Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

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447話です!どうぞ!


Mission447 肝試し~副担任外しの始まり~

林間学校当日、ネロが参加費を集められなかった事で、明陽(めいよう)学苑2年4組の生徒だけ行けず、バスに置いてかれた。

その代わりとしてネロは、艦娘達に協力してもらう形で、生徒達に最高の夏休みをプレゼントするため、学校での合宿を決行する。

しかし その裏で、羽黒を標的とした副担任外しが動き始めていた。

 

 

*明陽学苑高校 8月7日 9:31*

 

試験対策授業を希望する女子生徒達を連れて、羽黒は校舎を歩いているのだが、その後ろでは生徒達が、スマホに来たメッセージを確認していた。そこには、“副担任外しを始める”とあった。

スマホを見た女子生徒は笑みを浮かべながら、後ろを歩く他の女子生徒2人に目配せする。

 

生徒「先生、あたし達ちょっと、お手洗い行ってきます」

 

羽黒は それを了承し、冬美(ふゆみ)とスマホを見ていた女子生徒と先に行く事にする。

階段を上がってると、後ろでクシャクシャに丸められた紙が落とされ、それを女子生徒が拾う。

 

生徒「何これ・・・?」

 

羽黒「どうしたの?」

 

生徒「先生は見ない方が・・・」

 

羽黒「ん?見せて」

 

羽黒が女子生徒の広げた紙を見ると、そこには『羽黒 教師 辞めろ!!!』と書かれていた。

驚いた羽黒は、思わず紙が落ちてきた上を見上げ、誰がやったのか確認しようと階段を駆け上がるが、そこには既に人の姿が無かった。

 

羽黒「・・・・・・・・・」

 

生徒「先生、大丈夫?」

 

羽黒「うん!さっ、授業 行こ」

 

 

*2年4組*

 

教室に入ると、羽黒は教壇を見て立ち止まった。教壇の上に、羽黒の遺影と花が添えられていた。

そこに2年4組のリーダー格である(かえで)潤羽(うるは)善之(よしゆき)、そして眼鏡の教師も来るのだが・・・。

 

教師「何ですか これは!?」

 

眼鏡の教師は怒鳴りながら、羽黒の視界に入らないよう教壇の上を片付ける。

善之は何かを察したのか楓を見るが、その楓は興味がないかのような素振りを見せていた。

 

教師「場所、変えましょうか?」

 

羽黒「私は、大丈夫ですから・・・授業やりましょう」

 

気丈に振る舞う羽黒は授業の準備を始め、次々に来る生徒達も席に座っていく。

 

 

・・・・・・

 

時間が過ぎていき夕方、羽黒と眼鏡の教師が、2つのグループに分かれた生徒達を それぞれ教えていると、羽黒のスマホに着信が入った。それは、副担任外し第2弾の始まりだった。

羽黒がスマホを取り出すと、画面には非通知で表示されていた。

 

教師「どうしました?」

 

羽黒「あぁ、いえ・・・」

 

切ってスマホを仕舞おうとしたが、また電話が掛かってきて着信音が鳴る。

 

生徒「先生、何か大事な用事かもしれないから、出ていいよ」

 

羽黒「ごめんね」

 

羽黒は その場で電話に出るが・・・

 

?『へへっ、羽黒ちゃんって、幾らでヤらせてくれるの?』

 

聞こえてきたのは知らない変態男の声だったため、すぐに電話を切った。

 

生徒「何だった?」

 

羽黒「・・・悪戯電話。でも向こう・・・私の名前 知ってた・・・」

 

だが これで終わるはずもなく、また非通知で電話が掛かってきた。

 

羽黒「また・・・」

 

教師「これは・・・!?大変ですよ羽黒先生!」

 

羽黒の個人情報が流出してるのかと思い至った眼鏡の教師はネットで軽く調べると、ネット掲示板に羽黒の写真と電話番号、そして あたかも、羽黒本人が男を誘ってるかのような文面があるのを見付けた。

 

 

・・・・・・

 

*教員室 18:01*

 

今日の試験対策授業は終了とし、羽黒と眼鏡の教師は教員室へ戻っていた。

羽黒は困惑と、見知らぬ男から電話が掛かってくる状況に恐怖していた。

眼鏡の教師は羽黒を気遣い、飲み物を彼女の座る席の机に置く。

 

教師「きっと2年4組の生徒の仕業です」

 

羽黒「・・・私、何か悪い事したんでしょうか・・・?」

 

教師「羽黒先生は何も悪くない。苛める側が悪いんです」

 

すると外から、複数人の楽しそうな声が聞こえてきた。

そこではネロが、試験対策授業に参加しなかった男子生徒達とフリスビーで遊んでいた。

 

羽黒「ネロ先生は あんなに生徒と打ち解けてるのに・・・」

 

教師「彼と比べても意味はないですよ」

 

羽黒「でも・・・私だって生徒を精一杯 理解してあげようと・・・!」

 

教師「教師と生徒は、友達ではありません。あまり踏み込まず、傷付かない距離を保つべきです。その方が、節度を持って、我々の理想の教育が為せる。だから、あなたが傷付く必要はないんです」

 

そう言って眼鏡の教師はソッと、羽黒が開いていた生徒のプロフィール帳を閉じた。

 

 

・・・・・・

 

*食堂 19:08*

 

夜は、艦娘達が作ったカレーが用意されていた。

因みに比叡だけ鎮守府に帰らされた。

生徒達はカレーを受け取り楽しそうに騒いでる中、2人の女子生徒もカレーを受け取ると、1人で落ち込んで座る羽黒を見る。

次の瞬間、カレーに何かの液体を数滴 入れ、羽黒が座る席に向かう。

 

生徒「元気 出して。私達は、先生の味方だから」

 

羽黒「ありがとう・・・」

 

生徒「食べよ」

 

羽黒が女子生徒2人の持ってきてくれたカレーを食べる裏で、生徒達の間ではメッセージアプリで、副担任外しの仕上げに入るというメッセージが やり取りされていた。

 

龍驤『えー、司会の龍驤や。それでは皆さん、本日のメインイベントを発表致します。それは・・・大肝試し大会やー!』

 

まさかの学校で、夏らしいイベントができると知り、生徒達のテンションが一気に上がり益々 盛り上がる。

 

龍驤『ルールは男女ペアで1周。気になる あの子を、誘っちゃいなー!』

 

生徒「楽しそう。先生も行こうよ」

 

羽黒も誘われるが教室での事もあり、ぎこちない笑みを返す事しかできなかった。

 

 

*教頭の自宅*

 

その頃 家へと帰宅していた教頭は、鍋で湯を沸かしてインスタントカレーの準備をしながら、妻にグチグチと文句を言われていた。

 

妻「今日から林間学校だって言ってたじゃない。だから ご飯1人分しか用意してなかったのよぉ」

 

そう言われた教頭は視線を動かすと、空になった出前の特上寿司の器を見てしまう。

自分が家に居る時には注文した事なんて1度もないため教頭は傷付いたが、気を取り直して家族サービスするため、新車でドライブに行かないかと誘う。

そこに、娘が帰ってきた。

 

娘「お父さん何で居るの?お風呂、先 入らないでね」

 

家の中に、教頭の居場所はなかった。

 

 

*明陽学苑高校*

 

そして明陽学苑では肝試しが始まり、輝男(てるお)遥香(はるか)がペアを組んで、ライトと地図を手にコースを回っていた。

すると植え込みでガサガサッと音がし、遥香が悲鳴を上げて輝男の腕に しがみ付き、輝男も植え込みの音と遥香の悲鳴のダブルで、ビクッとしてビビる。

 

輝男「ビ、ビビってんのかよ?しょうがないな」

 

遥香「ごめん・・・」

 

こちらは輝男がリードし、いい雰囲気である。

別の場所では、(のぼる)杏子(あんず)がペアを組み、提灯と地図を手にコースを回っていた。

昂は地図を見ながら先々と行き、杏子が置いてかれがちになっていたのだが、杏子が昂の袖を摘まんだ。

それによって昂は足を止めて互いに顔を見ると、何も言わず一緒に歩き出す。

こちらは ぎこちないが、初々しくて いい雰囲気である。

また別の場所では、明子(あきこ)晶人(あきと)がペアを組んでコースを回っていた。

 

明子「凄く怖いね」

 

日向「うがあああああ!!」

 

晶人「うおおおおおっ!?」

 

落武者の格好をした日向が いきなり現れ、ビックリした晶人が明子の後ろに隠れるのだが・・・

 

明子「頭に矢が刺さって可哀想。大丈夫ですか?」

 

どういう訳か明子はビビらず天然ボケを炸裂させ、日向は心配されてる事に唖然としていた。

また別の場所では、潤羽(うるは)が男子生徒と一緒に回っていたのだが・・・

 

摩耶「あー・・・」

 

フランケンシュタインの格好をした摩耶が現れ、男子生徒は悲鳴を上げて逃げ帰ったのだが、潤羽は全くビビらず、逆に持っていた提灯を近付けて摩耶の顔面を照らしてくる。

 

摩耶「ビビれよ」

 

また別の場所では、那智がドラキュラの格好をして男女ペアの生徒を脅かしていた。

次の生徒が来るまで待機するため、待機場所に居る白装束の幽霊の格好をした羽黒の元まで戻る。

那智はビビる生徒の反応に大満足していた。

 

那智「いや~、あの2人の顔を見たか?」

 

羽黒「・・・・・・・・・」

 

那智「おっ!羽黒も本格的だな。顔色の悪さまで作り込んで」

 

羽黒「あの、ごめんなさい・・・ちょっと、トイレ・・・」

 

羽黒の顔色の悪さはメイクではなく、腹痛に襲われ本当に体調が悪かった。

女子生徒2人が、羽黒のカレーに混入させた液体は下剤だった。それが今、このタイミングで効果が表れたのだ。

 

 

・・・・・・

 

羽黒「どうしたんだろ、急に・・・?」

 

急な腹痛に首を傾げながらも、トイレを済ませた羽黒は個室から出ようとするのだが、どういう訳か扉が開かなかった。何度 内側に引いても開かない。

上を見ると、ドアストッパーにロープが掛けられ扉が引けないようにされていた。

しかもロープの もう片方は、別の個室にある水道パイプに結ばれ、ギチギチに引っ張っている状態だ。こんな状態では、そう簡単には扉は開けられない。

すると、複数の女の笑う声が聞こえてきた。

 

羽黒「誰・・・?開けて!開けなさい!」

 

?「ねぇ、いつ教師 辞めてくれんのかなぁ?」

 

?「プロフィール帳とか作ってんでしょ?あたしらのためとか言って」

 

?「あんたがやってる、どっかで見たような、いい先生ごっこ、ウザいんだよ」

 

その最後の言葉に、羽黒はショックを受けて目を見開き、何も言えなくなる。

 

?「本っっっ気で あたし達のこと考えてるなら、教師 辞めてよ」

 

声から その正体に気付き、羽黒が確かめるように女子生徒の名を口にすると、上から水を ぶっ掛けられズブ濡れになる。

更に暴言の落書きがされた生徒のプロフィール帳まで投げ込まれ、羽黒の頭に当たり床に落ちる。

女子生徒達が高笑いしながら去っていき、失意のドン底に落とされた羽黒は泣きながら立ち尽くした。

女子生徒達と一緒に居た冬美も立ち去ろうとしたが、羽黒の嗚咽が聞こえ足を止め、振り返る。

 

冬美「全部・・・全部あんたのせい・・・」

 

羽黒の嗚咽を聞き悲痛な顔をするが、それでも冬美は、恨み節を言い残し走り去った。

 

 

・・・・・・

 

それから しばらくして肝試しが終わり、ネロは艦娘達と共に成功した事を労いながら校舎の中を歩いていた。

そこに、眼鏡の教師が慌てた様子で駆け寄ってきた。

 

教師「羽黒先生を見ませんでしたか?」

 

那智「そういえば羽黒、トイレに行くと言ったっきり戻ってこなかったな」

 

何か おかしいと思ったネロは皆と一緒に、羽黒が肝試しで待機していた場所から1番 近いトイレへと向かった。

トイレに突入すると、ピンと張られたロープと、床に転がる2つのバケツがあった。

ロープを外し眼鏡の教師が個室の扉を開けると、ズブ濡れで立ち尽くす羽黒が居た。

 

教師「羽黒先生!誰が こんな・・・」

 

ネロは、また生徒達が担任外し・担任苛めに動き出したのかと渋い顔を浮かべ、たまたま床に視線を向けると、赤と黒の珠で作られたブレスレットが落ちてるのを見付け、それを拾う。

 

 

“おい、冬美?おい!”

 

 

ネロにはブレスレットに見覚えがあった。泣いて走り去る冬美の手首に、同じ物があったのを思い出す。

 

教師「誰がやったのか教えてください。僕が懲らしめてやりますよ」

 

羽黒「・・・・・・もう・・・どうしたらいいか分からなくなっちゃいました・・・」

 

ネロ「・・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・』

 

教師「行きましょう。僕が送っていきます」

 

羽黒は また泣き出し、眼鏡の教師は羽黒を支えるように肩を抱き、トイレから出ていった。

 

妙高「羽黒・・・」

 

那智「いったい どうして、羽黒が こんな目に・・・!」

 

足柄「何なのよ、この学校・・・」

 

姉妹艦は羽黒の状況に困惑し、憤慨してる様子だったが、摩耶は冷静にネロを見ていた。

 

摩耶「どうするんだ?」

 

ネロ「・・・・・・・・・」

 

その頃 浮かない顔の冬美と笑ってる女子生徒3人は、校舎の中を歩きながら羽黒の事で話していた。

 

生徒「ねぇ、明日は羽黒に どうしてやろうかな?」

 

冬美「もう充分やったし!・・・これ以上は、いいんじゃないかな・・・?」

 

生徒「え?」

 

冬美「・・・・・・やり過ぎかなって、思って・・・」

 

生徒「なに言ってるの?」

 

生徒「あたしら あんたのためにやってんじゃん」

 

生徒「そうだよ、あと もうちょっとじゃん、ねぇ?」

 

冬美は元々 担任外しに積極的ではなく、やり慣れてない事もあり、これ以上 続ける事に良心が痛んでいた。しかしクラスメイト達は聞く耳を持たず、そのまま歩き去っていく。

冬美は このままでいいのか迷う顔を浮かべながらも、クラスメイト達を追って歩き出そうとする。

 

ネロ「やっぱ そういう事か」

 

だが どこからかネロの声がし、冬美は辺りを見渡し、ネロを見付けると驚いた顔をする。

ネロは冬美に歩み寄ると、腕を上げてトイレで拾ったブレスレットを見せる。

 

ネロ「これ、お前のだろ」

 

自分のブレスレットをネロが持ってる事に冬美は驚くが、ネロはブレスレットを投げ渡し、冬美は両手でキャッチする。

ネロは怒るより、冬美に対して呆れてる様子だった。

 

ネロ「何で こんな事してんだよ?」

 

冬美「・・・関係ないでしょ」

 

ネロ「羽黒先生に巧の事で何か言われたのか?」

 

冬美は走って その場から離れようとしたが、ネロの その指摘で思わず足を止めた。

 

ネロ「・・・図星か」

 

冬美「・・・・・・ほっといてよ!!そうやって人の気持ちに、一々 立ち入ってきてウザいんだよ!何にも知らないくせに、分かったような振りして、1人だけ いい気になって・・・羽黒も、あんたも!ほんとウザいんだよ!」

 

冬美の言葉を聞いたネロは、嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

ネロ「ちゃんと言えんじゃねぇかよ」

 

冬美「・・・・・・?」

 

ネロ「ちゃんと自分(テメェ)の口で言えんのに、何で最初っから そうやって言わねぇんだ?」

 

冬美「・・・・・・・・・」

 

ネロ「担任として、1つ教えとく。今、お前がやってる事は、人として1番ウゼェ事なんだよ」

 

冬美「・・・・・・あんたなんかに何が分かんのよ」

 

冬美は立ち去り、ネロは ただ、黙って その背中を見詰めていた。

 

 

・・・・・・

 

*Devil May Cry鎮守府近辺 22:23*

 

羽黒は眼鏡の教師に鎮守府の近くまで送ってもらい、ここまででいいと別れる事にする。

 

羽黒「ありがとうございました・・・」

 

教師「必ず僕が何とかします。心配しないでください」

 

羽黒「はい・・・」

 

教師「また明日」

 

羽黒は一礼してから背中を向けて歩き出し、眼鏡の教師も反対方向へと歩いていく。

 

 

・・・・・・

 

*マンション 23:03*

 

自宅へと戻った眼鏡の教師だったが、その様子が怪しいものへと変貌していた。

 

教師「許せない・・・彼女を ここまで苦しめるなんて」

 

眼鏡の教師は寝室へと入り電気を点けると、そこには壁や天井を埋め尽くす、羽黒の盗撮写真が貼られていた。

眼鏡の教師はパソコンで生徒名簿を見ながら、羽黒から聞いた実行犯の生徒にチェックを入れていく。

 

教師「羽黒の代わりに、僕が復讐してあげる」

 

眼鏡の教師は狂気に満ちた目で視線を動かすと、そこにはウエディングドレスが飾られていた。

この男、既に分かるように、羽黒に想いを寄せる とんでもないストーカーだったのだ。

 

 

・・・・・・

 

*Devil May Cry鎮守府 艦娘寮・妙高型の部屋 8月8日 9:12*

 

昨日の事で眠れずボーッとしていた羽黒は、気付けば座ったまま寝落ちしていた。

すると扉をノックする音が聴こえ、羽黒は目を覚ます。

姉妹艦の姿は無く、既に任務や仕事に出たようだ。

羽黒は立ち上がって扉を開けると、そこにはネロが居た。

 

羽黒「・・・・・・・・・」

 

ネロ「学校 行かないの?」

 

羽黒「・・・・・・もう学校に・・・行きたくないんです・・・」

 

ネロ「・・・・・・・・・」

 

羽黒「生徒が、怖くなっちゃって・・・」

 

ネロ「まぁ、サボっちまうか」

 

羽黒「・・・え・・・?」

 

ネロ「ん」

 

ずっと俯いてた羽黒が顔を上げると、ネロは黒い目隠しを差し出した。

 

 

・・・・・・

 

*??? 11:24*

 

訳も分からないままネロに どこかへ連れてこられた羽黒は、目隠しをしたまま横に寝かされていた。

 

ネロ「ふぅ・・・もう目隠し取っていいぜ」

 

言われるまま目隠しを取ると、羽黒の視界には晴れ渡る青空が広がっていた。

 

羽黒「え・・・?」

 

羽黒は起き上がり周囲を見渡すと、そこは公園の木々に囲まれた池で、ネロと羽黒は手漕ぎボートに乗っていた。

 

ネロ「いいだろ?俺も たまにムシャクシャした時は、こうやって空 眺めるんだよ。分かったぜ。女子達が羽黒を狙った理由。羽黒の言葉で傷付いたみたいだぜ。冬美が」

 

羽黒「えっ・・・!?冬美さんが・・・?」

 

羽黒には、生徒を傷付けるような事を言った覚えはなく、ネロの言った事に ただただ驚くしかなかった。

 

ネロ「ダチ傷付けられて許せなかったんだろうな、周りも」

 

羽黒「傷付けたって、私なにも・・・」

 

ネロ「冬美、自分より背の低い(たくみ)が好きなんだよ」

 

羽黒「・・・・・・・・・」

 

 

“男の人と付き合うのに・・・お互いの背の高さって、気にしますか?”

 

“良かった~。すっごい深刻な顔してたから、もっと凄い悩みかと思った”

 

“そんな事で悩まない”

 

 

羽黒「でも あれは!・・・巧君との事を知らなかったからで!」

 

ネロ「なんだよ、羽黒ご自慢のプロフィール帳には んな事も載ってなかったのかよ。だけど載ってる訳ねぇよなぁ。だって何も分かってねぇんだもん」

 

ネロの嫌味ったらしい言葉に、羽黒は このまま黙ってはいられなかった。

 

羽黒「私は!私なりに精一杯!冬美さんの悩みを聞いて・・・解消してあげようとしたんです!なのに そんな・・・・・・じゃあ私どうすればいいんですか?どう生徒と距離を取って接すればいいって言うんですか?!」

 

羽黒が そう問うが、ネロは何も言わず不機嫌そうに、彼女から視線を外した。

 

羽黒「こんなはずじゃなかったのに・・・・・・教師として潜入する任務なんて、引き受けなきゃ良かった・・・」

 

だが羽黒が最後に言った言葉が、完全にネロの怒りに火を点けた。

ネロはボートの上で立ち上がり羽黒の肩を掴むと、無理矢理 立たせて池に突き落とした。

 

羽黒「きゃあっ!」

 

突然の事に ちょっとしたパニックになる羽黒は必死に泳ぎ、ボートへと しがみ付く。

 

羽黒「ちょっ、何するんですか?!」

 

ネロ「目ぇ覚めたか?」

 

羽黒「はい?!」

 

ネロ「何が理解してあげようだ。そんな上から目線でなぁ、生徒達(あいつら)のマジな部分が解る訳ねぇだろうが!距離の取り方が分からない?そもそも距離って何だよ?そんなの必要か?鎮守府の皆と仲間になる時、そんなの考えた事あったか?仲間が一杯 居て、何か分かんねぇけど楽しくて、悩んで、そういうもんだろうが。俺達が そういう風にしてやらないで どうすんだよ!どんだけ考えたって分かんねぇならなぁ、自分(テメェ)全部 曝け出して飛び込んじまえ!!」

 

羽黒「・・・・・・・・・」

 

ネロ「小細工なんて要らねぇんだよ」

 

本当に大事だった事が何か気付かされた羽黒は、黙ってボートに しがみ付いたまま、決意を秘めた目に変わる。

 

 

・・・・・・

 

ボートから降りたネロと羽黒は、池を見渡せるベンチに座っていた。

 

ネロ「おい。おいおいおい」

 

肩にタオルを掛ける羽黒は、ネロが止めるのも聞かず缶ビールをグビグビ呑んでいた。

それを見て、ネロは呆れて顔を しかめる。

 

羽黒「私、昔よりマシになりましたけど、結構 臆病なんです。いきなり生徒に ぶつかるなんて・・・簡単に、できないんです!だから、こうして お酒の勢いを借りないと・・・」

 

そう言われたネロは、困ったように頭をポリポリと掻く。

 

羽黒「大丈夫です」

 

羽黒は決意を新たに、ベンチから立ち上がって歩き出し、ネロは本当に大丈夫なのかと心配しながら追い掛けるのだった。




次回も宜しく お願い致します!
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