435話です!どうぞ!
荒廃した未来世界で、消えた陸奥を探して摩耶と川内、五十鈴は、悪魔が支配する極寒の地へと足を踏み入れた。
そこには上級悪魔ダームが、有象無象の悪魔を引き連れ陣を張っていた。
摩耶達は悪魔の目を掻い潜りながら、陸奥が居ると思われる凍り付いた湖へと突入した。
追ってくる悪魔を撃退しながら走り、摩耶達は吹雪の中に入る。
猛吹雪の中で体力を奪われていき、川内と五十鈴が順に倒れていく中、摩耶は2人を抱えながらも前へと進む。
限界が来た摩耶も倒れるが、偶然にも中心地に辿り着き、吹雪の中から抜け出していた。
暖かい陽の光を浴びながら目覚めた摩耶達は、そこで氷の中に眠る陸奥を見付ける。
陸奥を目覚めさせるために氷の山を砕いた3人だったが、その下の凍り付いた湖の氷も砕け巨大なクレパスが口を開き、深い穴へと落ちていってしまう。
そして氷の中で眠っていた陸奥が、目覚めるのだった。
*クレパス ?月?日 15:27*
「「「陸奥さん!!」」」
鮮明に聞こえる声に驚いた陸奥は、思わず目を開けた。そこには、摩耶と川内、五十鈴が こちらを見ていた。
川内「おほーっ!やっと こっち見た!」
五十鈴「全然 目を開けないから心配しましたよ」
摩耶「おはようさん!」
陸奥「うぉっ、ぉ・・・ぃえ・・・!?」
川内「陸奥さん声が!?」
摩耶「おいおい どうしちまったんだ!?」
五十鈴「・・・そっか。ずっと氷の中で眠ってたから、上手く声が出せないのね」
摩耶「治るのか!?」
五十鈴「うーん、見た感じ・・・時間が経てば元に戻ると思う」
川内「良かったぁ~・・・!」
陸奥「お・・・ひえ・・・い・・・あぐぁ・・・?」
陸奥はレジスタンスを撤退させた後、どうなったか知らない。だから摩耶達が ここに居る理由も分からず、驚き ずっと戸惑っていた。
すると摩耶達は、座り込んでる陸奥を一斉に抱き締めた。
川内「ごめんね陸奥さん!もう独りにしないから!陸奥さんが辛いなら、私達も一緒に背負う!だから、もう私達を置いていかないで!」
五十鈴「あなたの お陰で、レジスタンスは生き延びる事ができました。ありがとうございます。レジスタンスのリーダーとして約束します。あなた1人に任せないよう、強くなってみせます」
摩耶「もう1人で全部 抱えて勝手に諦めるんじゃねぇぞ!また氷の中に閉じ籠っても、あたしの炎で また引き摺り出してやるから覚悟しとけよ!」
自分を抱き締める摩耶達の確かな感触と温もりに、陸奥は全てを理解し涙を流した。
陸奥「(私は、護れたんだ・・・。この娘達は生きて、ずっと諦めずに戦ってたんだ・・・諦めず、私の事まで探して・・・!それなのに私は、自分だけが諦めて・・・。)お・・・えん、うぇ・・・ぐぉえ・・・うぇ・・・!」
五十鈴「謝らないでください。謝らないといけないのは私なのに・・・!」
川内「もう泣かないでよぉ~・・・!」
摩耶「川内 泣くんじゃねぇよ!」
川内「摩耶さんも泣いてるし!」
摩耶「バカ、これは鼻水だ!」
五十鈴「陸奥さん、おかえりなさい・・・!」
それから少しの間、4人は わんわん泣いた。
川内「クッソ寒いの思い出したら涙 止まったわ」
摩耶「お前 感動も何もねぇな・・・」
五十鈴「陸奥さんも見付かったし、あとは さっさと撤退するだけね」
そして摩耶と川内、五十鈴は自分達が落ちてきたクレパスの上を見た。出口までは遠く、かなり深い所まで落ちたのが分かる。
川内「どんだけ落ちてんだよ・・・」
五十鈴「私達、よく生きてたわね・・・」
川内「摩耶さん やり過ぎなんだよ」
摩耶「まさか下の氷まで割れるとは思わないだろ。底まで全部 凍ってるのに。まっ、あたしが どんだけ強いかの表れだな!」
川内「力加減できない ただの脳筋バカなんじゃねぇの?」ボソッ・・・
摩耶「あ?!お前なんか陸奥さんの氷 砕けなかったくせによ!」
川内「摩耶さんがトリを務めるって言うから、お膳立てして手加減してただけだし」
摩耶「お前 物は言いようだな!」
川内「摩耶さんこそ!」
五十鈴「あんたら、ここが まだ敵のテリトリーって分かってる?」
川内「ヤッベ、早く帰ろ?」
摩耶「だな。陸奥さん、立てるか?」
そう言われ陸奥は立ち上がろうとしたのだが、足に力が入らずペタンと また座り込んでしまった。
五十鈴「筋力も弱ってるみたいね。誰かが背負っていくしかない」
摩耶「じゃあ あたしが」
川内「・・・で、どうやって戻る?」
摩耶「そんなの決まってるだろ。身1つで登れ」
川内「それしかないよね、やっぱり・・・」
五十鈴「仕方ない、行きますか・・・」
川内「摩耶さん、陸奥さん落としちゃダメだからね?」
摩耶「落とす訳ねぇだろ、何のために ここまで来たと思ってんだ。いいから先に行け」
・・・・・・
氷の壁をクライミングで登る摩耶達は中腹まで来ていたのだが・・・。
川内「こんだけ登って まだ半分かよ!!」
五十鈴「私、筋肉キャラじゃないのに・・・!」
摩耶「お前ら根性が足りねぇんだよ。先 行っちまうぞー」
陸奥を背負いながらも、摩耶は余裕の表情で川内と五十鈴を追い越していく。
陸奥「あ・・・んぁえ」
「「頑張る!」」
陸奥に応援され、やる気だけは復活した川内と五十鈴だった。
・・・・・・
*極寒地帯 17:38*
クレパスから抜け出した摩耶達は、来た道を走って引き返していた。陸奥が目覚めた事で吹雪は止まり、悪魔も現れない事から戻りは楽だった。
もう少しで湖の外側に着こうとした その時、摩耶達は急停止して足を止める。直後、正面に有象無象の悪魔と1体の魔界兵器が現れた。
その魔界兵器は『バグズ』と呼ばれており、赤い目に青紫色のボディーを持ち、機械としての特徴を全面に出した人型ロボットのような見た目をしている。それもあり、近代兵器を武装している。
知能を有し会話も可能で、人をゾンビのような感染者に変えてしまうウイルスを撒き散らしてる元凶でもある。
量産型であるため、この1体を倒してもウイルスの被害が止まる訳ではない。
五十鈴「なるほど。全然 見ないと思ったら、ここで待ち伏せしてたか」
川内「私達が戻るには ここを通るしかないからね。悪魔が随分と知恵を付けたじゃん」
五十鈴「しかもバグズまで投入してくるとは、向こうは かなり本気のようね」
摩耶「バグズは あたしに任せろ。陸奥さん、ちょっと待っててくれ。すぐ片付けるから」
背中の陸奥を降ろし、摩耶達は人工魔具を手に、襲い掛かってくる悪魔に立ち向かう。川内と五十鈴が有象無象の悪魔を相手にし、摩耶が1人でバグズの相手をする。
摩耶「先手必勝だオラァ!!」
摩耶が炎を纏った籠手で殴り掛かるとバグズは腕で防ぐが、勢いを殺せず滑るように後退する。
距離が空いた事で、バグズは腕から機関砲を掃射し、背中のミサイルポッドから大量のミサイルを発射する。
摩耶が足下の氷を殴り、砕けた氷が氷塊となり宙に浮く。そこに弾丸とミサイルが着弾して爆発が起き、摩耶の姿が見えなくなる。
バグズ『所詮は艦娘・・・・・・ムッ!?』
バグズは摩耶を殺したと確信していたが、煙が晴れると無傷の摩耶が立っていた。
摩耶「バグズ如きが舐めてんじゃねぇぞクソが」
バグズは再び機関砲を掃射し、ミサイルを発射するが、摩耶に避けられ、籠手の炎で相殺されて防がれる。
そして避けながら接近した摩耶は、遠慮なくバグズを殴る。しかしバグズには傷1つ付きはしなかった。
摩耶「相変わらず無駄に硬い野郎だな」
バグズは攻守共に充実している。攻撃は当たらなければ意味は成さないが、ボディーが頑丈で倒すのは一苦労だった。
摩耶に対して遠距離攻撃は無駄だと判断したバグズは、両腕の機関砲を収納すると、バズソーノコギリを展開して接近戦に移行した。
摩耶は連続して迫る刃を避けるが、避け続けれないと判断して籠手を ぶつける。籠手と回転する刃が ぶつかり合い、ぶつかった状態で拮抗して火花が飛び散る。
このまま互いに動けぬ状況が続くかと思われたが、摩耶が不敵に笑った瞬間、籠手から炎が燃え上がる。その炎はバグズに燃え移り、バグズの全身が炎に包まれる。
摩耶「熱いの喰らいな!」
更にバグズを包む炎を利用して爆発を起こし、摩耶とバグズは共に炎に消える。
遅れて炎の中から摩耶が飛び出し後ろに飛び退く。摩耶は炎を操る人工魔具に護られてるため、自身の炎ではダメージにならない。
仕留めたかと思いながら燃え続ける炎を見詰めていると、炎の中から無傷のバグズが出てきた。
摩耶「チッ、あたしの炎 喰らってるんだから潰れろよ・・・」
そこに、有象無象の悪魔を倒した川内と五十鈴が加勢に入る。
バグズは川内と五十鈴を牽制するためミサイルを発射し、その隙を狙って摩耶が突撃するが、バグズはバズソーノコギリで籠手の打撃を防いでいく。
それでも3対1であるため、徐々にバグズが押し負けていく。
するとバグズは、自身の最大の強みとも言えるチューブの繋がった細い砲身を肩に展開する。それは弾丸やビームを撃つための物ではない。生物を感染者に変えるウイルスを散布するための物だ。
バグズがウイルスを噴射し、突撃しようと同時に駆け出していた摩耶と川内が浴びそうになる。
川内「いぃっ・・・!?」
摩耶「クソッ・・・!」
五十鈴「させない!」
五十鈴は自身が持つ剣を振って風を起こすと、噴射されたウイルスの向きを変え吹き飛ばす。
摩耶と川内は一旦 後ろに飛び退き、五十鈴と並ぶ。
川内「あっぶな~!」
摩耶「助かったぜ五十鈴!」
五十鈴「ウイルス兵器のこと忘れて突っ込み過ぎ!」
摩耶「離れて戦うにしても、あたしら3人の砲撃じゃ火力不足だぞ」
五十鈴「それでもやるしかない!」
バグズを倒した経験はあるのだが、その時はレジスタンスの支援があっての勝利だった。艦娘3人だけで相手するのは初めてで、正直どうなるか分からない。
バグズが再びウイルスを噴射し、五十鈴が風で押し返す。
その間に艤装を展開した摩耶と川内は砲撃し、同時に籠手から火球を発射し、小太刀から稲妻を放出して攻撃する。
するとバグズは、ウイルスの噴射力を増し、更に こちらに向かって歩いてくる。
五十鈴も負けじと風の勢いを増し、ウイルスだけでも吹き飛ばそうとするのだが、バグズが更に噴射力を増し、五十鈴の額に脂汗が浮かんでくる。
五十鈴「(このままじゃ、ウイルスを防げなくなる・・・!)」
摩耶「川内、もっと攻撃しろ!接近されたら あたしら終わりだぞ!」
川内「やってるよ!」
艦娘3人は五十鈴の起こす風で守られているが、ウイルスの噴射力が強く押され始めている。
五十鈴はウイルスを押し返すのに集中して身動きが取れず、摩耶と川内は五十鈴から離れられない。
攻撃を続けてるがバグズは意に介した様子もなく、接近しながらウイルスを噴射し続けている。このままでは、感染者の仲間入りは時間の問題だった。
その状況を、陸奥は悔しそうに見ていた。
陸奥「3人が諦めず戦ってるのに、私は見てるだけなの?また何もできないまま・・・)」
川内「止まれよ・・・!」
摩耶「あのウイルス・・・品切れはないのかよ・・・?!」
五十鈴「体内で無尽蔵に生成してるから・・・終わりはない・・・!」
陸奥「い・・・んぁ・・・!」
陸奥は、自身が持つ人工魔具を取り出し見詰めた。氷の爪に重なるように、陸奥の記憶にあるダンテと長門の顔が浮かぶと、陸奥は力強く頷いた。
五十鈴「陸奥、さん・・・!?」
バグズを どうにかしようと摩耶達が悪戦苦闘してると、ぎこちない足取りで両腕に人工魔具を装備した陸奥が、横に並び立った。
よく見てみると、筋力が弱って立てなかったはずの陸奥は倒れないよう、自身の足を凍結させて無理矢理 立っていた。
摩耶「陸奥さん!何やってんだよ!?」
陸奥は摩耶達にニコッと笑みを浮かべて頷くと、冷気を放出しながら五十鈴の起こす風より前に出て、噴射されるウイルスの中へと自ら歩いていく。
川内「陸奥さん!!」
ウイルスの感染力は状況によって様々で、大量に浴びれば即座に変異が起きるはずなのだが、陸奥はウイルスを浴びながらも平気な顔で前に進んでいた。
川内「何で、陸奥さん平気なの・・・?」
摩耶「五十鈴、何が どうなってる!?」
五十鈴も よく分からないまま陸奥を見ていたが、彼女の周囲の空気中で太陽の光を反射して、何かがキラキラしてる事に気付いた。
五十鈴「あれは・・・・・・まさかウイルス・・・?」
摩耶「どういう事だ?」
川内「分かるように説明してよ」
五十鈴「きっと陸奥さんは、空気中のウイルスを氷の粒の中に閉じ込めて、低温保存状態にして無効化してる」
「「はぁ!?」」
北極圏の凍土が融解する事で危惧されるのは、そこに眠るウイルスが解き放たれる事だ。
ウイルスは寒さに強く死滅する事はないが、氷の中で低温保存状態になっていれば、未知のウイルスが拡散される事はない。陸奥は擬似的に その状況を作り出し、バグズのウイルスを無効化していた。
摩耶「はは・・・そんなの、簡単にできる事じゃねぇぞ・・・」
川内「前は そんな事できなかったはずなのに・・・」
五十鈴「氷の中で眠って力を使い続けた事で、人工魔具との同調率が上がったのかも」
摩耶達は驚いていたが、陸奥を見て焦って狼狽えるのはバグズも一緒だった。
バグズ『お前、どうして俺のウイルスを浴びて平気でいられる!?』
陸奥「うぁ、た・・・し、が・・・かや、あず・・・・・・わた、しが・・・必ず・・・・・・皆を、護る!」
陸奥は両腕の氷の爪を突き出しブリザードを発生させ、低温保存状態のウイルスを全て吹き飛ばす。それにより、バグズのウイルスにより汚染されていた空気が とても綺麗になった。
更に一段と強力になって陸奥から放出された冷気が氷柱となって伸び、バグズに迫る。バグズは危険と判断し、氷柱が届かない範囲まで後ろに下がった。
摩耶「お、おい、陸奥さん・・・大丈夫なのかよ・・・?」
陸奥「こいつは私が相手をする。皆は休んでて」
陸奥の頼もしさに安心した摩耶達は、一斉に倒れたり座り込んでしまった。バグズを止めようとフルパワーで人工魔具を使い続けた事で、身体への負担が大きく限界が来ていた。
バグズ『お前、気に入らない。お前から殺す』
陸奥「いらっしゃい」
陸奥が投げキッスしながら挑発すると、バグズはミサイルポッドからミサイルを発射する。
陸奥は踊るように湖の氷の上を滑りながらバグズに向かっていき、氷の爪で飛来するミサイルに触れると、全てのミサイルが凍り付いて落ちた。
バグズは両腕に機関砲を展開して掃射するが、陸奥は大きな氷の壁を作り出し盾にする。
バグズ『壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ!』
バグズは撃ち続ければ、その内 氷の壁が壊れると考えていたが、氷の壁には罅すら入る様子がない。
氷の壁の後ろに居る陸奥は、暇そうに自身の髪の毛を触り弄っていた。
バグズが機関砲からバズソーノコギリに切り替えると、陸奥も氷の壁を消した。
バグズが迫りバズソーノコギリが振り下ろされるが、陸奥が そこに氷の爪を ぶつけると、バズソーノコギリが粉砕された。
バグズ『俺が壊れた!?』
粉砕された衝撃にバグズが怯んでると、いつの間にか後ろに回り込んでいた陸奥が氷の爪を背中に突き刺し、ミサイルポッドを破壊する。
バグズは至近距離から機関砲を撃とうとするが、氷の爪で軽く砲身に触れられた瞬間、凍り付いて弾丸が撃てなくなった。
バグズは残ったウイルス噴射を行おうとしたが、何故かウイルスが噴射されなかった。
バグズ『なぜ出ない!?』
陸奥「自分の背中、よく見てみなさい」
バグズは言われるまま後ろに首を回すと、ウイルス噴射するために繋がっていたチューブが切断されていた。陸奥はミサイルポッドを破壊する時に、序でに氷の爪でチューブを切って使えなくしていた。
しかも そこからウイルスが漏れないように、氷で切断面も塞いでいた。
バグズは予想外の損傷に、陸奥に背を向けて逃げ出した。
陸奥「・・・逃がさない」
陸奥が地面に氷の爪を突き刺すと、陸奥とバグズを囲うように無数の氷柱が発生し、壁となり逃げ道を塞ぐ。
逃げられなくなったバグズは陸奥に向き直ると、胸部を開き そこから大きな砲身が伸び、エネルギーの充填を始める。
それに合わせ、陸奥も冷気の魔力を集約し始めた。
その魔力の動きを、摩耶達は知っていた。陸奥が人工魔具を暴発させた時と同じ魔力の・・・。
五十鈴「この力は・・・!?陸奥さんやめてぇ!!」
摩耶「また同じこと繰り返すのかよ?!」
川内「ダメだよ陸奥さん!!」
陸奥「私を信じて。(大丈夫。今の私なら・・・)」
摩耶達に微かに微笑んだ陸奥を囲むように、冷気の魔力が渦巻いていく。
バグズのエネルギー充填が完了し、胸部の砲身から極太のレーザーが発射される。
そこに正面から、陸奥は両腕の氷の爪を突き出し、絶対零度のブリザードを発射する。
絶対零度ブリザードと極太レーザーが ぶつかり、眩い光に摩耶達は目を開けていられない。
すると極太レーザーが凍り付き始め、レーザーを辿るようにバグズに迫っていく。そして最後には、バグズの全身が凍り付き沈黙した。
陸奥は力を使い果たし、足を支えてた氷が消えると、力なく その場に倒れた。
「「「陸奥さん!!」」」
摩耶達はヘトヘトの身体で、氷の上を這うように陸奥の元に急ぐ。
辿り着くと、陸奥は達成感のある満足そうな笑みを浮かべていた。
摩耶「何だよ!また自爆覚悟でやってんのかと思ったぞ!心臓 止まるかと思った・・・」
摩耶達は陸奥が無事である事に安心し、4人で頭を突き合わせる形で仰向けに横になった。
陸奥「ほんとに?ちゃんと動いてるか確認してあげようか?」
摩耶「いい!ちゃんと動いてるよ!つーか、声 出るようになったな」
川内「最後の、暴発した力じゃないんですか?アレどうやったんです?」
五十鈴「以前 暴発させた力を一点に集中して撃ち出した、そうですよね?」
陸奥「不思議だけど、今の私ならできる気がしたの」
五十鈴「本当に凄い・・・お見事です」
摩耶「何にせよ、これで4神 復活だな」
陸奥「その呼ばれ方 恥ずかしいから嫌い」
川内「はぁ・・・帰る?」
五十鈴「そうね。まだヤバい悪魔 居るし、今の状態で遭遇したら苦労が無駄になっちゃう」
摩耶「じゃあ帰ろう。帰ったら・・・釣りしたいな」
1つ心配事がある。陸奥が目覚めた事で、この極寒地帯の雪と氷が溶け始めてしまうだろう。そうなれば、悪魔の軍勢は再び人間に対して侵攻を始める。
だが陸奥は置き土産に、自分が眠っていた時と同じ猛吹雪を発生させておいた。陸奥が離れるため永続ではないが、数年は残り続けるので時間稼ぎはできるとの事だった。
・・・・・・
しばらくして、艦娘を仕留めに行った配下の悪魔とバグズが戻らない事から、様子を見にダームは湖まで来た。
ダームの目の前には、凍り付いたバグズが立っている。
バグズに触れると、氷の微粒子となりサラサラと風に吹かれて消え去った。
・・・・・・
*レジスタンス拠点 ?月?日 14:23*
数日 掛け、陸奥達はレジスタンスの拠点へと戻ってきた。
拠点として利用してる地下鉄の入り口に立つ見張りの男性隊員2人は、川内と五十鈴を見て敬礼した。
隊員「おかえりなさい」
川内「ご苦労様」
五十鈴「私達が居ない間、問題なかったかしら?」
隊員「先程 保護した民間人が増えましたが、そちらは榛名さんが上手くやってくれています」
五十鈴「そう、分かったわ」
報告を聞き、五十鈴を先頭に4人は奥へと進む。
それを見送った男性隊員の1人は、陸奥と摩耶を見て首を傾げていた。
隊員「リーダーと川内さんが連れてた2人、誰だ?」
隊員「お前 知らないのか?リーダーと川内さんが“風神・雷神”って呼ばれてるように、あの2人は“炎神・氷神”と呼ばれてる摩耶さんと陸奥さんだ。纏めて“4神”なんて呼ばれてたりして有名なんだぞ」
隊員「マジ?強いの?」
隊員「そりゃ そうだろ。うちのリーダーと川内さんに並ぶ2人で、レジスタンス結成時のメンバーだ」
隊員「・・・・・・じゃあ、今まで どこ行ってたんだよ?」
隊員「色々あるんだよ、色々。俺達が気にする事じゃない」
隊員「そ、そうか・・・」
陸奥達がレジスタンスのメンバーや民間人が入り乱れる空間に着くと、摩耶を知る女性隊員達が駆け寄ってきた。
隊員「摩耶さん、帰ってきてくれたんですか!?」
摩耶「いや、ちょっと顔 出しただけだ。皆に挨拶したら帰る」
隊員「え~、もうちょっと居てくださいよ~」
摩耶「分かった分かった、ちょっとだけだぞ」
『やったー!』
摩耶は女性隊員達に囲まれながら、どこかに行ってしまった。
五十鈴「相変わらず女子に人気ね」
川内「姉御肌がいいんだってさ」
五十鈴「へぇ~」
すると今度は、陸奥を知る男性隊員達や民間人が駆け寄ってきた。
隊員「氷神の陸奥さんですよね!?」
陸奥「え、えぇ、私が陸奥だけど・・・」
隊員「自分、あなたのファンなんです!」
隊員「自分もです!前に見て綺麗だなと思って、ファンになりました!」
民間人「以前うちの娘を助けていただいて、お礼が言いたかったんです!」
陸奥「え、えっと・・・」
まさか自分の所に沢山の人が集まってくるとは思わず、陸奥は戸惑っていたのだが、川内と五十鈴は、血走った眼で陸奥に集まる連中を見ていた。
五十鈴「ねぇ、私達と話す時に あんな態度した事あったっけ?」
川内「ない、ないね」
五十鈴「そりゃ陸奥さんは美人だし?スタイルもいいけどさぁ!」
川内「私達も それなりに魅力があると思うんですけど!」
自分達の時とは違って鼻の下を伸ばす男共の態度に、川内と五十鈴は腸が煮え繰り返っていた。レジスタンスに不人気の風神・雷神・・・。
すると突然、どこからか悲鳴が上がった。咄嗟に振り向くと、感染者が隊員や民間人を襲っていた。
そこに、どこかへ行っていた摩耶が戻ってくる。
摩耶「どうした!?」
川内「どうして感染者が ここに・・・!?」
五十鈴「保護した民間人の中に紛れてたんだわ!」
民間人「いやーっ!!来ないでー!!」
隊員「変な冗談は よせよ・・・来るな・・・うわぁあああああ!!!」
感染者に襲われた者は感染者となり、その数を増やし混乱が拡がっていく。
摩耶「民間人は奥に避難しろ!」
五十鈴「訓練を受けた隊員は落ち着いて対処しなさい!相手は もう人間じゃない!」
指示を出すが、若い隊員達の動きは これまでの訓練を活かせず、パニックに陥り次々と襲われるだけだった。その理由は、感染者の見た目にあった。
通常 感染者は、瞳の色が白く濁り、体毛が全て抜け落ちる。しかし感染したばかりの者は、その見た目が大きく変わる事はない。
相手が仲間や知り合いの見た目のままであるため、若い隊員達は引き金を引くのを躊躇い犠牲となっていた。
陸奥「どうして こんな事に・・・」
摩耶「おい、このままじゃ瓦解するぞ!」
五十鈴「戦える者は私達と来なさい!」
摩耶と川内、五十鈴は人工魔具を手に、人々を襲う感染者の頭を斬り落とし、叩き潰していく。
陸奥も感染者の首を斬り落としながら、逃げ遅れた民間人の避難誘導に回った。
摩耶「知ってる顔だと、殺りにくいな・・・!」
熟練の隊員達と一緒に駅構内に居る感染者を倒していると、外から更に数の多い感染者の群れが来た。感染者は中に紛れていたのだけじゃなく、外からも押し寄せていた。
見張りに立っていた男性隊員2人も、既に犠牲となって群れの中に居る。
川内「日中なのに どこから こんな数が!?」
五十鈴「くっ・・・!」
五十鈴とて、さっきまで笑って話していた相手に刃を向けるのは心苦しい。
元の人間に戻せないかと治療法も探したが、感染者は時間と共に その身を変質させるため、効果的な方法は見付からなかった。
陸奥「皆、民間人の避難は終わったから手伝う!」
駆け付けた陸奥を見て、五十鈴は彼女が氷の中で眠っていた事を ふと思い出す。
陸奥は、冷たい氷の中に何年も閉じ込められた状態で なぜ生きていた?
五十鈴「コールドスリープ・・・?」
恐らく陸奥は、偶然にも低温保存状態で時が止まっていたため、氷の中に居ても生きていたのだろう。
バグズとの戦いも思い返してみると、ウイルスを低温保存状態にして封じ込めていた。
もし感染者にも通じるのであれば、殺さず助ける事ができるかもしれない。
五十鈴「川内、摩耶さん!殺すのは中止!」
川内「はい!?」
摩耶「こんな時に何 言ってんだ お前!?殺らなきゃ こっちが仲間入りだぞ!」
五十鈴「感染した人を救えるかもしれない!陸奥さんの力なら!」
陸奥「私!?」
五十鈴は、陸奥が眠っていた時の状況と、ウイルスを封じ込めていた状況から、感染者を治療できるかもしれない可能性を説く。
陸奥「でも、私にできるか どうか・・・」
陸奥は不安だった。どれも偶然そうなっていただけで、陸奥自身の意思で五十鈴の言う通りの結果にできるか自信はなかった。
五十鈴「陸奥さんならできます!纏めて凍らす事はできますか?!」
陸奥「1ヶ所に集めてくれたら可能よ!」
五十鈴「私と川内と摩耶さんで、感染者を外に誘導しながら1ヶ所に集める!陸奥さんの合図で退避!」
摩耶「おもしれぇ、乗ってやるよ!」
川内「了解!」
摩耶達は感染者を殺さず、上手く立ち回りながら1ヶ所に集めていく。
その間に、陸奥は魔力を溜める。
陸奥「いいわよ!」
陸奥の合図と共に摩耶達は後ろに飛び退き、陸奥が冷気を放ち感染者を氷の中に閉じ込める。
感染者を閉じ込めた氷に触れた陸奥は、感染者が氷の中で生きているか確める。
陸奥「・・・・・・うん、ちゃんと生きてる」
摩耶「触っただけで分かるのか?」
陸奥「長く氷の中に居たからかな?氷を通して、何となく伝わってくるの」
川内「これ どうすんの?」
コールドスリープ状態にしておけば、感染者の変異も初期段階のまま止めておけるだろう。その間に治療法を見付け、時が来たら元の人間に戻す。
五十鈴「それまでは、うちの貯蔵冷凍庫に保存ね。大きいから入るでしょ」
摩耶「ワクチン作るとか先は長いぞ~」
五十鈴「時間ならある。いつか、絶対 治してみせるわ」
陸奥がレジスタンスに戻ってきた事で、感染者を治療する希望が見えた。
ウイルスに関して過去のダンテに伝えたりと、まだまだやる事は多いが、彼女達なら上手くやれるだろう。
次に彼女達が動く時、過去と未来、切り離された2つの時代が再び交差する。
間に別の話を挟んだら、また この続きをやりたいと思います。
次回も宜しく お願い致します!