ダンテがレディとトリッシュと再会してから1週間近く経った。
レディとトリッシュは、艦娘や深海棲艦について詳しく教わり、時には演習場での訓練を見物する事もあった。トリッシュは知識欲が旺盛であり、鎮守府にある資料室で資料を読み漁る日々もあった。元の世界でも、知識欲を満たす為に1人で色々な場所を見て回っていた程だ。
レディは暁を筆頭に、化粧や服、お洒落に興味のある艦娘と話したり街に出る事もあったが、出掛ける際は武器弾薬の全てを置いていく事になった。ダンテは提督として、武器を持ち歩く特別な許可があるが、レディとトリッシュは鎮守府の外部に秘密にしているのもあり許可はない。下手に武器を持ち歩いて外を出歩くと面倒になる。こちらの世界でも悪魔が出るのは聞かされていたので、レディは丸腰で出掛けるのを渋ったが、ダンテが説得して了承してもらった。
そしてレディとトリッシュ、大人組の艦娘の最大の共通の話題、それはダンテだった。酒を呑み交わしながら、ダンテに対する愚痴で話が盛り上がった。そんな事もあり、レディとトリッシュは それ程 時間も掛からずに、鎮守府に馴染んだ。
*Devil May Cry鎮守府 執務室*
執務室ではダンテ、トリッシュ、レディが今後について話し合っていた。
トリッシュ「つまり、正体が知られていない私達が鍵って事ね」
ダンテ「そういう事だ」
レディ「でも相手の事は?肝心な事は何も分かってないんでしょ?」
ダンテ「それを お前らに調べてもらう」
それには2人もダンテに反論した。異世界に放り出されて、調べるにしてもツテはない。勝手の知らない場所で、当てもなく情報を探そうとしても時間の無駄で愚策だ。
ダンテ「それなら心配ない。今その為の準備をしてもらってる」
レディ「誰に?」
ダンテ「海軍の偉い じーさん」
トリッシュ「・・・信用できるの?」
ダンテ「大丈夫だ、間違いない」
ダンテは、レディとトリッシュが秘密裏に情報を集められるように、元帥に ある事を頼んだ。元帥は誰にも伝える事なく、極秘に それを準備している。今は元帥の準備待ちだった。
ダンテ「それまでは、お前らも目立つ事はするなよ」
トリッシュ「はいはい、何度も聞いたから分かってるわよ」
大淀「失礼します。今よろしいでしょうか?」
そこへ、大淀が扉の向こうから入室しても良いか訊いてくる。話は一応 終わり、キリも良かったのでダンテは許可した。大淀は執務室に入ると、3人に紙を渡した。
ダンテ「何だ こりゃ?」
大淀「短冊です。そこに願い事を書いてください」
ダンテ「・・・タンザク?」
大淀「説明します」
日本の行事に そこまで興味がないダンテは、首を傾げた。それでなくとも、悪魔を狩る殺伐とした日々を送っていたのだ。知らなくても仕方がない。大淀は3人に分かるように、七夕の説明をした。
ダンテ「願い事って言われてもな・・・」
レディ「私は やっぱり お金ね・・・いや、永遠の若さ?」
トリッシュ「改めて問われると、難しいわね・・・」
大淀「時間は まだありますから、夜までに提出してください」
レディは すぐに書き終えたが、ダンテとトリッシュは時間まで悩み続ける事になった。
・・・・・・
夜になり、数名の艦娘が3人を呼びに来た。艦娘達は皆、浴衣に着替えている。
金剛「提督ぅ!行きマスヨー!」
ダンテ「行くって どこに?」
鳳翔「あれ?伝えてませんでした?」
何の事か分からず、ダンテとレディ、トリッシュは顔を見合わせた。艦娘達の話では、近くの港町で七夕祭りがあるらしい。以前 港町の住民は、便利屋として鎮守府に頼み事をしていた。鎮守府が再稼働した時は、大層 喜んだそうだ。その縁もあって、七夕祭りに招待されたらしい。
ダンテ「お前らだけで行ってこい」
鳳翔「また そんな事を言うのですか?」
ダンテとしては、裏稼業の仕事をしている自分達が、一般人の祭りに参加するのはどうなのかと思っている。それはレディとトリッシュも同じで、興味がなさそうだ。
鳳翔「“家族の時間”です」
ダンテ「・・・前にも言われた気がするな」
レディ「本当に家族だと思われてるのね」
鳳翔「レディさんとトリッシュさんもですよ」
「「・・・・・・え?」」
レディは、ダンテが艦娘達に家族だと思われている事に鼻で笑っていたが、まさか自分も家族と思われているとは思わず、トリッシュ共々 驚いた。レディとトリッシュは お互いの顔を見合わせる。
ダンテ「こいつらは そういう連中なんだ」
トリッシュ「まぁ、たまには そういうのも良いかもね」
レディ「家族なら、私達って何なの?」
ダンテ「親戚の口うるさい おばさんだろ」
トリッシュ「ダンテ?」
レディ「はぁー!?せめて優しい お姉さんでしょ!」
ダンテ「冗談は人の顔に鉛弾 撃つだけにしとけ」
レディ「上等よ、表に出なさい」
ダンテ「出る予定だったから丁度 良かったな」
なぜか祭りに行こうとするだけで喧嘩が勃発しようとする。当然 艦娘達は止める。
蒼龍「ちょっと ちょっと!喧嘩しないでください!」
加賀「提督も余計なこと言わないで」
叢雲「いい加減、学習しなさいよ・・・」
曙「・・・ほんと糞提督」
大淀「レディさんとトリッシュさんも着替えてください」
艦娘達は いつの間にか、レディとトリッシュの浴衣も用意していた。ダンテの分は、本人が嫌がるのを分かっていたので用意はしていない。2人は初めての浴衣に四苦八苦、艦娘達に着替えを手伝ってもらい、着替え終わって祭りに行くかと思いきや、先に中庭に行くと言われて中庭に移動した。
・・・・・・
*中庭*
中庭には既に他の艦娘が集まっていた。先に来ていた艦娘達も浴衣に着替えており、短冊も笹に吊るし終わっていた。ダンテ、レディ、トリッシュも見様見真似で自分の短冊を吊るす。艦娘達はダンテの願い事が気になり、短冊を見た。そこに書かれていたのは・・・
『ピザ食べ放題』
『静かに昼寝したい』
『もっと骨のある奴と戦いたい』
龍驤「いや願い事やし、間違ってないけど・・・」
鳥海「いつも してますよね?」
熊野「3つ書くのは有りですの?」
鈴谷「いや、どうなのかな・・・?」
ゴーヤ「“戦いたい”って、どこの戦闘部族でちか?」
ダンテの願い事に艦娘達がケチを付け始めると、ダンテが反論した。
ダンテ「俺達みたいな商売をしてると、強い奴に餓える事もあるんだ」
元の世界では悪魔を狩り続けているが、強い相手に遭遇するのは稀な事だ。低級悪魔ばかりを狩り続けていると、強い相手と戦いたくもなるらしい。
時雨「そうなの?」
トリッシュ「確かに そういう時もあるわね」
話も そこそこに、全員で祭りへと向かった。
・・・・・・
道中では、色々と話しながら祭りに向かっていた。
青葉「1年に1回しか会えなくても、お互いに思い続けるのはロマンチックですねぇ」
ダンテ「気の長い遠距離恋愛だな」
文月「天の川 見えるかな?」
皐月「どうだろ、今も星 見えてないし・・・」
トリッシュ「天の川・・・ミルキーウェイの事ね」
博識のトリッシュは、日本で言う天の川を知っていたようだ。
那珂「憲兵さん、一緒に来れなくて残念だったね」
大淀「仕事ですからね」
那珂のファン第1号の憲兵は、鎮守府の警備で一緒に祭りに行けず、泣きながらダンテ達を見送った。今頃 同僚の憲兵達に慰められているか、“仕事しろ”と言われ尻を叩かれているだろう。
歩きながら話していると、祭りの会場に着いた。
鳳翔「では時間になれば、ここで集合とします」
ここからは自由行動となる。鳳翔と大淀と間宮は、町の住民に挨拶に行った。レディとトリッシュも、艦娘達に手を引かれて人混みの中へと消えた。ダンテも適当に見て回ろうとして動こうとしたが、加賀に襟首を掴まれ止まった。
ダンテ「・・・何だ?」
赤城「提督は私達と一緒に行動してもらいます」
ダンテ「自由行動が聞いて呆れるぜ」
赤城、加賀、金剛、比叡、霧島はダンテの お目付け役を鳳翔から頼まれていた。だからダンテは、この5人と回らなければならない。
・・・・・・
回り始めたのだが、ダンテ達は最初の場所から あまり動いていない。
ダンテ「赤城、まさか全部 食べる気か?」
赤城「・・・そうですよ」
金剛「提督と もっと他の場所 回りたいデース!」
比叡「赤城さん、買うの一旦やめてください」
霧島「加賀さんも お願いしますよ・・・」
加賀「ここは譲れません」
赤城と加賀が、飲食の屋台で軒並み買い食いするせいで何度も足止めされる。回るに回れない。
ダンテは辺りを見回すと、隼鷹と龍驤、蒼龍とトリッシュを見付けた。4人は飲食スペースでビールを呑んでいた。
ダンテ「何やってんだ?」
隼鷹「あ゛ぁ~!提督じゃーん!」
トリッシュ「一度 付き合ったら気に入られちゃってね。今も付き合ってるの」
蒼龍「提督も一緒に呑みますか?」
ダンテ「良いねぇ」
トリッシュ「あなた一応 引率者でしょ?」
ダンテ「固いこと言うなよ」
ダンテはビールを1杯だけ呑むと、龍驤を見た。龍驤もビールを呑んでいる。
ダンテ「ガキにアルコールは早いんじゃないか?」
龍驤「ガキちゃうわ!うちは立派な大人やで!」
ダンテ「・・・マジか」
比叡「司令、次 行きますよ!」
龍驤の見た目から駆逐艦のように子供だと思っていたのだが、大人だと言われダンテは驚いた。
比叡に呼ばれ、トリッシュ達と少しだけ言葉を交わしてから、ダンテは他の場所へと移動した。
・・・・・・
歩いていると、今度は軽巡と重巡の艦娘を見付けた。軽巡はヨーヨー釣り、重巡は金魚すくいに励んでいる。
大井「北上さん、楽しいですね!」
北上「大井っち全然やってないじゃん」
天龍、龍田、神通、那珂、夕張は真剣なのか、黙々とヨーヨー釣りをしている。
鳥海「あっ!?」
利根「また破れたのじゃ!」
熊野「とぉぉおう!」
鈴谷「熊野、もっと優しくやらなきゃダメだって!」
鳥海と利根は金魚すくいに苦戦しているようで、熊野は気合いの掛け声と共に、金魚をすくう為のポイを水の中に ぶち込む。そのせいで すぐに破れて話にならない。青葉は、そんな様子をカメラに収めていく。
羽黒「あっ、司令官さん」
ダンテ「楽しそうだな」
鈴谷「提督もやってみる?」
ダンテ「遠慮しておく」
鈴谷「え~、いいじゃん、一緒にやろうよ」
ダンテ「勘弁してくれよ、お前らで楽しみな」
金剛「ちょっと赤城、加賀!いい加減にしてヨ!提督 先に行っちゃったデース!」
ダンテは適当な理由を付けて その場を後にした。
金剛達はダンテの お目付け役のはずなのに、いつの間にか赤城と加賀の お目付け役のようになっていた。ダンテと一緒に回りたい金剛は不服で仕方なかった。
・・・・・・
射的の屋台の近くまで来ると、駆逐艦と潜水艦とレディが屋台の前に一緒に居た。人数が多いので、よく目立つ。
白露「もう!全然 落ちない!」
時雨「白露、一番 大きいのは無理だよ」
深雪「何 狙う?」
初雪「・・・じゃあ酢こんぶ」
文月「文月はキャラメル~」
如月「頑張って、文月ちゃん」
ハチ「はっちゃん・・・こういうの・・・苦手かも・・・」
駆逐艦と潜水艦も思い思いに楽しんでいるようで、白露は大きい ぬいぐるみを狙っている。だが重さの軽いコルクでは、ぬいぐるみを落とすのは不可能だろう。それでも白露は諦めない。
比叡「司令、助けてあげたら どうです?」
霧島「私の計算では、あれを落とすのは不可能です」
金剛「でも提督がカッコ良く落とすのは見たいデース!」
ダンテ「俺が撃つと後々 面倒になるんだがなぁ・・・」
とか言いつつ、屋台に近付いていくダンテ。ダンテが普通の銃を撃つと壊れてしまうのだが・・・。ダンテが近付くとレディ達もダンテに気付いた。
陽炎「司令じゃない、射的するの?」
レディ「ダンテからも言ってやって、この娘ムリにデカいのばっかり狙うのよ」
白露「だって一番 大きいの欲しいんだもん!」
何が何でも大きい ぬいぐるみが欲しい白露。すると不知火が、黙ってダンテに射的用の銃を差し出してくる。ご丁寧にコルクも装填済みだ。ダンテは銃を受けとると、照準を一番 大きいぬいぐるみに合わせた。
レディ「ちょっとダンテ、あなたも分かってるでしょ?そんな軽いコルクじゃ流石にムリよ」
ダンテ「普通ならな」
ダンテは不敵に笑うと、コルクを発射した。コルクが当たった ぬいぐるみは、予想を裏切り落ちた。これには屋台の店主も驚き、口が塞がらない。艦娘達やレディも驚いた。一番 大きい ぬいぐるみを貰った白露は ご満悦だ。
初雪「司令官、あれ 取って!」
暁「司令官、あっちも!」
皐月「ボクも あれが欲しい!」
レディ「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
自分達が取れない物をダンテが取れると気付いた艦娘達は、次々とダンテに頼み始めた。やめる理由がないダンテは、言われた商品を落としていく。店主は焦りまくっている。
電「マ、マズイのです・・・」
雷「司令官!」
赤城「提督、その辺で やめてください!」
加賀「逆に迷惑よ!」
レディ「ダンテ!」
遂に泣き始めた店主を見兼ねてダンテを止める。店主に謝り、全員で その場から逃げた。
・・・・・・
レディ「それで、何で落とせたのよ?」
ダンテ「タネ明かしをするとだな・・・」
普通なら軽いコルクで重さもある ぬいぐるみは落とせないが、ダンテは射的用の銃に自身の魔力を送り、チャージショットの要領で撃ったらしい。つまり通常より威力が出る状態でコルクを撃ちだしたのだ。
曙「完全にインチキじゃない、この糞提督!」
ダンテ「そう言うなよ、かなり大変だったんだぞ」
ダンテが引き金を引けば普通の銃は壊れる。引き金を引くスピードに、銃が耐えられないからだ。引き金を引くのも、魔力をチャージするのも、かなり加減しながら撃っていたようだ。
イク「でもイク達は欲しい物が貰えて満足なの!」
初雪「・・・グッジョブ」
ゴーヤ「次からゴーヤ達、出禁でちね」
叢雲「・・・最悪」
鳳翔「提督」
射的組と話していると鳳翔に呼ばれた。隣には町内会 会長が居て、鳳翔が手招きしている。ダンテは そちらに向かった。どうやら町会長がダンテに挨拶したいようだ。
町会長「いやぁ提督さん、久しぶりですね」
ダンテ「そうだな」
町会長「戻ってきてもらえて嬉しいですよ。鎮守府が再稼働したと聞いた時は、皆 喜んでましたしね」
ダンテ「そうかい」
町会長「また何かあれば、よろしく お願いします」
ダンテ「それは艦娘に言ってくれ」
町会長「そういえば、ギターケースなんて背負ってライブでもするんですか?」
鳳翔「いや、それは・・・」
ダンテが背負っているギターケースの話になり、鳳翔、大淀、間宮は焦った。入っているのはギターではなく剣だ。正直に話す訳にもいかず、言い訳に困った。
ダンテ「俺のライブはR指定だ。お勧めしないぜ」
町会長はダンテが言った事をジョークだと思い、盛大に笑っていた。
その時、ダンテは誰かの視線を感じて振り返った。視線の先には、喫茶店で相席してきた謎の男が こちらを見ていた。男はダンテが気付いたのを確認すると、移動を始めた。ダンテも男を追う。
鳳翔「提督!?」
突然 走り出したダンテに、皆 驚いた。
・・・・・・
男は人気のない場所まで来ると立ち止まった。ダンテも すぐに追い付いた。
?「また会ったね、ダンテ君」
次回も よろしく お願いいたします!