433話です!どうぞ!
*山 ?月?日 8:12*
現代とは時間が切り離された荒廃した未来世界・・・その未来で生きる川内と五十鈴は、2人で山の中を歩いていた。ある艦娘を探して。
川内「噂の村って まだ先?」
五十鈴「ここを越えた先にあるはずよ」
2人は ある噂を耳にした。炎を操る女が、村を襲う悪魔を たった1人で消し飛ばしたと。
2人は その正体が嘗ての仲間で、この時代で“炎神”と呼ばれる艦娘、Devil May Cry鎮守府の摩耶であると気付いた。
世界が悪魔と深海棲艦に支配されてから、摩耶も共に戦っていたのだが、合わないという理由からレジスタンスを抜け、以降は行方知れずとなっていた。
川内と五十鈴は ある目的のために、摩耶の力を必要としていた。彼女が持つ炎を操る人工魔具の力を。だから彼女を探している。
彼女を探すには噂を辿るしかない。そのため川内と五十鈴は、噂になってる村を訪ね摩耶の足取りを追おうと、山の中を歩いてる訳だ。
川内「レジスタンス抜けてから何してるかと思ったら、まさか あちこちで悪魔に襲われてる村を救ってるとはね」
噂は他にもあり、以前から噂を辿って摩耶を探していたのだが、どれも空振りで彼女を見付けるには至っていなかった。
いま向かってる村は最新の噂の出所であるため、こうして足を運んでいる。
五十鈴「レジスタンスに居たら、できない事も多いからね」
この世界で生き残った人々は、全員がレジスタンスに入る訳ではない。
戦う力を持たぬ者は互いに助け合い、支え合い、独自に村を形成して誰にも見付からないよう、山の中で ひっそりと暮らしていたりもする。
村が襲われた場合、レジスタンスのテリトリー内なら救援は可能だが、遠く離れた地では救いの手を差し伸べる事はできないため、摩耶は そういう村を行く先々で助けてるようなのだ。
?「止まれ」
女の声がし、川内と五十鈴は足を止める。しかし、声の主の姿は見えない。
?「ここに何の用だ?」
五十鈴「私達は ある艦娘を探して、この先の村に用があるの」
?「ほう、そいつは どんな艦娘だ?」
川内「炎を操る威勢のいい女」
?「この先の村に行ったって、そんな女は見付からないと思うが?」
川内と五十鈴は互いの顔を見合わせてから、笑みを浮かべた。
五十鈴「そりゃ そうでしょうね」
川内「だって ここに居るし。でしょ、摩耶さん?」
川内が摩耶の名を口にすると、木の上から摩耶が飛び下りてきた。
摩耶は昔とは違い、長くなった髪を釵でアップにして纏めていた。
摩耶「久し振りだな、川内、五十鈴。んで、どうして あたしを探してる?」
五十鈴「あなたの力を貸してほしい」
摩耶「・・・アーロンの命令で来たのか?」
五十鈴「アーロンもレジスタンスも関係ない。今回は私と川内の独断で来た」
摩耶「・・・・・・そういう事なら歓迎してやる。詳しい話は あたしの小屋で聞いてやるよ。付いてこい」
・・・・・・
*摩耶の小屋 8:40*
摩耶の案内で拓けた場所に来ると、そこには小さな小屋が建っていた。
川内「ここに住んでるの?」
摩耶「まぁな。こんな所でも、住めば都だ。とりあえず入れよ」
小屋の中に入ると、この時代には珍しい旧時代の物が沢山 置かれていた。
少しして、摩耶が3人分の お茶を運んできた。
川内「レジスタンスを抜けてから、ずっと何してたの?」
摩耶「ん?・・・まぁ、放浪の旅をしながら あちこちでトラブルを解決したり、悪魔を ぶっ殺したりかな」
最近は ここに落ち着いたらしく、周辺の村で食糧を分けてもらう代わりに、襲撃してくる悪魔を撃退したりしてるそうだ。
五十鈴「レジスタンスに戻る気はないの?」
摩耶「五十鈴、お前も分かってるだろ。あたしがアーロンと合わないのは」
五十鈴「皆あなたを心配してた」
摩耶「皆には悪い事したと思ってるよ。けど、やっぱり あたしは、自由に好き勝手やる方が性に合ってる」
五十鈴「嘘ね」
川内「嘘だね」
摩耶「何で そこで嘘ってなるんだよ?!」
五十鈴「レジスタンスを抜けたのは、陸奥さんが理由でしょ?」
摩耶「・・・・・・・・・」
文明が崩壊した後、Devil May Cry鎮守府の陸奥も生き残りレジスタンスに所属していた。
陸奥も人工魔具を与えられた1人で、氷を操る悪魔フロストの爪を模した物を持っており、この未来世界では“氷神”と呼ばれていた。だが彼女は、自らが作り出した氷結世界に消えてしまった。
文明が崩壊してから今日までの間に、レジスタンスは悪魔側に大規模攻撃を仕掛けた事があった。
大掛かりな作戦であるため準備もしてきたが、魔界から無尽蔵に現れる悪魔の戦力に圧倒され、レジスタンスは次々と倒れていった。
撤退を余儀なくされたが退路も断たれ、レジスタンスは全滅の危機に陥った。
“摩耶、川内、五十鈴、あなた達なら突破できる!私が敵を食い止めるから、その間に撤退して!”
そこで陸奥は、1人で殿を務めた。
彼女は人工魔具の力を暴発させ、戦場となった戦闘区域全域を氷結世界へと変えた。悪魔と共に自らも、氷の世界へ封じる形で。
彼女の犠牲で、摩耶と川内、五十鈴は その戦いを生き延びる事ができ、今があるのだった。
摩耶は何度も陸奥を探しに行こうとしたが、その度にアーロンに止められた。陸奥が作り出した氷結世界は、今でも雪と氷に閉ざされており、何年 経とうが溶ける事がない。中心部に近付けば近付くほど、死に直結した。
摩耶「アーロンの言ってる事は理解できる。だが あのまま、冷たい氷の世界に1人で置いておくなんて可哀想じゃねぇか。せめて遺体だけでも見付けて、弔ってやるのが筋だろ・・・あたしらのために犠牲になったんだから・・・」
五十鈴「摩耶さんの気持ちも分かる。でも私達には、あの場所に踏み込めるだけの力がなかった」
摩耶「そんなこと分かってんだよ!」
そして摩耶はアーロンと仲違いしてレジスタンスを抜け、氷結世界から陸奥を連れ戻す方法を探して、放浪の旅に出たのだった。
摩耶「もう この話はやめようぜ。考えただけで腹が立ってくる」
川内と五十鈴は真剣な顔で互いを見ると、頷き合って摩耶に顔を向ける。
川内「もし、陸奥さんが生きてるとしたら?」
摩耶「・・・くだらねぇ冗談のつもりなら その口 閉じろ」
川内「冗談じゃなく本気だったら?」
摩耶「バカも休み休み言えよ。陸奥さんは死んだ」
五十鈴「そのはずだった。けど、事情が変わったの」
川内が過去に行って魔界兵器を破壊した事で、過去と この時代の時間が切り離された。その影響なのか、行方不明となっていた艦娘や死んだと思っていた艦娘が、最近になって次々と発見されるようになったのだ。
陸奥も生きてるという確固たる証拠がある訳ではなかったが、そう考える理由はあった。
五十鈴「あの場所は今も、雪と氷に覆われてる」
摩耶「陸奥さんが人工魔具 暴発させたからな」
五十鈴「今も溶けずに氷結させ続けてるのは何故?」
摩耶「そりゃ そんだけ人工魔具の力が強力だったからだろ。何が言いたいんだ?」
川内「最初は私達も そう思ってた。でも消えた艦娘が見付かるようになってから、別の可能性に気付いたの」
五十鈴「あの場所の雪と氷が溶けないのは、今も人工魔具が力を発動してるから。もし陸奥さんが生きていて、今も力を使い続けてるんだとしたら?」
摩耶「・・・・・・おいおい・・・突拍子もない話だぞ そりゃ・・・」
川内「少しは希望が見えた?」
摩耶「ちょっと待てよ!仮に そうだとして、何年も力を使い続けられるもんなのか!?」
五十鈴「普通は無理」
人工魔具は艦娘でも簡単に使えるように設計されているが、力を行使し続ければ身体への負担は大きい。
艦娘は艦娘である限り、自然死の寿命はないが、陸奥が何年も人工魔具の力を使い続けているとしたら、同時に命も削ってる可能性がある。陸奥が もし本当に生きていたとしても、このままでは どの道 死が待っている。
摩耶「陸奥さんが自分の意思で止める事は?」
五十鈴「ないでしょうね」
考えられる状況として、陸奥は自らも氷に封じており、生きていれば その意識も眠っている。レジスタンスが撤退できた事を知る由もなければ、気付く事もできない。
そして人工魔具は、陸奥が自分の意思で止めない限り、彼女の命が消える その時まで止まらないだろう。
摩耶「まさか お前らが来たのは・・・」
川内「陸奥さんを助けるために、手を貸してほしいの」
摩耶「・・・手を貸すのは構わない。けど問題は まだ残ってるだろ。あの極寒の地に どうやって入るんだ?入った瞬間に、あたしらまで氷の彫刻になっちまうぞ」
摩耶が指摘すると、川内と五十鈴は また互いの顔を見て、呆れたような笑みを浮かべた。
摩耶「・・・何だよ?」
川内「摩耶さん、レジスタンス抜けたから知らないだろうけど」
五十鈴「レジスタンスの装備、あの時より高性能になってるからね」
摩耶「・・・・・・つまり?」
川内「私と五十鈴が今 着てる戦闘服なら、あの場所に入っても耐えられる」
陸奥が消えた あの頃は まだ、アーロンが渡した戦闘服は艦娘の耐久力を少しばかり上げる程度であったが、それから改良に改良を加え、今では大体の場所には行けるだけの性能を備えている。
だからこそ、放射能が充満してるグールズのアジトに潜入して原子力エネルギーを盗み、ダンテを こちらの時代に呼ぶ事もできた。
摩耶「何だとぉー!?あたしの今までの苦労は いったい・・・?」
五十鈴「はい、じゃあ お着替えの時間で~す」
摩耶が意気消沈してると、五十鈴は摩耶用に作った戦闘服を荷物の中から取り出した。
そして川内と共に、摩耶の身ぐるみを剥がそうとしてくる。
摩耶「ちょっ、ちょっと待て!自分で着替える!やめろ!!」
川内「良いではないか、良いではないか」
五十鈴「照れるでない、照れるでない」
摩耶「やめろって言ってるだろクソッタレ共がぁー!!」
調子に乗る川内と五十鈴は、それぞれ顔面にパンチと蹴りを入れられ吹き飛ぶのだった。
川内「いや本気で殴る普通!?」
五十鈴「顔 蹴られるとかショックなんだけど!」
摩耶「うるせぇ!!お前らが悪い!」
・・・・・・
*街 ?月?日 10:40*
摩耶の小屋を出発してから数日、摩耶と川内、五十鈴は歩いて移動していた。今は荒廃した街の中を進んでいる。
道中では悪魔との遭遇もあり戦闘にもなったが、3人なら問題なかった。
ただ、黙って目的地に向かうだけでは退屈であったため、摩耶は過去のダンテについて聞かされていた。
摩耶「信じらんねぇな。過去が変わったのも そうだが、死んだ提督にも会えるなんて」
川内「相変わらずだったよ」
五十鈴「私は あまり話す機会はなかったら よく知らなかったけど、滅茶苦茶な人ではあったわね」
五十鈴の脳裏では、魔界兵器スキュルとの戦いでダンテを2度も死なせないため、弱点を探るために見てるだけにするよう言っていたにも拘わらず、ガン無視でダンテが戦闘に乱入していたのを思い出していた。
摩耶「くぅ~っ!こんな事ならレジスタンス抜けなきゃ良かったか?そしたら あたしも提督に会えただろうし」
川内「あれ~?摩耶さんって そんなに提督のこと好きだったっけ?」
摩耶「そういうのじゃねぇよ!そういうのじゃねぇけど・・・何か お前らだけズルいぞ!」
五十鈴「川内さん、どう思われますか?」
川内「これは俗に言う“ツンデレ”というやつですね。普段は興味がないようなツンツンした態度を取りながら、不意に乙女の顔になってデレるという恋愛における上級テクニックであり━━」
摩耶「お前ら何 言ってんだ、アホか!」
五十鈴「だって、ねぇ?」
川内「ねぇ?」
摩耶「・・・何だよ?」
川内「提督の名前 出してから顔ニヤけてるし」
五十鈴「顔 赤いし」
摩耶「は・・・?」
「「やっぱ恋する乙女じゃ~ん!」」
摩耶「えっ?えっ?えぇーっ!?///////」
摩耶は そんな馬鹿なと信じられず、両手で自分の顔を触ってワタワタする。
おちょくるのに満足した川内と五十鈴は、摩耶を放置して先に進んでしまった。
摩耶「いや置いてくなよ!」
怒りながらも、摩耶は駆け足で2人を追う。
だが、これで終わらせるつもりはなかった。ここから摩耶の反撃が始まる。
摩耶「まぁ、今の あたしを見れば、提督もイチコロだろうけどな」
川内「・・・・・・は?」
五十鈴「(おいおいおいおいおい!川内の目がイッちゃってるよ!)」
摩耶「提督は強い女の方が好きだろうし、あたしも昔と違って強いからな。それに成長してるし、大人な あたしに悩殺されっかもな~」
川内「なに言ってんの?バカじゃねぇの?艦娘だから何も変わんねぇだろ」
摩耶「少なくとも、お前よりは あたしの方が強いし、女としての身体の魅力も上だ」
川内「無駄な脂肪ぶら下げてるだけでしょ?」
摩耶「やんのかぁ~?!」
川内「やるかぁ~?!」
五十鈴「(何で こいつら、ダンテ提督が絡むと こうなるの・・・?)」
呆れた五十鈴は手で額を押さえ、溜め息を吐きながら嘆くのだった。
・・・・・・
喧嘩も そこそこに、荒廃した街を進んでると3人は ある場所で足を止めた。
その先は瓦礫が崩れて出来たトンネルとなっており、浸水して腰までの高さまで水位がある。
トンネル内は瓦礫の隙間から差す陽の光があるが、それでも全体的に見れば暗い。
摩耶「ここ通るのか?前は違っただろ?」
五十鈴「前のルートは悪魔が占拠してて通れないの。いま通れる安全なルートは ここだけ」
摩耶「迷惑な話だな」
川内「もしかして怖いの?」
摩耶「んな訳ねぇだろ燃やすぞ」
五十鈴「はいはい、言い合いは もう沢山だから行くわよ」
川内「ボケ」
摩耶「アホ」
五十鈴「やめなさい!」
濁った水の中に足を進め、3人は腰まで浸かりながら ゆっくり奥へと進む。
足下には苔も生えてるのか、滑りやすく かなり危険だ。
摩耶「さっきの冗談は兎も角、提督には会えるんだろ?」
五十鈴「・・・何で?」
摩耶「こっちに呼ぶんじゃないのか?」
五十鈴「今回は私達だけで どうにかなる見立てだから、彼は呼ばないわよ」
摩耶「はぁ!?やっぱり お前らだけズルいぞ!」
川内「おっきい声 出さないでって。もう敵のテリトリーに入ってるんだから」
摩耶「あ、悪い・・・」
五十鈴「先に説明もしたけど、彼を呼ぶにはエネルギーが必要なの」
摩耶「それは聞いたよ。けど少量のエネルギーで呼べるようになったんだろ?ビーコンか何かの お陰で」
五十鈴「それでも安心できる訳じゃない。安易に呼んで本当に必要な時に呼べないってなったら、それこそ本末転倒でしょ?」
摩耶「ちぇっ、やっぱり お前らばっかりじゃねぇか・・・」
川内「五十鈴、アレは?」
五十鈴「もうすぐ完成するわ」
摩耶「アレって何だよ?」
以前 川内と五十鈴は、感染者の群れが占拠する研究施設跡地に侵入した。
そこでウイルスに関するデータを入手し、旧時代に開発されていた事を知った。
それを過去のダンテに報せようとしたが、その話をするためだけに貴重なエネルギーを消費する訳にはいかなかった。
そこで五十鈴は、エネルギーの消費を最小限に抑えられるよう、こちらと通話できる通信機器の開発を急いでいた。
それを過去のダンテの元に送れば、いつでもとはいかないが、話をする事はできるようになる。
摩耶「帰ったら それ すぐ使わせてくれ」
五十鈴「だから まだ完成してないっての」
川内「それより、こんな状態で悪魔に襲われたら、私達ヤバいね」
奥に進めば進むほど、徐々に水深が深くなり、水が首の下まで来ていた。
摩耶「出ないこと祈ろうぜ」
五十鈴「そうならないよう、早く ここを抜けるわよ」
・・・・・・
*極寒地帯 13:17*
トンネルを抜けて出た先は、最早 別世界となっていた。幾つもの巨大な金属の残骸に囲まれており、辺り一面には雪が降り積もっていた。
ここは まだ端の方で人工魔具の影響は少ないが、雪があるという事は、陸奥が眠る場所に近付いてるという事でもある。
同時に ここは悪魔のテリトリーにもなっているため、ここからは おふざけもなしだ。
3人は周囲を警戒しながら、雪を踏み締め金属の残骸の間を進んでいく。
川内「この辺りなら まだ寒さは感じないね」
摩耶「寒くなったら あたしの炎で温めてやるよ」
川内「それは遠慮したいかな・・・」
摩耶「何で?」
川内「いや、消し炭にされそうで・・・」
摩耶「そんな事しねぇよぉ~」
とか言ってるが、摩耶が頗る悪い笑みを浮かべているので、どこまでが冗談で本音なのか判らなくなる。
五十鈴「シッ、もう悪魔のテリトリーだから真面目に。それに、摩耶さんも魔力 使うのは まだ控えて」
摩耶「どうしてだ?寒くなったら あたしの出番だろ?」
五十鈴が事前に入手した情報では、この極寒地帯を支配してる悪魔は かなり危険度が高く、戦闘になれば艦娘3人では絶対に勝てない見込みだった。だから陸奥を連れ戻すまでは、絶対に自分達が来た事はバレたくなかった。
摩耶「そんなヤバいのが居るのか」
五十鈴「私や川内は兎も角、この極寒地帯で摩耶さんの炎なんか使ったら すぐバレるから、極力 使わない方向で」
摩耶「だが、いざって時は出し惜しみできねぇぞ」
五十鈴「分かってる。その時は お願いする方針で」
警戒は怠らず進んでると、五十鈴が不意に足を止め、何かを探るようにキョロキョロと辺りを見渡す。
摩耶「どうした?」
五十鈴は自分の持つ人工魔具の力を使って、周囲の風の流れに ずっと意識を向けていた。そうする事で、何かが起きたり何かが接近してきた時に、すぐ察知できるように。
五十鈴「・・・・・・っ!?こっちに来て・・・!」
五十鈴は声を潜めながら川内と摩耶を呼び、3人で金属の壁際まで移動すると、人工魔具の剣を取り出し風で自分達を覆う。この風は空間を歪め、外からは摩耶達の姿を見えなくするものだった。
直後、複数の足音が聴こえてきた。その数は かなり多い。
少しすると、大量の悪魔が隊列を組んで歩いてきた。
その先頭に居る悪魔を見て、摩耶達は一気に冷や汗を噴き出し、ガタガタと震える。
隊列の先頭に居る悪魔の名は『ダーム』。まるで喪服を模したような黒いドレスを身に纏い、クリーム色の逆立った髪に骸骨の顔。そして手には、どんな者の命も刈り取れるような大きな鎌を持っている。
摩耶達は無意識に息を止めていた。本能が この悪魔は危険だと警鐘を鳴らし、戦えば確実に命を落とすと理解させ、呼吸さえも勘付かれる そんな気さえした。
するとダームが足を止めた事で、悪魔の隊列が止まる。
次の瞬間、摩耶達の正面に位置するダームが、摩耶達の方を見た。
「「「・・・・・・!?」」」
五十鈴「(そんな・・・気付かれた・・・!?)」
ダームは隊列を待たせ、1体で摩耶達の方に歩いていく。
川内「(こっちに来る・・・!)」
摩耶「(っ・・・!)」
向かってきたダームは、摩耶達を隠すために張った風の手前で止まった。あと1歩 踏み出せば、摩耶達の存在が完全に見付かってしまう。
摩耶達は、悍ましいオーラを放つダームの醜悪な顔を至近距離で見る事になり、見付かる恐怖も相まって目に涙を浮かべていた。
ダーム『フム・・・』
ダームは何やら考える素振りを見せると、隊列の方に引き返していく。だが これで安心という訳ではない。まだダームは そこに居るのだから。
ダーム『どうやら この地にネズミが入り込んだようだ!艦娘だ!探せ!』
ダームが指示を出すと、隊列を組む悪魔の半数が方々に散っていった。
残りは隊列を組んだまま、ダームと共に歩き去っていった。
近くから悪魔の気配が消えてから、五十鈴は自分達に纏う風を消して姿を見せる。その瞬間、3人は崩れ落ちるように地面に座り込んだ。
息を止めていたのもあり呼吸は乱れ、玉のような冷や汗を掻き、身体はガタガタと震えていた。
五十鈴「情報にはあったけど、あそこまでだなんて・・・」
川内「何だよ あいつ・・・何だよ あいつ・・・!?」
摩耶「ヤベェ・・・まだ身体の震えが止まらねぇ・・・」
あの悪魔に本能が警鐘を鳴らし、戦えば命がないと全身で理解した3人は、すぐに その場から動く事ができなかった。
摩耶「あたしら、いつか あんなのと戦わなきゃいけないのか・・・?」
川内「無理だよ・・・アレに勝てるとしたら・・・提督しか居ない・・・」
摩耶「今後 提督 呼ぶ理由できちまったな。嬉しいやら嬉しくないやら複雑な気分だが・・・」
五十鈴「それより、私達の存在には気付かれた。向こうは こっちを探してる。完全に見付かる前に、陸奥さんが居る場所に行かないと」
摩耶「だな」
摩耶達が来たのは気付かれたが、幸いなのは正確な位置までは知られなかった事だろう。
だが いつ見付かるかは判らない。それも時間の問題だろう。時間との勝負になったため、速やかに目的を遂行する必要がある。
摩耶達は急いで その場を後にし、五十鈴の風を読む力で悪魔を避けながら、先へと向かうのであった。
次回も宜しく お願い致します!