感想ありがとうございます!
投稿ペースが遅くなってた事もあり時期外れになってしまいましたが、今回からクリスマス回です。
354話です!どうぞ!
*アメリカ某所 マンション 12月24日 18:36*
クリスマス・イブ。人も街もクリスマスムード一色となってる日、とあるマンションのエレベーターにサンタに扮する夕張と、トナカイに扮する呉提督が乗っていた。
2人はコスプレをしてるが、クリスマス・イブを楽しむために そんな格好をしてる訳ではない。これもオリーブ財団の任務を遂行するためだった。
エレベーターが下に着くのを待ちながら、プレゼント袋を肩に背負う呉提督が口を開いた。
呉「何でイブの日まで任務しなきゃならないのよ」
夕張「明日は皆 休みだからいいじゃない」
呉「よく考えてみて。世間はクリスマスを楽しんでる。なのに私達は任務。銃で撃たれたり殴られたり、殺されそうになったりする。しかも今日は こんなマヌケな格好で」
夕張「似合ってるよ」
呉「あんたはサンタだからいいじゃない。何で私がトナカイなのよ?トナカイはサンタに扱き使われる存在よ、重いソリを引っ張らされて。普通 逆でしょ!私 提督で あんた艦娘なのに!」
夕張「大佐のコスプレ記念に写真 撮って皆に見せよ」
呉「ちょっとやめてよ」
夕張はスマホを出して、呉提督と一緒に記念の自撮り。夕張は笑顔だが、呉提督は仏頂面だった。しかし、しっかりカメラ目線ではあった。
その後も他愛のない話で口論になったのだが、エレベーターが止まった。まだ1階に着いた訳ではない。途中の階で止まったのだ。
ドアが開くと、2人の母子が乗ってきた。
夕張と呉提督は普通を装いながら黙り、エレベーターが下に着くのを待っていたが、乗り合わせた子供が何度も振り返りながら見てくる。
夕張と呉提督は特に気にすることもなく無視してると、子供が話し掛けてきた。
子供「何でサンタなのにエレベーター乗ってるの?」
まさか話し掛けてくるとは思わず、夕張はドキッとして固まった。
呉提督は どうするんだと他人事のように、黙って夕張を見てる。
夕張「あー・・・おかしいよね。でも ここには煙突がないから」
夕張は どうにか言い訳を口にして、引き攣った笑みを見せる。
子供の疑問にも答えて それで終わるかと思われたが、子供から更なるツッコミが来た。
子供「トナカイも一緒に?」
夕張「う、うん・・・ほら、外は寒いから。寒い所に待たせたら可哀想でしょ?」
呉「マブダチだから」
夕張「そう、仲良しだから」
呉提督がフォローに口を挟んでくるが、夕張の引き攣った笑みは変わらない。
今は任務中で一般人を巻き込む訳にもいかないため、あまり関わるような事はしたくない。早く終わってくれと思うが、子供からの追求は終わらなかった。
子供「何でトナカイが袋 持ってるの?普通はサンタが持ってるんだよ」
その指摘に、夕張と呉提督は笑みの消えた顔を見合わせる。
だが夕張は すぐに苦笑いを子供に向けた。
夕張「そ、そうだよね、普通はサンタが持ってるよね」
トナカイ「サンタは老人だから重い荷物 持ってると大変でしょ?サンタを労って持ってあげてるの」
子供「でも このサンタ若いよ」
呉「生意気 言うんじゃねぇぞ」
呉提督が子供を脅すので、母親が睨んできた。呉提督は笑顔で誤魔化す。
夕張「じゃ、じゃあ、これはサンタの私が持ってようかな~。持ってくれて ありがと、トナカイさん」
呉「はい どうぞ」
夕張「うっ・・・!?(お、重い・・・!)」
呉提督からプレゼント袋を受け取り背負うが、あまりの重さに夕張の顔が強張り少し よろける。
その時、プレゼント袋の中身がモゾモゾと動き、それに子供が気付いた。
子供「ねぇ、それ何か動いてるよ!?」
子どもに気付かれ、夕張と呉提督は完全に固まる。
更にプレゼント袋の中から、モゴモゴと人の呻き声らしきものも聞こえてきた。
呉提督が黙らせようと軽く叩くが、逆効果で更にモゾモゾと動いて呻き声が上がる。
実は今回の任務、ある犯罪者を捕まえるのが目的だった。
時期的に不自然じゃないようサンタとトナカイに扮し、このマンションに住むターゲットの部屋に2人で突入すると、乱闘の末ターゲットを気絶させ、袋に詰めて そのまま連行しようとしたのだが、思ったより早く目覚めてしまったようだ。
子供「ねぇ、その中・・・人が入ってるの?」
エレベーター内に不穏な雰囲気が漂う。
母親は不審に思い、子供を庇うようにして、狭いエレベーター内でできるだけ距離を取ろうとする。完全に人拐いだと思われてる。
呉「あ・・・・・・これは違う!中に人が入ってる訳ない!入ってるのは新発売の玩具で、名前は『くすぐりトニー』!電池で動いて会話もできる画期的な玩具!勝手にスイッチ入っちゃったみたい」
子供「じゃあ中を見せてよ」
呉「まだ売られてないから見せられない。企業秘密ってやつ」
子供「絶対 嘘だ」
呉「嘘じゃない!」
夕張「どうにかしてよ・・・」ヒソヒソ・・・
呉「ちょっと待ってて、今スイッチOFFにするから。スイッチは どこだったかな~・・・ふんっ!ふんっ!ふんっ!」
スイッチを探す振りをしてた呉提督は突然、プレゼント袋にボディブローを連続で叩き込む。そのせいで夕張はバランスを崩しそうになるが、ひっくり返らないよう頑張って踏ん張る。
それを見た母親は恐怖から焦って、エレベーターの全ての階のスイッチを押しまくる。トナカイに扮した この危険人物と一緒に乗るエレベーターの密室から、子供を連れて早く逃げ出したい。
ド突きまくった お陰で、くすぐりトニーは沈黙した。
呉「ふぅ、スイッチOFFにしたから もう大丈夫」
夕張「全然 大丈夫じゃない・・・」ボソッ・・・
振り返ると、トナカイの暴力的な行為に母子が怯えきっていた。
呉「いや~、これは違うんですよ お母さん!」
母親「何が違うの・・・?」
呉「これには事情があって、私達は別に・・・怪しい者じゃない!寧ろ正義の味方なんです!」
苦しくも弁解してると、途中の階でエレベーターのドアが開いた。
母子は急いでエレベーターから降り、1回 振り返る。
呉「・・・・・・メリークリスマス」
笑顔で手を振ると、母子は逃げていき、エレベーターのドアも閉まるのだった。
・・・・・・
*オリーブ財団 艦娘寮・屋上 12月25日 19:11*
翌日のクリスマスとなり、ダンテ達は艦娘寮の屋上で食事をしていた。クリスマスという事もあり、食事は いつもより豪華で酒もあり、みんな上機嫌だ。
そんな中 鹿島と呉提督は、料理の皿を持って焚き火台の前に座り、『サンタ居ない説』について議論していた。
呉「頼むから、計算式とか持ち出して“存在する”とか言わないで」
鹿島「可能性としてサンタの存在を否定できないだけです。考えてみてください。地球の自転、時差、ワームホールの最新研究」
呉「ずっと拘ってなさい」
鹿島「サンタは居ないって言うから可能性を計算してみせようとしたんですけど、却って混乱させちゃったみたいですね」
2人の話が聞こえていたのか、夕張が苦笑いを浮かべながら話に混ざってきた。
夕張「ちょっと ちょっと。もしかして鹿島、いい大人なのにサンタ信じてるの?」
鹿島「可能性を捨て切れないだけです。私からすれば、人が誕生日を祝う事の方が馬鹿げてますよ」
夕張「どうして?誕生日 嫌い?私達からすれば進水日だけど」
鹿島「私達 艦娘は年を取りませんけど、人間の細胞は毎分・毎秒 劣化して年を取るんです。常に死に近付いてるのに、それを1年に1回 祝うなんて変ですよ。それに人間の年齢は地球での1年を基準に数えられてますけど、火星の1年は687日ですから、20歳の人が火星に居たら10.6歳です」
呉「そういう屁理屈 言うのやめなさいよ。あんた人生の楽しみ少ないでしょ?」
鹿島「屁理屈って何がですか?根拠のある ちゃんとした計算に基ずいて言ってるんです」
呉「いいから聞きなさいって。いい?誕生日にはケーキが食べれるし、皆でプレゼント交換もできる。そういう小さな事を楽しめないと、人生つまらなくなるもんよ。あんたも難しく考えずに少しは そういうの楽しみなさい」
鹿島「それは大佐さんの理想論ですか?それとも経験に基ずく根拠のある話ですか?」
呉「もちろん根拠があってよ。そういう風に たまにはガス抜きしないと、いつか自分の抱えてるものに押し潰されて自分自身が壊れる事になる。これ人生の鉄則よ、覚えておきなさい」
鹿島「・・・・・・・・・」
夕張「でも大佐が言うとなー」
鹿島「そこなんですよ~」
呉「もういい。一生 意味 分かんない計算してなさい」
そんな風に一生 分かり合えない話をしてると、神妙な面持ちをしたステフが現れた。
夕張「どうしたの?」
ステフ「落ち着いて聞いて」
先週の任務で夕張が爆破した倉庫で、一般人の死人が出てしまっていた。崩れた壁の下敷きになってるのが発見されたらしい。
夕張を逮捕するために、今ロサンゼルス市警とアメリカ海軍捜査部が こちらに向かってるらしい。
ステフ「何を訊かれても、私達の正体は明かしちゃダメよ」
*玄関*
何度もチャイムが鳴らされ夕張が扉を開けると、警察と海軍捜査部が大勢 居た。
彼らは艦娘寮へと踏み込み、捜査官が夕張の艤装との繋がりを断ち、警官が後ろ手に手錠を嵌めてきた。
警部「君には黙秘権があり、供述は不利な証拠となり得る。弁護士を雇えない場合は公選弁護人を付ける」
ダンテ達が見てる前で、夕張は逮捕され連行された。
・・・・・・
*警察署 取調室 19:55*
夕張の取り調べは、ロサンゼルスの警察署で行われる事となった。
夕張が犯人とされる事件を担当するのは、警察の警部と刑事、海軍捜査部の捜査官の3人だ。
警部は持ってきていたファイルを開き、1枚の写真を取り出した。そこには1人の男の死体が写っている。
警部「この男を知ってるか?先週 爆破された倉庫の管理人だ。現場で崩れた壁の下敷きになって死んでるのが見付かった」
刑事「彼には妻と、6歳と8歳の子供が居た。お前が家族から父親を奪ったんだ」
夕張「・・・・・・・・・」
夕張は どれだけ責められても、黙秘権を行使して何も答えなかった。
*オリーブ財団 ブリーフィングルーム*
夕張が連行された後、ステフは先週の任務に関わった呉提督、
他は今できる事は何もないため、待機を命じてある。
ただ、夕張が逮捕されたのは誰もが納得できない事であり、ブリーフィングルームに集められた3人も同じだった。
呉「夕張ちゃんが逮捕されるなんて どう考えても おかしいだろ!それなら何で私達は逮捕されない?!」
刹那「確かに おかしいよね。あの場に居た夕張が逮捕されるなら、私達も同罪なはずなのに」
呉「ステフ、警察に圧力 掛けろ」
ステフ「もうやった。釈放するよう言ったけど拒否された。拒否したって事は、警察は夕張が犯人だとする確実な証拠を掴んでるって事よ」
呉「健、得意のコンピューターで警察にハッキングしろ!その証拠が何なのか探れ!」
健「もうやってるよ。だけど警察のシステムって20種類もあって、しかもシステムも古いから侵入に時間が掛かる」
刹那「私も手伝う」
呉提督は巨大モニターでオリーブ財団のシステムを使おうとしたが、操作が分からずイライラが募る。
呉「これ どうやって動かすのよ?!」
ステフ「落ち着いて」
呉「ステフ、夕張ちゃんには何度も助けられた。今度は私達が助けないといけないの」
ステフ「分かってる。私も夕張を助けるために全力を尽くす。監査にも力を借りられないか頼んでみるわ」
呉「それだけじゃ足りない。CIAでも何でも、助けてくれそうな連中に片っ端から電話しろ」
ステフ「分かった」
夕張を助けるため、彼らは全力で事に当たった。
*警察署 取調室*
夕張の取り調べは続いていたが、刑事と捜査官は席を外していた。
そして今は夕張の経歴についての話になっていたのだが、警察と海軍捜査部は既に調べていた。
警部「日本海軍所属、Devil May Cry鎮守府で建造された夕張型 軽巡洋艦1番艦 夕張。艦娘であるのに16年前に爆弾処理の訓練を4年間 受け、その後も日本海軍に所属していたが、5ヶ月前に突然 研究機関に転属・・・変わった経歴だな」
夕張「・・・・・・・・・」
警部「気にする事はない。爆弾解除してた奴が爆弾魔になるなんて よくある話だ。何も変じゃない」
夕張「優しく語り掛けて自白させようとしてるんだろうけど、こんなの時間の無駄。私は人を殺してないし、言いたい事があるなら単刀直入で言えば?」
警部「・・・なら言ってやる。試したかったんだろ?自分の腕を。爆弾解除の技術で自分が どれだけできるのか試したくて、爆弾を造って あそこで起爆した」
夕張「馬鹿げてる」
警部「そうかな?ずっと黙ってた お前さんが、爆弾の話になった途端 喋り出した。自分が追い詰められてると自覚して焦ったんだろ?」
夕張「・・・・・・・・・」
警部「好きなだけ黙ってていいぞ。お前は逃げられない。いずれ自分から罪を告白する事になる」
そう言い、警部は休憩で取調室から出た。
そのまま隣の部屋に行くと、席を外していた刑事が居た。
マジックミラー越しには夕張の姿が見える。
警部「何か分かったか?」
刑事は夕張のプライベートな記録が記された書類を見せながら、夕張について判った事を説明し始める。
刑事「定期的に通話、メール、銀行口座にも、長く動きがない期間がありました」
警部「軍が どれだけ厳しくても、今は研究機関の所属で一般人と変わらない。艦娘と言っても奴は若く見える。SNSぐらいやるだろ?これだけ長い間 携帯を使わない奴なんて居るのか?」
刑事「それに海外への渡航記録もありません。この期間、金も使わず どうやって生活してるんだか謎ですよ。で、また ここから携帯や口座に動きがあるんですけど・・・」
警部「奴が どこからともなく戻ってきた途端に爆破事件が起きた」
刑事「そういう事です」
警部「偶然が重なったと言うには無理があるな」
刑事「はい、自分も そう思います」
警部「奴について もっと詳しく調べろ。これは ただの殺人事件じゃない」
刑事「分かりました」
*オリーブ財団 ブリーフィングルーム*
夕張を助けるために動いていたステフ、呉提督、健、刹那だったが、結果は散々なものだった。
監査であるアーロンからは、今回は夕張自身が招いたミスであるため助けられないと言われ、1週間前の任務の発端になったCIAにも協力を断られてしまった。
そして警察のデータベースに侵入した健と刹那の方も、結果は最悪だった。
健「ヤバいよ。警察が掴んでる証拠、どれも夕張さんに不利な物ばっかりだ」
ステフ「何が見付かったの?」
刹那「あの倉庫に居たって証拠全部。指紋に写真も」
呉「何で写真があるの?突入する前にカメラは全部 切ったはずでしょ?」
健「切ったけど、どうしてか写真があって、警察は それを持ってる」
刹那「逆に夕張の無実を証明する方が難しい。現場の証拠品は全部 押収されてるし、無実を証明できるような物は何も残ってない」
健「ねぇ、自分達が何者で あの日なにがあったのか正直に言えば、警察も分かってくれるんじゃないの?」
ステフ「私達が政府に雇われてる諜報機関である事は言えないの。国内でのスパイ活動は、殺人より深刻よ」
アメリカ政府の組織体制に組み込まれた諜報機関でも、国内でのスパイ活動は禁止されている。
そのスパイ活動の一環である任務をアメリカ国内で遂行し、倉庫を爆破しましたと言っても、夕張の罪が更に重く課せられるだけだ。解体されるのは免れない。
ステフ「夕張も それは分かってるから何も言えない。自分の無実の証明さえできないわ」
発言すれば警察は揚げ足を取り、無理にでも容疑を確定させようとしてくる。現状、夕張は何もできないまま黙秘権を行使し続けるしかないのだ。
だが尋問は そんな楽なものではない。耐えられなくなった場合、事実と異なっていても それを認めてしまう事にもなる。
夕張が いつまで耐えられるか分からないが、このまま時間だけが過ぎても夕張にとっては不利な事なのだ。
健「じゃあ このまま何もできないの?」
呉「なら警察署を襲撃しましょ。ダンテちゃん達も居るし、助け出すのは簡単よ」
健「ちょっと待ってよ、話が飛躍し過ぎだよ!」
刹那「夕張が諜報機関に属してる事は知られてないけど、日本海軍で建造された艦娘であるのは知られてる」
呉「それが何よ?」
ステフ「警察署から逃がしても、夕張の罪が消える訳じゃないの。彼女を一生 逃亡犯にするつもり?」
呉「このまま殺人罪で解体されるよりマシでしょ?!」
ステフ「その後は どうするつもり?!」
呉「それは・・・遠い国で別人として生きるとかあるでしょ!」
ステフ「逃亡生活ってのは生半可な気持ちでできる事じゃないの。夕張に そんな生き方してほしいわけ?」
呉「じゃあ どうしたらいいのか教えてよ!夕張ちゃんは殺人容疑で捕まり、有罪確実の証拠を掴まれてる。他に どうしろってのよ・・・」
ステフ「皆、一旦 落ち着きましょ」
そこでステフは、1週間前の任務について、あの日なにがあったのか振り返りながら、1日の始まりから話すように3人に言った。
ただ、3人には そんな事をする意味が分からなかった。
呉「それならステフも知ってるでしょ?任務の報告書も出した」
ステフ「何か見落としてるかもしれない。振り返って話す事で、何か気付くかもしれない」
そして呉提督と健、刹那は、任務のあった日を思い出しながら、その日の始まりから話し始めるのだった。
折角のクリスマスに夕張も災難ですね。
次回は回想シーンを挟みながら進んでいく事になります。
次回も宜しく お願い致します!