Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

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450話です!どうぞ!


Mission450 洞窟トンネル~大人しい感染者~

ヨーロッパ方面で活動する宗教団体エリシオンが作った町、城塞都市エリシオン。その周辺ではゾンビに襲われると、ヨーロッパ諸国で奇妙な噂が流れていた。

オリーブ財団は噂の調査に動いていたが、噂を裏付けるように、エリシオンはヨーロッパ諸国にゾンビの調査を打診していた。しかしヨーロッパ諸国の政府は動かず、代わりにオリーブ財団が調査を引き受けた。

そしてステフは、ネロと五十鈴、明石、ニコ、(たける)を研究員として、城塞都市エリシオンに送り込むのだった。

 

 

*城塞都市エリシオン 8月13日 13:36*

 

城塞都市エリシオンで教皇を努めるジェミールに案内されながら、ネロ達は現在この町の状況を聞かされていた。

 

ジェミール「感染者が現れるようになったのは2週間ほど前の事でした」

 

城塞都市エリシオンの住民は時に、森で野草を採ったり動物を狩りに町の外に出る時がある。その時に住民が襲われたのが最初で、エリシオンもゾンビや感染者と呼ばれる存在が徘徊してる事を知る。

 

ジェミール「最初の頃は外の森にしか現れず、ここは町を囲む壁の お陰で感染者も入ってこれなかったため、町の中は安全でした」

 

だが1週間ほど前から、町の中でも感染者が現れるようになった。最初の内は極稀であったが、日が経つに連れて頻度が多くなってきていた。

 

健「僕も まさか、本物のゾンビが現実に居るとは思わなかったから、町の人達は もっと驚いただろうね」

 

ジェミール「ゾンビ・・・外界では そう呼ばれてるのですね」

 

五十鈴「そういえば、ここでは皆、“感染者”と呼んでるわね。どうして そう呼ぶのかしら?」

 

ジェミール「ゾンビとは死者が甦り、動く屍を指すからです。だがアレは違う」

 

明石「違うって、何か心当たりがあるんですか?」

 

ジェミール「我々は、ここで開発されていたウイルスが原因だと考えているのです」

 

ジェミールがオリーブ財団のサーバーに書き込まれていた通りの事を言い、ネロ達の顔が強張る。

しかも あっさりと自分達が原因であると明かした事に驚きもあった。

 

ジェミール「以前この町には、『ウォント』という男が居ました。彼は研究者でもあり、エリシオンの教義に従い、人を より高みへと進化させるため、薬による進化を目指しました」

 

ウォントは信仰に篤く、エリシオンの教義にある通り、人が高みへと行けるように目指す熱心な信徒でもあった。

ジェミールが教皇となった後、ウォントの研究室に行くと目を疑う光景があった。研究室には水色の液体が入ったカプセルがあり、その中でゾンビや感染者と呼ばれる姿に変わり果てた人間が保管されていた。ウォントは森に迷い込んだ外界の人間を拉致してウイルスを投与し、人体実験を行っていたのだ。

ジェミールは何をしてるのかと問い詰め、すぐに実験をやめるように言ったが、ウォントは人が高みへと行くためだとして、篤すぎる信仰心が故に頑なに拒否した。

ジェミールは教皇としての立場もあり、非道な行いを止めるためにウォントを町から追放した。

そして その後から、ゾンビや感染者と呼ばれる存在が森で現れるようになった。

 

ネロ「人を より高みへとだと?人を人でないものに無理矢理 変えて、それがアンタらの言う進化だってのか?!そんなものに何の意味がある?!」

 

明石「ネロさん落ち着いてください!」

 

ネロには この話が、まるで魔剣教団が帰天により悪魔の力を身体に宿し、天使になったと自惚れていた行いと同じように感じていた。

 

ジェミール「ウォントの非道な行いに気付けなかったのは私の責任です。ですが これだけは分かってください。エリシオンの教えでは、人が高みへ行くには正しい行いをして、邪な考えを持つ精神を清める事にあります。人が より高みへと進化するには、正しい心を持つ事だと考えています。決して人を怪物にする方法ではない。他のエリシオンの住民も同じです。彼らも正しい行いを心掛けていると、分かっていただきたい。悪いのは全て、気付く事もできず、止める事もできなかった この私なのです」

 

ネロ「・・・・・・・・・」

 

明石「ネロさん・・・」

 

ニコ「(あーあ、こりゃステフの人選ミスだな)」

 

ネロはジェミールの言い分を聞いても納得できない様子で、そんなネロを五十鈴と明石、健は心配そうに見ていた。

そしてニコは、ネロの反感を買うような場所に彼を行かせた事に呆れていた。

歩きながら話してると目的地に着いたのか、ジェミールが2人の騎士が警備する扉の前で止まった。

 

ジェミール「さぁ、こちらへ」

 

2人の騎士が扉を開けてジェミールが先に入り、ネロ達も その後に続く。

その部屋には、水色の液体が入ったカプセルが幾つかあり、中には感染者が保管されていた。それは間違いなく、先ほど聞いたウォントの研究室だった。

部屋には白衣を着た研究者らしき人間も何人か居て、何かしらの仕事をしていた。

 

五十鈴「ここで何やってるの?」

 

健「あそこに入ってるのゾンビだろ!?何で処分してないんだよ!?」

 

ジェミール「彼らは元は人間です。我々はウォントが残した研究データから、感染者を治療して元に戻す特効薬が作れないか調べてるのです。町にも感染者が現れるようになり、接触以外に感染経路があるのか、まだ突き止められてはいません。ワクチンを作るためにも、皆さんの お力を お借りしたいのです。ご心配なく。あそこに入ってるのは休眠状態ですので、襲ってきたり逃げ出したりする事はありません」

 

明石「休眠状態・・・どうやってるんですか?」

 

ジェミール「代謝を抑える事で、彼らは大人しくなるんですよ」

 

ウォントが残した研究記録の手記から、城塞都市エリシオンの周辺で咲く花に感染者の代謝を抑え、大人しくさせる効果があると書かれていた。

その花から成分を抽出して投与すると、感染者は満腹中枢を刺激されて満腹感を得られ、人を襲う必要がなくなり大人しくなるのだそうだ。

 

五十鈴「外では殺してたじゃない。治療するつもりなら、どうして捕獲しないの?」

 

ジェミール「現状では現実的ではないからです」

 

治療する気はあるが、ワクチンが出来るまで捕獲した感染者を閉じ込めておく場所が無い。ワクチンが出来るまでに、どれだけの数に膨れ上がるか分からないのだ。

捕獲するにしても、手間取ってる隙に噛まれたり引っ掻かれれば、感染者の仲間入りをする危険もあるため、治療できる目処が立たない間は、被害を食い止めるには殺すしかなかった。

 

ニコ「そのウォントってのは追放してから、どこに行ったんだ?」

 

ジェミール「詳しくは分かりません。ですが・・・」

 

ウォントを追放した後から感染者が現れるようになったのなら、時期的に考えてウォントの仕業であると予想される。

ウォントを追放してから その足取りは不明だが、城塞都市エリシオンの近くに潜伏してるなら、ジェミールにも思い当たる場所があった。

 

ジェミール「町から北東に向かった所に、洞窟トンネルがあります。その先は元々、我々エリシオンの教会があったのですが、城塞都市が完成してからは誰も足を運ばなくなったので、近くに身を隠すなら そこかと」

 

城塞都市を構える時に、町の中に新たな教会を作っていた。そのため わざわざ旧い教会に行く理由もないため、旧い教会は長年 放置されていた。

人が寄り付かなくなった場所であるため、隠れて何かを企み、実行に移すには都合のいい場所と言えるだろう。

ジェミールの話を聞き、五十鈴は違和感を感じていた。

 

五十鈴「(普通、人体実験するような危険人物を、追放だけして野放しにするかしら?何か変な感じ)」

 

ただエリシオンは、外界との接触を極力 避けてヒッソリと暮らし、独自の文化体制を築いている。そういう暮らしをしてると そういう風になるのかとも思い、五十鈴は自分が感じた違和感が正しいのか間違ってるのか、現状では判断が難しかった。

 

ネロ「俺とニコでトンネルに行ってみる。明石達は こっちを頼む」

 

「「「了解」」」

 

洞窟トンネルへはバンで行く事にし、ネロとニコだけで様子を見に行ってみる事にした。

明石は医学的な観点から感染者を調べ、何かを突き止められるかもしれないので、エリシオンの研究員を手伝うために残る。

五十鈴と健も残り、町を見て回ったりしながら情報収集する事にした。

すると、ジェミールが とんでもない頼み事をしてきた。もしウォントを見付けたら、殺してほしいと。

 

ネロ「なっ・・・!?」

 

明石「ちょっと待ってください!私達は調査をするために派遣された研究員です!」

 

ジェミール「分かっています」

 

五十鈴「・・・どうして私達に殺しを頼むの?」

 

ジェミール「あなた方は、ただの研究員ではないのでしょう?」

 

ジェミールの口にした予想としては、感染者が徘徊する危険な場所と知りながら、護衛も付けず ただの研究員だけが来るとは思えないそうだ。

全員が そうでないにしろ、誰かは荒事に対処する役目を持つ者が居ると判断していた。

そして、町に現れた感染者を臆する事なく倒したのが決め手となっていた。

それらの理由から、ジェミールはネロ達の事を ただの研究員ではなく、状況によっては殺しも視野に入れる事ができる、政府が送り込んだエージェントであると見ていた。

ネロ達は、目敏いジェミールに肯定も否定もせず沈黙したが、ジェミールは それを肯定として受け取り、満足そうな笑みを浮かべた。

 

五十鈴「1つ聞かせて」

 

ジェミール「何でしょう?」

 

五十鈴「追放したのに、何で今更ウォントを殺そうと考えたの?ウォントがやってる事を知った時に、自分達でできたはずでしょ」

 

ジェミール「私の読みが甘かったと、後悔してるからです」

 

ジェミールは当時、追放する事でウォントが研究を続けられなくなり、命を奪う事なく凶行を止められると考えていた。それでも感染者が現れ被害が増え、ジェミールは自分の判断は間違っていたと後悔した。

 

ジェミール「ウォントが罪人であっても、できるだけエリシオンの者には、同じ町の仲間だった者に手を下す汚れ仕事はさせたくないのです。ですが政府から送られてきた あなた方なら、そういう仕事もしてると見込んで お願いしたいのです」

 

ジェミールは改めてウォントの殺害を頼み、仕事があるからと その場を立ち去った。

ネロ達は殺害に関して何も返答しなかったが、一先ず調査を進めるために行動を開始するのだった。

 

 

 

・・・・・・

 

*森 15:25*

 

城塞都市エリシオンから出発したニコは、再び森に戻って北東に向かい、洞窟トンネルを目指してバンを走らせていた。

その道中、ニコは ずっと助手席に乗るネロが気になっていた。いや、煩わしく思っていた。

 

ニコ「おい。いつまで不機嫌でいるつもりだ?」

 

ネロ「別に不機嫌じゃない」

 

ニコ「嘘 下手かよ。あからさまに自分は不機嫌ですオーラ出しといて、ガキかよ」

 

ネロ「うるせぇな。あぁ、そうだよ、不機嫌だよ!」

 

ニコ「やっぱガキだな」

 

ネロ「黙って運転できないのか?」

 

ニコ「あぁ、できないね。黙ったら お前を ぶん殴りたくなる発作が出ちまう」

 

ネロ「じゃあ一生1人で喋っとけ!」

 

ニコ「言ったな?言質 取ったぞ?一生お前に話し掛けてノイローゼにしてやる」

 

ああ言えば こう言う態度のニコにネロは嘆き、手で顔を覆ってウンザリする。

 

ニコ「そんなに あの連中が気に入らないか?」

 

ネロ「あぁ、気に入らないね。変な思想 掲げてる奴に限って、碌な事しねぇんだ」

 

ニコ「魔剣教団みたいにか?」

 

ネロ「・・・・・・・・・」

 

ニコ「もう終わった事だろ。八つ当たりすんな」

 

ネロ「してねぇよ」

 

ニコ「してるだろうが!似てても同じとは限らないだろ。それに、今回やらかしたのはウォント1人だ。エリシオン自体が悪い訳じゃないって話だったじゃねぇか」

 

ネロ「それだって分からないだろ」

 

ニコ「あぁ、分かんないぞ」

 

ネロ「・・・・・・何だ それ?」

 

ニコ「何が?」

 

ネロ「お前 自分で言ってて“分かんない”って何だよ?」

 

ニコ「だからぁ、何も確定してないのに勝手に決め付けて、勝手に八つ当たりすんなって言ってんだ。怒って視野を狭くしてると、また大事なもの失くすぞ」

 

ネロ「“また”って何だ?」

 

ニコ「怒って突っ走った挙げ句、魔剣教団にキリエ拐われたんだろ?」

 

ネロ「嫌なこと思い出させんなよ・・・」

 

ニコ「それで何だっけ?ダンテに ぶっ飛ばされて頭 冷やしたんだったか?」

 

ネロ「ぶっ飛ばされてねぇ、後ろから突き飛ばされただけだ!」

 

ニコ「そして転んでピーピー泣いてたと」

 

ネロ「泣いてねぇ!」

 

過去の話を捏造しながらネロを怒らせた後、ニコは泣き真似をしながら更にネロを煽った。

 

ニコ「うえ~ん」

 

ネロ「うるさい」

 

ニコ「足 擦りむいて痛いよ~」

 

ネロ「ほんっとにムカつくな、お前」

 

ニコ「だから私が言いたいのは、今の調子じゃ また同じこと繰り返すぞって事だ」

 

ネロ「分かってるよ・・・」

 

ニコ「ほんとかよ?おっと、着いたみたいだな」

 

ニコは洞窟トンネルから少し離れた場所でバンを止めた。

ネロとニコは、フロントガラス越しで洞窟トンネルの方を見たまま沈黙する。洞窟トンネルの入り口で、20体近くの感染者の群れが集まり道を塞いでいた。

 

ネロ「ちょっと ここで待ってろ」

 

ネロはバンを降りると、洞窟トンネルの方へ歩いて向かった。

近くまで行き足を止めると、道を塞ぐ感染者は首輪がされ、鎖で繋がれていた。感染者が自分でやるとは思えないため、誰か人の手でされたのだろう。

城塞都市エリシオンに現れた感染者は、無差別に人を襲っていたが、不思議な事に ここに居る感染者は、ネロを見ても無視して襲ってくる様子がなかった。

ネロは踵を返して戻ると、バンに乗り込んだ。

 

ニコ「・・・倒さないのか?」

 

ネロ「町に戻る」

 

ニコ「何で?ここまで来たのに」

 

ネロ「あのバケモノ、鎖で繋がれてる。俺を見ても眼中にない感じだった」

 

ニコ「相当 不味そうに思われたんだろうな。私も気持ちは分かるぞ。お前の肉 硬そうだし」

 

ネロ「町に現れたのと様子が違い過ぎる。明石達が何か突き止めたかもしれないし、1度 情報共有しよう」

 

ニコ「先に教会の確認しててもいいんじゃないか?絶対 怪しいだろ」

 

ネロ「決め付けは良くないって言ったの お前だろ?」

 

ニコ「そうでした」

 

ニコはバンをバックさせようとシフトレバーを動かすが、洞窟トンネルの方で黒い人影があるのに気付いた。

 

ニコ「・・・おい」

 

ネロ「あぁ」

 

ネロとニコの視線の先には、ジェミールと同じ黒い神父のような格好をした男が立っていた。

男はネロ達に背を向け踵を返すと、襲われる事なく感染者の間を通り、洞窟トンネルの中に入り姿を消した。

 

ニコ「追うか戻るか」

 

ネロ「戻る。今は もっと情報が欲しい」

 

落ち着いてる様子のネロの言葉に従い、ニコはバンを走らせ一先ず、城塞都市エリシオンに引き返すのだった。

 

 

・・・・・・

 

*城塞都市エリシオン 16:47*

 

城塞都市エリシオンに戻ったネロとニコは、明石達と合流して建物の外で話していた。町中ではあるが、エリシオンが信用できるかは まだ確定ではないため、一先ずエリシオンの関係者が居る建物内より、外で密談する方が話を聞かれないと判断しての事だった。

 

ネロ「そっちは どうだった?」

 

明石「それが よく分からない事になってまして・・・」

 

明石はエリシオンの研究者を手伝いウイルスや感染者を調べていたのだが、感染者を大人しくさせるという花の成分が何なのか謎だった。厳密には、花自体も謎だった。

花の成分が どんな物か確認させてもらったそうなのだが、それが現在 地球上で確認されてる どの成分とも当て嵌まらなかった。学会で発表すれば大騒ぎになるレベルの話である。

現物の花が無く確認は取れてないが、どんな花なのか特徴を訊けば何か分かるかもと思い訊いてみたが、白い色をしてるという事だけで、名前を聞いても知らない名だった。

 

明石「花の現物を直接この目で確認しない事には、完全に手詰まりですね」

 

ネロ「五十鈴と健の方は どうだった?」

 

五十鈴「何の情報も得られなかった」

 

ネロ「・・・1つもか?」

 

五十鈴「1つも」

 

健「僕らの事バイ菌を見るような目で見て、住民は揃って口を閉ざすんだよね。近付いただけで離れていくし」

 

ここに来た時も そうだったが、城塞都市エリシオンに住む者は余所者であるネロ達を警戒してる様子だった。本当に余所者が嫌いなのか、何か隠して口を閉ざしてるのか、今の様子では現地の人々から情報を引き出すのは無理そうだった。

 

健「そっちは どうだったの?」

 

ネロとニコは、洞窟トンネルを感染者の群れが道を塞いでること、その感染者が鎖で繋がれ大人しくしていたこと、怪しい男が居たのを、向かった先で見た全てを話した。

 

五十鈴「鎖で繋がれてって・・・人の手で?」

 

ニコ「だろうな。ここで出た感染者とか見る限り、知能は低そうだし自分の意思で首輪してるとは思えないな」

 

明石「感染者に囲まれながらも襲われてないなんて、ひょっとしてネロさん達が見たのって・・・」

 

ネロ「ジェミールの話から考えても、きっと そいつが“ウォント”だろうな」

 

健「だね。洞窟トンネルの先に潜伏してるなら、居ても おかしくはないよ」

 

一先ず今日の調査は終わりとなるのだが、健の口から明日は どうするのか質問が出た。現状では町で情報を引き出すのは無理であるため、手懸かりが残ってるのは洞窟トンネルの方だけである。

 

ネロ「明日、全員で洞窟トンネルの調査に向かおう」

 

健「僕ここに残っていいかな?ゾンビ映画は好きだけど、本物に会うリスクは避けたいんだよね」

 

ニコ「男ならビビるな」

 

健「ビビるよ」

 

五十鈴「健の気持ちは理解できるけど、ここに1人で残るのもリスクがあるわよ」

 

ジェミールの話では、ウォント1人が諸悪の根源でエリシオンの人間は悪くないように言っていたが、それ自体が どこまで事実なのか不明だ。口で言うのは簡単だが、この件に どこまでエリシオンが関与してるのか まだハッキリとしていない。

それに余所者に敵意を向けるように警戒されてる中で、健が1人になったら何をされるか分かったものじゃない。1人で ここに残るより、皆で感染者が居る所に向かった方が、ネロも居て まだ安心だ。

 

健「いや、僕ゾンビに食われるくらいなら人に殺される方が まだマシだよ。そっちの方が楽に死ねそう」

 

ネロ「死なせないって」

 

明石「健君は私のサポートもしてもらうから、一緒に来てもらわないと困る」

 

健「僕がゾンビになったら、真っ先に皆を襲ってやる」

 

五十鈴「うわ、最低」

 

ネロ「ゾンビにさせないって」

 

明石「(やさぐれてるなぁ・・・)」

 

ニコ「私らと仕事するなら、お前も いい加減こういうのに慣れろよ」

 

健「無理だよ!」

 

その後も ずっと文句を言い続けていたが、4対1で健が勝てるはずもなく覆らないので、明日 一緒に行くのは決定事項だった。

ネロ達はジェミールが手配してくれていた宿に泊まり、寝るまで健は文句を言い続け、翌朝になっても うるさかった。

 

 

・・・・・・

 

*森 8月14日 10:12*

 

城塞都市エリシオンを出発したネロ達は、改めて洞窟トンネルの傍まで来ていた。

洞窟トンネルの入り口の前には相変わらず、鎖で繋がれた感染者の群れが占拠してるのだが、昨日と違い左右に分かれ、通れるようになっていた。

 

健「あんな間 通る気?」

 

明石「車に乗ったままなら大丈夫だよ」

 

健「ゾンビ映画 観た事ないの?車に乗ってても窓ガラス叩き割られて、結局 食われて終わるんだ」

 

五十鈴「健うるさい。女子の私達より怖がって どうするの?」

 

健「僕は皆と違って普通の人間なんだよ!化け物に襲われたら簡単に死ぬから怖いの当たり前だろ!危ない所に行きたくないんだよ!分析官なのに現場仕事って、職場環境 最悪だよ!」

 

ニコ「言っとくが、私も普通の人間だぞ」

 

ネロ「ニコ、あのトンネル通れそうか?」

 

ニコ「んあ~、微妙ってとこだな」

 

できれば感染者に接触するリスクは避けたいので、このままバンに乗ったまま通り抜けたいところではあるのだが、洞窟トンネルは それほど大きい訳ではなく、目測ではギリギリ通れるか通れないかという感じだった。

一先ず行けるか確認するため、ニコはバンを ゆっくり走らせ洞窟トンネルの前まで行く。

左右に蠢く感染者は こちらを認識してるように見ているが、襲ってこようとする気配はない。それ処か、興味がないかのように背を向けたり離れたりする。

 

ニコ「ダメだ、ギリ通れないな」

 

明石「サイドミラー畳んでも?」

 

ニコ「いや、それでもトンネルの方が狭いから意味ないな」

 

ネロ「・・・徒歩で試すか」

 

健「嘘だろ!?感染者の群れに身体1つで向かうなんて絶対に嫌だ!」

 

ニコ「とりあえずバックさせるぞ」

 

一旦バックして洞窟トンネルから離れ、感染者が襲ってこないか確かめるため、ネロが1人で近付いてみる事にする。

バンから降りたネロは ゆっくりと歩を進め、背中のレッドクイーンの柄に手を掛けながら感染者の動きに注意を向ける。

バンに残ってる五十鈴達は、心配そうに その様子を見ていた。

左右に並ぶ感染者に警戒するが、やはりネロを襲おうとする気配がない。そのままネロは、洞窟トンネルの前まで着いてしまった。

ネロは五十鈴達を呼ぶために、もう1度バンに戻る。

 

ネロ「行ける。このまま徒歩で行こう」

 

バンは ここに置いていく事にし、ネロ達は離れないよう固まった状態で歩き、再び洞窟トンネルに向かっていく。

五十鈴と明石、ニコ、健は、本当に襲ってこないか不安そうに感染者の間を通り、ネロも偶然だった時の事を考え、いつでもレッドクイーンを振るえるようにして進む。

すると やはり、襲われる事なく洞窟トンネルの前まで着く事ができた。

 

五十鈴「何で ここに居るのは襲ってこないのかしらね?」

 

明石「たぶん、エリシオンで研究されてるのと同じなんだと思う」

 

明石はエリシオンの研究者を手伝いながら、ウォントが残した研究資料も見せてもらっていたのだが、感染者は決まって肉を求めて動く習性があると書かれていた。

エリシオンで研究されていた感染者は、この付近で群生する花の成分で大人しくされていたが、感染者が自ら花を摂取するとは考えにくい。鎖で繋がれてる事からも、何者かの手で大人しくさせられてるからと考えるべきだろう。

 

ニコ「やってるのはウォントって奴だろうな」

 

ネロ「まぁ、今は奴に会って話を聞いてからだな」

 

ジェミールの話や状況から、全てがウォントと線で繋げる事ができる。間違いなく全てのカギは、ウォントが握っている。

感染者の事は今は気にせず洞窟トンネルに入り、奥へと進むのだった。




次回も宜しく お願い致します!
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