Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

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372話です!どうぞ!


Mission372 紅牙流・邪心拳~禁忌の技~

*病院 3月2日 10:12*

 

この日、車椅子に乗った老人が退院し、病院から出てきた。

車椅子を押してもらいながら待たせていたリムジンまで行くと、同じデザインの真っ黒なチャイナ服を着た若者達に出迎えられた。

老人は拳法の達人で道場を経営しており、若者達は彼の門下生なのである。

そこに、真っ白なスーツを着た男が、花束を持って老人に近付いてきた。

門下生達は見知らぬ男を近付けさせまいと立ち塞がり、男も それで足を止めた。

 

老人「儂に何か用かな?」

 

男「有名な先生が今日が退院だと聞き、退院祝いに これを持ってきました」

 

武術好きのファンか何かだと思った老人は男を通させ、笑顔で花束を受け取る。

男も優しい笑みを浮かべていたが、突然その笑みが消え拳を繰り出してきた。

それを瞬時に見切った老人は拳を逸らし、車椅子から立ち上がり蹴りを繰り出すと、男の蹴りと ぶつかり両者は宙返りしながら距離を取る。

 

門下生「貴様、何者だ?!」

 

亮「俺は『紅牙流(こうがりゅう)邪心拳(じゃしんけん)』の使い手、『村雨(むらさめ) (りょう)』。お前を倒すために来た」

 

そう言って亮は、老人に指差す。

道場破りの類いだと思った門下生達は、退院したばかりの老人に手を出させまいとして亮に立ち向かっていくが、10人も居た門下生達は あっという間に倒され、痛みで起き上がる事もできなかった。

 

亮「そろそろ相手をしてもらいましょうか」

 

老人は こうなってしまえば致し方ないと思い、亮を相手に戦闘体勢に入る。

亮は黄金のコインを親指で弾き宙に飛ばすと、一気に老人に向かっていく。

どちらも素早い拳や蹴りを繰り出し一進一退の攻防を見せてるように思ったが、僅かな隙を狙い亮が無数の拳を繰り出し、老人は その身で全ての拳を受けてしまう。

亮は親指と人差し指で老人の喉を掴み、喉仏を砕く。老人は吐血して倒れると、動かなくなってしまった。

直後、老人の傍に亮が弾いたコインが落ちた。

亮が立ち去ると、やっと起きやがれるようになった門下生達が老人に駆け寄る。しかし、老人は既に生き絶えていた。

その後も柔道や空手、剣道、あらゆる武術で実力がある者が何者かに狙われ、殺されるという事件が頻発するのだった。

 

 

・・・・・・

 

*ラーメン屋 3月6日 12:49*

 

あるラーメン屋に、調理白衣を着た川内が働いていた。

人手が足りないと依頼が入り、川内は その依頼を引き受け このラーメン屋で働いていた。

川内が外にゴミ出しに行こうとしてると、店長に呼び止められた。

 

店長「川内ちゃん、それ終わったら出前 行ってきて」

 

川内「はーい!」

 

ラーメン屋は人手不足でありながら盛況で、川内は汗を流しながら仕事に忙殺されていた。調理もゴミ出しも配膳も、出前も全部やらなければならず目が回りそうだった。

 

 

・・・・・・

 

*街 13:00*

 

少しして川内は、出前箱を片手に自転車に乗り街を走っていた。

すると、2台の黒塗りの車と1台のバイクが、川内を通り過ぎてから路肩に止まった。

2台の車から黒いスーツの男達が何人も降り、バイクに乗っていた男がヘルメットを取ると、その男は亮だった。

何やら物々しい雰囲気に、不審に思った川内は自転車を止めて様子を見る。

 

男「なぜ我々を追ってくる?」

 

亮「お前らの看板を いただきに来た」

 

黒いスーツの男達は道場破りと知り、瞬く間に亮を相手に乱闘になる。

だが実力は亮が遥か上であり、黒いスーツの男達は全員 地面に倒れてしまった。

亮がトドメを刺そうとした その時・・・

 

川内「はいー!」

 

川内が飛び蹴りを喰らわせ亮を吹き飛ばす。

亮は起き上がり川内を見ると、訝しげな顔をした。

 

亮「(女・・・?)貴様、俺の邪魔をする気か?」

 

川内「何で こんな事するの?拳法は誰かを傷付けるためのものじゃない」

 

亮「・・・俺の邪魔をするな!」

 

亮は男達に向かっていくが、川内が それを阻止するために また蹴りを繰り出す。

すると、川内と亮が戦ってる隙に起き上がった男達は車に乗り込み、さっさと逃げてしまった。

亮は逃げられた事に舌打ちしながら顔を しかめ、川内も助けたのに そのまま逃げるとは思わず驚いていた。

川内が驚いてる隙に、亮は川内の胸に蹴りを喰らわせ吹き飛ばす。

川内が壁に叩き付けられ地に落ちると、亮はヘルメットを装着してバイクで走り去ってしまった。

 

川内「あいつ、何なんだよ・・・?うぐっ・・・!」

 

よく分からないまま取り残された川内は疑問だけが募るが、亮との戦いで怪我をし、痛みで呻くのだった。

 

 

・・・・・・

 

*Devil May Cry鎮守府 医務室 16:38*

 

怪我をしたままラーメン屋での仕事を終わらせた川内は、鎮守府に戻り医務室で明石の手当てを受けていた。

医務室には加賀と神通、那珂も一緒に居て、川内から怪我をした理由を聞いていた。

 

加賀「拳法の使い手?」

 

川内「うん、めっちゃ強かった」

 

加賀「艦娘の あなたが人間相手に苦戦するなんて・・・艤装 使わなかったの?」

 

川内「そりゃ艤装 使えば腕力も上がるけどさぁ、人間相手じゃ死なせちゃうかもしれないじゃん?」

 

神通「・・・もしかすると、最近 巷を騒がせてる道場破りは その人の仕業では?」

 

加賀「道場破り?」

 

神通「はい。武術の世界でも有名な実力者が何者かに襲われ、次々と命を落としてるんです」

 

那珂「川内ちゃん、無事で良かったね」

 

川内「無事っていうか、怪我してんだけど・・・」

 

明石「痛いなら入渠すればいいのに」

 

川内「これくらいなら入渠するまでもないよ。それに資材とかも勿体ないし」

 

加賀は妙な事に首を突っ込むなと川内に釘を刺し、一先ず この話は これで終わりとなったのだが、不意に医務室の扉がノックされた。

 

明石「あれ?また誰か怪我したかな?どうぞー」

 

入室の許可を出すと、扉を開けて入ってきたのは老人姿のアーロンだった。

 

『アーロン?』

 

加賀「何しに来たの?財団の方はいいの?」

 

アーロン「こちらの事は心配しなくていい。職員が皆 頑張ってくれてるからね。こっちには様子を見に来ただけなんだが、魔剣士の3人は どこかな?」

 

加賀「3人なら、それぞれ出張に出てるわ。しばらく戻らない予定だけど」

 

少し前に重要な案件の依頼が入り、そちらはダンテとネロ、バージルに任せ、3人は仕事で留守にしている。

3人で3つの仕事を手分けして、ダンテはアメリカ艦と、ネロは睦月型と、バージルは吹雪型と共に地方に向かっていた。

 

アーロン「・・・・・・そうか。それより話は聞かせてもらったよ」

 

アーロンは医務室の外から ずっと話を盗み聞きしていたようなのだが、川内の話から、道場破りをしてる男が何者なのか、凡その見当が付いていた。

 

川内「紅牙流・邪心拳の使い手?」

 

アーロン「話を聞く限り間違いないだろう。紅牙流・邪心拳は、拳法の中でも邪道とされる陰の技。暗殺する事に特化させた拳法で、表向きには知ってる者は少なく、禁忌とされる闇の流派だ」

 

神通「そんな相手が姉さんを・・・」

 

川内「そいつ、また どっかの道場の人間 襲うよね?だったら見付けて止めないと━━っ・・・!?イテテ・・・」

 

川内は腰掛けてたベッドから立ち上がろうとしたが、怪我が治った訳ではないので、少し動くだけで身体に痛みが走り、その場で蹲ってしまう。

 

明石「あーもう、だから言わんこっちゃない。そんなに痛いなら入渠すればいいのに」

 

川内「へ、平気 平気・・・」

 

アーロン「悪い事は言わない。その男とは関わるな」

 

川内「何で?」

 

アーロン「1人の拳士として次に その男と拳を交えれば、今度は君が命を落とす事になる」

 

川内「そんなの分かんないね!次は確実に私が勝つ」

 

アーロン「よせと言ってるんだ!」

 

急にアーロンが声を荒げたため、艦娘達は驚き身体がビクッとする。

アーロンが ここまで感情を露にして止めるという事は、邪心拳の使い手は相当 危険な人物なのだろう。

 

アーロン「君では奴に勝てない。死にたくなければ絶対に関わるな」

 

川内「・・・・・・・・・」

 

川内は不機嫌そうに医務室から出ていき、神通と那珂も付き添い一緒に出ていった。

 

加賀「さっきの話は本当?」

 

アーロン「誰も余計な手出しはしない事だ。ただの道場破りの人間では、狩りの対象にもならないのだからね。・・・・・・それにしても妙だな・・・」

 

急にアーロンが考え込み、不思議に思った明石が訊くと、紅牙流・邪心拳の使い手は途絶えてしまったはずだと言う。

アーロンが知る限り、最後の紅牙流・邪心拳の使い手は師弟の2人だけで、弟子は修行中の不慮の事故で数年前に行方不明となり、師は病で既に他界していた。

 

加賀「もしかして、その行方不明の弟子が、今になって道場破りしてるとか?」

 

アーロン「どうだろうね?生存は絶望的とされ、捜索も打ち切られた今となっては謎だよ」

 

 

*墓地*

 

夕暮れの墓地で、亮は墓参りに来ていた。それは紅牙流・邪心拳の、亮の師の墓だった。

花を添え線香を上げると、亮は目を瞑りながら手を合わせる。

亮の脳裏には、数年前の修行中だった頃の記憶が甦っていた。

 

 

“先生、助けてください!先生!”

 

 

目を開けた亮は墓参りを切り上げ帰ろうとすると、同じく墓参りに来た女性と鉢合わせ足を止めた。

 

女「亮・・・」

 

亮「美姫(みき)・・・」

 

彼女は亮の師の1人娘、『戸田 美姫(とだ みき)』。

亮が修行中の身だった頃は毎日のように会い、仲も良かったが、亮が不慮の事故で行方不明となって以降、1度も会う事はなかった。

その後 亮は、美姫の墓参りに付き合い墓地に留まってた。

 

美姫「まさか あなたが父さんの墓参りに来てくれるとは思わなかった。父さんは あなたに━━」

 

亮「その話はやめてくれ」

 

美姫「・・・亮、最近の道場破りは あなたなの?」

 

亮「・・・・・・・・・」

 

美姫「もう こんな事はやめて!また昔みたいに一緒に暮らそうよ!」

 

亮「俺は もう、昔とは違う」

 

そう言って、亮は皮の手袋をした左手を憎しみの眼で見詰め、右手で左腕を掴み感情を抑えようとする。

 

亮「この左手を失った あの日、お前が知る俺も一緒に死んだ。俺に残ったのは怒りと憎しみ、そして先生が教えてくれた武術だけだ」

 

美姫「亮・・・」

 

亮「それに、俺は先生を許した訳じゃない」

 

美姫「あなたが父さんを憎んでるのは分かってる。父さんがやった事は許される事じゃないから・・・。でも、他の人を傷付けるのは もうやめて!昔の優しかった亮に戻ってよ!」

 

美姫は感情が溢れ涙を流し、亮を引き止める意味でも亮に抱き付く。

亮は何の感情もない表情で少しの間そのままにしていたが、突然 美姫を身体から引き離した。

 

亮「もう俺と関わるな」

 

美姫「亮!」

 

立ち去ろうとする亮を止めようとしたが、美姫は顔を平手打ちされた。

 

亮「2度と俺の前に姿を現すな。また俺を止めようとしたら、次は お前を殺す」

 

昔の亮とは あまりにも違う様子に、美姫は頬を押さえながら どうする事もできず、ただ彼が去っていくのを見送るしかなかった。

 

 

・・・・・・

 

*街 3月7日 11:17*

 

翌日、川内は天龍と共に誰かを探して街を歩き回っていた。

 

天龍「おい、本気で その邪心拳の使い手 探すつもりなのか?関わるなって忠告されたんだろ?」

 

川内「前に小蘭(シャオラン)の おじいさんに拳法を教えてもらったんだけど、拳法は“人を生かすためのものだ”って教わった」

 

小蘭とは、Devil May Cry鎮守府が中国に行った時にジンとインという悪魔と戦い、その時に出会った虎の民の娘だ。

 

川内「そんな拳法を悪用してるのは許せない。絶対 見付けて止めてみせる」

 

天龍「まぁ何でもいいけどよ、乗り掛かった船だから手は貸してやるよ」

 

川内「ありがとう」

 

天龍「でもよぉ、ただ闇雲に探して見付かるか?」

 

川内「あいつは武術家ばかり狙ってる。実力のある有名な人が居る場所に行けば、間違いなく見付けられると思う」

 

その後2人は、有名な武術家が居るであろう場所を回るが、どこも2人が着いた時には遅く、既に道場破りが行われた後だった。

全員が死体となって倒れており、傍には黄金のコインが落ちていた。

 

 

・・・・・・

 

*屋敷 13:34*

 

ある有名な武術家が住む大きな屋敷の庭で、亮は その武術家とも戦っていた。

最初は互角に戦ってるように見えたが、徐々に実力差が見え始め、一方的に武術家が打撃を受けてしまう。

川内と天龍も、有名な武術家が住む屋敷を目指し歩いてると、その屋敷の方角から男性の悲鳴が聞こえてきた。

2人は まさかと思い顔を見合わせてから、急いで屋敷へと向かう。

庭には黒い胴着を来た男性が倒れており、川内と天龍が慌てて駆け寄る。

 

天龍「おい、大丈夫か!?」

 

川内「しっかり!」

 

吐血してる武術家は まだ意識があったが、程なくして事切れてしまった。

川内は武術家の傍に落ちてる黄金のコインに気付き、それを手に取る。

 

川内「まただ・・・」

 

川内は まだ居るかもしれないと思い辺りを見渡すと、白いスーツを着た男が立ち去っていく後ろ姿が見えた。

 

川内「天龍、ここは任せる!」

 

天龍「お、おい!?」

 

 

・・・・・・

 

*森林公園 13:55*

 

森林公園の木々の間を通り、どこかへ歩き去ろうとする亮を追い、川内が追い付いた。

 

川内「待て!」

 

亮「また あなたですか。何の用です?」

 

川内「拳法を人殺しに使うな!」

 

亮「ふっ、可笑しな事を言う。拳法は人を殺すためのものです。私は、拳法を正しく使ってるまでですよ」

 

川内「何ぃ・・・?!違う!拳法は人を生かすためにあるんだ!」

 

亮「人を生かす?馬鹿馬鹿しい。拳法は人殺しの道具です」

 

川内はできれば、対話で どうにか止めれたらと思っていた。だが この様子では、言葉だけでは止められそうにないと判断した。

 

川内「だったら、私が相手をしてやる!」

 

亮「あなたが?・・・いいでしょう。少しはできるようですし、今の内に潰しておくとしましょう」

 

亮は川内と戦いやすくするため、ジャケットを脱ぎ綺麗に畳むと地面に置いた。

 

川内「Devil May Cry鎮守府、軽巡洋艦 川内」

 

亮「紅牙流・邪心拳、村雨 亮」

 

互いに名乗ると、2人は拳法の構えを取る。

ゆっくりと間合いを計りながら動き、互いに一気に駆け出し拳を繰り出す。

蹴りも交え素早い攻防を繰り広げ、まだ始まってから それほど時間は経っていないが、とても長く感じる戦いだった。

亮の鍛え抜かれた攻撃は とても素早く、川内の顔に焦りが見えるほど鋭いものだった。

それでも川内は そのスピードに必死に食らい付き、どうにか攻撃を防ぎ受け流し、反撃に攻撃を繰り出す。

だが亮は川内の動きを見切り、同じく攻撃を防ぎ受け流し、反撃の拳を繰り出す。

やや川内が押され気味ではあったが、それでも一進一退の戦いとなっていた。

 

 

“艤装 使わなかったの?”

 

 

戦いの中で、ふと川内は鎮守府の医務室での会話を思い出した。

 

川内「(・・・・・・それでも私は!)」

 

艤装を装着すれば確かに人間を凌駕する力は発揮できるだろうが、神聖なる拳法を汚す この男には、艦娘としての力に頼らず倒したかった。

決意を固めた事で不思議と冷静になった川内は、亮の僅かな隙を狙い拳を突き出す。

亮は咄嗟に避けて頬に触れると、指先に血が付いていた。川内の拳を避けた時に僅かに掠れ、皮膚が裂けていた。

すると、亮の纏う雰囲気が突然 変わった。

 

亮「貴様・・・よくも この俺に血を流させたな・・・!」

 

川内「っ・・・!?」

 

豹変した事に川内は驚き、更に気を当てられ嫌な汗がブワッと噴き出る。

だが相手は待ってくれない。亮の方から攻撃を仕掛け、川内は それを避けて次々と来る拳や蹴りを受け流すが、さっきまでとは違い川内に打撃が入り始める。

 

亮「貴様だけは生かして帰さん!紅牙流奥義、『邪心風拳(じゃしんふうけん)』!」

 

邪心風拳━━相手に一切の隙を与えない程の速さで繰り出す拳を、連続で叩き込む紅牙流の殺人奥義だ。

川内は そのスピードに手も足も出せず、ただ殴られサンドバッグ状態になる。

最後に重い一撃を胸に喰らい、川内は吹き飛ぶ訳でもなく、吐血して力なく その場に倒れた。

邪心風拳を受けて生きていられる者は居ないため、亮は川内を殺して勝ったと思い、彼女から離れジャケットを拾うと、今度こそ立ち去り姿を消した。

その後、天龍が血を流して倒れる川内を見付け、鎮守府へと運んだ。

 

 

・・・・・・

 

*Devil May Cry鎮守府 医務室 15:25*

 

川内は邪心風拳を受けたが、生きていた。

入渠させたが それでも身体の中がボロボロで、身体の中に蓄積されたダメージに意識の戻らない川内は苦しみ、大量の汗を流していた。

魔界医学にも精通していたアーロンは まだ鎮守府に居たため、今は明石と共に川内の容態を診てくれてる。

加賀と天龍、神通、那珂は、黙って ずっと その様子を見ていた。

 

神通「・・・・・・あの、姉さんは大丈夫なんでしょうか?」

 

アーロン「生きてるのが不思議なくらいだ。艦娘の身体である事を感謝するんだね。でないと、技を受けた時に死んでたはずだ」

 

加賀「天龍、どうして邪心拳の使い手なんか探したの?」

 

天龍「だって川内が探すって聞かないしよぉ、ほっとけないだろ?」

 

加賀「だからって何で一緒に探すの?!関わらないって事で話は終わってたのに!」

 

天龍「だって俺達 艦娘だぞ。まさか人間相手に川内が こんなボロカスにされるとは思わなくて━━」

 

加賀「んん?!」

 

天龍「いや、ほんと ごめん・・・。けど・・・」

 

 

“前に小蘭の おじいさんに拳法を教えてもらったんだけど、拳法は人を生かすためのものだって教わった”

 

“そんな拳法を悪用してるのは許せない。絶対 見付けて止めてみせる”

 

 

天龍「あいつ そう言ってたんだよ。俺、何となく その気持ち分かるんだ・・・」

 

昔の天龍は、ただ深海棲艦と戦いたいという理由だけで刀を振るっていた。

 

 

“おい!俺を戦線離脱させるな!死ぬまで戦わせろよ!”

 

“死にたいのは勝手だけどなぁ、お前が死んで残された龍田は どうなる?”

 

 

だがダンテとの出会いを通じて、今は無闇に刃を振り翳すのではなく、誰かのために、自分が大切だと思うものを護るために刀を使いたいと思っている。

もし刀を悪用して ただ誰かを傷付けるためだけに使う者が現れたら、きっと自分は目を逸らす事はできず、川内のように止めようとすると天龍は思っていた。

天龍はダンテとバージルから剣術を教わっている。そのダンテとバージルも、魔剣士スパーダから剣術を教わった。魔剣士スパーダからダンテとバージルへ、そして天龍へと、剣を振るう意味は脈々と受け継がれている。

天龍から刀を振るう意味と固い意思を聞いた加賀は、咎めていいものか分からなくなり何も言えなくなった。

 

明石「それにしても、入渠までしたのにダメージが残ってるなんて、こんなの変ですよ・・・」

 

アーロン「邪心風拳のダメージは そんな簡単に消えるものではない」

 

邪心風拳を受けた者は死なずとも、そのダメージは しばらく残り全身を駆け回り、神経や筋肉、内蔵など体内をボロボロにしていく。それが痛みとなって表れ、今も川内を苦しめていた。

 

那珂「どうにか川内ちゃんを助けてあげられないの?」

 

アーロン「手は尽くそう。あとは・・・彼女の体力や精神力、気力次第だ」

 

 

・・・・・・

 

明石とアーロンが最善を尽くしてくれたが、それでも川内の意識は戻らず、身体中を駆け回る邪心風拳のダメージに魘され続けていた。

就寝時間も過ぎて皆が寝静まる中、川内の事は皆で交代しながら看病する事に決まり、今は那珂が医務室に残り、川内の額に浮かぶ汗を拭いていた。

 

那珂「川内ちゃん、大丈夫だからね・・・皆が傍に居るから・・・」

 

川内の意識を呼び覚ましたい一心で語り掛けるが、痛々しい姿で魘される姉を見て、那珂の目から涙が零れそうになる。

すると突然、那珂は両手で自分の両頬を叩いた。

 

那珂「(川内ちゃんが頑張ってるのに、泣いてなんかいられない!川内ちゃんが元気になるように、那珂ちゃん、頑張っちゃうんだから!)」

 

川内のためにも自分が弱気になってはいけないと気を引き締め直した那珂は、交代の時間が来るまで甲斐甲斐しく川内の看病を続けた。




次回の投稿は23日の予定です。
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