318話です!どうぞ!
治癒能力を失ったバージルは、ヤクザから
しかし、真田家の御家騒動の裏で暗躍するDr.グリーンと、茉優の婚約者である
*真田家の別荘 9月25日 10:03*
翌日の昼、バージルは鏡を見ながら髭を剃っていた。
痛みを感じて髭剃りを離すと、血が滲んでいた。未だに傷が すぐに消えない事に慣れず、指で触り始めた。
その頃 茉優は、別の部屋で
刹那『葬儀にヤクザが紛れてたって事は内部に通じてる者が居るって事でしょう?』
茉優「大丈夫、ここなら絶対に見付からないから」
刹那『危険だよ。今すぐ そっちに行くから』
茉優「駄目よ、つけられるわ」
刹那『心配しないで』
茉優「お願い、あと数日間だけ頂戴。私なら大丈夫、バージルも居るし」
刹那『彼 怪我してるじゃない』
そんな風に どっちも譲らず押し問答を繰り返してると、別荘の外から茉優を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。
茉優「誰か来た。行かなきゃ」
刹那『もしもし?』
茉優は電話を切り、何事かと急いで外に向かった。
バージル「茉優?」
茉優を探して、バージルが開けっ放しの玄関の方へ行くと、玄関から離れた場所で茉優が、地元住民の老婆と何か話していた。
老婆「大きな木が倒れてさ、若い衆が どけようとしても中々どけられんくてよ」
そう言われて、茉優は別荘の方に振り返りバージルと目が合う。老婆も その視線を追って、バージルを見た。
・・・・・・
*港町 11:25*
海沿いにある道で、立派な大木が道を塞いでいた。
大人から子供まで、手の空いてる者達が撤去作業に励んでいた。
駆り出されたバージルも斧を振り下ろし、刃を叩き付ける度に大量の木屑が舞い上がる。
本当は閻魔刀を使って次元斬で細切れにしたかったのだが、身体能力が下がった今のバージルでは、身体への負担が大き過ぎるため断念した。
・・・・・・
数時間後、撤去作業も終わり、バージルと刹那は別荘への道を歩いていたのだが、バージルはフラフラと丁度いい高さの段差に腰を下ろした。
茉優「大丈夫?」
バージル「はぁ・・・はぁ・・・疲れた」
茉優「何か要る?」
バージル「・・・・・・いや」
バージルは断ったが、そこに引き車で果物を売って回る農家が通り掛かった。茉優は その農家から、リンゴ2個を買った。
茉優「これ食べて」
茉優はリンゴを投げ渡し、バージルは上手くキャッチする。
バージルはリンゴに かぶり付き、遠い目をしながら海を見た。その目を見た茉優は、突然 真田の話を始めた。
茉優「お祖父様は言ってた。
自分の考えが見透かされているのかと思い、バージルは思わず茉優を見た。
茉優「よく眠れてないでしょ?夜中に魘されてた。・・・・・・筑摩って誰?」
筑摩の名が出た途端、バージルは茉優から顔を背け、何も言わなくなってしまった。穏やかな雰囲気も消える。
茉優としては、自分の事をバージルに話しても、バージル自身は何も話してくれない事に、少し寂しくもあった。
沈黙が2人を包むのを邪魔するかのように、晴れた空であるのに雷の音が聴こえてきた。
茉優「戻りましょう?雨になる」
茉優が先に歩き出し、バージルも少ししてから ゆっくりとした足取りで歩き出した。
・・・・・・
*真田家の別荘 17:33*
帰る途中、天気は一気に崩れ、2人は雨に打たれながら走って別荘に戻った。
茉優は先に浴衣に着替えて お茶の準備をしていると、同じく着替えてたはずのバージルが居間に戻ってきたのだが、中途半端な状態で戻ってきた。浴衣に袖を通してはいるのだが、帯の締め方が分からない。
分からないなりにやってみるが、バージル自身も何か違うと思い、困った顔で茉優を見る。バージルの そんな顔を見て、茉優は笑ってしまう。
茉優「こうじゃない。帯は ちゃんと、侍みたいに締めなきゃ」
そしてバージルに近付き、帯を締め直してあげる。
侍と聞いて、バージルは真田に言われた言葉を思い出した。
バージル「お前の祖父に“浪人”と呼ばれた。“主君の居ない侍”だと。俺は苦しみの中で生きる運命だと・・・生きる目的もなく」
茉優「・・・・・・本当に?」
バージル「自分では違うと思っているが・・・」
茉優「答えは、見付かりそう?」
バージル「・・・・・・まだ分からない」
・・・・・・
*???*
夕飯も済ませ、バージルは眠りに就いたはずだったが、今は真っ暗な空間に居た。
後ろを振り返ると、筑摩がバージルを見ながら立っていた。
筑摩「何してるんです?」
バージル「・・・・・・・・・」
筑摩「いい結末にはならない。あなたが護ろうとした人は死ぬ」
すると突如として筑摩の後ろに、大型の黒い鎧武者が現れバージルへと向かっていく。
バージルは迎え撃とうと閻魔刀に手を掛けるが、間に入るようにVが現れた。
Vが鎧武者に掌を向けると突風が吹き、鎧武者は掻き消えるように消滅した。
V「どれだけ惑わそうとしてもムダだ」
Vが睨む筑摩に そう告げると、筑摩の姿も同じように掻き消えた。
バージル「お前は・・・」
V「バージル、また目を逸らして逃げるのか?」
バージル「何だと・・・?」
V「お前は人を理解し始め、変わりつつある。だから悩むのもムリはない。だが、そうやって自分を罰し、楽な方へと逃げていいのか?」
人は本能的に、楽な方へ楽な方へと行きたがる。悩まず、苦しまず、痛みを感じない楽な道へ。
普通なら痛みがない方がいいと思うものだ。だが時として人は、痛みを伴う道に進む方が楽な者も居るのだ。
バージル「俺は・・・俺は逃げてなど━━」
V「なら どうして あいつらに背を向けた?ネロと天龍に背を向け、ウォースパイトの言葉に耳を傾けなかった?」
バージル「・・・・・・・・・」
V「怖かったんだろ?あいつらの優しさに甘えるのが」
バージル「黙れ・・・」
V「今も怖いのだろ?自分の不甲斐なさで また誰かを護れないのが」
バージル「黙れ」
V「茉優を逃げる理由にするのか?」
バージル「黙れ!」
バージルが怒鳴った瞬間、足下の地面が黒い水溜まりに変わり、中から無数の腕がバージルを掴んだ。バージルは抜け出そうと藻掻くが、身体中を掴む腕の多さに抵抗も敵わず、ズブズブと引き摺り込まれていく。
顔の半分まで沈みバージルが最後に見たのは、何の感情も宿さない顔で見下ろすVの顔だった。
そして遂には、バージルの姿は完全に黒い水溜まりの中へと消えた。
・・・・・・
*真田家の別荘 9月26日 1:25*
バージル「ぐっ・・・!?」
バージルは冷や汗を掻きながら飛び起き、閻魔刀を抜刀した。
そこは布団の上で、さっきまでのはバージルが視ていた夢だった。
隣に敷いた布団の上では、茉優が静かにバージルを見ながら彼の手に触れた。気が動転してるバージルは それに驚き、茉優に閻魔刀の切っ先を向ける。
茉優「スパーダ・・・意味 分かる?」
それなら当然バージルは知ってるが、茉優の話に耳を傾けるために何も言わない。
茉優「悪魔よ。勇敢な剣士で、どんな敵も倒す。何も恐れない。私は幼い頃、怖い夢を視ると、親の所に駆け込んだ」
だが父親である
茉優「“怖がるんじゃない、ベッドに戻りなさい”。“恐怖を正面から見詰めなさい”と。お祖父様は違ったわ」
怖い夢を視て信玄に泣き付けば叱られると、幼いながらに覚えた茉優は、いつしか祖父の真田を頼るようになった。
茉優「友達のスパーダの話を、いつもしてくれた。森の中で出会ったって」
最初は“悪魔”なんて単語が出てきて、怖い話かと思った。だが聞いていく内に、気付けば その話をヒーローの物語のように思い聞き入っていた。
茉優「スパーダには不思議な力があり、命を救われたって。スパーダは私も護ってくれるって。私が寝てる間」
幼い茉優は、いつか魔剣士スパーダが助けてくれると思うと、不思議と怖くなくなっていた。魔剣士スパーダの話は、怖くなくなる一種の おまじないだったのかもしれない。
その話を聞いていたからだろう。増上寺でヤクザから護るように戦うバージルを見て、茉優がスパーダの名を口にしたのは。
バージル「・・・スパーダは、俺の親父だ」
茉優「そうだったんだ・・・」
すると茉優は、また筑摩が誰か訊いてきた。悪夢に魘されてたバージルは、また彼女の名を口にしていたのかもしれない。
茉優「あなたと同じ?彼女に何があったの?」
バージル「・・・死んだ・・・・・・・・・俺が殺した」
艦娘売買のオークションで、Vは筑摩を助けようとオークション会場から連れ出した。
だが体内に埋め込まれた爆弾を起爆され、筑摩はVの目の前で吹き飛び命を落とした。
もしオークション会場から連れ出さなければ、自分が余計な事をしなければとバージルは考えていた。
筑摩が死んだのはMr.J、若しくは それに連なる者の仕業ではあるが、自分にも原因はあると思い、いつしか それはバージルの心の痼になっていた。
バージルは もう、話す事はないと分かるように、茉優に背を向けながら横になった。
*真田家の屋敷*
その頃、真田家の屋敷で自分の部屋で寝ていた刹那は、夢を視て飛び起きた。
刹那「バージル・・・」
その顔には、焦りがあった。
・・・・・・
翌朝、バージルが目を覚ますと茉優の姿が無かった。
先に起きたのだろうと思い、バージルは着替えて別荘の中を見て回ったが、どこにも茉優の姿が見当たらなかった。
バージル「茉優?」
不審に思っていると、外から茉優の声が聞こえた。それはバージルの名を呼ぶ叫びだった。それを聞き、バージルは外に飛び出す。
バージル「茉優、茉優!」
茉優「バージル、バージル!」
バージル「っ・・・!」
茉優「やめてよ!放して!やめて!」
別荘は坂の上にあるのだが、裏手にある下の方の道を見ると、2人の男が茉優の腕を掴んで走り去るのが見える。
その先には黒い車が待っていた。このまま茉優を連れ去るつもりだ。
バージルは敷地から飛び下り、下の建設会社が所有する倉庫の屋根に着地し、そこから道へと出て茉優を追う。
バージルが追い付く前に茉優が車に乗せられてしまい、男の1人が銃を撃つ。身体能力が下がっていたバージルは銃弾を避けれず膝に被弾するが、それでも走り続ける。
茉優を車に押し込んだ男も車に乗り込もうとしたが、追い付いたバージルが男を掴み後ろへと投げ飛ばす。
だがバージルが茉優を車から降ろそうとする前に、車が走り出してしまった。
膝を負傷しながらも車を追うが、追い付く事ができず茉優を連れ去られてしまう。
怒りに顔を歪めるバージルは後ろに振り返る。視線の先には、バージルが投げ飛ばした男が道で倒れたままだった。
男に近付くと、頭を打ったのか血を流していたが、まだ生きていた。
バージル「どこに連れ去った?どこに連れ去った?!どこだ、このクズ!」
男「・・・言わねぇよ外人・・・言う訳ねぇ・・・」
更に怒りで顔を歪めたバージルは閻魔刀を抜き、男の肩に突き刺す。
バージル「誰に雇われた?」
・・・・・・
バージルの夢を視た刹那は、別荘がある町まで車を飛ばした。
まだ別荘には着いていないが、刹那は車を止めた。目の前から、足を引き摺りながら歩くバージルが向かってきていたからだ。
刹那「あーあ・・・」
バージルが助手席に乗り込み、銃で負傷した膝を見て刹那は不安そうな顔でバージルを見た。
バージル「勝信の所へ行け」
刹那「バージル」
バージル「勝信の所だ」
刹那「あなたに話がある」
バージル「行け、今すぐ」
話を聞いてくれそうにないバージルの雰囲気に、刹那は仕方なく車を走らせ、制限速度を無視したスピードで勝信が居る街へと急ぐ。
・・・・・・
*街 ペントハウス 15:15*
勝信が居るペントハウスの前に、刹那が運転する車が停まる。
バージル「車で待ってろ」
バージルが車から降りようとドアを開けるが、刹那に呼び止められた。
刹那「あなたは死ぬ」
バージル「・・・何?」
刹那「私 視たの」
バージル「今、視たのか?」
刹那「少し前よ。全てが見える訳じゃない。鍵穴を覗く感じなの。だけど いつも当たる。私に視えるのは人の人生の一部、つまり・・・その人の死。あなたの死が視えた」
バージル「・・・何を視たんだ?」
刹那「あなたの背中。そこら中 血だらけで・・・手で自分の心臓を掴んでた。止まった心臓を・・・」
刹那は目元に涙を溜め、泣くのを堪えながら話していたが、遂には堪えきれなって涙を流していた。
だがバージルには馬鹿馬鹿しい話でもあった。死ぬつもりはないし自分の心臓を引っこ抜くつもりもない。
バージル「俺は忙しいんだ」
夢は所詮 夢だと、バージルは その話を信じる気にはならず、車から出ようとするが また刹那が止めた。
刹那は泣きながら、バージルの方を向かず幼少期の話を始めた。しかし、その話は奇妙なものだった。
5歳の時、夢を視た。その夢は、両親が車で事故死する夢だった。
家族で車で出掛けた日、夢は現実となった。両親は夢で視た通りに亡くなり、刹那だけが助かった。
それからも人の死を夢で視たが、その人達は全員、夢の通り死んだ。
バージル「・・・俺を見ろ。俺は色んな奴と殺し合ってきたが、まだ生きてる」
刹那「そうね・・・でも今の あなたは前と違う。傷付けば治らないし、殺されるかも・・・」
確かに刹那の指摘も ご尤もだ。以前なら そんな心配は稀であったが、今は どんな形であれ死ねる身体になってしまっている。
バージルのままなのに、Vになってしまったような歯痒さがある。バージルも それに関しては不安がない訳ではなかったが、それでも止まる事はできない。
バージル「ここで待ってろ」
バージルは今度こそ車を降りてペントハウスに向かうが、刹那まで車を降りて追ってきた。
バージル「待ってろと言っただろ」
刹那「仲間が必要、今の状態じゃ危ない。私をボディーガードと思って」
どうせ何を言っても無駄だろうと思い、バージルは何も言わず溜め息だけを吐き、ペントハウスの中へと入った。
エレベーターで上まで行きドアが開くと、床にクラッカーテープやドンペリの空き瓶が落ちており、部屋の中から勝信の下品な笑い声が聞こえる。
バージルが扉に手を掛けると、鍵は開いていた。
部屋に入ると下着姿の勝信と、同じく下着姿の女2人が楽しそうにイチャイチャしている。バージル達が入ってきた事には気付いていない。
勝信の ふざけた醜態を目にし、刹那は信じられないような顔をした。茉優という婚約者が居ながら女遊びしてるのだから当然だろう。
イチャイチャの途中、女の1人が勝信の後ろに回り込んで立ってるバージルに気付き、悲鳴を上げる。その声で勝信と もう1人の女も、バージルに気付き驚く。
バージル「出ていけ」
悪魔の一言に、女2人は慌てて逃げ出した。その時に、刹那は親切にも転がっていたヒールを渡してあげた。
バージル「お前は居ろ」
バージルは ゆっくりと迫っていき、勝信は強張った顔で後退る。
バージル「古臭いかもしれんが、婚約したら こんなバカはやめるべきじゃないのか?」
勝信「法務大臣である私の権力を分かっていないなぁ」
バージル「何?赤いパンツ姿で偉そうなことを言うつもりか?今から俺が、お前に質問する。3秒で答えろ。法務大臣である お前が どうして、自分の婚約者をヤクザに殺させようとしている?くだらない答えを言ったら窓の外に放り出す」
勝信「・・・お前は何も分かっていないよう━━」
勝信は鼻で笑いながら喋り出したが、バージルの拳が鼻に直撃し、その衝撃で後ろのソファーに着席する事となった。
バージル「何秒だった?」
刹那「2秒」
バージル「2秒・・・1秒 残ってるぞ?」
勝信「・・・・・・・・・」
バージル「いいのか?」
勝信が話そうとしないので、もう1発 鼻にパンチを喰らわすと話す気になった。
勝信「信玄、信玄だ!」
バージル「・・・それから?」
それから勝信が話した茉優が狙われる理由は、真田が会社の裏でやっていた事が原因だった。
病気になってから、真田は治療のため数十億の大金を使った上、どこからか魔界金属を買い占め、北日本にある研究所に集めた。自分の延命のために。
そのため真田産業は倒産寸前に追い込まれ、バージルが必要だとも言っていたそうだ。
すると、勝信は急に刹那の方に顔を向けた。
勝信「東部の役員達は既に━━」
バージル「俺に話せ!」
バージルは また勝信の顔面をパンチした。理不尽かもしれないが、質問してるのはバージルであるため、バージルに話さない者には お仕置きである。
信玄は父親を守るために、株主や役員に会社の損失を隠した。その理由は、親に尽くして見返りを期待したからだ。
バージル「だが真田は孫に全てを与えた」
刹那「茉優が権力を得れば こいつは捨てられる」
勝信「その通りだ、茉優は婚約を破棄するだろう。遺書が公開されたら・・・私は嫌われてる」
バージル「そうか、立派な人物なのにな」
自嘲気味に言った勝信の言葉に、バージルは皮肉でしか返さない。この騒動に加担してる愚かな人間に、同情する道理は持ち合わせてはいない。
勝信「信玄は巨額の報酬を約束してくれた」
バージル「・・・だから お前は茉優を襲わせたのか?」
勝信「・・・政界のキャリアは永遠には続かない」
バージル「確かに」
バージルは勝信が首にしたままだったネクタイを掴み、引っ張りソファーから立たせるとテラスの方へと向かう。勝信は自分が何をされるのか気付き焦った。
勝信「待て、待て、よせ!望み通り本当の事を言ったじゃないかぁぁ!!」
勝信の懇願を無視し、バージルは彼をペントハウスの外へと放り投げ落とした。
バージル「くだらん答えだった」
バージルは下を確認してから中に戻り、入れ替わるように刹那がテラスに出て下を確認する。
刹那「わぁ・・・」
勝信「助けてくれぇ!」
下を見るとペントハウスの設備の1つであるプールで、勝信が助けを求めながら泳いでいた。
テラスから投げた時は殺すつもりだろうと思っていたが、プールに落とした事から単なる お仕置きだったのかと思い、刹那は驚いた顔で立ち去るバージルに振り返る。
刹那「プールがあるって知ってたの!?」
バージル「知らなかった」
バージルとしては殺す気満々だったので、プールに落ちて勝信が助かったのは残念な結果だった。
だが次に問い詰めるべき相手は分かった。バージルと刹那は信玄に会うため、急ぎ真田家の屋敷へと向かうのだった。
・・・・・・
*真田家の屋敷 18:13*
捕まった茉優は真田家の屋敷に連れ戻され、執務室で書類を見ながら待っていた信玄の前まで連れてこられた。
信玄が労いの言葉を掛けると、茉優を連れてきたヤクザが会釈してから退室する。
そして警備が障子を閉め、執務室に茉優と信玄だけにする。
信玄「お前は知っていたかな?私が大学で生物学を学んでいた事を。遺伝学・・・遺伝子には、世代を飛び越える特徴がある。エッセン遺伝子・・・眼や髪、才能、気質・・・全ての子供が等しく受け継げる訳ではない。父は私の中にではなく、お前の中にこそ、自分自身を見出だしていたのだ」
信玄は椅子から立ち上がり、ゆっくりと茉優の方へ歩を進めると、執務机の上に置かれていた刀を手に取り、目の前で刀身を鞘から抜く。
茉優は逃げ出そうとして障子を開けるが、部屋の外には警備が居て逃げ出せなかった。
信玄が刀を振り閉めるよう合図を出すと、警備は頭を下げながら障子を閉めた。
だが、屋敷に居る者達は誰1人として気付いていなかった。黒い影の侵入者が紛れ込んでいた事を。
影は1つではなく、幾人もの影が音もなく、警備とヤクザを暗殺しながら静かに移動する。
信玄「どうやって お前がアジア最大の企業を支配できるよう、父を説得したのだ?」
茉優「どうかしてるわ」
信玄「いや・・・やっと目覚めたんだ」
信玄は怪しい笑みを浮かべながら、刀を持ち上げ刃を茉優に見せる。父親に殺されそうな状況に、茉優の顔も強張る。
茉優「私を殺せば、お父様の僅かに残った名誉も全て失われるのよ」
信玄は、いつかの夜と同じように茉優に平手打ちしようとするが、茉優は自身の腕で信玄の腕を止める。
茉優「やめて!」
信玄「ふっ、心配するな茉優。私は お前を傷付ける処か守ってやりたいのだ、痛みを止めてやる」
茉優「やめて・・・」
信玄「お前の望みを叶えてやろう、あの日
茉優「私は死にたかった訳じゃない」
信玄は茉優の腕を掴み、中庭がある縁側の方へ出る。そこで、やっと大勢の侵入者が居る事に気付く。
刀や弓矢で武装する黒装束達が迫るのを見て、信玄は茉優から手を離し、彼女を置いて脱出を図る。しかし、執務室の どの出口を開けても黒装束が居て、既に包囲された後だった。
それに乗じ、黒装束の内2人が茉優を拉致する。
茉優「放してよ!」
屋敷の外へと連れ出された茉優は護身術を使い、黒装束2人を捩じ伏せる。
すると、知ってる男の声が止めた。現れたのは、
原田「一緒に来い」
茉優「どういうこと?」
原田「お前には、想像も付かない事さ」
一方、黒装束達に包囲された信玄の前には、真田の主治医だったDr.グリーンが現れた。
信玄「お前・・・」
グリーン「私よ」
次回も宜しく お願い致します!