365話です!どうぞ!
テロリスト集団オムナスが、大規模攻撃を計画してる事が判明した。
オムナスの通信を傍受すると、アーキテクトと呼ばれる人物を抹殺するため、殺し屋を雇った事が明らかになる。その殺し屋は、オリーブ財団のメンバーの命を狙い、刑務所に収監されたウォードッグだった。
オリーブ財団は、オムナスの狙いとアーキテクトと呼ばれる人物の素性を明らかにするため、ネロがウォードッグに成り済まして接触する作戦で話を進める。
そしてネロは、プロの殺し屋になるため刑務所のウォードッグからレッスンを受けるのだった。
*刑務所 面会室 1月23日 11:23*
机を挟み、椅子に座ったネロとウォードッグが1対1で話していた。
レッスンを通し、数日の間ずっと顔を突き合わせて話をし、殺し屋の極意や殺り方などを教わってきたが、今日は これまでと違った。
面会室に夕張と呉提督、
ステフ「・・・大丈夫なんでしょうね?」
ネロ「大丈夫だ、言われた事は全部 頭に入ってる。あとは本番だけさ」
ウォードッグ「いいや、まだだ」
ネロ「いい加減にしろ。話は全部 聞いたし動きも完璧に真似た。まだ何かあるのか?」
ウォードッグ「いいや、君に話すべき事は全て話したが、それだけでプロの殺し屋になれると思われるのは不本意だ。だから君には、実技の模擬試験を受けてもらう」
ネロ「・・・模擬試験だと?」
夕張「実際に人を殺せっていうの?」
ウォードッグ「本気で俺になるつもりなら、冷血な殺し屋になってもらわなければ困る。でないと俺の評判に傷が付くからな。教えた以上、それを完璧に実演しなければ君は不合格だ。それで潜入しても すぐにバレるぞ」
ネロは すぐにでもウォードッグになりきり、オムナスと接触する気でいた。
だがウォードッグはレッスンの課題で、実技の模擬試験を課してきた。それは単純に誰かを殺せという事だ。
夕張「そこまでする必要ない!」
ステフも そこまでさせるつもりはないため、この話は ここまでにしようと口を開きかけるが、それよりも早くネロが口を開き、予想外な事を言った。
ネロ「やるよ」
無闇に人を殺すのを良しとしないはずのネロが そう進言し、夕張達は驚き彼を見る。
夕張「何で そんなこと言うの?ネロらしくないよ!」
ステフ「ムリはしなくていい。関係ない人間まで殺す必要はないわ」
ネロ「俺だってできるならやりたくない」
ウォードッグの指摘通り、中途半端な形で挑んでもバレてしまえば、オムナスの全貌を掴む事はできないしアーキテクトの保護もできない。
それに本当に殺さずとも、オリーブ財団なら何とか死んだ事にして誤魔化せるかもしれないと、ネロは そう考えての発言だった。
ウォードッグ「おいおい、本気で殺さないと卒業認定証は貰えないぞ?」
ネロ「黙ってろ、言われた事は完璧にやってやる。ステフ、やらせてくれ」
ステフは少しの間 考え、許可を出した。
夕張も呉提督も、健も刹那も、ステフが許可を出した以上なにも言えなくなり、ただ心配そうにネロを見詰めるしかできなかった。
ウォードッグ「その前に、その みすぼらしいコートは脱げ」
ネロ「は?服装なんて何でもいいだろ」
ウォードッグ「いいから言われた通り、その みすぼらしいコートは脱げ。素人がプロの殺し屋に見られたいなら、先ずは格好からだ。俺になるつもりなら品のある格好をしろ」
ネロは服装で とやかく言われる事に納得できなかったが、ウォードッグが頑なに これだけは譲らなかったので、仕方なく いつものコートは着ずに、ウォードッグ仕様の服装に着替える事になった。
・・・・・・
*町 ダイナー 14:37*
黒いジャケットに黒のタートルネックを着て、殺し屋に変身したネロは、ある小さな町にあるプレハブ式レストランであるダイナーに来た。
ウォードッグは別件で、殺しの依頼を引き受けるつもりだった。その依頼者が、ここで待ってるそうだ。
ここで依頼者に会い、暗殺のターゲットを聞いて殺しを引き受けるだけだ。
ネロの服にはカメラを仕込んであり、耳にはイヤホン型 無線機をしている。これで刑務所に居るウォードッグにネロが見てる風景と同じ物が見え、リアルタイムで話を聞ける。
夕張とステフ、呉提督、刹那はオムナスの情報を集めるためにオリーブ財団に戻り、刑務所には健が残り、ウォードッグと一緒にカメラから送られる映像を見ている。
ネロが出入り口付近で辺りを見渡し依頼者を探してると、無線機からウォードッグの声がする。
ウォードッグ『奥に いかにも殺しなんて頼まない初老の男女が居る』
ネロ「・・・・・・見えた」
ウォードッグ『それが依頼者だ。いいか、先ずは取引を成立させろ。簡単だろ?』
ネロは歩を進め、ダイナーの奥の席に座る初老の2人の元へ向かう。
席まで行くと、何も言わず向かいの席に いきなり座った。突然の事に男女は驚き、ネロを見て顔を強張らせる。
男「ぁ・・・アンタが、頼みを聞いてくれる例の人か?」
ネロ「誰かを殺したくて呼んだなら、俺が そうだろうな。名前は色々とあるが、今の お気に入りは“ウォードッグ”だ。ウォードッグと呼んでくれ」
夕張達からウォードッグを捕まえた時の状況など詳しく聞き、報告書にも目は通していたので、ネロはウォードッグが言いそうな台詞を完璧に模範していた。
初老の2人は少し戸惑った様子で、互いの顔を見合った。
ネロ「何か問題でも?」
女「いえ、思ってたりよりも随分と若い人が来たので驚いてしまって。気を悪くしたのなら ごめんなさい」
ネロ「なら早速 仕事の話をしようか」
*刑務所*
カメラ越しに映像を見ながら会話を聞いていたウォードッグは、台詞だけは合格点である事から笑っていた。どちらかと言うと、ちょっとしたエンターテイメントを見てる気分でもある。
ウォードッグ「いいぞ。真似事にしては悪くない」
健「何で笑ってんだよ?」
ウォードッグ「刑務所は退屈だからな。それに こんな面白いものを特等席で見れるんだ。楽しまないと損ってものだろ」
*町 ダイナー*
ウォードッグを待っていた2人は夫婦で、『モリス』と名乗った。
『レイチェル』という1人娘が居たが、彼女は撲殺されて、既に この世に居ない。
警察はレイチェルの夫が犯人であると捜査したが、証拠不十分で逮捕されなかった。
それでもモリス夫妻は、レイチェルの夫が犯人だと信じて今でも疑っていた。その男は暴力的で、レイチェル自身は隠していたが、腕などに痣があり、DVを受けてる事に気付いたからだ。
しかし それに気付いた矢先に、撲殺事件が起きてしまった。そして逮捕されなかった事で全てが有耶無耶になってしまった。
そのためモリス夫妻の依頼は、レイチェルの夫の殺害だった。
ネロ「いいだろう、そいつを殺してやる。じゃあ報酬の話をしようか」
モリス婦人「え・・・話が違うわ・・・!」
報酬という言葉を聞いた瞬間、モリス夫妻が慌てて席を立った。
モリス「すまない、人違いだったようだ」
モリス夫妻は逃げるようにダイナーを後にし、ネロは どういう事かと混乱しながら2人が去っていくのを見送るしかなかった。
・・・・・・
*刑務所 面会室 16:34*
ウォードッグの居る刑務所へと戻ったネロは、怒りを露にしながら面会室の扉を勢い良く開け、中に入るなり口を開く。
ネロ「お前、タダでも人を殺してるのか?!」
報酬の話を切り出した途端、モリス夫妻は驚き逃げ帰った。そこから考えられるのは、ウォードッグが依頼料も取らず仕事を請け負ってる可能性だ。
そしてウォードッグの口から出たのは、ネロの予想を肯定するものだった。
ウォードッグ「たまにな。それを知らなかったのは そっちの情報不足だ。あの本部長は俺の事を何でも知ってる口振りだったが、そうでもなかったようだな」
ネロ「テメェ!」
納得できる事でもないが、例え人殺しでも報酬を貰って仕事する事は理解できる。それで生計を立てていると言うのであれば。
だが報酬も関係なしに殺しをしてる事に、ネロの怒りが爆発する。
ウォードッグの胸ぐらを掴み椅子から立たせると、壁に押し付け首を絞める。
健「ネロさん落ち着いて!そいつ殺しても意味ないって!」
健が慌ててネロを止めに入るが、健の腕力ではネロを止める事などできない。
ところが首を絞められてるウォードッグは、息ができず苦しいはずなのに、ネロを見ながら笑みを浮かべていた。
ウォードッグ「いいぞ・・・!怒りに身を任せて殺せ・・・!それで お前は・・・晴れて俺と同じ世界に足を踏み入れる・・・!」
そう言われハッとしたネロは、首を絞める手の力を緩めると、ウォードッグを椅子に座らせた。
だが その行動に、ウォードッグは どこか呆れていた。
ウォードッグ「甘いな」
ネロ「俺は お前とは違う」
ウォードッグ「確かにな。だが さっきのは良かったぞ。まさに背筋も凍る殺し屋の目だ。俺に殺しの極意を教わった時点で、お前は俺と同じ場所に片足を突っ込んでるも同じだ。その内 殺すのが楽しくて仕方なくなるぞ」
ネロ「お前と一緒にするな。俺は人間を殺すのを楽しんだりしない」
ウォードッグ「つまらん奴め」
するとウォードッグは、勝手に話を進めダイナーでの反省会を始めた。
ウォードッグ曰く、席に座る前からモリス夫妻に見抜かれていたと指摘する。口を開いた瞬間に戦慄を覚えさせなければ偽者だと疑われると。
モリス婦人は“思ったより若い人が来たから驚いてしまった”と言い訳していたが、その前に夫妻が戸惑って顔を見合っていたのは そういう事なのだろう。
ウォードッグ「俺の振りをするのではなく俺になれ」
ネロ「それなら もうやってる」
ウォードッグ「お前には人を殺そうとする覚悟がない。殺しの何たるかを聞いただけで俺になれると思い上がるな」
ネロ「だったら手っ取り早く、どうやれば お前になれるか教えろ!」
ウォードッグ「・・・正義のために殺すと思え」
ネロ「何・・・?」
すると突然、ウォードッグが子供の頃に、父親に球場へ連れてってもらった話を始めた。
何の関係もないような話にネロはウンザリし、話を遮ろうとしたが、ウォードッグは“いいから聞け”と話をやめない。
当時、両親はウォードッグがピーナッツアレルギーだと知らなかった。
ピーナッツ好きの父親に殻を割ってもらい、それを食べた。すると即座に反応が出て、強烈で死にかけた。アレルギーを分解する酵素が足りなかったためだ。
ウォードッグ「死んでも おかしくなかったが、免疫システムに命を救われた」
ネロ「その時に死んでりゃ、死なずに済んだ命もあっただろうな」
ウォードッグ「まだ分からないのか?俺達は免疫システムの表と裏だ。蝕む連中から病気を止めてる」
ネロ「人助けで殺してるって言いたいのか?」
ウォードッグ「その通りだ。モリス夫妻の話を聞いただろ?」
家族を奪われ、法の下で悪を裁こうとしても、その願いが叶わないなんて事は よくある話だ。
そうして求める正義が行われず、ただ悲しみに暮れながら生きるしかない人達の救いに自分はなってるとウォードッグは説く。
健「そういう人達が居るのは理解できる。だからって、ただ単純に殺す手段に走るのは認められないよ」
ネロ「・・・・・・・・・」
ウォードッグ「君達は檻に入れて英雄視され、俺は消して異常者となるが、やってる事は同じだ。ただ手段が違うってだけでな」
そこまで話してると突然、ウォードッグは不敵な笑みを浮かべてネロを見る。
ウォードッグ「君達は情報がなければ何も知らないままだが、俺は相手を見れば ある程度の事は判る」
ネロ「自分は超能力者とでも言いたいのか?」
ウォードッグ「まさに そうだ。ネロ、君は・・・両親を失ってるね。いや、捨てられたか?親の愛を知らずに生きてきたんだろ?」
ネロ「・・・・・・!」
ウォードッグ「赤の他人と家族ごっこして、幼い子供が親の愛を求めるように、今でも愛を求めてる。父親と よく一緒に居る間宮は、今頃なにをしてるんだろうな?今日は買い物の日か」
ウォードッグが どこまでDevil May Cry鎮守府やオリーブ財団の仲間の事を知ってるのか分からないが、1つだけ分かる事がある。こいつが間宮の名を口に出したという事は、間宮の事も殺そうとしてるという事だ。
また怒りが湧いたネロはウォードッグに掴み掛かるが、そのタイミングでネロの携帯が鳴った。電話の相手はステフだ。
ネロ「俺だ」
ステフ『オムナスに動きがあった。ウォードッグのレッスンは終わりよ、すぐに戻って』
電話を切って面会室から出ると、ネロはオムナスと接触する準備のためにオリーブ財団へと戻った。
・・・・・・
*街 19:17*
オムナスと直接 会って話を聞く事になったネロは、待ち合わせのビルへと向かった。
ネロの援護とオムナスのメンバーを捕まえるため、呉提督は武装してオリーブ財団の特殊部隊と共に、周囲のビルの屋上で待機する。
呉「いい?
『了解』
呉「各自 報告」
隊員『ビルに異常なし』
隊員『目標は確認できず』
隊員『
呉「このまま待機」
*ビル*
ネロがビルの中に入ると、ロビーには社内ゲートがあった。
ゲートは社員証でもある入館証が必要であり、傍には警備員が待機し、設置型の金属探知機もある。
ネロは当然のように突き進み、金属探知機を潜る。すると、金属探知機が鳴った。
警備員「待ってください」
警備員が声を掛けるが、ネロは無視してエレベーターのある奥へと向かっていく。
慌てて引き止めようとした警備員がネロの肩を掴むと、素早い近接格闘術で一瞬にして倒され、気絶した。
*街*
ネロ『~~~♪』
ネロが着けるイヤホン型無線機を通して聴こえてくる彼の口笛に、特殊部隊員達は怪訝そうに互いの顔を見合わせ、呉提督は顔を しかめていた。
呉「ウォードッグの影響 受け過ぎ・・・」
警備員をノックアウトした事など どうでもいいかのように、まるで この状況を楽しんでるかのように口笛を吹くネロに、どこまでウォードッグに感化されてしまったのかと心配になってくる。
*ビル*
エレベーターへと入ったネロは、指定されていた24階のボタンを押し上を目指す。
ネロ「エレベーターの中に入った」
呉『あんた ほんとにネロちゃん?』
ネロ「・・・どういう意味?」
呉『さっきの口笛、どういう事よ?まさか殺し屋になってる状況 楽しんでないでしょうね?』
呉提督も健と同じで、全てが終わった後に本当に役から抜け出せるか心配だった。それは ここには居ない夕張と刹那も同じだった。
ネロ「演技だよ。ウォードッグがやりそうな事をやってるだけだ。演技に集中したいから邪魔しないでくれ」
ネロとしてはウォードッグの真似事など不本意で、できる事ならやりたくない。だが この任務を成功させるには嫌でもやるしかない。
オムナスと会うまで張り詰めた緊張感の中で集中したかったが、呉提督の お喋りが止まらない。
呉『邪魔って あんた・・・!さっきの口笛、凄く怖かったわよ!まるで・・・』
ネロ「ウォードッグみたいだった?」
呉『そう!殺し屋の極意も学んで、あんた このまま殺し屋に転身したりしないわよね?』
ネロ「するかよ。俺は いつも通りだから心配しないでくれ」
呉『そう?なら良かったけど、24階に着くまで暇でしょ?お喋りでもして時間 潰す?』
ネロ「集中したいから黙っててくれ」
呉『ちょっと待って、まだ言いたい事ある』
ネロ「・・・・・・何だよ?」
止まらない呉提督の お喋りに、ネロはウンザリしながらも用件を訊くと、そちらは真面目な話だった。
待ち合わせの階にはオムナスのメンバーが居ないと おかしいのだが、外で待機する呉提督達からは24階に人影を確認できていなかった。
呉『様子が おかしい。罠かもしれない』
ネロ「・・・・・・それでも行くしかない」
引き返す判断もできたが、ネロは少し考え、このまま24階に行く事にした。
圧倒的に情報がない中で、これがオムナスに接触できる唯一のチャンスだ。
他にオムナスに接近する方法もなく、これが罠だったとしても、それを確認する意味でも行くしかなかった。
するとエレベーター内に、ピピピと何かの機械的な音が鳴る。それは ずっと鳴り続け、無線越しに呉提督にも聴こえていた。
呉『何の音?』
ネロ「・・・・・・・・・」
呉『ネロちゃん、報告しなさい!何の音?!』
ネロ「・・・分からない」
エレベーター内はネロの他に、何かある訳ではない。
音は若干くぐもった感じに聴こえるが、エレベーターの外から聴こえてくる感じでもない。つまりエレベーターの どこかには音の発信源があるという事だ。
ネロはエレベーター内の あちこちを触りながら音の出所を探り、手と視線が操作パネルで止まった。
背中からデビルブリンガーの腕を出し、爪で操作パネルの一部を抉るように外すと、中に着信音が鳴り続ける使い捨て携帯が隠されていた。
ネロ「電話だ・・・操作パネルの中に隠されてた。出てみる」
呉『嫌な予感がする。出ちゃ駄目よ!』
ステフ『いいえ、出なさい』
電話に出ようとするネロを呉提督が止めるが、無線にオリーブ財団で一連の会話を聞いていたステフが無線に割り込み、反対に出るように指示する。
だが呉提督は それに従わせるつもりはなかった。
呉『これから会おうってのに、操作パネルの中に携帯 隠すなんて普通じゃない!これは罠よ!』
ステフ『だからこそよ!オムナスが誰を狙ってるか、アーキテクトが何者なのか一切 情報がない!少しでも情報を集めるには電話に出るしかないの!』
呉『今回は従う気はないわよ!ネロちゃん、出ちゃ駄目よ!』
ステフ『オムナスを追い詰めるためよ!出なさい!』
耳元の無線でギャーギャー言い合う2人の会話を聞きながら、ネロは考えた末に電話に出る事を決めた。
それを聞き、呉提督とステフは静かになる。
ネロ「聞き逃すとマズいから、静かにしててくれよ」
通話中に無線機で喋られると、うるさくて邪魔になる。念のために釘を刺してから電話に出ると、男の声がした。
男『何をしてる?さっさと電話に出ろ!』
ネロ「操作パネルの中に隠しといて よく言う。取り出すのに手間が掛かった。次からは もっと楽な場所に仕込んでおくんだな」
男『最後に俺の仕事を受けたのは中東の時だったな』
ネロ「・・・・・・・・・」
ウォードッグとオムナスとの間でしか知らない話をしてきた事で、ネロは瞬時に これが試されていると気付いた。
だが返事を間違えれば、偽者だとバレて全てが水の泡となる。ネロは予め目を通して記憶した、ウォードッグの僅かばかりのデータから正しい答えを探す。
男『どうした?何か言ったら どうだ?』
ネロ「・・・・・・適当な事を言うな。最後に仕事したのはエルサルバドル以来だ」
今度は相手の男が沈黙し、正解なのか不正解なのか、ネロに妙な緊張が走る。
男『・・・どうやら本物みたいだな』
正解だったらしく、ネロは相手に気付かれないよう、静かに安堵の溜め息を吐く。
ネロ「そっちから呼び出しておいて俺を疑ってたのか?」
男『疑われても仕方ないだろ』
ネロ「どういう意味だ?」
男『お前は尾行されてた。武装した集団が、今お前が居るビルを囲んでる』
ネロ「そいつらは誰だ?」
男『分からん、正体不明だ。何にせよ、このまま お前に仕事を頼んでいいのか信用が揺らいでる』
ネロ「心配するな、そいつらは どうにかする。だから さっさと仕事の話をしろ」
男『・・・いいだろう』
ネロ「俺は どこの誰を殺せばいい?」
男『ターゲットの情報は その携帯に入ってる。そこにある住所に行き、どんな方法でもいいから奴を消せ』
ネロ「報酬の受け渡しは?」
男『正直に言うと、お前を信用していいか まだ疑ってる。報酬は本当に殺したか確認できてからだ。奴を殺したと判る証拠を その携帯で撮れ。写真を送って確認できたら、お前の仕事は終わりだ。1千万ドルも お前の物だ』
そう言って男は、一方的に電話を切った。
ネロは今から どうするべきか考える。
男が言っていた“武装した集団”は、どう考えても呉提督が率いるオリーブ財団の特殊部隊の事だろう。
オムナスに疑われ、近くに呉提督達が居る事にも気付かれてる今、オムナスに これ以上 疑われないようアーキテクトに接触するには、オリーブ財団と連携を取っていては無理だ。
ネロは耳から無線機を外して床に捨てると踏み潰し、エレベーターの非常停止ボタンを押した。
*街*
オリーブ財団でネロの乗ったエレベーターをモニターしていたステフは、24階に着く前にエレベーターが止まった事に気付き、呉提督に それを伝える。
呉「ネロちゃん?どうしたの?何でエレベーター止まったの?・・・・・・クソッ、無線が繋がらない!」
直後、ビルの地下駐車場から1台の車が飛び出し逃走しようとする。
オリーブ財団の特殊部隊員達は止めようと発砲するが・・・
呉「撃つな!!撃つんじゃない!!」
呉提督に制止され発砲を中止する。
銃弾の数発は当たっていたが、それでも車は止まらず走り去っていった。
呉「ステフ、車が1台 逃走した。たぶん状況から考えて、有り得ないかもしれないけど、ネロちゃんが捕まった」
ステフ『いいえ、信号機のカメラで確認できたのは、運転してたのはネロよ』
呉「携帯の信号 追跡できる?」
ステフ『信号はエレベーターの中から出てる。私達を撒くために、追跡できる物は壊したか置いていってるわ』
呉「何で私達を撒くのよ!?・・・まさか、役じゃなく本物になっちゃったのかも」
ステフ『彼を信じましょ。オムナスに私達の存在が気付かれてたのかもしれない。疑われないよう、きっと私達から離れる必要があったんだわ』
呉「でも どうするの?これじゃあネロちゃんのバックアップができない」
ステフ『彼は無鉄砲だけどバカじゃない。本当に必要なタイミングが来たら、私達に連絡してくるはずよ。それまで私達は待ちましょう』
呉「はいよ」
呉提督は ご立腹な様子で、特殊部隊員達と共にオリーブ財団へ撤収していく。
そしてビルから逃走したネロは、車を走らせながら携帯に入っていた住所へと向かうのだった。
あと1話で内通者のネタバラシの準備が整います。もうちょっとです。
次回も宜しく お願い致します!