Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

419 / 551


409話です!どうぞ!


Mission409 蜂~首の痣~

*舞鶴鎮守府 艦娘寮・綾波型の部屋 5月31日 0:05*

 

就寝時間も過ぎた夜更け、舞鶴の漣は姉妹艦が居なくなった1人の部屋で、電気も点けずに窓から空を眺め、鼻歌を歌っていた。

元々 舞鶴鎮守府の綾波型は全員 揃っていたのだが、横須賀鎮守府を起点とした魔界化により、彼女を残して姉妹艦は悪魔に殺された。

舞鶴の漣が気付かないまま窓から蜂が入ってくると、蜂は臀部の針で彼女の首を刺した。

 

舞鶴漣「痛っ・・・!」

 

ビックリする程の痛みが首に走り、舞鶴の漣は咄嗟に首を押さえる。

だが次の瞬間、痛みで歪んでいた顔が笑みを浮かべる。

 

舞鶴漣「皆が来てくれる・・・嬉しいなぁ・・・」

 

その後 舞鶴の漣は、誰にも聞かれないよう小さく、狂ったように笑い続けるのだった。

そんな彼女の姿を、金色のデビルブリンガーの翼を広げて滞空する、白いネロが見ていた。

 

白ネロ「ひひっ・・・」

 

 

・・・・・・

 

*Devil May Cry鎮守府 執務室 6月1日 10:18*

 

翌日となったDevil May Cry鎮守府、その執務室ではダンテが執務椅子に座ってるのだが、何故かダンテの膝に漣が座り、溜め息を吐きながら暇そうにしていた。

 

ダンテ「・・・・・・漣」

 

漣「はい、何ですか ご主人様?」

 

ダンテ「何で俺の膝に座ってる?」

 

漣「聞いてくださいよ!ぼの達 舞鶴鎮守府に行っちゃって、漣 暇なんです!」

 

朧と曙、潮は、舞鶴の漣の事情を知ってるため、ルキフェルスとの戦いが終わった後から、時々 舞鶴鎮守府に様子を見に行っていた。そして今日は、その日なのである。

 

ダンテ「暇なら お前も行けばいいだろ」

 

漣「だって向こうの漣に必要なのは姉妹艦で、漣が来ても意味ないから来なくていいって曙が言うんですよ!酷くないですか?!」

 

ダンテ「だからって俺の膝に座る必要ないだろ」

 

漣「構ってくださいよ ご主人様。暇で漣 死んじゃうかもしれません」

 

ダンテ「何で俺が・・・」

 

すると勢い良く執務室の扉が開けられ、依頼書を持った鈴谷が入ってきた。

 

鈴谷「提督、私と一緒に仕事しよ!」

 

ダンテ「他の奴と行ってくれ。俺は休みだ」

 

鈴谷「無理 無理 無理 無理 無理!提督じゃないと駄目なの!」

 

鈴谷が これから受けようとしてる仕事は、モデルの仕事だった。

モデルと言っても、ファッションやグラビアという訳ではない。ブライダル関係の宣材写真を撮るため、被写体を募集する依頼だった。

鈴谷は自分が新婦役でウエディングドレスを着て、新郎役のダンテと一緒に写真を取り、他にダンテに好意を寄せてる艦娘にマウントを取ろうと画策していた。

 

鈴谷「だから一緒に来て!」

 

ダンテ「別に俺じゃなくてもいいだろ。男ならネロもバージルも居るし、詰所に行けば憲兵が選び放題だ」

 

鈴谷「だーかーらー!鈴谷は提督がいいの!」

 

ダンテ「何で俺がタキシード着なきゃいけないんだよ・・・」

 

漣「そうですよ。今日は漣が ご主人様と遊ぶんですから」

 

鈴谷「うっさい漣!」

 

漣「酷い!」

 

すると今度は、依頼書を持った金剛が執務室に突入してきた。

 

金剛「Hey!提督ぅ!私と一緒に、ブライダルのモデルの仕事に行きマショー!」

 

どういう訳か、これから金剛が受けようとしてる仕事は、鈴谷と同じ物だった。

 

「「あ・・・」」

 

「「(え・・・?)」」

 

金剛と鈴谷は互いの依頼書を見て固まり、ダンテと漣は この意味の分からない状況に顔が引き攣る。

 

鈴谷「何で金剛さんが私と同じ依頼書 持ってるんですか?!」

 

金剛「そっちこそ何でデース!?提督は私と一緒に仕事 行くんだヨ!」

 

鈴谷「提督は鈴谷が先に来たから鈴谷と行くんですぅー!」

 

金剛と鈴谷の、ダンテを巡る闘いという名の喧嘩が始まると、今度は依頼書を持った足柄が駆け込んできた。

 

足柄「提督、私と一緒にブライダルのモデルの仕事に行きませんか!?」

 

「「「あ・・・」」」

 

「「(え、えぇ・・・?)」」

 

金剛と鈴谷と足柄は互いの依頼書を見て固まり、ダンテと漣は更に顔を引き攣らせる。

 

足柄「ちょっとぉ!この仕事は私と提督が一緒に行くんだから!」

 

鈴谷「何で足柄まで その依頼書 持ってるのさ?!」

 

金剛「提督は私と一緒に行くんだヨ!」

 

ダンテを巡る闘いという名の喧嘩に足柄が加わると、今度は依頼書を持つ武蔵が駆け込んできた。

 

武蔵「提督、私と夫婦のモデルの仕事に行かないか!?」

 

「「「「あ・・・」」」」

 

「「(えぇ~・・・)」」

 

金剛と武蔵、鈴谷、足柄は互いの依頼書を見て固まり、ダンテと漣は戸惑うのではなく、呆れていた。

 

鈴谷「もう これ以上 増えんなし!」

 

金剛「何で武蔵まで それ持ってるデース!?」

 

足柄「武蔵さんは私より後に来たから辞退してください!」

 

武蔵「私は大和型 戦艦だぞ!どうせ私より弱いんだから私に譲るべきだろ!」

 

武蔵まで喧嘩に加わり執務室の何かしらが壊れていく中、今度は依頼書を持つアイオワが来た。

 

アイオワ「提督(アドミラル)、私とブライダルモデルに━━」

 

『あ・・・』

 

「「(え、えぇ~・・・)」」

 

アイオワまで喧嘩に加わり、更に執務室が壊れていく中で、今度は依頼書を持った長門が来た。

 

長門「て、提督!ブ、ブライダルのモデルの仕事があるのだが!こ、この・・・か、可愛いウエディングドレスを着てみたいから一緒に来てくれないだろうか!?///////」

 

『あ・・・』

 

「「(・・・・・・・・・)」」

 

金剛と長門、武蔵、アイオワ、鈴谷、足柄は互いの依頼書を見て固まり、ダンテと漣は繰り返し同じ事が続くため、もう何も思わなくなっていた。

長門まで喧嘩に加わり、執務室が そろそろマズい状態になってきたのだが、そこに依頼書を持った如月まで来た。

 

如月「司令官、私と一緒に結婚式━━」

 

『あ・・・』

 

鈴谷「鈴谷が先だったんだから全員 出てけー!!」

 

金剛「偽の依頼書で提督 誑かすんじゃないヨ!」

 

アイオワ「偽物は そっちでしょ!日本艦がウエディングドレス着たって見劣りするだけなんだから引っ込んでなさいよ!」

 

武蔵「ぶわっはっはっはっはっ!長門、貴様がウエディングドレスを着るなど似合わんにも程があるぞ!わっはっはっはっはっはっ!」

 

長門「何で お前は自分が笑える立場だと思ってるんだ?!お前の方こそ似合わんだろ!」

 

足柄「小娘がウエディングドレスなんて10年 早いのよ!」

 

如月「それ駆逐艦差別です!差別!さべーつ!!」

 

如月まで加わり、ラブ・ウォリアー達が大乱闘を繰り広げていく中で、ずっと黙っていた漣がカッと目を見開き、7人を見ながら口を開く。

 

漣「ご主人様は今日!漣と遊ぶんです!全員 帰ってください!」

 

漣が一石を投じた次の瞬間、正気ではない目をしたラブ・ウォリアー達の首がギチギチと動き、ダンテと漣の方に向く。

 

漣「(あ、マズいかも・・・)」

 

そう思った瞬間、ラブ・ウォリアー達が物凄い勢いで こちらに向かってきた。

 

漣「うわああああああっ!?」

 

ラブ・ウォリアー達は、邪魔だったのか漣を吹き飛ばしてダンテに群がる。

そして彼女達は、ダンテに誰と行くのか選択を迫る。

しかしダンテが何も答えないため、ラブ・ウォリアー達は また大乱闘に戻ってしまう。

 

 

*本館 2階*

 

その頃2つ下の階では、卯月が衣笠に捕まっていた。

 

衣笠「こら卯月!あんた また悪戯してるでしょ?!」

 

実は金剛達が同じ依頼書を持っていたのは、悪戯で卯月が会議室にあるコピー機で何枚も刷っていたからだ。本物の依頼書は、卯月が今も持っている。

 

衣笠「ん・・・?この依頼書って・・・」

 

卯月から取り上げた依頼書を見て、衣笠は嫌な予感がした。

ダンテに好意を寄せてる艦娘が、嘘でも結婚式ができるような内容の依頼書を見れば、彼女達が大人しくしてるはずがない。

 

衣笠「まさか、いま執務室 大変な事になってるんじゃ・・・!?」

 

そう思ったのも束の間、爆発音と共に本館が大きく揺れた。

 

 

*執務室*

 

何もかもが焼け焦げ吹き飛んだ執務室で、瓦礫の上にダンテと漣、艤装を装着したラブ・ウォリアー達が全員 倒れていた。

 

漣「何で漣ばっかり こんな目に・・・」

 

ダンテ「1番の被害者 俺だろ・・・」

 

 

*本館 2階*

 

衣笠「卯月、あんた こうなると分かってて、この依頼書ばら蒔いたわね?」

 

卯月「い、いや・・・そろそろ茶番が見たいかな~と思って、ちょっとしたサービス━━」

 

言い終わる前に、卯月は艤装を装着した衣笠に主砲を顔に押し当てられる。

 

衣笠「誰に?」

 

笑顔で問い質してくる衣笠に恐怖する卯月は、沈黙して何も答えられなかった。

 

 

・・・・・・

 

*舞鶴鎮守府 執務室 12:28*

 

Devil May Cry鎮守府で茶番劇が繰り広げられてるとは思ってない朧と曙、潮は舞鶴鎮守府に着き、執務室に居る舞鶴提督に挨拶していた。

 

舞鶴「いやぁ、気に掛けてくれて ありがとう」

 

潮「いえ、気にしないでください・・・」

 

曙「それで、あれから どう?」

 

曙に問われた舞鶴提督の顔が曇り、首を横に振る。

舞鶴の漣は姉妹艦を喪ってから鬱ぎ込んでしまい、秘書艦の仕事も儘ならない状態だった。

今日のように朧達が来た時は明るさを取り戻すのだが、帰った後は また元に戻ってしまっていた。

朧達は舞鶴の漣を元気付けようと、こうして何度か来ているのだが、彼女が立ち直るには相当な時間が掛かりそうだ。

 

舞鶴「お昼は食べたかい?」

 

朧「いえ、朝食だけ食べて そのままです」

 

舞鶴「じゃあ食堂に行っておいで。漣も居るだろうし、今回は泊まりって聞いてるから、あの娘も喜ぶよ」

 

曙「じゃあ、遠慮なく ご馳走になるわね」

 

潮「し、失礼します・・・」

 

朧達が執務室から出ていくのを見送ると、舞鶴提督は椅子に座り溜め息を吐いた。

 

舞鶴「(このままって訳にもいかないよなぁ・・・)」

 

朧達はDevil May Cry鎮守府の所属であるため、深海棲艦との戦争だけでなく悪魔との戦いもあり、忙しいはずだから いつまでも甘えてられないというのは、舞鶴提督も考えてはいた。

所属する艦娘の中で、漣のように姉妹艦を喪った艦娘は居るが、綾波型と違って1人になるという事はなかったため、残った姉妹で支え合ってるので精神的ダメージは幾分かマシだった。

舞鶴提督も、姉妹を全員 喪った自分の漣を どうにかしようとはしたが、どれも失敗に終わり、ズルズルと朧達に頼る事になってしまった。

 

舞鶴「メンタルケアとか勉強してこなかったのに、どうしたらいいんだよぉ・・・」

 

自分が どうにかしなければならないという思いと、朧達に頼らざるを得ない状況の板挟みで、舞鶴提督は頭を抱えて嘆くのだった。

 

 

*食堂*

 

食堂の席に座る舞鶴の漣は、昼食に手を付けずボーッと料理を見詰めていた。

 

曙「漣、なに食べてるの?」

 

そこに料理が載ったトレイを持つ朧達が来て、舞鶴の漣は彼女達を見てパァーッと明るい表情になる。

 

舞鶴漣「曙、皆!来てくれたんだ!今日はオムライスだよ」

 

曙「へー、美味しそうじゃない」

 

朧達も席に着くと、朧の肩からカニさんがテーブルに飛び乗り、舞鶴の漣の前まで行きブクブクと泡を吹く。

 

舞鶴漣「あっ、朧のカニさんも来てくれたんだ」

 

舞鶴の漣は、朧達が来てから初めて自分の昼食に手を付けた。

4人で談笑しながら食事を摂る途中、舞鶴の漣の次の言葉に、朧達は一瞬 顔を強張らせる事になる。

 

舞鶴漣「朧達、舞鶴鎮守府に転属しない?」

 

朧達はDevil May Cry鎮守府の所属として、悪魔とも戦わなければならない。それを放棄してまで、他の鎮守府に転属するつもりはなかった。

自分達に甘えさせるのではなく、舞鶴の漣が ちゃんと自分の意思で立ち直らなければならいというのも、いつまでも こんな事を続けていられないというのも朧達は自覚してるが、傷心の彼女に気を遣って、ズルズルと今の状態が続いてる事に焦りも感じていた。

 

朧「それは・・・」

 

潮「えっと・・・」

 

朧と潮は、舞鶴の漣からの提案を どう断ろうかと、言葉を探すように眼を泳がせるが、曙は違った。

 

曙「あんたも知ってるでしょ。私達は悪魔と戦わなきゃいけないの。今更 他の鎮守府に転属なんてできないわ」

 

舞鶴漣「何で!」

 

曙のストレートに断る言葉を聞き、舞鶴の漣は怒鳴り、握り拳をテーブルに叩き付ける。

そのせいで食堂が静まり返り、ハッとした彼女は静かに“ごめん”とだけ言い、俯いてしまう。

朧と潮は何も言えないまま、心配そうに彼女を見るだけだったが、その沈黙を破り曙が口を開く。

 

曙「漣、今日から数日、一緒に遊ぶんでしょ?悪魔とか深海棲艦とかは忘れて、今は楽しくしましょ」

 

舞鶴「う、うん!」

 

潮「じゃあ、早く食べて遊ばないとね」

 

朧「そうだね」

 

シュンとしてた舞鶴の漣に、曙の言葉で笑顔が戻り、朧と潮も それに同調し、4人は食事を再開するのだった。

 

 

・・・・・・

 

*入渠ドック 21:38*

 

夜、朧達は舞鶴の漣と一緒に、風呂のために入渠ドックに入って ゆっくりしながら長旅の疲れを癒していたのだが、曙は ふと横に居る舞鶴の漣を見て、彼女の首に浅黒い痣がある事に気付いた。

 

曙「漣、その首どうしたの?」

 

舞鶴漣「首?」

 

曙「首の後ろ辺り。痣みたいなのあるけど?」

 

舞鶴漣「あぁ、これ?ただの虫刺されだから気にしないで」

 

曙「・・・・・・そう・・・」

 

曙は1つ、疑問を感じた。入渠すれば傷などは治るはずで、いま風呂に入っていれば綺麗に消えるはずなのだ。

だが短く言葉を返した曙は、今は頭の隅に留めとくだけにして、深く気にしない事にした。

 

 

*Devil May Cry鎮守府 執務室*

 

同じ頃、Devil May Cry鎮守府の何もかもが滅茶苦茶になった執務室では、辛うじて原型を留めていたソファーに、ダンテが横になっていた。

そこに、ダンテを訪ねて香取が来た。ドアも吹き飛んでるため、ノックはない。

 

香取「提督、ここじゃなくて自分の部屋で横になったら どうですか?」

 

ダンテ「今日は いい風が吹いてる。ここでいい。お前こそ、どこぞの母親役みたいなこと言うために来たのか?」

 

香取「いいえ、ちょっと心配事がありまして」

 

ダンテ「心配事?・・・・・・執務室 吹き飛ばしたバカ数人が、鳳翔に折檻されてる以外にか?」

 

香取「私は それよりもだと思ってます」

 

ダンテ「・・・で、その心配事ってのは?」

 

香取「今、舞鶴鎮守府に行ってる綾波型3名の事です」

 

香取の心配事としては、ルキフェルスとの戦いの後、朧達は悪魔に姉妹艦を殺された舞鶴の漣を元気付けるために、よく舞鶴鎮守府に行っている。それはいい事だ。

だが艦娘は、建造やドロップで同じ顔、同じ声、同じ見た目、同じ名前の者が何人でも同時に存在する事ができる。香取が心配する理由は そこにある。

朧達は、舞鶴の漣を元気付けるためと思ってやってる事だが、必ずしも それが良い結果になるとは限らない。

舞鶴の漣が、ちゃんと“別の鎮守府の”朧達と認識していれば問題ないが、心の傷や喪失感を埋めるために、死んだ自分の姉妹艦と同一視していた場合、舞鶴の漣が悪い方向に精神安定する可能性がある。

 

香取「舞鶴鎮守府に行くのを、少し控えた方がいいかもしれません。姉妹艦だから、ずっと一緒に舞鶴鎮守府に居ようと言い出すかもしれません」

 

ダンテ「それを決めるのは あいつらだ。あいつらが決めた事なら、俺は止めはしねぇよ」

 

香取「そうじゃなくて、もし断った場合、舞鶴の漣の精神が不安定になるかもしれないんです」

 

舞鶴の漣が、朧達を死んだ自分の姉妹艦と同一視していた場合、朧達と一緒に居たいという気持ちが大きくなればなるほど、精神が不安定になった時に、また自分の元から姉妹艦が居なくなってしまうと強迫観念に駆られ、引き止めようとするだろう。

断られ、自分の望みを聞き入れてもらえないと理解すれば、次は どんな行動に出るか判らない。

武力を行使してでも朧達を繋ぎ止めようとするかもしれない。

それを止めようとする者に対しても、敵視して暴挙に出るかもしれない。

舞鶴の漣が姉妹艦の死を受け入れ、立ち直り精神が安定するまでは、彼女のトラウマを誘発させるかもしれない朧達は会わない方がいいと、香取は考えていた。

 

香取「噂では舞鶴の漣は、今も秘書艦の仕事もできず鬱ぎ込んでると聞きます。そんな状態で朧達が会うのは、あまり良くないと思われます」

 

ダンテ「考え過ぎじゃないのか?」

 

香取「人間の場合、同じ人は1人として居ません。取り戻せないからこそ、様々な方法で心の傷を癒やそうとして前に進む事ができます。ですが艦娘の場合は、精神が不安定な時に同じ容姿の姉妹を与えれば どうなるか・・・」

 

ダンテ「う~ん・・・」

 

香取「鬱病患者に、“頑張れ”という言葉を使ってはいけない事は ご存じですか?」

 

ダンテ「いや」

 

香取「言ってる方は元気付けようと、いい事を言ってるつもりでも、言われてる方は そうは思いません。できない事を、やりたくない事をやれと脅迫されてるように感じ、自分を苦しめる敵だと思うようになるんです。それで自殺したり、殺人事件を起こすケースも・・・」

 

ダンテ「朧達がやってる事が、それと同じって事か?」

 

香取「少し違いますが、例えで近そうなのを言うと そうです。ただ、危険なのは朧達ではなく、それ以外の者です」

 

朧達が一緒に居る事を断った場合、舞鶴の漣が どうにかして自分の傍に留めようとするかもしれない。そうなった場合、舞鶴提督や舞鶴の艦娘が止めようとするだろう。それを舞鶴の漣が自分の邪魔をする敵だと思い込めば、危害を加えるかもしれない。

鎮守府で ずっと一緒に過ごしてきた上官や仲間に危害を加えるなど、流石に そんな馬鹿な真似はしないだろうと思うかもしれないが、精神が不安定で最悪な状態の時に、理性で判断して行動するというのはできないだろう。

 

ダンテ「艦娘で そうなった実例はあるのか?」

 

香取「過去に何度か。もし舞鶴の提督が止めようとして逆に危害が加えられた場合、舞鶴の漣も解体されます」

 

ダンテ「・・・・・・・・・」

 

 

*舞鶴鎮守府 艦娘寮・綾波型の部屋*

 

舞鶴鎮守府に行ってる朧達は、艦娘寮の綾波型の部屋に泊めてもらう事になっていた。

風呂上がりに、彼女達は舞鶴の漣と ずっと お喋りしたり、枕投げをして楽しそうに騒いでいた。

すると、潮のスマホにメッセージが届き、気付いた潮が確認する。

 

潮「香取さんからだ」

 

曙「何だって?」

 

潮「こっちは問題ないか訊かれてる」

 

朧「ん~?何で香取さんが そんな心配してるんだろ?」

 

曙「さぁ?問題ないって送っときなさいよ」

 

潮「うん、そうする」

 

問題ない事を返信すると、また香取からメッセージが来た。

 

潮「最終日に、提督が迎えに行くから新幹線には乗らず、舞鶴鎮守府で待ってるようにだって」

 

曙「はぁ~?何で急にクソ提督 過保護になってるのよ?」

 

朧「何か、変だよね?」

 

曙「必要ないって送りなさい」

 

潮「う、うん、分かった・・・」

 

潮は返信するが、また来た香取のメッセージには一言だけが書かれていた。

それを見て、潮の顔が強張る。

 

潮「・・・・・・提督命令・・・」

 

曙「はい?」

 

潮「て、“提督命令”って来ちゃった・・・」

 

そう言いながら、潮は朧と曙にスマホの画面を向けて見せる。

それを見て、朧と曙は驚愕していた。

 

曙「何で!?」

 

朧「あたし達、こっちに来る前にマズい事しちゃったのかな・・・?」

 

曙「そんなの身に覚えないわよ!」

 

潮「でも、知らない内に提督と香取さん怒らせたのかも・・・」

 

曙「えっ、何で!?何でクソ提督 来るの!?」

 

Devil May Cry鎮守府ではダンテと香取が心配してるのだが、こっちは こっちで何か やらかしたかと心配になり、パニックになっていた。

ギャーギャー喚く朧達を、舞鶴の漣は無表情で静かに見詰めていた。

そして舞鶴鎮守府の上空では、また金色のデビルブリンガーの翼を広げて滞空する白いネロが、その様子を見ていた。

 

白ネロ「あの艦娘の醜い私情、どこまで育てられるか楽しみだなぁ♪」




次回も宜しく お願い致します!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。