315話です!どうぞ!
オリーブ財団へと連れてこられたモリソンは、ステフの了承を得て居座る事となった。
バージルはネロ達に見付かった事で、艦娘を買った人間を追って派手に動けないと判断し、カナダにある森で身を隠していた。
その森で銃声と爆発音がして現場に向かうと、狩猟目的のハンターのキャンプ地が滅茶苦茶に破壊されていた。
そして少し離れた場所では、毒を塗った矢で射ぬかれ弱ってる熊と、艦娘ゴトランドが倒れていた。
毒が塗られてる矢を手に、バージルは町へと向かう。生き残ったハンターを追うために。
バージルは町にあるバーでハンターを殺そうとしたが、髪を赤く染めた
刹那はバーに居る男達が1週間以内に死ぬ予言をし、更に男達に襲われるが それを蹴散らす。
バージルを車に乗せた刹那は、昔スパーダに助けられた
しかしスパーダには会えず、代わりにスパーダの息子に礼が言いたいと、刹那はバージルを探すよう命じられていた。
バージルは仕方なく、父の代わりに余命短い真田に お別れを言うため、日本に行く事となるのだった。
*真田家の屋敷 9月18日 21:50*
バージルと刹那を乗せた黒塗りの車が、真田家の屋敷に着いた。
屋敷の外では大袈裟な程に、マシンガンを持ったスーツ姿の警備が あちこちに居た。
バージル「皆 銃を持ってる」
刹那「襲撃があったから。拉致・暗殺をしようとした者が居たから」
バージル「誰だ?」
刹那「日本のギャング、ヤクザよ。政府の力が弱くなり力を伸ばした」
・・・・・・
中に通されたバージルは、大きな盆栽が飾られてる待合室で待たされていた。
中に入ってから、刹那は ここで待ってるよう言って1人で どこかに行ってしまった。
屋敷は和風で、全ての部屋が障子で区切られてる造りになっているのだが、今は全ての障子が開け放たれているので全部 丸見えだった。
バージルは待ってる間 暇だったが、座ってる椅子の横にある1冊の本に目を向ける。
表紙を開くと、そこには『真田家の遺産』と書かれている。
ページを捲っていくと、真田家の歴史や功績が綴られていた。
その途中、何やら気合いの入った声が聞こえた。そちらに振り返ると、近くの部屋で剣道着を着た2人組が、竹刀を交えて稽古していた。だが戦いは一方的だった。
バージルが その稽古を見学してると、後ろから刹那に声を掛けられた。振り返ると、会った時とは違い着物姿になっていた。
刹那「こっちよ」
刹那が真田の居る部屋に案内しようとするが、バージルは剣道をやってる2人の方を また見る。バージルは、一方的に相手を捩じ伏せてる者が気になっていた。
バージル「誰だ?」
聞いてる間に、一方的な戦いをしていた方が面を取って こちらを見た。露になった顔は、中年の男だった。
刹那「『
話してる間に、信玄は面を外した状態で また稽古を再開する。それでも やはり、戦いは一方的だった。
バージル「できるな」
刹那「そこそこね」
刹那は信玄に対して あまり いい感情を持っていないのか、不機嫌そうに答えて離れていく。
バージルが刹那を追うと・・・
刹那「お久しぶりです」
通りすがった同じく着物を着た中年の女性と挨拶する。
どうやら着物を着ている女性は、ここで働く女中のようだ。刹那も同じ格好をしてるという事は、彼女も そうなのだろう。
バージル「ブーツを履いたタフガールだったのでは?」
刹那「真田様は伝統を重んじる。過去と未来を、同時に見ておられる」
そうして話しながら歩いてると、竜が彫られた大きな扉の前に着いた。
刹那が少しだけ扉を開けて、バージルと一緒に中を覗くと、その部屋には仰々しい程の数の医療機器が置かれていた。
ベッドには真田と思われる老人が、マスクをした若い女性に手を握られながら何かを話していた。
女「嫌だ、やりたくありません そんなの、お祖父様」
老人「お前でなければできない」
刹那「あれは『
刹那から説明を受けるが、茉優は力なく椅子から立ち上がり、こちらに向かってくる。
マスクを外しながらバージルと目が合い、茉優は立ち止まった。
少しの間 視線を交えていたが、茉優はバージルと刹那を無視して部屋から出ていく。
刹那「茉優?」
心配した刹那は、茉優を追って呼び止めた。
何があったか訊くと、茉優は何も言わず刹那を抱き締めた。それを受け入れるように、刹那も茉優の背中に手を回す。茉優は泣いていた。
どちらからともなく身体を離すと、茉優は何でもないと言って事情を話そうとしない。
刹那「メールだって最近 全然 返事がないし」
茉優「今は説明できないの」
刹那「どうして?ちゃんと言ってよ」
だが茉優は、答えず離れた場所に立つバージルの方に視線を向ける。
茉優「あの汚ない人は誰?」
刹那「あの方は真田様が探してと言ってた人」
茉優「あんな汚ない格好で お祖父様に会わせないで」
茉優はバージルで話を有耶無耶にし、何も話さず立ち去ってしまった。
茉優に“汚い”と言われてしまったが、今のバージルは2週間の野宿を経て、浮浪者のような見た目になってしまっている。
刹那も流石に真田に会わせるような格好ではないと思い、真田に会わせる前にバージルを ある場所に連れていく事にした。
・・・・・・
そして着いたのは、風呂だった。
しかも風呂場には、今の刹那と同じく着物を着た、この屋敷で働く女中の熟女2人が待ち構えていた。
刹那「この2人が あなたの身体を消毒する。髭も剃る」
バージル「そんなの ごめんだ」
他人に身体を洗われる世話を受けるつもりはないので立ち去ろうとするが、刹那がバージルの前に立ち塞がる。
刹那「お湯に入って」
バージルは、溜め息を吐きながら刹那を避けて また立ち去ろうとするが、刹那はナイフを抜くとバージルの首に刃を宛がう。
刹那「湯船に入って」
バージル「・・・本気か?」
バージルが訊くが、刹那は何も言わず不敵な笑みを浮かべるだけだった。
刹那が殺しに掛かってきても死なない自信があったが、風呂に入るまで解放してくれそうにない雰囲気に、バージルは諦めて風呂に入る事にした。
・・・・・・
ただ、風呂に入ってからバージルは、屈辱的な扱いを受ける事となった。
湯船に入ったまま女中2人に身体を洗われるのだが、洗うための道具がタオルとかではなく、まさかのデッキブラシでゴシゴシされていた。どうやら そこまで汚ないと思われてるようだ。
女中「座りなさい!」
女中「座りなさい!」
女中「座りなさい!」
バージル「分かった!」
女中「もう動かないでぇ、ちょっとぉ!」
風呂に入ると言うよりも、変な戦いが始まっていた。身体を好きにされるのが屈辱的で、バージルは地味に抵抗するが、女中2人はキレ散らかして話にならない。
女中「ほら、気持ちいいでしょ!」
更に散髪も ご無沙汰で、伸びてボサボサだった髪もハサミで散髪される。
女中「そのままにしてなさい!」
バージル「OK!」
女中「ジッとしてなさい!」
バージル「OK!」
口ではOKと言ってるが、バージルの抵抗は止まらない。
女中「動かないで!」
バージル「もういい もういい もういい!」
女中「ジッとしていなさい!」
バージル「そこは自分でできる!」
散髪で変なセットにされるぐらいなら、バージルは自分で切ってセットする方がマシなので、散髪中に女中2人から離れて抵抗する。だが湯船は特別 大きい訳ではないので、すぐに女中2人に捕まった。
・・・・・・
時間が経ち、空は雷が鳴り雨が降り出した。
雨音を聴きながら刹那が待っていると、不機嫌顔のバージルが戻ってきた。
綺麗な服に着替え、髪もオールバックに整えられ、本来のバージルの見た目に戻った。
2人で並んで歩くが、刹那はニヤニヤと笑っていた。それが腹立たしく、バージルは黙ってられなかった。
バージル「何だ?」
刹那は またバージルを見て、黙ったままニヤニヤする。
バージル「何なんだ?!」
刹那「素敵になった」
全身を綺麗にし、長くなった髪も整えられ、髭も剃り、男前になったバージルに刹那のニヤニヤは止まらない。
バージル「屈辱的な気分だ・・・」
文句を垂れながら真田が居る部屋に入ると、刹那は看護師からマスクを受け取り着ける。
何故かバージルはマスクを貰えなかった。別に着けなくていいなら、バージルとしては些細な事だ。
ブロンド髪の女医と目が合うが、女医は何も言わずバージルの前を通り過ぎる。バージルも気にせず、真田が横になるベッドの方へと足を進める。
刹那「真田様、ご用命通りに」
真田「おぉ・・・」
目を瞑っていた真田が目を開けバージルを見ると、彼は感慨深そうな声を発した。
ベッドが起き上がり、真田は座る体勢となる。
真田「父親に よく似ているな。だが驚く事ではないか。『Dr.グリーン』、席を外してくれないか?」
“Dr.グリーン”と呼ばれたブロンド髪の女医は、そう言われてバージルを見ると・・・
グリーン「5分だけよ、それ以上はダメ」
5分間の猶予だけ与えて退席した。
バージルは何か気になる事があるのか、立ち去るDr.グリーンの背中を ずっと見ていた。
真田「ガンの専門医だよ」
Dr.グリーンが何者なのか教えた真田は、口で息を吸いながら横を見た。するとタイミング良く、刹那がコップに入れた水を持ってきた。
刹那が水を飲む手伝いをし、中々 本題に入れそうにないため、バージルは真田から背中を向けて部屋にある物を見る。そして視界に入ったのは、透明度のある水色の液体が入ったガラス容器なのだが、中で奇妙な物体が泳いでる。言葉にして例えるなら、銀色の おたまじゃくしだ。
おたまじゃくしと違うのは色も そうだが、何よりも尻尾の部分が違った。まるでクラゲの足のような、細い触手を何本も揺らして泳いでる。
何なのか理解できぬ物体に、バージルは眉間に皺を寄せて見ていたが、次にバージルは、幾つも設置されたモニターを見る。その内の1つに、真田のものと思われるレントゲン映像が写し出されていた。真田のリアルタイムの心臓も映っており、心臓がドクドクと脈動してスピーカーから音まで聴こえる。
次にバージルが見たのは、壁にある大きな風刺画だった。そこには山と、日本特有の城、そして黒装束の者達と鎧武者達が戦っている風景が描かれている。
真田「その絵は私の妻の生まれ故郷の村だ。描かれているのは『ブラック・クラン』という勇敢で腕の立つ一族、忍者の一族だ。彼らは大昔から私の一家に仕えてきた。・・・来てもらったのは礼を言うためだけではないんだバージル」
やっと本題に入りそうな雰囲気に、バージルは風刺画から視線を外し真田の方へ振り返る。
真田「お前に お返しがしたい」
何やら聞いていた話と違うと思い、バージルは どういう事かと刹那を見る。見られた刹那もバージルを見るが、彼女は何も言わないため、答えは得られそうにない。
真田「私以外には誰にもできない お返しだ。それは お前の父が私にくれた命と同じ価値がある」
バージル「それなら俺ではなく、スパーダに直接 返してやったら どうだ?そもそも、何故この世界に生きる人間がスパーダを知ってる?お前は何者だ?スパーダと どういう関係だ?」
バージルの口から矢継ぎ早に出る質問に、真田は怒る訳でもなく、呆れる訳でもなく、ただ笑っていた。
真田「お前が不思議に思うのも無理はない。私は この世界の人間ではないのだよ」
バージル「何だと・・・?」
そこから真田が話したのは、思いも寄らない内容だった。
真田は若かりし頃、悪魔に襲われた。為す術もなく悪魔に殺されるのを待つだけだったが、そこにスパーダが現れ悪魔を全て屠り、真田を助けたそうだ。
真田は お礼に何かしたいと申し出たが、スパーダは それを断り姿を消した。
その後 真田は、スパーダの行方を調べる過程で魔剣士スパーダの伝説に行き着き、彼が悪魔である事を知る。
スパーダの伝説を調べながら彼の行方を探したが、そんな ある日、真田は突然 異世界に飛ばされた。バージルの世界の日本から、艦娘の世界の この日本へ。
同じ日本のはずなのに、街並みが自分の知ってる日本とは どこか違う事に、当時の真田は戸惑った。
自分の知ってる日本とは違う世界で、行く当てのない真田は困り果てた。
何の因果か、そこで真田を助けてくれたのは今は亡き妻だった。
行く当てのない真田を助け、食事や住む場所を提供し、2人は徐々に惹かれ合うようになり、彼は婿養子として結婚して“真田”となり、今では真田家が経営する真田産業の社長となり会社を大きくし、孫娘にも恵まれた。
真田「私は ずっとスパーダを探していたが、自分が別世界に来たと気付いてから、帰る方法もなく諦めた。だが、運命は私を見放さなかった」
20年以上前、この世界に悪魔と、後に“英雄”と呼ばれるようになるデビルハンター・ダンテが現れた。
ダンテの存在を知り、彼を見た真田は すぐに気付いた。スパーダに関わる者だと。
真田「ダンテを見て、私はスパーダに似てると思った。髪の色も そうだが、何より剣の使い方が似ていた」
それから真田は、真田産業の力を使って20年という歳月を掛けて、ダンテの事を徹底的に調べた。その過程で、真田はネロとバージルの存在も知る。
だが真田は動かなかった。もっと早くに、ダンテやネロ、バージルに接触して話す事もできたはずなのに。
真田自身、礼を言うべき相手はスパーダであり、その息子や孫に会うのは最後の手段とした。最後までスパーダに会うのを諦めなかった。
だが、そうも言ってられなくなった。自身の死期を悟り、スパーダ本人ではなく その血族に会う事にした。
刹那にスパーダの血族を探すよう言付け、ダンテとネロが今どこに居るのか分からず、見付けられたのはバージルだけだった。そうして、バージルは ここへ来る事となったのだ。
バージル「俺は何も要らない」
真田「物をやる訳ではない」
スパーダの正確な年齢は定かではないが、最低でも2千年 生きたのは間違いないだろう。魔界に居た頃からを考えれば それ以上かもしれない。
バージルが もし同じだけの長さを生きるなら、長い生はバージルに苦しみを もたらす呪いでもあると真田は説いた。
真田「気が遠くなる程の年月を生きるのは簡単ではないはずだ。お前は多くのものを失い、いつしか生き甲斐が尽きてしまうだろう。目的がなくなり、“浪人”になる。“浪人”とは主君を失った侍だ」
そう言いながら、真田はバージルに指を指す。
すると突然、バージルを見る真田の目が鋭くなった。
真田「長い苦しみを終わらせ、死ねるようにしてやる」
真田の この提案に、刹那はバージルが何と言うか気になり彼を見る。
そのバージルは、鼻で笑いながら真田に近付いた。
バージル「その苦痛から救うために俺を殺すと?興味深い、どうやって俺を殺すつもりだ?」
ただの人間が自分を殺せるとは思えないし、1%の可能性も入り込む余地がないと自負していた。
だからバージルは、試しに どうやって自分を殺すのか その方法を訊いてみたが、真田から返ってきたのは突飛な話だった。
真田「お前の治癒能力を移植できるという確証を得たんだ」
バージル「移植だと?」
真田「他の人間にだ」
バージル「・・・そんな事が可能だと本気で思っているのか?」
真田「真田産業に不可能はない。お前の事は刹那に調べさせて知ってる。お前は これまで充分に苦しんできた」
真田は この世界でのバージルの戦いや、艦娘売買のオークションで筑摩を助けられなかった事も知っていた。
バージルは時に人間を護るように悪魔と戦い、艦娘を助けるために その人間を殺し、今では艦娘とも袂を分かっている。その一貫性のない矛盾した行動は、バージルの苦しみから来るものだと真田は指摘した。
だがバージルは、ここまでの話の何もかもが理解不能だった。
バージル「・・・どういう事だ?昔 親父が助けた老人に、親父の代わりに お別れを言うために来たんだぞ」
真田「私はスパーダに助けられた あの日から変わっていない。あの時 死ぬ気はなかったが、今も死にたいとは思わん。だが お前は・・・死を望んでいる」
バージル「勝手に決め付けるな。本気で俺を殺せると思っているのか?」
真田「いや、すぐにではない。お前は普通の人生を ゆっくりと生きる。誰かを愛し、家族を持ち、年を取る。そして いつの日か、普通の死を迎える。・・・よく考えろ」
馬鹿馬鹿しくなったバージルは老人の戯言だと思い、話を切り上げ立ち去る事にした。
バージル「くだらん。病気は気の毒だ」
だが立ち去ろうとするバージルの腕を真田が掴み、引き止める。
真田「頼むバージルさん、父親のように もう1度 助けてくれ。家族を護るため、そして私が築いたもの全てを護るためだ」
Dr.グリーン「終わりよ」
真田「頼むバージルさん」
Dr.グリーン「帰って」
5分が経過したのか戻ってきたDr.グリーンが止めに入るが、それでも真田はバージルの腕を掴んだまま話し続ける。
同時に、真田の心拍数が どんどん上昇していく。話してる声は静かなものだが、かなりの興奮状態にあると見える。
真田「あいつら殺す気だ」
バージル「・・・誰をだ?」
真田「茉優、私の孫だ。茉優は私の宝だ、護ってやらねばならない」
その話を聞いても、バージルの答えは決まっていた。それをハッキリと伝えるため、バージルは真田に顔を近付ける。
バージル「後悔するからやめておけ」
バージルは真田が掴む腕を引き抜き、部屋を後にする。それでも真田は、ずっとバージルを呼んでいた。
真田「魔剣士!魔剣士!」
Dr.グリーン「鎮静剤が必要よ。ゆっくりと呼吸して」
真田の事はDr.グリーンに任せ、刹那もバージルの後を追って部屋を出る。
部屋を出たが、バージルと刹那は足を止める事になった。中庭を挟んだ反対側の縁側で、茉優とスーツに着替えた信玄が揉めていた。
茉優「待ってください お父様、話を聞いてください!」
信玄「今はならんと言ってるんだ茉優」
茉優「お願いです お父様!」
信玄「後にしなさい!」
茉優「話を聞いてください!」
信玄「私の父が息を引き取ろうとしてるんだぞ」
信玄は茉優の話に耳を傾けず、足を止める事なく縁側を歩き続けていたが、茉優が前に回り込み立ち塞がる。
茉優「だからこそ今 聞いていただかなければ━━」
信玄「そこを どきなさい!」
茉優「お父様は いつだって そうよ。だから お祖父様が悲しむんだわ!」
茉優が そう言った瞬間、信玄は茉優の顔を平手打ちした。
信玄が茉優の横を通り離れていくと、殴られた茉優とバージルの目が合う。
その直後、茉優が雨の降る中庭に飛び出し走っていき、異変を感じた警備が茉優の名を呼ぶ。
真田家の屋敷の縁側は、中庭を囲むようにコの字になっているのだが、茉優が走って向かってるのは縁側が無く、海の方角で崖になってる場所だった。
そこには一応 壁らしき物もあるのだが、風景が見れるようにと大人の腰辺りまでの高さしかないため、簡単に乗り越え飛び下りれる。
警備は危ないから戻るように言って茉優を止めようとするが、今から動いても追い付けそうにない。
茉優が端の方に着こうとした瞬間、バージルが捕まえて止めた。
バージル「危ない、気を付けろ、滑るぞ」
茉優「放して!」
茉優はバージルの腕の中で暴れるが、バージルは手を離さない。冷静でない状態で手を離せば、また馬鹿な事をし兼ねない。
暴れる茉優だったが、バージルと目が合うとピタッと動きを止めた。
バージル「・・・落ち着いたか?」
茉優「・・・手を離して」
思っていたより冷静そうだったため、バージルは茉優から手を離した。
雨に打たれる中、茉優は ゆっくりとした足取りで屋敷の中に戻っていった。
・・・・・・
バージルは すぐに日本を去ろうとしたのだが、雨が降ってる事もあり刹那の提案で、一晩だけ真田家の屋敷に泊まる事となった。
バージルは部屋から中庭を見ていると、刹那が部屋を訪ねてきた。
バージルは刹那を見て、隠す事もなく不機嫌顔になり詰め寄る。
バージル「お別れを言うだけだと?」
刹那は俯き、バージルと目を合わせようとしない。
バージルも気の利いた言葉が欲しい訳でもなかったため、刹那から すぐに離れると、部屋に置かれていた急須から湯飲みに お茶を入れる。今となっては、間宮の お茶が懐かしい。
湯飲みに お茶を入れてると、着物を着た2人の少女の写真が目に止まった。
バージル「茉優と一緒に育ったんだな?」
刹那「そうよ」
バージル「だが姉妹じゃない」
刹那「そう・・・」
真田が茉優に会社の工場を見せるため、旅行に出た先で刹那を見付けた。その時 刹那は、食べ物を探してゴミを漁る浮浪児だった。
バージル「・・・・・・で、お前を妹代わりに?」
刹那「・・・茉優は、友達を作らない子だったから」
バージルは立ち入ってはならない事情に踏み込んでしまったと思い、飲んでいた湯飲みを置くと刹那に背を向け、また中庭の方を見詰める。
刹那「・・・・・・朝までに船を手配しておく。ここで寝て」
それだけ言い残し、刹那は部屋を後にするのだった。
次回も宜しく お願い致します!