451話です!どうぞ!
城塞都市エリシオンに着いたネロと五十鈴、明石、ニコ、
明石はエリシオンの研究者を手伝い感染者を調べ、五十鈴と健は町で情報収集に動く。
そしてネロとニコは、ウイルスの研究をしていたとされるウォントの潜伏場所に行くため、洞窟トンネルへと向かった。だが洞窟トンネルは、感染者の群れで道が塞がれていた。
しかし、ネロとニコは そこで奇妙なものを見る事になった。洞窟トンネルを塞ぐ感染者は鎖で繋がれており、エリシオンの町に現れた感染者と違い、人を襲う気配がなかったのだ。
ネロとニコは五十鈴達と情報を共有するため、1度 町に戻る事にする。
そして日を改め、ネロ達は全員で洞窟トンネルへと向かい、中に入るだった。
*教会 8月14日 10:32*
洞窟トンネルを抜けると、その先には また森が広がっていた。
そのまま歩を進め、真っ直ぐ森を突き進んでると、そこにはジェミールから聞いていた通り、人が来なくなりボロボロに朽ち果てた教会があった。
ネロ達は周囲を見渡すが、感染者の姿は認められなかった。
健「ここには居ないみたいだね」
ネロ「行ってみるぞ」
五十鈴「私とネロで前衛を」
ネロと五十鈴を先頭に、ネロ達は警戒しながら教会の中へと突入する。
中は人間や感染者の姿も見当たらなかったが、ウォントが隠れて こちらを狙ってる危険も考えられるため、警戒しながら ゆっくりと奥へ進んでいく。
明石「居ないみたい・・・ですね」
健「感染者が居る場所に留まったりしないだろ、普通なら」
五十鈴「・・・いいえ。どうかしらね」
五十鈴は床に、鍋やコップなどが残されてるのを見付けていた。触れると まだ温かい事から、さっきまで人が居た何よりの痕跡だ。
ニコ「私らに気付いて慌てて逃げたか?」
その時、健の背後から唸り声のようなものが聞こえ、健が咄嗟に振り返ると、どこからか現れた感染者が眼前にまで迫っていた。
健「うわぁあああっ!?」
健は驚きと恐怖から悲鳴を上げて尻餅を突き、ネロはブルーローズを構え助けようと動く。
?「やめろ、撃つな!!」
ネロ「っ・・・!」
そこに、外から入ってきた男が慌てて駆け寄り、感染者を庇うように立ち塞がりネロが撃てなくなる。
感染者は小さな唸り声を上げながら、尻餅を突く健と立ち塞がる男の横を通り過ぎ、どこかに行ってしまった。
健は呆然としながら それを見ていたが、我に返ると慌てて男から離れ、五十鈴の後ろに隠れる。
ネロ「どうして感染者を庇う?」
?「彼らは人間だ、病気なんだ。君達こそ、どうして こんな場所に来た?」
五十鈴「私達はウイルスを開発して感染者を生み出した、ウォントって男を探してるの」
ネロ「お前がウォントだな?」
ネロ達は男を捕まえようとジリジリと動くが、男は慌ててネロ達に落ち着いてくれと懇願した。
ウォント「確かに私が“ウォント”だが、ちょっと待ってくれ。何か誤解があるようだ。私は彼らを救おうとしてるんだ!」
健「その話を信じろって?証拠は?」
ウォント「先ずは私の話を聞いてくれないか?」
ネロ「・・・話せ」
ウォントは自分を、エリシオンの元研究者であると明かし、エリシオンの教義に従い研究者としての観点から、人が より高みへと行ける方法を模索していた。
そこまではジェミールから聞いた話と同じだったが、すぐに話が食い違う事になった。どうやら教皇を務めるジェミールも元は研究者だったらしく、人間を感染者に変貌させるウイルスを開発し、それを推し進めたのも彼だそうだ。
ウォント「私とジェミールは研究者としての知識を使い、信徒としての役目を共に果たそうとする親友だった。だが、彼は変わってしまった」
ある日ウォントが研究所に行くとジェミールが居たのだが、それだけではなかった。前日まで無かったカプセルに、感染者が保存されていた。
“何だ これは・・・!?”
“ウォント、私はやったぞ!遂に成功したんだ!”
ジェミールは密かに薬を開発し、言葉巧みに誘き寄せた外界の人間に投与し、人体実験をしてしまっていた。
“私に何の相談もなく、裏で こんな事をしていたのか?!”
“話せば お前は反対しただろ!”
“当たり前だ!人体実験など、自分が何をしたのか理解してるのか?!”
“してるさ!これこそが人が行き着いた進化だ!見ろ。この姿になれば、人は無垢な状態となる。邪な精神に染まる事もないのだ”
ジェミールは人の邪な精神が浄化され、進化した姿だと言い張ったが、ウォントには そうは思えなかった。感染者は体毛が全て抜け、瞳も白く濁り、どう見ても人の進化ではなく、怪物を生み出したようにしか見えなかった。
事実、ジェミールが開発したのは薬ではなく、人を怪物に変えてしまうウイルスだった。
ウォントは勝手に推し進めてる計画を中止するよう連日に渡って懇願したが、ジェミールは聞く耳を持たなかった。
そこでウォントは、裏でジェミールの計画を止めるため、感染者を治療しウイルスを死滅させるワクチンの開発に取り組んだ。だが それを、ジェミールに気付かれてしまった。
ジェミールはエリシオンの重鎮達に根回しし、彼らを味方に付けて教皇となった。城塞都市エリシオンで権力を得たジェミールは、自分を阻もうとするウォントを即座に追放した。
追放されたウォントは、何も見なかった事にして どこへだって行く事もできた。しかし、そうはできなかった。
ウォント「ジェミールを止められなかったのは私の責任だ。だから私は、追放されてからも ここで治療法を探していたんだ」
ウォントの話を聞かされたネロ達は、何とも言えない気分だった。ジェミールとウォントの話に食い違いがある状態で、どう判断すべきなのか判らなかった。
すると そこへ、1体の感染者が近付きネロ達は身構える。
ウォント「大丈夫だから落ち着いて。そろそろ薬の時間だったね」
ウォントは白い花を取り出し、昔の薬師が薬草から薬を作る時のように、花を磨り潰して何かの準備を始めた。
ただ その白い花は、明石も見た事がなく図鑑にも載ってない花だった。
明石「あの、その花は・・・」
ウォント「あぁ、これは この辺りからしか採れない花でね。他では群生も栽培もできない物なんだ」
明石「もしかして、感染者のウイルスの元になってるのも その花ではないですか?」
ウォント「ほう、よく分かったね」
ネロ「どういう事だ?」
明石「感染者が この花の成分で大人しくなるのが、どうしても不思議だったんです」
なぜ感染者が、城塞都市エリシオン周辺にのみ群生する白い花の成分で大人しくなるのか、そもそも謎ではあった。
だが感染者を生み出すウイルスの元になってるのが同じ白い花であるなら、結論付ける事は可能だった。
白い花の成分でウイルスを開発し、それを人間に投与して感染者に変貌させるなら、感染者に同じ物を投与すれば何かしらの反応が起きても不思議ではない。その結果が、感染者の休眠状態なのだろう。
ウォントが磨り潰した花と水を混ぜ、鍋で沸騰させてから冷やし、注射器で感染者の腕に打つと、感染者は大人しく歩いて どこかへ行ってしまった。
五十鈴「ずっと こんな事を続けてるの?」
ウォント「そうだよ。だが今の やり方では、十分な成分の抽出は不可能でね。定期的に注射を打たないと凶暴化してしまうんだ」
ネロ達が教会に来た時にウォントが留守にしていたのは、白い花を摘みに出掛けていたからだ。
そして洞窟トンネルの前に居る感染者へ先に注射を打ち戻ってきたら、ネロ達が居た訳だ。
ウォントは城塞都市エリシオンを追放されてから ずっと、周辺を徘徊する感染者に注射を打って回る生活を続けていた。
健「でも こんなこと、いつまでも続けてられないでしょ?治療法も見付かるかも分からないし、殺して処分しようとは思わなかったの?」
ウォント「私も最初は、そうしようとは思った。こんな場所じゃ、満足のいく治療はできないからね。君は、風邪を引いた人を殺そうと思うかい?」
健「いや、そんな事は思わないけど・・・」
ウォント「私からすれば それと同じなんだ。彼らも人間で、今は病気になってるだけだ。私は病気になった彼らを救いたい。それだけなんだ」
ニコ「治療法が見付かるまでか?」
ウォント「治療法が見付かるまでさ」
その後ネロ達は、ウォントを残して教会を後にし、城塞都市エリシオンに戻る事にした。
ウォントと話してみても、彼が人をウイルスに感染させて人体実験するようには思えない。
ジェミールとウォントの話に食い違いがある中、どちらが嘘を吐いてるのか、若しくは両方が嘘を吐いてる可能性もあるが、現状では判断が難しいため、改めてジェミールと話す必要がありそうだった。
・・・・・・
*城塞都市エリシオン 12:37*
城塞都市エリシオンに戻り町を歩いてると、エリシオンの騎士を引き連れて歩くジェミールと出会した。
ジェミール「おぉ、お戻りですか。それで、ウォントは見付かりましたかな?」
ネロ「あぁ。あんたが言ってた教会で会った」
ジェミール「それで?」
健「・・・それでって、何?」
ジェミール「彼を どうしました?」
ネロ「どうもしてない。少し話しただけだ」
ただ話しただけだと聞いた途端、ジェミールが激昂した。
ジェミール「どういう事です?!奴は この城塞都市エリシオンの近くに潜伏し、感染者のウイルスを ばら撒く大罪人なのですよ!それを何もせず放置したと言うのですか?!」
明石「彼と話してみて、そんな事をする人には思えませんでした。ジェミールさん、あなたこそ何か隠してるのではないですか?」
ジェミール「・・・どういう意味です?」
そこでネロ達は、ジェミールとウォントが以前は親友で、ジェミール自身も研究者であった事など、ウォントから聞いた話をして、どうして それを話さなかったのかと追求した。
するとジェミールは、明らかに不機嫌な顔で声を荒げた。
ジェミール「あなた達には失望しました!」
五十鈴「・・・どういう意味?」
ジェミール「我々エリシオンは、感染者の被害に悩まされているんですよ!大罪人の言葉を信じ、問題を解決しようとしてる私を疑うのですか?!」
健「それは・・・」
明石「そうじゃありません。私達はゾンビの噂を調査し、真実を見極めるために来ました。そのためには全て話していただかないと困ります」
ニコ「実際のとこ、ウォントとの関係は どうなんだ?」
ジェミール「確かに、私も教皇の座に就く前は研究者であり、ウォントとは親友でした」
ネロ「どうして それを話さなかった?」
ジェミール「必要ないと判断したからです。私とウォントが どういう関係であったとしても、奴がウイルスを ばら撒き怪物を生み出してる事には変わらない」
明石「あなたに秘密にする意図はなかったとしても、ウォントとの関係を話していなかったのは事実です」
ネロ「まだ話してない事はないだろうな?」
ジェミール「ありません。ですが あなた達にはガッカリだ。外界の政府なら この問題を解決する力になってくれると思っていたのに、ウォントの嘘を信じるなど。問題解決に協力していただけないのなら、すぐに この町から出ていってください」
ジェミールは これ以上 話したくないと判る態度で、騎士達を連れて その場から立ち去った。
ネロ達は黙って その背中を見ていたが、その目は疑いの目で見詰めていた。
ニコ「おーおーおー、キナ臭い感じになってきたねぇ~」
明石「うん、何だか違和感は残った感じ」
五十鈴「ウォントとの関係を持ち出した途端 怒鳴るなんて、何かあるって言ってるようなものね」
健「でも、まだ分からないよ?親友がゾンビウイルスばら撒いてましたってなったら、どうしてって思うし、裏切られたと思ってジェミールさんも怒りたくもなるかも」
五十鈴「どちらかは嘘を吐いてるとなると、とんだ演技派ね」
ネロ「まだ どっちも信用できない。ジェミールとウォントとは、もっと話して話を引き出すしかないな」
とは言うものの、不機嫌になったジェミールとは今は話ができそうにないため、そちらは日を改めてするしかなさそうだ。
ウォントとも話はしたいが、また旧い教会に戻るとなると時間が掛かるため、そちらも また日を改める事にした。
なので他にできる事となると、エリシオンの関係者から情報を聞き出す事くらいしかないので、ネロ達は午後から町の中だけで動く事にするのだった。
・・・・・・
*宿 22:39*
夜、夕飯も終わったネロ達は1つの部屋に集まり、情報収集の成果を報告し合っていたのだが、全員 疲れた顔をしていた。
健「ダメだ・・・初日に聞いた以上の話が全く出てこない・・・」
五十鈴「騎士の格好した連中も住民も、何で ここまで口が堅いのよ・・・」
警備や巡回してる騎士から話を聞こうとしても、忙しいと言われ相手にしてもらえず、住民に声を掛ければ逃げるように家の中に引っ込んでしまい、話にならなかった。余所者が歓迎されないのは珍しい事ではないが、ここまで非協力的で警戒されてるとなると、町での情報収集は完全に行き詰まりだ。
たまにノリの軽い者も居て話ができる者も居たが、感染者やウイルスの核心となる事は何も知らず、感染者の被害に困っていたり怖がってる程度の話しか聞けなかった。
ジェミールとウォントの事も聞き出そうとしたが、誰もが口を揃えてウォントが この惨劇を起こした張本人だと認識していた。いや、そう教えられ信じ込んでる可能性もあるが、結果としては詳しい事は何も知らない訳だろう。
ニコ「まさか ここまで難航するとはなぁ・・・ステフもドえらい仕事を回してきたもんだな」
明石「こんなの全然 予想してなかった・・・」
普段なら何かを調べようとすれば、何かしらの形で少しずつでも情報は集まるものだった。
エリシオンから調査依頼してきた事も相まって、もっと協力的かと思っていたが この状況は完全に予想外だった。
ネロ「こうなると、ジェミールとウォントから話を聞き出すしかないな」
ネロが言った通り、感染者とウイルスの真実を知ってるであろうジェミールとウォントの2人からしか、これ以上の話は引き出せないだろう。
どちらかが嘘を吐いてると思われる この状況では、両者からできるだけ聞き出した情報を擦り合わせ、矛盾を見付けるしかない。その矛盾のある方が嘘を吐き、ウイルスを ばら撒いた犯人に違いない。
健「でも、ジェミールさんとウォントさん以外で何も知らないなんて考えられないよ。どちらかと近しい人は居ただろうし」
五十鈴「そこなのよねぇ。実際は どうか判らないけど、本当に何も知らないのか情報規制が完璧なのか、ここまで手懸かりが出ないと不気味ね」
明石「一応、住民への聞き込みは続けませんか?」
ネロ「分かった。明日はジェミールと住民への聞き込みに手分けしよう。その後に、改めてウォントの所にも行ってみるか」
明日の予定も決め、五十鈴と明石、ニコは自分達に割り当てられてる部屋に戻り、ネロと健は そのまま就寝した。
・・・・・・
*城塞都市エリシオン 8月15日 11:28*
翌日、ネロ達は予定通り動いていたのだが、住民への聞き込みは相変わらず難航していた。
ネロは朝からジェミールを探しているのだが、どういう訳か中々 見付からなかった。
ネロ「(それにしても、今日は自棄に静かだな)」
そんな中、ネロは町の様子に違和感を感じていた。町で騎士の姿を殆んど見掛けないのだ。
昨日と一昨日は、騎士達が警備や巡回をして どこに行っても姿があったのだが、今日は極端に その数が少ないように思えた。
この町を よく知ってる訳でもないため最初は そんな日もあるのかとも思ったが、気になってしまうほど大きな変化であるため、やはり違和感は拭えなかった。
するとネロは、いつもなら隊列を組んでるのを1人で巡回してる騎士を見付け、呼び止めた。
ネロ「おい、今日は人数が少ないんだな」
騎士「ああ、お前か。そりゃ そうさ。今日は大罪人の粛清に殆んど出払っちまってるからな」
ネロ「・・・粛清って何だ?」
騎士「何だ、何も聞いてないのか?」
騎士の話では、感染者のウイルスを ばら撒く大罪人であるウォントを処刑する名目で、エリシオンの戦力の中核が旧い教会に向かったそうだ。
騎士達の姿を殆んど見ないのは、感染者の相手もする事を想定して大部隊で向かったからだった。
騎士「今日は1人だから話してやったが、他の奴が居る時にベラベラ喋ると怒られるんだ。俺から聞いたって事は内緒にしてくれよ?」
ネロ「あぁ、誰にも言わねぇよ、ありがとな!」
ネロは お礼を言いながら駆け出し、五十鈴達に連絡を取る。
ネロ「マズい事になった!すぐにウォントが居る教会に向かうぞ!」
ネロは全員を集めバンに乗り込むと、すぐに城塞都市エリシオンを出発した。
・・・・・・
*森 12:20*
洞窟トンネルに向かうバンの中で、ネロが騎士から聞かされた話を聞いて、五十鈴達は険しい顔をしていた。
健「何で急に、大罪人の粛清とかに動くんだよ?追放して今まで放置してたのに」
ニコ「昨日のが尾を引いてるんじゃないか?ジェミールに あれこれ突っ込んだろ」
健「それって、やっぱりウォントさんが言ってたのが正しいってこと?」
五十鈴「状況からして そうかもね。口封じに動いてるようにも思えない?」
健「マジかよ、最悪じゃん」
明石「それか、私達が何の成果も挙げないから、焦って自分達で解決しようと動いたのかも」
健「どっちにしたって いい結果になるとは思えないけど」
ネロ「ニコ急げ。間に合わないと ややこしい事になりそうだ」
ニコ「もう充分ややこしいと思うぞ。飛ばすから掴まってろ!」
バンのスピードを上げて森を駆け抜け、騎士達を止めるためにネロ達は洞窟トンネルへ急ぐのだった。
さぁ、厄介になってきました
ジェミールとウォント、どちらかは確実に嘘を吐いてる状況である訳ですが、どちらが嘘吐きなんでしょうね?
ジェミールとウォントは互いに、相手がウイルスを開発した理由が“人の進化のため”と言っていますが、どこかに嘘が含まれてるとなると、私ならウイルスを開発した目的が本当に それだけなのかと疑いたくもなります
まだ何も判ってない状況で事態が動き、ネロ達に休んでる暇がないですね
次回も宜しく お願い致します!