤城を探していた。
ネロ達が後方西海岸沖に出撃したのと同日、南西諸島海域に訪れていたのだが、手懸かりは まだ何も見付かっていない。
?「提督」
少女の声に呼ばれて振り返ると、髪が長く橙色の服を着た少女が、微笑を浮かべて そこに立っていた。
少女はダンテと目が合うと、ダンテの胸に飛び込み抱き付いた。
?「また会えた!」
ダンテ「おっと・・・久しぶりだな、神通」
川内「違うっつの!川内だから、川内!」
ダンテ「え゛?」
髪が長く神通っぽいが、確かに よく見てみると、川内に見えなくもない。というか、未来から来たという川内と見た目が符合する。
ダンテ「お前まさか・・・未来の川内か!?」
川内「やっと分かってくれた?ニシシ」
川内は自分の事を ちゃんと認識してくれたからか、白い歯を見せながらニッと笑った。
しかし、ダンテは困ったように頭をポリポリ掻いていた。以前 川内は、ネロとルキフェルス、魔界兵器が切っ掛けで世界が滅ぶのを防ぐため、ダンテ達が死ぬ原因となる魔界兵器を破壊するために この時代に来た。
それは解決して、時間も切り離した今、この世界が辿る未来は、この未来から来た川内の世界とは別の未来を辿るはずだ。
それなのに、未来の川内が また来たのは よく分からない。
ダンテ「お前、未来に帰ったんじゃないのか?」
川内「帰ったけど、また来ちゃった」
ダンテ「来ちゃったって お前・・・また面倒事か?」
川内「さすが提督、話が早くて助かるよ。とりあえず これ持って」
川内は碌に説明もせず、何かのデバイスを渡してきた。それは五十鈴が、未来で原子力発電機に繋げていた物だ。
川内「じゃあ行くよ?」
ダンテ「待て待て待て待て、行くって どこにだ?」
川内「未来だよ」
ダンテ「は!?」
川内「しゅっぱーつ!」
ダンテ「ちょっと待て!」
ダンテが止める声も虚しく、ダンテと川内の身体が虹色の光に包まれると、2人の姿は一瞬にして消えた。
次回も宜しく お願い致します!