感想ありがとうございます!
今回からメキシコが舞台になり話が重くなる予定ですが、最初なので今回は加減してみました。
322話です!どうぞ!
*オリーブ財団 ブリーフィングルーム アメリカ時間10月6日 11:35*
ブリーフィングルームで、ステフは分析官の1人である女性と情報の整理をしながら話していた。
そこに、鹿島が1人で訪ねに来た。
鹿島「失礼します。メキシコの売春組織に関する情報提供者、見付かったそうですね」
鹿島が それを口にした瞬間、ステフは鋭い眼光で鹿島を睨んだ。それも そのはず。その話は まだ誰にもしてないのだから。
ステフ「どうして それを知ってるの?」
鹿島「噂で ちょっと♪」
ステフに睨まれても、鹿島は臆する事なく悪戯っぽい笑みでウインクするだけだった。
ステフ「それで・・・何の用?」
オリーブ財団と情報提供者との間では、情報提供者が直接 会ってでしか話をしないと条件を出してきてる。情報提供者が信用できるか まだ判断が難しい段階であるため、オリーブ財団は会うか どうかすら まだ決めてないのが現状だった。
鹿島は その情報提供者と会うのを、自分に行かせてほしいと志願してきた。
ステフ「本気?先方が指定したのは、メキシコでも特に治安の悪い町なのよ。あなたが艦娘でも、どんな危険があるか判らないわ」
鹿島「ですが腐っても艦娘。人間に遅れを取るつもりはありません」
ステフ「悪いけど許可できないわ。相手が信用できるかも まだ判らないの。任務には潜入に慣れた諜報員に行ってもらう」
鹿島「・・・そうですか」
鹿島は反論する事もなく、大人しく引き下がりブリーフィングルームから退室した。
*食堂*
その頃 食堂では、モリソンがコーヒーを飲みながら間宮と談笑していた。
モリソン「いやー、間宮のコーヒーは いつ飲んでも美味いな。こんな美味いコーヒーは こっちに来てから初めてだ」
間宮「やだ、モリソンさんったら。お上手なんですから」
モリソン「いやいや、俺は本心で言ってるんだがね」
間宮「もう、まるで若い頃の提督みたいです」
モリソン「ハッハッハッ!色々とガタは来ちゃいるが、これでも まだ若いつもりだからなぁ」
間宮「程々にしてくださいね」
モリソン「ご忠告、痛み入るよ」
モリソンの本気とも冗談とも分からない話を華麗にスルーし、間宮は まだ仕事があるからとキッチンの方へ戻っていく。
それと入れ替わるように、大量の紙袋を持った鈴谷と熊野が食堂に来た。
鈴谷「たっだいまー!」
熊野「ふぅ、疲れましたわ・・・」
モリソン「おや、2人は買い物に行ってたのか?」
鈴谷「そうだよー。いやー、いい買い物したわぁ」
熊野「殆んど鈴谷の物ですわ・・・」
モリソン「そりゃ ご苦労さんだったな」
買った物の9割は鈴谷の荷物で、熊野は殆んど荷物持ちだったので疲れていた。モリソンも熊野の様子で それは よく分かったので、労いの言葉を掛ける。
するとモリソンは、ふと鈴谷の腕にあるブレスレットが視界に入る。
モリソン「その綺麗なブレスレットも買ってきたのか?」
鈴谷「ん・・・?あぁ、これ?これはね、鈴谷の手作り」
モリソン「ほう、お嬢ちゃんは意外に器用なんだな」
鈴谷「意外って言うなー!それに お嬢ちゃんじゃなくて“鈴谷”って呼べー!」
鈴谷は本気で怒ってる訳ではないが、好ましくないので怒った振りをしてみる。それが分かっているからか、モリソンは冗談混じりに謝る。
モリソン「これは失礼しました、鈴谷お嬢様」
“お嬢様”と言われ、急に鈴谷が固まった。熊野とモリソンは どうしたのかと、怪訝な顔で鈴谷を見てる。
鈴谷「鈴谷お嬢様・・・・・・何かいいかも!」
熊野「単純で心配になりますわ・・・」
モリソン「ハハッ、まぁ何にせよ、大したもんだ」
鈴谷「鳳翔さんに作り方 教わって、作ってみたんだ」
鳳翔はハンドメイドアクセサリーの趣味もあったので、鈴谷は自分も作ってみたいと思い、鳳翔に お願いして挑戦していた。そして完成したのが、今 腕に着けてるブレスレットなのである。
鈴谷「世界に1つしかないレア物だよ~。初めて作った物だから、絶対にあげないからね」
モリソン「いや、俺は欲しい訳じゃ・・・」
鈴谷「モリソンも作ってみる?」
モリソン「流石に遠慮しておくかね。どうせなら機械弄りの方が好きでね」
鈴谷「ふーん、あっそ」
モリソン「(急に冷たいな!?)」
何だかんだで楽しそうに話していたが、熊野は先に艦娘寮に荷物を置くと言って出ていった。
残った鈴谷はモリソンと しばらく話し、満足してから残りの荷物を置きに食堂を出る。すると、鹿島と鉢合わせた。
鹿島「あら、鈴谷さん、丁度いい所に」
鈴谷「ほえ、私?」
鹿島は2人だけで話したいと言い、2人で人気のない場所に移る。
そして鹿島は、メキシコの売春組織の情報提供者の話をし、会いに行こうと鈴谷に持ち掛けた。
鈴谷「それ、ステフの許可 取ってるの?」
鹿島「ステフには却下されました」
鈴谷「じゃあダメじゃん!?絶対 怒られるって・・・」
鹿島「ですが情報を引き出し、売春組織のアジトを突き止める功績を挙げれば、ステフも文句は言えないと思いますよ?それに・・・お給料もアップして買い物し放題になったり・・・」
鈴谷「お給料アップ・・・買い物し放題・・・!」
鈴谷にとって魅力的な話に、鈴谷の中の天使と悪魔が口論という名の戦いを始める。そして勝ったのは、悪魔の方だった。
鈴谷「うん、行こう!私達で、この任務を成功させよう!」
ただ鈴谷は気付いていなかった。給料アップも買い物し放題も、鹿島が言ってるだけで何の根拠もないと。
鈴谷と鹿島は昼食の後に出発する事に決め、一旦 別れて鈴谷は食堂に戻り、鹿島は どこかに行くのだった。
*研究室*
研究フロアでは夕張と明石、ニコが集まって次の発明品について話し合っていた。
ニコ「なぁ夕張、前に話してた巨大ロボの話どこ行ったんだよ?」
夕張「私だって その話は覚えてるけど、中々 時間と資金と資材に余裕がないからね。財団でネコババしたら すぐバレるし・・・」
明石「普通はネコババする物じゃない」
夕張「私だってガ◯ダム造りたい!」
明石「それは造らないで。国家間のパワーバランス絶対 崩れるから」
夕張「崩してでも造りたい!」
明石「(私欲を満たす事しか考えてない・・・)」
巨大ロボの建造は、今の段階では現実的ではないので、3人は真面目に何を作るか話し合う。するとニコがスパイらしく、他の人に化けられるリアルなマスクを提案する。
3人は そのまま話が盛り上がり、次に制作するのはマスクに決まった。
夕張「先ずはパテで練習してみよっか」
明石「パテで作れんのかな・・・?」
ニコ「試しに誰の顔にするかだけど、2人は どうする?」
夕張「えー?じゃあ私リンカーン」
ニコ「じゃあ・・・私はワシントンだな」
夕張「艦娘の?」
ニコ「大統領だよ」
明石「じゃあ私ベートーベン」
「「そこは大統領で統一でしょ/だろ」」
明石「あれ?」
とりあえず試作のマスクを作るため、3人は材料の買い出しに出掛けた。
中々おもしろそうな試みであるため、是非とも完成させてほしいものだ。まるで自由研究の作品作りみたいだ。
・・・・・・
昼過ぎ、鈴谷と鹿島が勝手にメキシコに出発してしまった頃、夕張と明石、ニコは研究室で、買ってきた材料で早速マスク作りに励んでいた。
だが3人は黙々と、どこか不安そうな、どこか気まずそうな顔で作業をしていた。それも そのはず。3人の背後に、無言のステフが立っているのだから。
作業を開始してから30分程して、ステフが いつの間にか背後に居て3人は驚いた。気配も音もなく完全にホラーだった。
何か用があるのか訊いたが、ステフは“用はない”と答えた。
それなら すぐに どこかに行くだろうと思い作業に戻ったが、少しして後ろを確認すると、ステフが まだ居て瞬きもせず夕張達を見ていた。怖過ぎである。
“何?”と訊くと、“気にしないで”と返ってきた。
会話も続かず、黙って ずっと見てる理由も分からず、背中に刺さる視線のせいで全く作業に集中できず、それから かれこれ1時間半が経過して今に至る。
やっぱり我慢できない夕張は、遠回しに訊いても ちゃんと答えてくれないステフに、ストレートに訊く事にした。
夕張「あの・・・」
ステフ「何?」
夕張「・・・何で そこに立って、ずっと見てるの?」
ステフ「あなた達の仕事振りを見てるだけよ」
夕張「チャント仕事シテルヨ・・・?」
ステフ「それは分かってる。でも私は上司として、部下の仕事振りを把握しておく必要があるの。だから気にせず仕事を続けて」
夕張「そ、そう・・・」
夕張は引き攣った笑みを見せ、また作業台に向き直るのだが・・・
「「「(・・・・・・できるかー!!)」」」
気にせずというのは無理があった。
もう全然 気持ちを分かってくれないので、夕張はストレートではなくドストレートで言う事にした。
夕張「あのね、ステフ」
ステフ「何?」
夕張「その、何ていうか・・・」
「「(頑張れ夕張!)」」
夕張「そこに立って見られてると集中できないっていうか・・・ステフも忙しいだろうから他の場所に行った方がいいんじゃない?(言った!言ってやった!私はやったよ!ニコ、明石!)」
ここまで言えば どこかに行ってくれるだろうと思ったが、ステフは一筋縄ではいかなかった。
ステフ「今は手が空いてるから大丈夫よ、心配してくれて ありがとう」
夕張「う、うん・・・」
「「「(そうじゃなーい!!)」」」
ステフ「それに このぐらいの事で集中できないようじゃ、財団の職員は務まらないわ。どんな状況でも役目を果たせるようになりなさい」
夕張「・・・・・・は、はい・・・」
結局 何も言えなくなり、普段ならペチャクチャ喋りながら楽しく作業してるのだが、この日だけは3人も大人しく、気まずい中で黙々と作業するのだった。
ステフの天然ボケが炸裂したように思えるが、それだと1つだけ疑問が残る。ステフ程の優秀とされる人物が、ここまで夕張達の気持ちに気付かないものだろうか?
それに諜報機関を束ねる立場でもあり本人もスパイなのだから、人の機微には敏感なはずだ。
その証拠に、ステフは悪戯っぽい笑みを浮かべながら夕張達の背中を見ていた。
・・・・・・
それから また1時間後、夕張達は後ろを振り返り、まだ居るか確認すると・・・
「「「・・・・・・・・・」」」
消えてる・・・。
ステフは音もなく、いつの間にか居なくなっていた。
明石「怖いってぇ!」
ニコ「あいつ本当に人間か・・・?」
夕張「いや、流石に人間・・・・・・ちょっと不安になってきた・・・」
ステフは紛れもない人間である。
・・・・・・
*食堂 19:10*
夕飯の時間、夕飯が始まったばかりだというのに、熊野が食堂から出てきた。
熊野「鈴谷ったら、どこに行ったのやら・・・」
昼過ぎまで居たのは確認済みだが、夕飯の時間になっても鈴谷の姿が見当たらず、熊野は彼女を探しに向かった。だが、鈴谷を見付ける事はできなかった。
・・・・・・
*ブリーフィングルーム 23:50*
就寝時間が過ぎてから、ブリーフィングルームにネロ、駆逐艦以外の艦娘、ニコ、モリソン、ステフ、
ステフもというのは、今回 皆を集めたのは最上型の3人だったからだ。
加賀「最上、三隈、熊野、こんな時間に皆を集めて いったい どうしたっていうの?」
最上「実は、鈴谷が居なくなっちゃったんだよ」
天龍「鈴谷が?」
ホノルル「何で?」
熊野「分かりません。昼過ぎまでは一緒だったのですが、夕飯の時間になっても食堂に来なくて、就寝時間になっても部屋に戻らないのです」
アイオワ「なら、皆で探してみる?」
三隈「くまりんこ達も探したけど、財団の どこにも居ないんです・・・」
摩耶「ま~た夜遊びしてんじゃないのかよ?」
摩耶は夜遊びの線で考えているが、アメリカに来てから鈴谷は夜遊びしなくなった。
アメリカでの、深夜の女性の独り歩きの危険度は日本の比ではない。アメリカでは襲ってくださいと言ってるのも同じであるため、高確率で集団に襲われる。
鈴谷は それを知っていたからか、1人で出歩く事はなくなった。だから夜遊びの線は考えにくい。
香取「そういえば、鹿島も居ないんですよね・・・」
ステフ「鹿島ですって・・・?」
鹿島は時々 抜け出して、敷地内での散歩に出る事があるので香取は あまり心配していなかった。
だが香取がポロッと出した鹿島の名を聞き、ステフは嫌な予感がした。
加賀「ステフ、鹿島が どうかしたの?」
ステフは今日、鹿島が ある任務に志願してきた事を話した。それを聞き、皆もステフの言いたい事を理解し、眉間に皺を寄せて頭を抱えた。
摩耶「あいつらマジか・・・」
鳳翔「まさか あの2人は・・・」
ステフ「えぇ、きっとメキシコに向かったのよ」
このタイミングで別々の理由で姿を消したとも思えないので、鈴谷と鹿島は一緒にメキシコに向かったと考えられた。
メキシコは文化や観光するには悪くないが、売春組織があるように裏では幾つも犯罪組織がある。アメリカも同じではあるが、メキシコも負けず劣らずの国である。
だがアメリカは まだマシかもしれない。オリーブ財団のように正義のために動く者が居て、警察でも単身で正しい行いをしようとする者は居る。
だがメキシコの警察は、金と権力に極端に弱く、犯罪組織と癒着してるのは珍しくなく大袈裟な話でもない。
マトモな警官が居ても、1人では何もできないため結局 誰も何もしない構図ができている。つまり大きな犯罪が行われてると知ってても逮捕に動かないのだ。
そういう意味では、まだアメリカの方がマシと言える。比べても どんぐりの背比べにしかならないかもしれないが・・・。
そんな場所に何の準備もせず2人だけで行ったのは、Devil May Cry鎮守府の面々からしたら非常事態だ。
神通「しかし、情報提供者の居場所も知らずに向かったんですよね?あの2人、どうやって相手に接触するつもりでしょうか?」
神通が疑問を口にしたタイミングで、ノートパソコンを触る健が急に頭を抱えて呻いた。
健「うわ、最高・・・」
鬼怒「どうしたの?」
健は ずっと、オリーブ財団のサーバーへのアクセス記録を調べていたのだが、健が ここに居ない時間帯に、健のIDでアクセスした記録が残っていた。
しかも閲覧履歴は・・・。
足柄「・・・まさか情報提供者のデータ?」
健「そう・・・」
天龍「何で お前のIDで侵入されてんだよ?!ちゃんと管理してるのか?!」
健「してるけど僕もビックリだよ!」
川内「手癖 悪そうなの どーっちだ?」
球磨「絶対 鹿島クマ、100%鹿島クマ」
利根「うちの鹿島は、他の鎮守府のと比べて性格 歪んでおるからな」
ステフ「これでメキシコに行ったのは間違いないわね。まだ情報提供者も信用できると決まった訳じゃないのに・・・」
サウスダコタ「なら財団の部隊と一緒に救出に向かおう」
香取「いいえ、特殊部隊を動かすには早過ぎます」
鈴谷と鹿島が現在どうなってるかも判らず、実害が出てない状態で他国に部隊を送り込めば国際問題に発展する。デリケートな問題であるため、その判断は慎重に行わなければならない。
仮に許可を取らず事後報告で動く場合は、非常事態と認められる状況が起きた時だけだ。
ネロ「今が非常事態だろ」
ステフ「私達にとっては そうでも、国は認めない。もし危険に晒されてない状態で部隊なんか送れば、私達が国に潰される」
ネロ「チッ、何だよ それ・・・!」
北上「オリーブ財団は総括的権限が与えられてるんだよね?なら大丈夫じゃないの?」
ステフ「メキシコは範囲外だから通用しない」
オリーブ財団が与えられてる、法的手段を ある程度 無視しても許される総括的権限は、日本、アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツしか国から認められていない。つまり、オリーブ財団に所属する艦娘が属する同じ国だけだ。
アイオワ「じゃあ何もしないつもり?」
ステフ「いいえ、そうは言ってない。だから国にバレないように動く。私達は諜報機関よ」
ステフは自分達の味方だと判り、皆は笑顔を見せる。
だが今から追っても、鈴谷と鹿島には追い付けそうにない。財団の飛行機は整備中で、嫌でも陸路で行くしかない。
それに国にバレないように動くとなると、大人数で行く訳にもいかないだろう。
モリソン「なら、俺に行かせてくれないか?」
天龍「モリソン、いくら提督の知り合いだからって あんたが行くのは無茶だぜ」
モリソン「おいおい、俺だって裏稼業の人間だ。お嬢様2人ぐらいの足取りなら見付けてやるさ。それに、ここで居候してるだけってのも居心地 悪くてなぁ」
だがモリソン1人で行かせるのは危険なため、皆は自分も行くと全員が言い出し、誰が行くか決まらず口論になる。
ステフ「あなた達は待機、
モリソン「了解した」
モリソンは すぐに身支度を終わらせ、メキシコへ出発する。
ステフも呉鎮守府に連絡を取り、呉提督にもメキシコへ向かうよう伝えるのだった。
・・・・・・
*メキシコ 町 メキシコ時間10月7日 17:31*
アメリカとメキシコの時差は1時間程だが、陸路で国境を越えた鈴谷と鹿島は、翌日の夕方前にメキシコ入りしていた。
それから しばらくして、情報提供者が居る町に到着した。
鈴谷「ここが そうなの?」
鹿島「はい、情報提供者が住んでるのは この町です」
鈴谷「その情報提供者って、どんな人?」
鹿島「ここに来る前に事前に電話で話しましたが、女性の方でしたよ」
話しながら、情報提供者が住む家の住所を目指して町の中を歩く。
鈴谷は歩きながら辺りを見渡すが、見掛ける住民は皆 眼がギラギラしており、警戒されてるのか変に ずっと見てくる。嫌な視線に晒され、居心地の悪い鈴谷は早くも帰りたくなっていた。
それに比べて、鹿島は気にした様子もなく平然と町の中を進んでいく。
・・・・・・
情報提供者が住んでると思われるアパートに到着すると、鈴谷が心の準備をする前に鹿島が扉をノックした。
鈴谷「ちょっ、早いって!」
鹿島「何がです?」
玄関扉が開くと、中から鹿島の言ってた通り女性が現れた。見た目は まだ20代前後と思われる女性で、気の強そうな顔付きに鈴谷は ちょっと怯む。
鹿島「『ガブリエラ・トレス』さんですね?」
ガビー「知り合いは『ガビー』って呼ぶ。アンタが電話の鹿島?」
鹿島「はい、お話を聞きたく訪問させていただきました」
事前に電話で話は通したはずだが、ガビーは不機嫌そうに玄関を閉めながら外に出ると、辺りを警戒しながら鈴谷と鹿島を連れてアパートから離れる。
ガビー「アンタらマジで何 考えてるの?」
鹿島「・・・と、言いますと?」
この町は今 追ってる売春組織の縄張りだ。
町の住民は謝礼 欲しさに、コソコソ嗅ぎ回ってる者を見付ければ すぐ組織に密告する。それは同じ町の住民が相手でも同じで、この町は住民同士で見張り合っている。
鈴谷「(だから ずっと見られてるんだ・・・)」
ガビーが出てきたアパートの前にも男が1人 居るのだが、その男もアパートを訪ねてから今も鈴谷達を見ている。
ガビー「私がアンタらの仲間だと思われたら こっちもヤバいんだ」
鹿島「そちらに迷惑は掛けません」
ガビー「他の人間が居る時は組織の話はしない事と、情報料を ちゃんと払う事を約束してくれる保証は?」
鹿島「こちらは約束を違えません。あとは電話で話した通りです」
ガビー「ならアンタらを歓迎しよう。ようこそメキシコへ。で、そっちのアンタの名前は?」
鈴谷「あ、鈴谷だよ」
ガビー「話は私の部屋で」
そう言って3人でアパートの方へ戻る。
すると、アパートの前に ずっと居た男が話し掛けてきた。
男「ガビー、そいつら お前の友達か?」
男に そう問われた瞬間、鹿島の目は鋭くなり、鈴谷は顔を強張らせる。この町がガビーの言う通りの場所なら、ガビーの返答次第では危険に陥る。
ガビー「そうだよ。私がアメリカの大学に行ってた話 覚えてる?」
男「あぁ」
ガビー「その時にできた友達の鹿島と鈴谷。メキシコ観光に来たんだってさ」
鹿島「・・・どうも」
鈴谷「こんちはー・・・」
一応 挨拶するが、男は しばらく鈴谷と鹿島を見詰めると、黙って その場を去った。
ガビーは気にせず部屋の中に入り、鹿島も それに続く。
鈴谷もドキドキしながら急いで中に入るが、さっきの男の反応が気になる。
鈴谷「ねぇ、今の大丈夫なの?」
ガビー「あいつは いつも あんな感じだから平気だよ」
そう言いながら、ガビーはキッチンの前にある椅子に座る。
鹿島「では、さっそく情報を聞かせてもらいましょうか」
ガビー「気が早いね。先ずは お互い親睦を深めてからだ。座りなよ」
鹿島「・・・なるほど」
ガビーはテーブルを挟んだ向かい側の椅子を勧め、鹿島は大人しく座りガビーと向かい合う。
鈴谷の分の椅子は見当たらないので、鈴谷は鹿島の横に控えるように立ったまま話を聞く事になる。
鈴谷と鹿島は、誰もが敵になる この町で、売春組織の情報を引き出しアジトを突き止められるのだろうか?
次回へ続く・・・。
次回も宜しく お願い致します!