Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

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338話です!どうぞ!


Mission338 八木アンテナ~囚人の正体~

オリーブ財団では、艦娘達が半月遅れのハロウィンパーティーの準備を進めていた。

だがステフからの召集が掛かりブリーフィングルームに行くと、CIAの戦術部隊が囚人の移送中に、魔の三角海域で消息を絶ったとの事だった。

しかも部隊の隊長は、アメリカ副大統領の息子『クリス・ウィーラー』であった。

CIAは内密で囚人とウィーラーの捜索を依頼してきたが、囚人の情報は開示してもらえず正体不明だった。

オリーブ財団は伊勢型、青葉、天龍、木曾、神通、夕張、伊8、アイオワ、スキャンプ、U-511、呉提督、(たける)刹那(せつな)に部隊の捜索を命じ、彼女達は輸送船が流れ着いたと思われる島へと向かった。

島では砲撃を受けたのか損傷の激しい輸送船が見付かり、船内には乗組員の死体しかなく、部隊員と囚人は もぬけの殻だった。

だが爆弾が仕掛けられており、全員が輸送船から脱出すると爆発した。手錠が綺麗に外されていた事から、爆弾を仕掛けたのは逃げ出した囚人であると思われる。

 

 

・・・・・・

 

*島 11月18日 0:15*

 

輸送船から出て合流した伊勢型、青葉、天龍、木曾、神通、夕張、アイオワ、呉提督、健、刹那は、火を起こし野営地を設置した。

だが野営地を設置したのは、問題があり しばらく ここに留まる事になる可能性があったからだ。呉提督、健、刹那が乗ってきた船は完全に壊れ、迎えの船の手配を頼もうとオリーブ財団に連絡しようとしたが、通信が何かに阻害され繋がらなかった。

 

天龍「俺達 終ワッタネ。映画ダト ココデ俺達 全員 死ヌヨ」

 

呉「きっと島に潜む悪霊の祟りよ・・・この島に勝手に踏み込んだから怒ってるんだわ!」

 

健「いい加減にしてよ!飛行機が消息を絶ったりしてるのは電波干渉って説があって、通信が繋がらないのは きっと それが原因だから」

 

日向「悪霊や祟りは現実的ではないという事か」

 

アイオワ「そうとも限らないんじゃないかしら」

 

呉「な、何よ・・・?」

 

天龍「ヤメテヨ・・・天龍、ソウイウ話ハ聞キタクナイヨ・・・」

 

木曾「もう天龍が壊れてるんだが・・・」

 

アイオワの話では、この島には第2次世界大戦時に、アメリカ海軍の訓練基地があったらしい。

だが戦争終結と共に、基地に駐屯していた第13分艦隊とは通信が途絶え、島から忽然と姿を消したらしい。全員が・・・。

 

木曾「おい天龍!大丈夫か!?」

 

天龍「くぅ・・・」

 

天龍を見ると、涙と鼻水で顔がグチャグチャになっていた。

しかも あまりにも変な鳴き声まで出したので、呉提督以外の皆は思わず笑ってしまう。

 

木曾「どうした!?どうした!?」

 

天龍「もう無理だよぉ・・・俺 来たくなかったのに、提督が言うからぁ・・・!」

 

木曾「そうだな、怖いよな。大丈夫だからな」

 

天龍「くぅ・・・」

 

夕張「その音は どこから出てるの?」

 

木曾「おい!笑かすな!」

 

夕張「だって気にならない!?普通 出そうと思っても そんな音 出ないからね!」

 

日向「天龍が可哀想だから、そろそろやめてやれ」

 

ここに嘗ての訓練基地があるなら、囚人は そこに潜んでる可能性もあるため、一先ず伊勢達は そこに向かう事にする。

青葉と健は ここに残り、持ってきていた機材で工夫して、どうにかオリーブ財団と連絡が取れるようにしてもらう。

 

呉「私は残るわ。ホラー映画じゃ、離れた奴から順番に殺されるものよ。2人を護るために私は残る」

 

勿論これは、2人を心配して言ってるのではない。行きたくないから自分の保身のためだ。

 

夕張「これホラー映画じゃないから」

 

青葉「大丈夫ですよ。何か出てきたら私の砲撃で1発ですし、健君も訓練で強くなってきてますからね」

 

健「そうそう。それに銃も持ってるし大丈夫だよ」

 

呆気なく保身に走るのも失敗した。

健はドイツでの任務以降、ステフから戦闘格闘術を、ネロから射撃訓練の指南を受けていた。

それに島の中に居る者同士なら無線は通じるため、何かあれば連絡を取り合えるから まだ安心だろう。

 

神通「天龍さんも一緒に行きましょう」

 

天龍「手ぇ繋いでくれぇ・・・!」

 

神通「どうぞ」

 

そして青葉と健を残し、伊勢達はジャングルの中へと入り突き進む。

そしてジャングルを抜けると、それなりに規模の大きい建物が出てきた。それこそが、今は廃墟となってる訓練基地だ。

伊勢達は躊躇う事もなく・・・いや天龍と呉提督は躊躇ったが、訓練基地の中へと突入した。

 

 

・・・・・・

 

*基地 2:01*

 

伊勢達は訓練基地に入ってから、先ずは司令塔へと向かった。

もし何者かが外と連絡しようとすれば、誰かは そこに居るはずだ。居なくても何かしらの痕跡は残る。

 

呉「・・・誰も居ないわね」

 

警戒しながら司令塔にある部屋に入ったが、そこは やはり無人だった。どこも埃が被っており、誰かが来た形跡もなかった。

すると司令塔に置かれたままの無線機から、人の吐息のようなものが聞こえ始めて全員 固まった。無人である基地の中で、普通なら有り得ない事だ。

 

呉「・・・・・・絶対 取っちゃ駄目よ。死者の世界と繋がってる。もし出たら魂を━━」

 

夕張「もしもし?」

 

呉「何で出ちゃうの!?」

 

呉提督は文句を言ってるが、夕張は技術者だ。呉提督の言うオカルトは信じていない。

それに捜索が進展する手懸かりになるかもしれないため、夕張の中には無線機を取るという選択肢しか考えられなかった。

だが無線機からは、どこか苦しそうな男の息遣いしか聞こえてこない。

 

夕張「もしもし?あなたは誰?名前を教えて」

 

ウィーラー「ぅ・・・私は、ウィーラー・・・クリス・ウィーラーだ・・・」

 

電話の相手は、戦術部隊の隊長であり副大統領の息子、クリス・ウィーラーだと判り夕張の顔にも笑みが溢れる。

 

夕張「良かった、ウィーラー隊長。私はCIA本部から、あなたの救出を依頼されたオリーブ財団の夕張です」

 

ウィーラー「オリーブ財団・・・?聞いた事がないな・・・」

 

夕張「あー・・・色々と極秘の組織なんで。怪我などは大丈夫ですか?」

 

ウィーラー「肩を撃たれたが、それだけだ・・・」

 

夕張「他の隊員は どうなりました?」

 

ウィーラー「私1人だ、他は分からない・・・」

 

夕張「・・・あなたを すぐにでも保護したいんですが、場所が分かりません。今どこに居ますか?」

 

ウィーラー「分からない・・・真っ暗で冷たい場所だ・・・」

 

夕張「真っ暗で冷たい場所・・・他には?」

 

ウィーラー「いや、分からない。装備も奪われて、無線機だけが残されてた・・・」

 

呉「助けを呼ばれたら不都合なはずなのに、何で無線機を残したのかしら?」

 

夕張「それは まだ分からないけど、兎に角 暗くて冷たい部屋を探さないと」

 

呉「それだけじゃ分からないわ、ここは基地よ。そんな部屋、どれだけあると思ってるの?」

 

呉提督の言ってる事は ご尤もだが、それでも探すしかない。それでも確かに、しらみ潰しで探しても時間は掛かる。

だが夕張には、ちゃんと考えもあった。

 

夕張「『八木アンテナ』を造って それで探す」

 

呉「八木アンテナって、テレビの?そんなので どうやって探すのよ?」

 

夕張「八木アンテナは別名、『指向性短波アンテナ』とも呼ぶの。上手くやれば、短波無線機の通信を探れる」

 

簡単に説明すると、ウィーラーと無線で会話してる間は、声が通信で送られる。彼の方から送られる通信を八木アンテナで探り、強く通信が出てる場所が、ウィーラーが閉じ込められてる場所となるのだ。

夕張は早速 八木アンテナの造る作業に入るが、司令塔にある物だけではパーツが足りない。だが戦時中のまま放置された基地ならば、どこかには必ずあるはずの物なので、夕張は伊勢達に足りないパーツを探してくるよう お願いする。

 

呉「ちょっと、離れたらマズいんじゃないの!?正体不明の極悪人も彷徨いてるってのに!」

 

夕張「平行して始めないと時間が掛かる」

 

木曾「そんなに遠くには行かないから心配するな」

 

夕張「何かあったら無線で」

 

日向「分かった」

 

呉提督は納得していなかったが、伊勢達は夕張の閃きを信じているため、状況を好転させるために足りないパーツを探しに どこかへ行く。

天龍と呉提督は その場に残り、夕張の作業を手伝うのだった。

 

 

・・・・・・

 

基地内で伊勢達が順調に必要なパーツを見付け、コーン缶、ハンガー、車イス、古い無線装置、ブラウン管のテレビを使い、少しして八木アンテナが完成した。

ただ、皆はブラウン管のテレビが丸々 使われてる事に首を傾げた。

 

日向「そのテレビは、必要だったのか?」

 

夕張「実演してみせようか?」

 

夕張が車椅子を呉提督の方に向けると、テレビ画面に呉提督と思われる赤いシルエットが映った。

夕張は八木アンテナと一緒に、『サーモカメラ』も造っていた。

 

夕張「これなら壁の向こうが見えてるのも一緒」

 

これなら壁の中に居ようが、向こうの状況が分かる。ウィーラーの傍に囚人が居たとしても、居ると判っていれば先手を打てる。

 

呉「本当に天才ね」

 

夕張「鎮守府じゃ誰も評価してくれないからマジで寂しいのよ・・・」

 

ウィーラーを見付ける段取りも整い、台車を押しながら司令塔から出て、基地内を移動していく。

ただ この八木アンテナ付きテレビで見付けるには、1つ条件があった。それは喋り続けなければならない事だ。

無線機で通信に声を乗せてる時にだけ、この八木アンテナは その通信を探る事ができる。だから何かしらの話題を振り、ウィーラーに喋らせ続けなければならないのだ。

そして、最も口達者そうな呉提督が選ばれた。

基地内を進みながら、最初は世間話程度の話題ばかり振り、ウィーラーも それに答えて在り来たりな会話が続いていたのだが、呉提督は急にウィーラーとの会話をやめ、伊勢達の方に話し掛けてきた。

 

呉「この状況、一緒だと思わない?」

 

夕張「・・・一緒って何が?」

 

呉「映画『死◯館』と同じ展開よ」

 

夕張「全然 違う。ちゃんと観た事あるの?」

 

呉「観たわよ・・・殆んど目を瞑ってたけど」

 

夕張「それは“観た”とは言わない。いいから こっちじゃなくて隊長と喋って」

 

夕張に言われた呉提督は、ウィーラーに ずっと気になってた質問を ぶつける事にした。CIAで副大統領の息子なら、真実を知ってそうな都市伝説の答えを訊くために。

 

呉「ねぇ、CIAで副大統領の息子なら、凄い秘密も知ってたりするんでしょ?」

 

ウィーラー『まぁ、立場的に機密を扱う事もあるからね』

 

呉「消されたくないから答えられる範囲で教えてほしいんだけど、訊いてもいい?」

 

ウィーラー『・・・何を?』

 

呉「大統領の別荘があるキャンプ・デービッドの地下に、UFO格納庫があるって本当?」

 

ウィーラー『・・・・・・あー・・・それは私の口からはコメントできない』

 

ウィーラーが そう答えた瞬間、伊勢達は歩く足を止めて固まった。

誤魔化すつもりなら、普通は否定したり“分からない”と言うものだ。だがウィーラーからの返答は“コメントできない”。それは つまり・・・そういう事なのか!?

 

ウィーラー『おもしろい答えを期待してたんだろうが、そうとしか言えなくて申し訳ない』

 

呉「いえ、いいのよ!それが聞けただけでも充分だから!」

 

ウィーラー『私だからいいが、他の人には あまり、好奇心旺盛に突っ込んで訊かない方がいい。場合によっては、私が君の口を封じるよう命令を受けるかもしれないからね。命の恩人に そんな事はしたくない』

 

呉「あんたが いい男ってのは話してて判るから、私も それは勘弁よ」

 

ウィーラーから妙に釘を刺されたが、呉提督の興奮は止まらない。

 

呉「ねぇ、聞いた!?やっぱり宇宙人 居るわ!」

 

夕張「うん、宇宙人の話になっちゃったね・・・」

 

呉提督は都市伝説の話に1人で大盛り上がりだが、アイオワは逆に呆れていた。

 

アイオワ「あのねぇ、“答えられない”は宇宙人が“居る”って意味じゃないから。宇宙人が居なくても そう答えるって決まってるの。真に受けちゃダメよ」

 

呉「いいえ、私は宇宙人が存在する説を推すわ。絶対 宇宙人は居る」

 

それより宇宙人の話よりも、もっと大事な話がある。戦術部隊が移送してた囚人と、この島に流れ着いた経緯についてだ。

囚人に関してCIA本部は情報開示を拒んだが、ウィーラーからなら話が聞けるかもしれない。

拒んだとしても、助けるために必要な情報だと説得すれば、どうにかなるだろう。

先に輸送船が砲撃を受けたであろう損傷の事を訊くと、やはり予想通り深海棲艦の襲撃を受けたようだ。

その直後に囚人が拘束を解き、たった1人に部隊は全員 倒されてしまった。

その時に意識を失ったため、護衛艦隊が轟沈したのか はぐれただけなのか、そこまでは判らないととの事だった。

 

伊勢「その囚人が どんな人物なのか教えてくれませんか?野放しになってる囚人の正体が不明では、こちらも対処できません」

 

ウィーラー『CIA本部から聞いてないのか?』

 

呉「あんたの上司、ケチで情報開示 断られちゃったのよ」

 

ウィーラー『・・・クソッ、本部は君達まで巻き込んで いったい何を考えてるんだ・・・!』

 

ウィーラーの話では、囚人の名は『ハーパー・ヘイズ』という女だそうだ。元CIAの特殊工作員だったらしい。

ヘイズはCIAを裏切り、かなりの秘密を知ってるため組織に都合が悪い。だからCIAは、極秘で捜索の依頼をしてきたのだ。

しかもヘイズは、過去に何度も闇手術を受け、膝にコバルト、肩にはチタン、頭には鋼鉄が入ってるらしい。言ってみれば、金属の内骨格に守られた強化人間というところだろう。

 

ウィーラー『奴は化け物だ・・・出会したら絶対に逃げろ。奴には勝てない』

 

囚人の正体も判明したため、それを伝えるために どうにかオリーブ財団と連絡が取りたい。

伊勢達は、連絡手段の確保をしてるであろう青葉と健に無線を繋げた。

 

伊勢「健、囚人の正体が判った。連絡手段の確保は まだ?」

 

健『今 丁度 衛星に接続し終わったところ』

 

夕張「ステフと話せる?」

 

健『スマホでも何でも話せるよ。衛星経由で財団の極秘回線に繋げる』

 

夕張「お願い」

 

 

*オリーブ財団 ブリーフィングルーム*

 

その頃オリーブ財団では、ステフがCIA本部長と連絡を取っていた。

ブリーフィングルームの巨大モニターには、CIAの本部長が映っている。

 

CIA本部長『ウィーラー隊長は見付かったのか?』

 

ステフ「部下とは連絡が取れなくなって不明よ」

 

CIA本部長『何をしているんだ?ブラウン本部長、君が指揮する組織だから任せたのに、本当に大丈夫なんだろうな?』

 

ステフ「大丈夫よ。私の部下は、必ず任務を達成するから心配ないわ。それより、囚人は誰なのか教えて。誰を移送してたの?」

 

CIA本部長『悪いが囚人について我々に明かす権限はない』

 

ステフ「私の部下が、あなたの部下を助けるために動いてるのよ。それに囚人の正体が不明じゃ見付けるのも難しい。少しは協力しようって気はないわけ?」

 

CIA本部長『・・・君がCIAの本部長だった時の功績は知ってるし、私も協力したいとは思う。だがムリだ』

 

ステフ「・・・なら、メキシコ市での事を副大統領に話すわよ?」

 

ステフの強味は諜報員として、様々な人間や組織の弱味とも言える秘密を知ってること。しかもステフは元CIAであるため、CIAが話されて困る秘密なら腐るほど知ってる。

ステフは それを脅しに使って情報開示させようとすると、CIA本部長は沈黙し、互いにモニター越しでの睨み合いが始まる。どうやらCIAは、過去にメキシコ市で秘密にしたい失態があるようだ。

 

ステフ「・・・ちょっと待って」

 

タイミングがいいのか悪いのか、ステフのスマホに着信が入る。相手は捜索に出てる夕張だった。

何かを察したステフは、CIA本部長を放置して電話に出る。話を聞いてるステフの顔は、どんどん神妙な顔付きになり、終いには険しい顔でモニターに映るCIA本部長を睨んだ。

そして話を聞き終わったステフは通話を切り、CIA本部長との話に戻る。

 

ステフ「私の部下からよ。囚人の正体が判ったわ」

 

CIA本部長『有り得ない』

 

ステフ「あなたと違ってウィーラー隊長が教えてくれたそうよ。彼は どうするべきか、よく理解してるみたいね」

 

CIA本部長『見付かったのか?』

 

ステフ「いいえ、まだよ。でも私の部下が必ず助け出す。それと、極秘にしたかったのは副大統領の息子が行方不明になったからじゃなく、囚人の方ね?」

 

夕張の話を聞いたステフは、今回の事件の裏にあるCIAの思惑に気付いた。

CIAが極秘で捜索を進めたかったのは、行方不明になったのが副大統領の息子だからじゃない。それは建前だ。副大統領の息子が行方不明と聞けば、オリーブ財団は断らないと踏んでの事だろう。

極秘に捜索する事や囚人の情報開示を拒んだのは、ヘイズが闇手術を受けていた事に本当の理由があると睨んだ。

 

CIA本部長『悪いが何も話せない』

 

ステフ「私が どんな人間か知ってるわよね?囚人の正体も判った今、いつまでも隠し通せると思ったら大間違いよ。協力してほしいなら全て話して」

 

CIA本部長は観念したのか、諦めたように話し始めた。CIAとヘイズとの間にあった事を。

囚人であるヘイズが闇手術を受けたのは、CIA主導で行われた事だった。

CIAは戦闘になっても簡単には負けないエージェント、強化人間が欲しかった。だから公にできない非人道的な人体実験を計画した。

その被験者に、ヘイズ自らが名乗りを上げた。

ヘイズは人体実験により身体が強化され、無理だと思われる数々の任務も達成し、CIAも満足の結果だった。

だがヘイズは、自身の頑丈な肉体、力に溺れた。

CIAを裏切り、組織を知ってるため何度も追跡を掻い潜り、極秘情報を利用して犯罪の限りを尽くした。

そしてCIAは徹底的な準備をし、ウィーラーが率いる戦術部隊を送り、遂にヘイズの捕獲に成功し、結果 今に至るのだ。

ただし、ヘイズが闇手術を受ける原因がCIAである事は、ウィーラーを含め戦術部隊のメンバーも知らないらしい。

 

ステフ「私にとってCIAは古巣、家であり家族だった。私が その席に座ってた頃は、人として踏み越えてはいけない一線を弁えてた。でも あなたが滅茶苦茶にした」

 

CIA本部長『世界が常に変わっていくように、組織も それに合わせ変わっていかなければならない。君が居た頃とは違うんだ』

 

ステフ「覚悟しなさい。副大統領が この話を聞けば、彼は何て言うかしらね?」

 

CIA本部長『バカなマネはよせ』

 

ステフ「しかも自分の息子が、CIAの独断でやった事の秘密を揉み消すために送られ、行方不明になったと知れば、さぞ おもしろい事になるでしょうね」

 

CIA本部長『・・・・・・・・・』

 

ステフ「CIAは副大統領主導の内部調査が始まり、組織の解体はなくても圧力を掛けられ、今まで通りには活動できなくなる。あなたも その席には居られなくなる。情報開示を拒んだ事を後悔させてやるわ」

 

吐き捨てるように言うと、CIA本部長が反論する前に通話を切り、巨大モニターも真っ黒になった。

ステフは組織の仲間を とても大切にし、愛し、護るためなら何だってする。

今回CIAが犯した罪と情報開示しなかった事で、伊勢達の捜索任務は必要以上に危険度が増していた事になる。

不必要に部下が危険に晒されたのなら、その報復に どこまでも追い詰め、徹底的に、組織だろうが人の人生だろうが、全力で潰す。それがステフの、部下を護るための覚悟と正義である。

ステフはスマホを取り出すと、どこかに電話を掛け始めた。少しして相手が電話に出たのだが、その相手はアメリカ政府のNo.2である副大統領だった。

 

副大統領『誰だ?』

 

ステフ「ステファニー・ブラウンよ。あなが副大統領になる前からの付き合いだから、堅苦しい挨拶は抜きにさせてもらうわ。少し時間を頂戴」

 

副大統領『この電話には2度と掛けるなと言っておいたはずだ。いったい何の用だ?』

 

ステフ「CIAと息子さんの事で、話がある」

 

副大統領『そういえば、君は元CIAだったな。もう離れたんだ、今の職場に集中したら どうだ?それに息子の事なら気に掛ける必要はない。あいつもCIAで それなりの立場に就いてるのだからな』

 

実はステフ、過去に任務を成功させるために何度も無理を言って、副大統領を困らせてきた。だから かなり嫌われており、折り合いも悪い。

ただ、ステフも この副大統領が嫌いなので、相手が国のNo.2でも平気で脅せる。

 

ステフ「あら、自分の息子の事なのに随分と冷たいのね。CIAの失態で副大統領に極秘にしてる任務で、ウィーラー隊長の命が危険に晒されてるっていうのに。仕方ないわね、興味がないなら このまま切るわ。さようなら、副大統領」

 

副大統領『待て!・・・どういう事だ?』

 

ステフは不敵な笑みを浮かべ、副大統領にCIAが独断で秘密裏にやっていた行いと、現在ウィーラーが どういう状況にあるのか全て話した。

 

ステフ「私に全てを任せて協力してもらえるのなら、息子さんは必ず無事に生きたまま家に帰れるようにするわ。その代わり、あなたの望みを叶える方法を教えてあげてもいいわよ。次の大統領の椅子に座る方法を」

 

副大統領『・・・・・・どうすればいい?』

 

副大統領はステフを嫌ってはいるが、数々の任務を成功に導いた彼女の手腕は認めている。だから副大統領も、本当に困った時は彼女に頼らざるを得ないのだ。

そしてステフは、協力してくれる見返りに副大統領の野心を満たす方法を教えた。

同時に、現CIA本部長の人生が終わった瞬間である。




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