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364話です!どうぞ!
*オリーブ財団 ロビー 1月18日 13:53*
この日、入院していたニコが退院した。
ニコを乗せた『Devil May Cry』のバンには、運転する明石と助手席に乗るネロも一緒に居た。
バンを駐車場に停め、ネロがニコの乗る車椅子を押して明石と一緒にオリーブ財団の中に入る。その瞬間、クラッカーの炸裂音が鳴り紙テープが舞う。
ロビーには、オリーブ財団の職員も含め、全員がニコの出迎えで待っていた。
拍手で迎えられる中、ニコは照れ臭そうにしていた。
ニコ「何だよ これ?ちょっと入院しただけで大袈裟だろ」
明石「ちょっとで済む状態じゃなかったから。少しでも搬送が遅れてたら命を落としてたかもしれないんだからね」
ニコ「って言われても、これはさぁ・・・」
ネロ「皆お前のこと心配してたんだ。有り難く主役になっとけ」
ニコ「じゃあ私が主役なら、今日は我が儘 言って皆を振り回してもいいんだよな?」
ニコが そう言った瞬間、拍手が鳴り止み、全員がロビーから離脱する。職員は仕事に戻った。
ニコ「・・・・・・あれ?」
明石「皆そこまでするとは言ってない・・・」
ネロ「お前が我が儘 言ったら死人が出る」
ニコの我が儘とは、自分の発明品の実験台にする事だ。皆それを知ってるし経験してる者も居るので、自分の命が惜しくて逃げたのだ。
ニコ「失礼な奴らだな。ちょっと感電したり爆発に巻き込まれるだけだろ。何が不満なんだ?」
明石「その爆発とか感電が問題なんだけど・・・」
ニコ「根性のねぇ奴らだ」
退院したと言っても、ニコが本格的に仕事に戻るのは もう少し先だ。発明品を造るにしても、誰かを実験台にするにしても、もう しばらくは お休みである。
・・・・・・
*グラウンド 1月19日 11:23*
翌日、草野球グラウンドで、オリーブ財団は野球の試合を行っていた。現在、7回裏、17対4でボロ負け中である。
ワンアウトで、一塁には陸奥が出ている。
バッターボックスに、バットを持った隼鷹が立つ。気合いは充分。
ピッチャーがボールを投げると、隼鷹がバットをフルスイングして打つが、少々フライ気味に打ち上がる。
陸奥が二塁に向かって走り、酒を呑んでいたのか千鳥足の隼鷹が一塁に向かってフラフラと向かう。
打ち上がったボールが相手チームにキャッチされ隼鷹がアウト。
長門「走れ走れ走れ走れ!!陸奥ー!!」
長門が叫ぶが、残念ながら陸奥もアウトになり攻守交代。
オリーブ財団の面々は残念そうに溜め息を吐いていた。
呉「タイム!」
キャプテンの呉提督は士気を高めるためにも、全員を召集して作戦会議に入る。ベンチに居た者達も集まり、皆で円になる。
ステフ「艦娘の あなた達が入ったら勝てると思ってたのに、目論見が外れたわ・・・」
夕張「財団って そんなに負けてるの?」
ステフ「前回はNSA(国家安全保障局)傍受施設のチームに負けた。その前も前も前も、ずっと前も負けてる」
呉「まだ7回の裏が終わっただけよ、諦めちゃダメ」
陽炎「そもそも、大佐の指示も滅茶苦茶じゃない。キャプテンなら もっと ちゃんとしてよ」
呉「まだ負けた訳じゃないんだから私に文句 言うんじゃない!」
呉「まだ17対4よ。諦めなきゃ巻き返せる。いい、よく聞いて。私達はチームよ。チームには“M”・“E”があるし、“T”も“A”もある」
呉「口を挟まず最後まで聞きなさい。つまり、
こんな風にキャプテンである呉提督の話もグダグダであるため、話を聞いていた全員が呆れた溜め息を吐く。
ウォースパイト「アナグラム今 関係ないし」
ネルソン「さっきからタイムする度に そんな話じゃないか。キャプテンなら もっと野球らしい指示を出してくれ」
呉「だぁー!さっきから文句ばっかりね!ミンチ肉にするぐらいの気合いで挑めって事よ!
刹那「分かった」
呉「相手が打った球は全部 取れ!塁に出すな!徹底的に防御して、こっちに攻撃のターンが回ったら ひたすら打て!兎に角 塁に出ろ!走れ!初雪ちゃん、ちゃんと目を開けろ!そんなんじゃ球は見えねぇぞ!」
呉提督が そう言うので、駆逐艦の艦娘全員が全力で目を見開く。
初雪「ぐぅ~~~っ・・・!」
雪風「目が痛い!」
素直な駆逐艦達である。
ステフ「皆、円陣 組むわよ」
皆で円陣を組み気合いを入れ直すが、そのタイミングでステフのスマホに連絡が入った。確認すると、ステフの顔が曇る。
呉「何よ?」
ステフ「・・・仕事よ」
呉「そう、いってらっしゃい」
ステフだけ仕事に行かせようとするので、彼女は信じられないと言ったような顔で呉提督を見る。
ステフ「私だけじゃなくて あなた達もなんだけど」
叢雲「もしかして任務?」
陽炎「じゃあ試合は どうするの!?」
ステフ「棄権するしかない・・・」
折角 気合いを入れ直して これからという時に、棄権するしかないと分かり全員のテンションが下がる。
ステフ「ダラダラしない!さっさと動く!」
『はーい・・・』
呉「降参!棄権するー!」
皆の落ち込みようは凄まじかったが、試合より重要な仕事があるため、皆は荷物を纏めてオリーブ財団へと戻るのだった。
ただし、帰る時に相手チームに笑われていたので、次また同じチームと試合する事があれば、最終兵器の魔剣士3人も参加させようと腹の底で企てるのだった。
・・・・・・
*オリーブ財団 ブリーフィングルーム 12:17*
オリーブ財団に戻り、それぞれが割り当てられた仕事に向かう中、ネロと夕張、呉提督、健、刹那はステフと共にブリーフィングルームに来ていた。
ステフ「4ヶ月前に掴んだ情報で、『オムナス』というテロリスト集団が、大規模な攻撃を仕掛けようと計画してる事が判った」
そしてオムナスの通信を傍受してると、数日前に殺し屋を雇った事が判明した。
ターゲットは『アーキテクト』と呼ばれる人物なのだが、その人物が何者なのかは不明だ。
健「また殺し屋かよ・・・」
呉「って事は、その殺し屋を捕まえて暗殺を阻止するのが任務って訳ね」
ステフ「殺し屋を捕まえるのはムリ」
呉「何で?」
ステフ「もう捕まってるから」
夕張「・・・殺し屋って誰?」
ステフがタッチパネルを操作すると、巨大モニターに殺し屋の写真が映る。それは殺し屋ウォードッグの、ニヤついた逮捕写真だった。
ニコを殺そうとした人物でもあるため、巨大モニターを見るネロの目も険しくなる。
健「ちょっと待ってよ。ウォードッグは刑務所に居る。どうやって刑務所から人 殺すんだよ?ってか、どうやって依頼 受けたのさ?」
ステフ「それは謎」
夕張「何か特別な連絡手段があるのかも」
ステフ「オムナスは1千万ドルで殺しを依頼した。でも連中は、ウォードッグが捕まったのを知らないはずよ」
普通は刑務所に居る奴なんかに仕事の依頼はしない。刑務所から出れる訳でもないので、話にならない。
それでも殺しの依頼を出してるという事は、オムナスはウォードッグが収監されてる事を知らないからだ。
そもそも、ウォードッグは闇社会では謎のままで、奴が捕まったこと自体、最高機密レベルの極秘情報扱いとなってる。そう簡単に知る事はできない。
刹那「1千万ドル払ってまで殺したいなんて、そのアーキテクトって人は かなりの大物だね。目的は保護?」
ステフ「まだ保護するかは決められない。アーキテクトに関する情報は一切ないし、どんな人間かも判らないから。だからウォードッグを利用する」
夕張「・・・それ どういう意味?」
ステフの考えでは、オリーブ財団以外にウォードッグの正体を知る者は居ない。だから こちらのメンバーの誰かがウォードッグに成り済ましても、気付かれない可能性はある。
そしてウォードッグに成り済ました誰かが、代わりに仕事を遂行してアーキテクトに接触するというものだった。
そのためには完璧な殺し屋にならなければならないため、プロのアドバイスを聞くためウォードッグと面会する事まで考えていた。
それを聞き、ネロ以外が一斉に猛反発する。
呉「冗談じゃない!奴の代わりに人を殺せっての?!」
ステフ「そうは言ってない。でもアーキテクトが殺すべきだと思うような悪党であれば、それも仕方ないとは思ってる」
健「あいつと会うなんて嫌だよ!僕 殺されかけたんだよ?!」
ステフ「あなたに会えとは言ってない」
刹那「もしバレたら?偽者である事や殺してない事に気付かれたら、ウォードッグ役がオムナスの連中に殺される事になる」
ステフ「気付かれないためにプロの話を聞くの」
夕張「ステフ、いつもなら作戦にケチ付けたりしないけど、今回だけは反対。ウォードッグとは関わりたくない」
呉「別の方法で情報を集めるしかない」
ステフ「どうやって?」
呉「そこはネットオタクの健がポチポチっとパソコン触って、私達が乗り込んで銃 撃って、悪党を一網打尽に━━」
ステフ「却下!いつもの やり方でアーキテクトの情報すら掴めなかったのよ。任務は変えられないし これしか方法はない」
刹那「・・・じゃあ誰がウォードッグになるの?」
夕張「私がやる。この中じゃ、私が1番ウォードッグのこと分かってる」
ステフ「ウォードッグが男だと知られてる可能性もあるから、今回は夕張に任せられない」
健「・・・・・・え、僕 無理だよ?」
呉「だったら私が」
ステフ「演技が壊滅的な あなたに任せる訳ないでしょ。だからネロを呼んだの」
ネロが指名され、夕張達は唖然としながらネロを見た。
そしてネロは、鋭い目付きでステフを睨んでいた。
夕張「ネロはデビルハンターよ!悪魔が相手なら まだしも、人間の殺しなんてさせられない!」
ステフ「だから まだ殺すとは言ってないでしょ、何度も言わせないで」
ネロ「・・・俺に、ニコを殺そうとした奴になれって言うのか・・・?!」
ステフ「気に入らないのは分かってる。ニコにした事は私も許せない。でも今回は今まで以上に危険だから、実力的に それに耐えられる人にしか任せられないの。拒否してもいい。その代わり、別の誰かがやる事になるだけよ」
ネロ「・・・・・・分かった。会うだけ会ってみる。けどアーキテクトって奴は殺さないぞ」
ステフ「えぇ。出発の準備を」
話が纏まり、刑務所に行く準備をするためブリーフィングルームから出ようとするネロだったが、夕張が近付いてきて呼び止められた。
夕張「ネロ、こんなの あなたがやる事じゃない」
ネロ「かもな。けど他の奴にやらせたって同じだろ?」
夕張「同じじゃない」
ネロ「汚れ仕事には慣れてる。心配ないよ」
ネロは扉を開けて出ていき、夕張は心配そうに彼の背中を見詰めるのだった。
・・・・・・
*刑務所 面会室 14:17*
ウォードッグが収監されてる刑務所に、ネロと夕張、呉提督、ステフ、健、刹那が到着した。
ウォードッグと会う前に、ステフは面会室の前で改めて話をする事にした。
ステフ「いい?ニコの事があるから怒りが湧くかもしれないけど、いきなり殴り掛かったりしないように。話は私がするから、冷静にね」
ネロ「分かってる」
夕張「・・・じゃあ入ろっか?」
ステフ「いえ、先ずは私とネロで行くわ。皆は ここで待機」
夕張達には待機を命じて、ネロとステフだけで面会室に入った。
面会室には、囚人服を着て手錠されたウォードッグが、机の前の椅子に座っていた。
ウォードッグ「これは これは・・・誰かと思えば、俺を捕まえた愉快な連中じゃないか。夕張も来てるのか?おーい、夕張ー!」
面会室の外に居た夕張は、ウォードッグが呼んでる声が聞こえて思わず舌打ちする。
次にウォードッグは、ステフの横に立つネロを見た。
ウォードッグ「君は・・・ネロだね?ニコの相棒の。彼女を撃った時の様子を聞きたくないか?何もできないまま、血を流しながら転がってたよ。いや滑稽だったね」
ネロ「テメェ!」
ネロが掴み掛かろうとするが、咄嗟にステフが止めてウォードッグから離そうとする。
ステフ「ネロ、落ち着きなさい!冷静にって約束よ!」
ネロ「くっ・・・クソッ!」
ネロはウォードッグに ぶつけたかった怒りを どうにか堪え、ステフの後ろへと下がった。
ネロが大人しくなった事を確認すると、ステフはウォードッグの向かいにある椅子に座った。
ステフ「先ずは自己紹介をしましょうか。私はオリーブ財団 本部長のステファニー・ブラウン」
ステフが本部長で組織を束ねるボスだと知り、ウォードッグは楽しそうに笑みを浮かべた。
ウォードッグ「ほう、アンタが あの面白い夕張のボスだったのか。また会えて光栄だよ。それで・・・本部長殿が わざわざ こんな所にまで来て、俺に何の用かな?」
ステフ「殺しの依頼を受けたわね?」
ウォードッグ「何の話か分からないなぁ。生憎 俺は刑務所の中だ。それなのに どうやって殺せばいい?銃を持ってノコノコ刑務所から出てか?堅物そうに見えて面白いジョークを言うもんだ。ブラウン本部長、君の事が好きになりそうだよ」
ステフは、数日前にオムナスというテロリスト集団が、アーキテクトと呼ばれる人物の殺しの依頼をした事も全部 知ってると伝えた。
それでも奴は、惚けた顔をしていた。
ステフ「アーキテクトが どこの誰なのか教えて」
ウォードッグ「悪いが協力できないな。仮に そいつが誰か知ってても、話して俺に得もないしな」
ステフ「・・・さっき私の事を“好き”って言ってたわね。私も好きよ。あなたみたいな悪党に吠え面 掻かせて屈服させるのがね」
ウォードッグ「それを俺にするのか?面白い、是非ともやってみせてほしいね」
ステフは机の上に、叩き付けるように持ってきていたファイルを置いた。
ファイルを開き、小学生くらいの男の子が写る写真を取り出しウォードッグに見せる。その写真を見て、ウォードッグの顔から笑みが消えた。
ウォードッグ「・・・誰かな?」
ステフ「知ってるくせに。あなたの息子じゃない」
そう言われ、ウォードッグは大笑いした。自分は子供が嫌いだから、息子など作る訳がないと。
それでもステフは、写真に写る男の子をウォードッグの息子であるとしたまま話を続ける。
ステフ「ある意味この子は幸せね。親が人殺しだと知らずに済んでる。里親である夫婦も善良な人達よ。犯罪歴もないし、この子を大切に育ててる」
ウォードッグ「そんなガキなんて知らん。くだらなくて退屈だよ、夕張を呼んでくれ。彼女と話してる方が まだマシだ。ゆーば~り~!♪」
ステフ「スイスにある、お金の掛かる私立の寄宿学校にも通って、学費は誰かの仕送りで賄われてる。この子に父親が人殺しだと教えましょうか?人を殺して いい学校に行けてると」
ウォードッグ「・・・・・・分かった、白状しよう。確かに その子は、俺の息子だ」
ステフ「幾ら殺しの報酬が高くても、こんな学校に通わせるのは大変でしょうね」
ウォードッグ「大した事はない。いい教育を受ければ、いい仕事に就けるからね」
ステフ「あなたと違って?」
ウォードッグ「・・・あぁ、俺と違って」
息子に父親が殺し屋だと言われたくなければ、協力しろとステフは言うが、ウォードッグは勝手にしろと協力を拒む。
ならばと、ステフは更に過激な方法でウォードッグを脅し始める。
ステフ「交換条件よ。この子は今、オリーブ財団の保護下にあって安全は保証する。だから協力して」
ウォードッグ「息子が どうなろうと どうでもいい。望まずして産まれた子供だ。だが俺の血を受け継いでるのにバカじゃプライドが許さん。だから いい学校に行かせてる。俺は完璧主義者なんでね」
ステフ「本当は息子を愛してるんでしょ?冷酷な殺し屋にも、人間らしい愛情がある」
ウォードッグ「バカを言うな。アンタは俺の冷酷さが分かってない。俺は子供も殺す」
ステフ「ならウォードッグに息子が居ると情報を流しましょうか?」
殺し屋は時に、殺した相手の関係者から恨みを買う事もある。ウォードッグも例外ではないだろう。
ウォードッグに息子が居ると知れば、恨みを持つ連中は復讐のために、息子の命だって狙うだろう。
ステフ「協力しないなら、この子を保護対象から外す。拐われて拷問されようと、八つ裂きにされようとも、財団は一切 介入しない。見て見ぬ振りをする」
ネロは本気なのかと、信じられない顔でステフを見る。相手が救いようのない殺し屋でも、子供を人質に取る形で脅すなど納得できない。
止めようとネロはステフの名を口にするが、ウォードッグの声に遮られた。
ウォードッグ「やればいい。ガキ1人の命が どうなろうと知った事じゃない」
するとステフは、どこかに電話を掛ける。
電話の相手にウォードッグの息子の監視から引き上げるように言い、序でにウォードッグの犯行だと思われる殺人で、被害があった犯罪組織全てに息子の居場所の情報を流すよう命じた。
ネロ「ステフ!子供は関係ないだろ!」
ネロが声を荒げて止めようとするが、ステフに命令を撤回するつもりはない。ウォードッグが折れるまでは。
そしてウォードッグの方は、ステフを睨みながらワナワナと身体が震えていた。
ウォードッグ「・・・・・・分かった!協力するからやめろ!」
ステフは勝ったと思い笑みを浮かべると、さっきの命令を撤回して電話を切った。
ネロも安堵の溜め息を吐き、身体から力を抜いた。
ステフ「冷酷な殺し屋にも、人間らしい感情はあったみたいね」
ウォードッグ「アンタの本気は伝わった。さすが本部長と言うべきか。だが協力したいのは山々だが、俺も どこの誰を殺せばいいか判ってない。何せ刑務所の中に居るからな。これで協力は終わりだ」
寧ろ勝ったと思ってるのはウォードッグも同じだった。
協力するとは言ったが、そもそもウォードッグ自身もアーキテクトの情報を持ち合わせていなかった。
協力するのを条件に息子の安全を保証させ、肝心の提供できる情報は実際にはないため、ウォードッグからすれば ざまぁ見ろと二重で美味しい状況だった。
だが そうは問屋が卸さない。
ステフ「いいえ、まだ協力してもらうわよ。あなたには殺し屋としての極意を全て教えてもらう。所作、技術、話術、何もかもよ」
ウォードッグ「・・・どういう事かな?」
ステフ「ネロが あなたになって代わりに仕事をする」
それを聞き、ウォードッグは全てを理解して また大笑いした。
だが すぐに笑いは止まり、今度は怒りの形相でステフを睨んだ。
ウォードッグ「ふざけるなよ。プロの殺しの仕事は、素人に ちょっと教えた程度で身に付くものじゃない。況してや、そこの小僧に人を殺す覚悟があるのか?」
ネロ「・・・・・・・・・」
ステフ「いいからネロに教えなさい。息子の安全は それが条件よ」
ウォードッグ「・・・良かろう。だが本気でプロの殺し屋になりたいなら、レッスンは厳しくなる。覚悟しておけ」
ネロ「上等だ」
面会室から出ると、夕張達が心配そうに待っていた。
夕張「どうだった?」
ステフ「ネロがレッスンを受ける事になった」
ネロ「おい、ちょっと待てよ!」
ステフは そのままオリーブ財団に帰ろうとしていたが、怒ってるネロは肩を掴み引き止めた。腹立たしく、どうしても言いたい事がある。
ネロ「子供を脅しに使うなんて何 考えてんだ?!」
健「え、子供?」
刹那「どういうこと?」
ネロ「殺されるかもしれないってのに、本気で あいつの息子の情報 流すつもりだったのか?」
ステフ「えぇ、本気だった。本気じゃないと彼は協力しない。彼はプロよ。生半可な脅しじゃ動かない」
ネロ「ふざけんなよテメェ・・・!」
ステフ「私だって何の関係もない子供を脅しの材料には使いたくなかった。親と子供は違うから。だから後で また保護対象に戻すつもりだったの」
ネロ「え・・・それって・・・」
ウォードッグはプロの殺し屋であるため、観察力は ずば抜けているはずだ。する気もない嘘を言って脅しても、奴に見抜かれてしまう恐れがあった。
だから あの場では、本気だと判るように実際に保護対象まで外して、情報も流そうとした。つまりリアルさを出すための一芝居だったのだ。
その後ウォードッグの息子は、すぐに別の場所に移して保護を続けるつもりだった。
ステフ「私が そんな酷い人間だと思ったの?」
ネロ「正直に言うと、思った・・・」
ステフ「あなたまで騙されて どうするのよ。いい加減 学んで。ネロは明日からレッスンを受けて。他はオムナスの情報収集よ」
こうして数日の間、ネロは刑務所へと毎日 通い続け、ウォードッグから殺し屋となるためのレッスンを受けるのだった。
次回も宜しく お願い致します!