アカン、重い!
いつか楽しい雰囲気の お話をするために、今は先に重い話を消化したいと思います。
323話です!どうぞ!
オリーブ財団は、メキシコ最大の売春組織の情報を追う中で、売春組織に関する情報提供者を見付ける。
情報提供者は直接 会ってなら情報を渡すと条件を出していたが、信用できるか まだ判断できない段階であったため、情報提供者との接触は先送りにしていた。
そこで鹿島が、自ら情報提供者に接触すると任務に志願する。しかし、ステフは確実な安全策を取りたいため却下する。
そしてオリーブ財団から、鈴谷と鹿島が同じタイミングで消えた。
オリーブ財団のサーバーへのアクセス記録を調べると、
現段階では大々的に動く訳にもいかず、オリーブ財団は少数での行動を余儀なくされる。
鈴谷と鹿島を連れ戻すため、モリソンがメキシコ行きを志願し、ステフは呉提督に連絡を取りメキシコに行くよう伝えるのだった。
そして陸路で国境を超えた鹿島と、鹿島に唆された鈴谷はメキシコに到着し、情報提供者であるガブリエラ・トレス、通称ガビーと接触した。
*アパート 10月7日 17:54*
アパートにあるガビーの部屋に入った鈴谷と鹿島は、ガビーに椅子に座るよう勧められる。情報の前に先ずは親睦を深めようと・・・。
そして鹿島が座り、鈴谷は鹿島の横に控えるように立ったまま話を聞く事になる。
ガビー「何か飲む?冷蔵庫から好きなの取っていいよ」
鹿島「・・・この際 腹の探り合いは時間の無駄なんで、単刀直入に言いますね。こちらは そちらに迷惑を掛けない事と、報酬を約束しました。なら そちらは、すぐにでも情報を渡すべきでは?」
鹿島が そう啖呵を切ると、ガビーは突然 大笑いした。
ガビー「まだ早いって」
鹿島「言ったはずです。腹の探り合いは時間の無駄だと」
ガビー「それはムリ。夜にならないとアンタらの知りたい情報は手に入らない」
鹿島「それは・・・どういう意味ですか?」
ガビー「私は組織のアジトは知らないからね」
鈴谷「はぁ!?騙したの!?」
ガビー「いいから聞けって。でもアジトの場所を知る奴の居場所は知ってる」
鹿島「なるほど、それが あなたの情報ですか」
ガビーによると、その人物は いつも町にあるクラブに出入りしてる。
ガビーは その人物とも知り合いで信用を得ているので、ガビーが鈴谷と鹿島を その人物に紹介し、接触させてくれるとの事だ。
ただ、クラブは夜からの営業であるため、陽の落ちてない今から動いても会えない。だから お喋りでもして、それまで時間を潰すしかないそうだ。
鹿島「その人物は組織と どういう関係ですか?」
ガビー「商品になる女を集める係さ。何も知らない若い観光客を口説いて いい雰囲気になったら、店を出て組織に引き渡す」
なら組織のアジトを突き止めるのは その男に接触するのが早そうだが、夜にならなければ現れないのなら、今は待つしかなさそうだ。
鈴谷「ねぇ、何で悪い連中と仲良くするの?女の子達が酷い目に遭ってるなら、ガビーも危ないでしょ?」
鈴谷が口にした疑問に、ガビーは心底 呆れた様子で溜め息を吐いた。
ガビー「アンタ何も分かってないね」
ここはガビーの生まれ育った町で、他に行く当てもないため そう簡単に町を出る事はできない。
犯罪組織が権力を持つ この町で生き抜くには、頭を使い上手くやっていくしかない。相手が悪い連中で不本意でも、媚を売り自分が標的にならないようにするしかないのだ。
そんな事を答えてると、ガビーが鈴谷の腕にあるブレスレットに意識が向いた。
ガビー「アンタの それ、綺麗だね」
鈴谷「あ、これ?ありがとう。手作りなんだ」
ガビー「頂戴よ」
鈴谷「・・・えぇー!?」
ガビーの言い分としては、売春組織のアジトを知る人物の事を教えた時点で情報提供は済んでるとし、その人物と引き合わせるのは別途料金として、その分の報酬としてブレスレットを寄越せという話だった。
鈴谷「これ、私が初めて作った物で・・・」
ガビー「だから?寧ろ破格の条件だと思うけど?」
鈴谷「でも・・・」
“初めて作った物”だからこそ、思い出深く鈴谷は手放したくなかった。
だが任務の事もあり、これで断りアジトの場所を知る人物に会わせる話がなくなってしまう事を考え、加えてガビーの押しに鈴谷は しどろもどろになる。
それを見ていた鹿島は溜め息を吐き、助け船を出す事にした。
鹿島「ガビーさん、報酬の件については こちらも色を付けてるつもりです。それ以上の要求は、少々 我儘が過ぎるのでは?」
ガビー「・・・・・・ハッ、ケチ臭い連中だね。まぁいいよ」
鹿島が睨み、睨まれたガビーは考えを改めたのか大人しく引いた。
鈴谷「あの、良かったらさ、アメリカに帰ったら作って送ろうか?」
ガビー「いいのかい?」
鈴谷「うん、いいよ」
ガビー「アンタ、優しいね」
鈴谷「いや~、それ程でもないけどね!」
優しいと言われ照れる鈴谷だが、ガビーの鈴谷を見る目は怪しさを宿していた。
ガビー「アンタの その優しさ、ここじゃ命取りになるから気を付けなよ」
鈴谷「ぇ・・・(それって、どういう・・・?)」
・・・・・・
*クラブ 19:58*
夜になり、鈴谷と鹿島はガビーの案内で、売春組織のアジトの場所を知る人物が出入りしてるというクラブに来た。
中は20代の若者で占めており、大音量で流れる激しい音楽をBGMに踊り、酒を呑み、男女のペアが くっ付いて何かを話していたりしている。
鈴谷と鹿島からすれば、クラブの雰囲気など どうでもいい。肝心なのはアジトの場所を知る者が どれかだ。
鹿島「それで、あなたの言っていた方は どなたですか?」
鹿島の質問に、ガビーはクラブ内を見渡す。だが、目的の人物は まだ来ていないようだ。
ガビー「まぁ、遅い時もあるから待ってたら その内 来るよ」
鹿島「こちらに そんな時間はありません」
ガビー「でも来るのを待つしかない。来たら教えるから、アンタらも それまで楽しんだら?」
そう言ってガビーは、知り合いの若者の輪の中に入り、楽しく お喋りに華を咲かし始めた。
仕方なく、鈴谷と鹿島はバーカウンターの方へ行き椅子に座る。
すると、鈴谷の隣に座る青年が鈴谷に話し掛けてきた。早い話がナンパである。
鈴谷は興味がないので無視するが、青年は無視されても しつこく話し掛けてくる。
挙げ句の果てには、勝手に鈴谷のドリンクまで注文し始めた。
鈴谷「ねぇ鹿島、私ここに居たくない。帰ろ?」
居心地が悪い鈴谷は、鹿島に ここから出るよう提案する。しかし、隣に座る鹿島は背を向ける形で座っており、鈴谷の声に反応せず無視する。
その横では、青年が鈴谷のために注文したドリンクに、白い錠剤を混入した。錠剤からはシュワシュワと泡立ち溶けていく。
鈴谷「ねぇ、鹿島ってば!」
肩を掴み揺さ振るが、それでも鹿島からの反応はない。
鈴谷が不満そうに、どうする事もできず座ってると、隣に座る青年がドリンクのグラスを差し出してきた。美味しいからと何度も勧められ、特にする事もなかった鈴谷は それを受け取り飲んでしまった。そして少しの間を置いて、鈴谷の意識が朦朧とし始める。
鈴谷「(あれ・・・?何これ・・・?)」
・・・・・・
*町 10月9日 21:18*
モリソンは8日の時点でメキシコに入り、呉提督と合流して情報提供者が住んでるアパートを訪ねた。しかし、留守だったのか会えなかった。
もし鈴谷と鹿島が情報提供者と会っていたのなら、その情報提供者は彼女達の行き先を知ってるはずなので、絶対に会う必要があった。そのため、モリソンと呉提督は車の中で、アパートを張り込み帰ってくるのを待っていた。
そして翌日の今日、ガビーがアパートに戻ってきた。
ガビーが玄関の鍵を開けようとしてると・・・
モリソン「やぁ」
背後から声を掛けられ、驚き振り返る。そこにはモリソンと呉提督の2人が立っていた。
呉「ガブリエラ・トレスね?」
ガビー「・・・そうだけど、アンタら誰?」
モリソン「夜分に申し訳ない。実は君に訊きたい事があってね。鈴谷と鹿島が君を訪ねたはずだ」
呉「私達は2人を探してるの。この娘達よ、知ってる?」
呉提督は鈴谷と鹿島の写真を見せ、ガビーは しばらく その写真を見詰める。
ガビー「・・・・・・ああ、その2人なら一昨日 来たよ。でも すぐ出ていった」
呉「詳しく話を聞かせてもらえる?」
モリソン「中に入っても?」
ガビー「・・・あの2人と どういう関係?」
呉「家族みたいなものよ」
ガビー「・・・いいよ、どうぞ」
信用できるか できないか、微妙な空気感の中、ガビーの承諾を得て部屋に入るモリソンと呉提督。
中に入ってから、鈴谷達の時と同じようにキッチンの椅子にガビーが座り、向かい側には呉提督が座る。
モリソンは部屋の中を見て回り何かを探している。
ガビー「私は何も知らないよ。さっきも言ったけど、2人は すぐ出ていったから」
呉「あの2人は売春組織の情報を あなたから聞こうとしたはずよ。何を話したの?」
ガビー「組織のアジトを知る男の居場所を教えた。でも私は止めたんだ、危ないからやめとけって。でも2人は聞かずに すぐ行っちゃったよ」
呉「その男の居場所、教えてくれる?」
ガビー「いいよ。でも今は どこに居るか分からないから、明日また来てくれる?調べとくから」
話も それで終わるかと思いきや、ガビーの腕を見たモリソンが固まった。テーブルの上に置かれていたガビーの左腕には、見覚えのあるブレスレットが・・・。
モリソン「なぁ、そのブレスレットどうしたんだ?」
ガビー「ああ、これ?店で買った」
そう答えた瞬間、モリソンは呆れた笑い声を上げた。
モリソン「それはムリがあるだろ。それは鈴谷が自分で手作りした物で、同じ物が店で売ってるはずがない」
“これはね、鈴谷の手作り”
“鳳翔さんに作り方 教わって、作ってみたんだ”
“世界に1つしかないレア物だよ~”
鈴谷は確かに そう言っていた。
それにデザインも、鈴谷が自分で考えたオリジナルであるため、同じデザインの物が この世に2つもあるはずがない。
ガビー「・・・ごめん、嘘 吐いたのは認める」
呉「どうして そんな嘘を?」
ガビー「そりゃ いきなり知らない人が夜に訪ねに来たら、ビビって嘘も言っちゃうって」
モリソン「本当は どうしたんだ?」
ガビー「貰った。情報をあげた報酬の代わりに」
モリソン「それも嘘だな」
ガビー「・・・何で嘘って言えるのさ?」
“初めて作った物だから、絶対にあげないからね”
鈴谷は初めて作った物であるため、思い出深く手放したくないと思っていた。それなのに そう簡単に、初めて会った相手に渡すとは思えない。
ガビー「完全に言い掛かりじゃないか」
ガビーが腕を引っ込めようとした瞬間、呉提督が彼女の左手首を掴んだ。
ガビー「何すんだよ?!放せよ!」
ガビーは抵抗しようとするが、その動きは すぐに止まった。呉提督が抜いたサバイバルナイフの刃を、首に突き付けられ。
呉「鈴谷と鹿島はね、私の大好きな人の艦娘なの。その人に嫌われないためなら、何だってするわよ?あの2人を どうしたのか答えなさい。また嘘を吐いたら、この場で首を掻き切る」
モリソン「目の前に居るのは軍人だ。お前さんがガキでも、本気なのは分かるだろ?」
ガビー「・・・・・・・・・」
呉「さぁ、答えろ」
・・・・・・
*クラブ 10:03*
ガビーを脅してアジトを知る男の居場所を聞いたモリソンと呉提督は、彼女を連れて男が出入りするクラブへと来た。
鈴谷と鹿島の事は、その男に引き渡したから後は知らないらしい。
呉「どいつが そうなの?」
ガビー「あの男だよ、あそこに座ってる奴」
モリソン「間違いないんだな?」
呉「また嘘だったら分かってるわよね?」
ガビー「嘘じゃないよ!私だって死にたくないから そこまでバカじゃない」
モリソン「・・・・・・まぁ、もう許してやったら どうだ?」
呉「・・・いいわ。鈴谷ちゃんのブレスレット渡しなさい」
ガビーは不満そうに、ブレスレットを呉提督に渡す。
ガビーが立ち去ろうとするが、また呉提督に腕を掴まれ止められる。
呉「私達の事を誰かに喋っても殺すから。分かったわね?」
ガビーは無言で何度も頷き、それを見て呉提督は彼女を解放した。
モリソンと呉提督は、柱の影から問題の男を見張り、動くべき時を待つのだった。
・・・・・・
それから1時間半程が経過し、男は1人でクラブを出て、店の前の駐車場へと向かう。
車に乗り込もうとしたが、その前に頭を掴まれ何度も顔面を車に叩き付けられる。
鼻血を垂れ流す男が後ろを向かされると、目の前にモリソンと呉提督が居た。
男「何だ お前ら・・・?」
モリソン「2人の少女を探してる。この2人だ、どこにやった?」
モリソンは鈴谷と鹿島の写真を見せながら訊くが、男は“知らない”と答える。
呉「よく見ろ、この2人だ!」
モリソン「お前さんが連れてったのは もう分かってるんだ。正直に答えないと、隣の怖いのが黙っちゃいないが、いいのか?」
男「知るかよ、くたばれクソオヤジ共が」
あまり時間を掛けるつもりのない呉提督が男のシャツを引き千切り、ボタンが弾け飛ぶ。
そして鎖骨辺りに、指を食い込ませた。その不穏な行動に、男は焦る。
男「な、何するつもりだ!?」
呉「自分の鎖骨を直接 見た事ある?」
男「ある訳ないだろ・・・!」
呉「じゃあ私が見せてあげる」
呉提督が更に指に力を入れ、男の鎖骨辺りでミチミチと嫌な音が鳴る。あまりの激痛に、男は悲鳴を上げる。
男「言えない!!言えば俺が殺される!!それに もう組織に引き渡したから助けるのはムリだ!諦めるしかない!!」
呉「アジトの場所は どこ?!」
男「言えない!!頼むから勘弁してくれ!!」
更に呉提督が指に力を込めると、男の皮膚を突き破って白い鎖骨が飛び出し、飛び散った血が呉提督の顔に掛かる。そして男からは これまで以上の、喉が はち切れんばかりの悲鳴が上がった。
男「頼む・・・助けて・・・病院に連れてってくれ・・・!」
呉「アジトの場所を教えたら病院に連れていく。交換条件よ」
男「頼む・・・先に病院に・・・」
呉「だったら私が治してやる!」
男は経験した事がない痛みを感じながら、助けてくれと懇願するが、呉提督は男を車の方に向かせ頭を掴むと、全力で男の頭を窓ガラスに叩き付ける。その衝撃に窓ガラスは割れ、男の上半身までが車の中に入った。
モリソン「おい、ちょっと落ち着いたら どうだ?死んだら手懸かりが消えちまうぞ!」
モリソンに咎められ深呼吸した呉提督は、この抑えられない怒りを どうしようかと思いながら遠くを見詰める。
すると・・・
男「・・・・・・分かった・・・言う、言うから・・・助けて・・・」
男がアジトの場所を言う気になった。
・・・・・・
*町 10月10日 0:48*
日付も変わった深夜、モリソンと呉提督、男が乗る車が町の ある場所で止まった。
呉「本当に あそこ?」
運転席に座る呉提督が、助手席の男に訊く。
遠目には、男が言う売春組織のアジトらしき建物が見える。明かりがある事から誰か居るのは間違いない。
男「本当だ、嘘じゃない・・・頼む、病院に連れてってくれ・・・」
呉「もう手遅れよ」
呉提督が そう言った直後、男は ゆっくり息を引き取った。大した処置もしてなかったので、出血多量で死んだ。
後部座席に座るモリソンは、呉提督の どこか危うい雰囲気に黙ってられなかった。
モリソン「いくら2人を助けるためでも、これはやり過ぎじゃないのか?」
呉「あの2人を助けるためなら、何だってするわ」
モリソン「ダンテなら もっとスマートにするはずだ」
呉「私はダンテちゃんとは違う」
モリソンと呉提督の意見が分かれ、険悪な雰囲気が車内を包み込む。
呉「私は偵察してくるから、ここに居て」
呉提督はモリソンを残し、車を降りてアジト周辺の偵察に行ってしまった。
モリソンも最初は大人しく待っていたのだが、死体と2人っきりというのも嫌で、車を降りて自分も様子を見に行ってしまう。
・・・・・・
呉提督が どの辺りに居るか分からないが、モリソンは坂や階段を上がり、アジトが よく見える場所まで来た。
アジトであろう建物の窓からは中の様子が見え、数人の男達の姿が見える。
そしてアジトの周辺の建物の屋上にも、見張りなのか銃で武装した男達が点々と立っているのも確認できる。
そろそろ呉提督も車に戻る頃かと思い、モリソンは その場から移動する。
路地のような細い道を歩いてると、道の先で建物の壁に凭れながら立つチンピラ風の男が居た。
男がモリソンを見てくるが、モリソンは視線を無視して男の前を通り過ぎる。
少し進み後ろを確認すると、さっきの男がモリソンを追うように後ろを歩いてる。モリソンは それに慌てる事もなく、先を急ぐ。
だが、状況は悪くなる一方だった。町の中を進めば進むほど、見掛けるチンピラの数が増えてくる。そいつらは全員、最初のチンピラ風の男と同じようにモリソンを追ってくる。
モリソンは徐々に焦り始めていた。連中が すぐに襲い掛かってくる様子はないのだが、二又になってる道などでは片方の道が塞がれ、まるで どこかに誘導するように追い込まれてる気がした。
その予想は的中し、高台にある駐車場に出て道が無くなると、後ろから付いて来ていたチンピラ達にモリソンは囲まれた。その数は ざっと見積もって80人は居そうだ。
モリソンは正直、年齢的にも この数を どうにかできるとは思っていないため、敵対する意思はない事を見せながら穏便に済ませようとする。
モリソン「俺は人を探してるだけなんだが、何か用かい?」
こいつらが売春組織の一味であるのはモリソンも容易に想像が付く。だからこそ機嫌を損ねないため、惚けて訊ねるが、チンピラ共はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべてるだけで、返事は返ってこない。
モリソン「そうだ、写真があるんだ。君達も見てくれないか?」
モリソンはジャケットの内ポケットから写真を取り出し、自分を囲むチンピラ達に それを見せていく。
モリソン「片方は鈴谷、もう1人は鹿島だ。見た事ないかな?君は?見た事ないか?」
最前列に居る者達に順番に見せていくが、やはり返事はない。
するとチンピラ達が急に道を空け、奥から長髪で髭を伸ばした2人の男が現れた。片方はスーツを着ており、もう片方は周りのようにチンピラ風だ。恐らく この2人がリーダー格だろう。
モリソンが向こうの出方を待って黙っていると、スーツを着た男から口を開いた。
スーツ「何か困り事かな?」
モリソン「あぁ、人を探してるんだ」
後から来た2人の男にも写真を見せ、鈴谷と鹿島を探してる事を伝える。
モリソン「周りの連中は知らないみたいでね。君達は どうだ?」
スーツ「・・・・・・アンタ、その2人と どういう関係なんだ?」
モリソン「知り合いの娘で、居なくなったから探してる」
正直に身分を明かすのは危険なため、モリソンは それらしい事を言いながら誤魔化し話を続ける。
モリソン「知ってるなら、教えてほしい。勿論 礼もする。俺にできる事でだが」
スーツ「・・・・・・探偵か何かか?」
モリソン「俺は探偵じゃない。ただ この2人を心配して連れて帰りたいだけの男だ」
するとスーツの男が手で合図を出し、モリソンは周りのチンピラ達に取り押さえられてしまった。
モリソン「何をするんだ!?」
スーツ「お前が何者か言え!」
モリソン「何者でもない!2人を知ってるんだな?!どこに居る?!2人を返してくれれば、警察にも言わないし大人しく町を出る!お互いに悪くない話だろ!」
スーツの男が、もう1人の長髪のチンピラにモリソンのサイフを取るよう言い、サイフを取ったチンピラは中にあるモリソンの免許証を見た。
チンピラ「・・・“モリソン”?英語圏に よくある名前だ」
スーツ「アメリカから来たのか?」
モリソン「そうだ」
スーツの男が笑うと、周りの連中も一緒になって笑い出す。
スーツ「そいつは遠路遥々ご苦労なこった。だが残念な事に、この国で消えた観光客は2度と戻らない。アメリカに帰って、これで美味い物でも食って忘れろ」
スーツの男はモリソンのジャケットの内ポケットに、数枚の紙幣を入れて帰るよう促す。モリソンは自分の腕を押さえる男達の腕を振り払うと、内ポケットから紙幣を取り出し突き返した。
モリソン「金は要らない。ただ あの娘達を返してほしいだけだ」
少しの間 睨み合いが続いたが、スーツの男は自分達が誰か知ってるのか訊いてきた。それに対しモリソンが、“ゲス野郎であるのは分かる”と答えると、スーツの男は笑った。
スーツ「仮に その2人が うちの店に居るなら、そいつらは商品だ。返すも何も、所有権は こちらにあるから応じる義理はない」
そう言われ激昂したモリソンはスーツの男に殴り掛かろうとするが、また周りのチンピラ共に取り押さえられてしまう。
スーツ「今なら何もせず家に帰らせてやる。この国から出ていけ」
モリソンは それを拒絶する意思をハッキリ伝えるため、スーツの男の顔に唾を吐き掛け睨む。
スーツの男はハンカチで顔の唾を拭うと、モリソンの腹を1発 殴った。モリソンは殴られた衝撃と痛みに、膝を突く。
スーツ「バカな野郎だ」
スーツの男はモリソンをチンピラ達に任せ、1人で その場を後にする。
そして残されたチンピラ達は、モリソンを袋叩きに次々と暴行を加えていく。
モリソンは最初こそ腕でガードしていたが、数の暴力には どうする事もできず、暴行を加えられ過ぎて遂には動かなくなってしまった。動かなくなりチンピラ達は終わりと判断したのか、ゾロゾロと その場を後にしていった。
モリソンは血だらけで まだ微かに意識があったのだが、少しして誰かが駆け寄ってくる足音が聴こえてくる。
?「あぁ、大変・・・!しっかり!お願いだから死なないで!ほら立って!車まで歩くのよ!」
意識が朦朧とする中、女性の声がする。
その女性に運ばれ、車に乗せられたのまでは判る。
モリソンは車の揺れを感じながら、そこで意識を手放すのだった。
モリソンをボコボコにして ごめんなさい・・・。
次回も宜しく お願い致します!